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訪問看護のリハビリを提供する際のルールとは?訪問リハとの違いや併用の可否を解説

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この記事は2024年2月時点の情報をもとに執筆しています

訪問看護のリハビリを提供する際のルールとは?訪問リハとの違いや併用の可否を解説
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

訪問看護では、在宅での療養支援や日常生活の支援を提供する中で、医師からリハビリテーション(以下、リハビリ)を必要とする指示が出る場合もあります。そのため、訪問看護ステーションには看護師だけでなく、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士等のリハビリの専門職が在籍している場合もあります。

一方、名前が似ているサービスで「訪問リハビリテーション(以下、訪問リハビリ)」があり、「訪問看護ステーションから提供するリハビリと、訪問リハビリの違いは何?」と疑問を持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで今回は、訪問看護のリハビリの概要やサービスを提供する場合の注意点、訪問リハビリとの違いなどを解説していきます。

訪問看護のリハビリとは?

訪問看護のリハビリとは、訪問看護ステーションから提供されるサービスのひとつで、リハビリ専門職である理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によっておこなわれるリハビリのことを指します。主治医が必要であると判断し、指示書を出した場合に訪問看護のリハビリを提供することが可能です。

それぞれの専門職によっておこなわれるリハビリの具体例を以下にご紹介します。

理学療法士

  • 身体機能の評価を行い、立ち上がり動作や歩行、段差昇降など基本的な動作能力の向上をはかるリハビリを提供

  • 筋力トレーニングやストレッチ、歩行訓練などを行う

作業療法士

  • 身体機能や日常生活動作に関する評価を行い、食事・トイレ・入浴などといった生活に必要な動作のリハビリを提供

  • 認知機能や精神疾患に対するサポートも行う

言語聴覚士

  • 失語症や構音障害、嚥下障害等を有する方のリハビリを行い、コミュニケーション能力に影響を及ぼす障害等の評価を実施

  • 適切な食事形態や内容の助言も行う

リハビリ専門職の中でも専門分野が分かれており、それぞれの専門性を発揮することによって、訪問看護ステーションで提供できるサービスの幅が広がります。

訪問看護でリハビリを提供する場合の注意点

訪問看護でリハビリを提供する際にあたり、いくつか注意点があります。今回は2つの注意点をご紹介します。

少なくとも3か月に1回は看護師のモニタリングが必要

リハビリ専門職による訪問看護ステーションからのリハビリは、看護業務の一環であり、リハビリを中心としたものである場合に看護職員の代わりに訪問するという位置付けになっています。

(参考:老企第36号 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について,p32|厚生労働省

そのため、厚生労働省の「平成30年度介護報酬改定に関するQ&A」によると、リハビリ専門職が中心となりサービスを提供しているご利用者様に対し、少なくとも3か月に1回は看護職員による定期的なモニタリングを行う必要があるとされています。

平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1) 問22
Q.
留意事項通知において、
「計画書及び報告書の作成にあたっては、訪問看護サービスの利用開始時及び利用者の状態の変化等に合わせ、定期的な看護職員による訪問により利用者の状態の適切な評価を行うこと。」
とされたが、看護職員による訪問についてどのように考えればよいか。
A.
訪問看護サービスの「利用開始時」については、利用者の心身の状態等を評価する観点から、初回の訪問は理学療法士等の所属する訪問看護事業所の看護職員が行うことを原則とする。
また、「定期的な看護職員による訪問」については、訪問看護指示書の有効期間が6月以内であることを踏まえ、少なくとも概ね3ヶ月に1回程度は当該事業所の看護職員による訪問により、利用者の状態の適切な評価を行うものとする。
なお、当該事業所の看護職員による訪問については、必ずしもケアプランに位置づけ訪問看護費の算定までを求めるものではないが、訪問看護費を算定しない場合には、訪問日、訪問内容等を記録すること。

平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)より引用し作成)

訪問回数に制限がある

訪問看護のリハビリは、適用する保険(介護保険・医療保険)によって訪問できる回数に制限があります。

介護保険の場合の訪問回数の上限

介護保険でのリハビリ専門職による訪問は、1回あたり20分以上実施することとされており、「週6回を限度」として算定できます。

また、1日に2回を超えて(60分以上)リハビリをおこなう場合には、所定単位数の100分の90を算定することになります。

医療保険の場合の訪問回数の上限

医療保険でのリハビリ専門職による訪問は、「1日1回まで、週3回まで」という訪問回数の制限があります。

ただし、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合や病状の急性増悪などにより、特別指示がある場合は、1日の訪問回数と1週間の訪問回数の上限が適用されません。

訪問リハビリとの違いは?

