訪問看護の課題は需要増に対する人手不足!経営改善につながる対策を解説
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株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部
看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。
目次
高齢者の増加や、高度な医療が提供できる時代になったことにより、「病気があっても自宅で生活したい」「介護施設に入らず最期まで家族と暮らしたい」というニーズは高まり、地域の介護・医療の担い手として訪問看護の需要が高まっています。
一方で、訪問看護に従事する看護師の数は十分ではありません。この記事では、訪問看護の課題である人手不足の背景や、人手不足を解消する国の支援内容、そして人手不足を解決するために訪問看護ステーションが取り組むべき対策について解説します。
訪問看護が人手不足となっている要因とは
訪問看護の人手不足の要因として、以下の3つが挙げられます。
訪問看護の需要に対して訪問看護に従事する看護職の数が少ない
赤字経営のステーションが多く待遇をアップできない
心身の負担が大きい
まずはこの3つの要因について解説していきます。
訪問看護の需要に対して訪問看護に従事する看護職の数が少ない
まず、訪問看護の利用者が増えている背景を見ていきましょう。
2021年の介護サービス施設・事業所調査によると、全国で訪問看護サービスを受けた利用者数は58万7,658人です。10年前の2011年の調査では、利用者数は23万4,846人だったことから、10年前と比べて約3倍に増加しています。
(参考:介護サービス施設・事業所調査(令和3年及び平成23年)|厚生労働省)
利用者数が増えている一方で、訪問看護に携わる看護職の数はニーズと比較すると少ない状況にあります。
2020年における看護師の就業者総数は128万人ですが、このうち訪問看護ステーションに就業している看護師は約6万人で全体の4%程度となっています。
(参考:令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者の概況)|厚生労働省)
また、訪問看護事業においては2025年までに13万人の看護職が必要とされていますが、現時点では目標数にほど遠い状況です。
(参考:訪問看護の現状とこれから2024年版|日本訪問看護財団)
このように、訪問看護の利用者数は急激に増加を続ける一方で、訪問看護に従事する看護職は必要数の半分程度であり、深刻な人手不足となっています。
赤字経営のステーションが多く待遇をアップできない
令和4年度の介護事業経営概況調査結果によると、訪問看護の収支差率が0%以下、つまり黒字になっていない事業所はおおよそ3割ほどとなっています。
人手不足を解消するために、人材を確保したくても、給与面など待遇を改善できない訪問看護ステーションも多いことが要因として考えられます。
心身の負担が大きい
一般的な訪問看護ステーションの勤務形態は、病院と異なり夜勤がないことから、「体の負担が少ないのでは?」と思われがちですが、一概にそうとは言えません。
オンコール対応をしているステーションの場合は、夜間の待機当番を担当することがあるので、身体的・精神的な負担が発生します。
また、昨今では医療必要度が高い利用者が増えていることにより、訪問する看護師の責任や業務負担が増えていることや、希望する日程に休むことが難しい状況などがあり、負担を感じて、人材が定着しないという要因も挙げられます。
訪問看護の人手不足に対する国の支援制度
深刻な人手不足に陥る訪問看護に対して、厚生労働省を中心として改善に向けた議論や取り組みが行われています。
ここからは、厚生労働省が実施している支援制度や試験中の取り組みについて解説していきます。
補助金・助成金
人手不足を改善するために働き方改革に取り組む事業所に向けた補助金・助成金制度が設けられていますので、今回はその中から2つの助成金をご紹介します。
事業所内における最低賃金を30円以上引き上げ、生産性を向上する目的で事業所の設備投資等をした場合に業務改善助成金として最大600万円まで費用の一部を支給する助成金です。
助成金の金額は、賃金の引き上げ額と賃金を引き上げる労働者の数によって、60万円~600万円まで20段階に分けられています。
生産性を上げて残業時間を削減し、有給休暇消化の促進に向け職場の環境整備に取り組む中小企業に対して経費の一部を補助する助成金です。取り組みの内容や経費の総額に応じて、最大200万円まで支給されます。
訪問看護ステーション向けの補助金・助成金制度については、以下の記事で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
訪問看護の人材活用システムの検討
厚生労働省ならびに日本訪問看護協会は、平成27年より「地域における訪問看護人材の確保・育成・活用策に関する調査研究事業」として病院看護師が訪問看護ステーションに出向する試験的事業を行っています。
この事業を通して、「即戦力重視の人材確保ではなく、多様な看護人材の訪問看護参入を促し、人材を確保・育成することが急務だ」という意見も出ています。
組織にとどまらず、地域全体で『効果的な看護スキルを発揮できる看護師』を育成するため、訪問看護ステーションとしても積極的にこのような事業に参加を検討してみましょう。
訪問看護ステーションがとるべき人手不足への対策とは?
ここからは、訪問看護ステーションが取り組むべき人材確保のための対策を4つご紹介します。
就労条件や働き方を見直す
一つ目は、現在の就労条件や働く環境を見直すことです。
就労条件や働く環境を見直すためには、以下のような取り組みが例として挙げられます。
近隣の訪問看護ステーションの求人情報から就労条件を見直す
職員にアンケートを取り、ウォーターサーバーの導入やアニバーサリー休暇といった福利厚生を充実させる
車で移動できる体制を整えるなど、訪問先への移動方法を改善する
直行直帰やリモートワークを導入するためにICTを導入するなど、働き方を柔軟にする。
適切な人材マネジメントを行う
二つ目は、適切な人材マネジメントを行うことです。
職員それぞれのやりがいや働き方の希望、ストレスに感じやすい点などの個性を管理者や経営者が把握し、個別に面談等を行い、適切な介入をすることで、心身の疲労による離職や職員同士の人間関係による離職を防ぐことができるでしょう。
定期的な面談の機会を作るほか、以下のような取り組みもよいでしょう。
経営者、管理者がコーチングスキルを習得する
ステーションの職員全体でコーチングスキルを学ぶ機会を作る
「ストレングスファインダー」や「16性格分析」を実施し、職員個々の性格や強み・弱みを把握する
ICTを導入し業務効率化を徹底する
三つ目は、ICTを導入し、業務効率化を徹底することです。
帳票作成や請求業務にかかる時間をICTの活用で短縮できると、残業時間を減らすことができ職員のワークライフバランスを保つことにつながります。「残業が少なく働きやすい職場」として離職予防や採用希望アップが期待できるでしょう。
具体的には、以下のようなICTの導入が挙げられます。
クラウド型の電子カルテ、請求ソフトを導入する
クラウド型の勤怠管理システムを導入する
業務用のチャットツールを導入する
訪問看護ステーションのICT化について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
訪問看護ステーションの魅力を発信する
四つ目は、訪問看護ステーションの魅力を発信することです。
最近では、訪問看護ステーションのホームページやSNSで職場の様子や環境を紹介することで、採用活動を行っている企業が増えています。若手看護職採用の観点から、気軽に閲覧できるオンライン媒体上で「近くにいい訪問看護ステーションがあるな」と認知してもらうことが人手不足対策の一歩になるでしょう。
具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
ホームページでステーションの所在地や職員、採用情報等を紹介する
Instagramでステーションの環境や活動内容を写真で紹介する
Twitterで、自身の訪問看護ステーションの目指す姿や利用者とのかかわりなどのエピソードを投稿する
訪問看護ステーションのホームページの運用方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
訪問看護の課題である「人手不足」をテーマに、人手不足の要因や背景、訪問看護ステーションが取り組むべき対策をご紹介しました。
対策としてご紹介した「待遇の見直し」、「適切な人材マネジメント」、「ICTによる業務効率化」、「訪問看護ステーションの魅力発信」に、まだ取り組んでいない経営者の方は、ぜひこの機会に自ステーションで実施できる取り組みを検討してみましょう。
この記事でご紹介した内容が皆様の訪問看護ステーションの経営のお役に立てば幸いです。
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