訪問看護のリハビリと、訪問リハビリの違いを3つご紹介します。

①単位数が異なる

訪問看護のリハビリと、訪問リハビリテーション事業所のリハビリとでは単位数が異なります。

【介護保険】訪問看護のリハビリ専門職による訪問の単位数

基本報酬 単位数
訪問看護Ⅰ5
(理学療法士等による訪問の場合:1回につき)
293
予防訪問看護Ⅰ5
(理学療法士等による訪問の場合:1回につき)
283

【介護保険】訪問リハビリの単位数

基本報酬 単位数
訪問リハビリテーション費
(理学療法士等による訪問の場合:1回につき)
307
介護予防訪問リハビリテーション費
(理学療法士等による訪問の場合:1回につき)
307

訪問看護のリハビリの単位数と訪問リハビリの単位数を比べると、訪問リハビリの単位数が多くなっています。

②リハビリ専門職員の所属が異なる

訪問看護のリハビリと訪問リハビリでは、リハビリ専門職が所属している部署が異なります。

訪問看護のリハビリは、訪問看護ステーションに所属する理学療法士等がリハビリを提供することに対し、訪問リハビリは訪問リハビリテーション事業所に所属する理学療法士等がリハビリを提供します。

訪問リハビリテーション事業所は、医療機関や老人保健施設、介護医療院と併設して運営されているので、本体施設である医療機関や老人保健施設、介護医療院に所属し、訪問リハビリを兼務することが多いことが特徴となります。

③リハビリの指示をする医師が異なる

訪問看護のリハビリと訪問リハビリでは、指示を出す医師が異なります。

訪問看護のリハビリでは、ご利用者様の主治医が訪問看護指示書を出すのに対し、訪問リハビリでは、本体施設である医療機関や老人保健施設、介護医療院に所属している医師がリハビリの指示を出します。

医療保険の訪問看護と介護保険の訪問リハビリは併用可能!

訪問看護ステーションが提供する医療保険の訪問看護と、訪問リハビリテーション事業所が提供する介護保険の訪問リハビリは併用可能です。

「厚生労働大臣が定める疾病等(別表7)」や「厚生労働大臣が定める状態等(別表8)」に該当するか、特別訪問看護指示期間中は、訪問看護には医療保険が適用されます。この場合、同一の月に介護保険の訪問リハビリを併用することも可能です。

ただし、基本的に訪問看護と訪問リハビリには介護保険優先の原則が適用されますので留意しておきましょう。

訪問看護ステーションにおけるリハビリテーションの今後

これまで訪問看護ステーションにおける理学療法士等による訪問看護の割合が増加傾向にあることから、訪問看護におけるリハビリの提供の目的や他の介護サービスとの役割分担の観点から議論が行われています。

2021年度の介護報酬改定では、理学療法士等の訪問看護の単位数が引き下げられましたが、2024年度の介護報酬改定では、単位数が引き上げられる予定となっています。

また、基本報酬以外にも「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の訪問回数が看護職員の訪問回数を超えている場合又は特定の加算を算定していない場合の減算」の創設や「利用を開始した日の属する月から起算して12月を超えた期間に介護予防訪問看護を行った場合の減算」の見直しが行われる予定となっています。

このように、訪問看護ステーションの理学療法士等のサービスの提供実態から今後もルールや単位数の変更が行われる可能性がありますので、動向を注視していく必要があるでしょう。

まとめ

訪問看護ステーションが提供するリハビリと訪問リハビリとの違い、併用の有無について解説しました。訪問看護でリハビリを提供する場合は医療保険、介護保険それぞれにおいて訪問回数の上限があることに留意しましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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