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訪問看護ステーションの廃業率は意外と高い?潰れる原因と対策を徹底解説!

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訪問看護ステーションの廃業率は意外と高い?潰れる原因と対策を徹底解説!
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

日本では年々高齢化が加速し、在宅療養が必要な高齢者が増加しています。自宅での療養生活を支える訪問看護の需要が高まる中で、訪問看護ステーションの新規開業数は増加傾向にあります。近年では営利法人の参入も増えており、「訪問看護ステーションの経営をしてみたい!」と思う方も増えているのではないでしょうか。

地域に根差し、社会貢献をすることが利益につながる非常にやりがいのある事業である一方で、経営破綻に陥り開業後に廃業に追い込まれてしまう事業所も少なくありません。

「開業を考えているけど失敗しないか心配・・」「経営がうまくいっているところは何をしているの?」など、誰かにアドバイスを聞きたいという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、訪問看護ステーションの廃業率や廃業の原因、そして対策について詳しく説明しています。

訪問看護ステーションの廃業率は?

高齢化が急速に進む中、厚生労働省は”住み慣れた地域で必要な医療・介護サービスを受けつつ、安心して自分らしい生活を実現できる社会”を目指し、 2025年の地域包括ケアシステムの実現に向け在宅療養を進める方針を示しています。
その中でも訪問看護事業については、療養者の医療・介護ケアを支える重要な役割を担っています。

一般社団法人全国訪問看護事業協会が実施した令和4年度訪問看護ステーション数調査によると、訪問看護ステーションの数は14,304ヶ所まで増えており、前年と比較して1,301ヶ所増え、伸び率は10%となっています。これは約十年前の2011年の伸び率3.3%と比較すると、急成長している事業といえます。
(参考:令和4年度 訪問看護ステーション数 調査結果|一般社団法人全国訪問看護事業協会

今後もさらに需要が高まり、新規開設数は増えていくでしょう。
その一方で、経営が破綻し廃業している事業所も存在します。

先ほどの調査結果によると、2021年期初の訪問看護ステーション数は全部で13,003ヶ所で、このうち廃業した訪問看護ステーション数は490ヶ所でした。この結果から、2021年度の廃業率は約3.8%となっています。地域別にみると、東京都の廃業率は3.4%、大阪府の廃業率は5.4%と開業地域によって廃業率も大きく変わっていることがわかります。

これは関連事業や日本全体のビジネスと比較するとどうなのでしょうか。
まず医療や福祉、介護等の事業と比較すると、2020年における医療福祉事業全体の廃業率は2.24%なので、訪問看護ステーションは医療福祉事業の中でも廃業率が高いと言えるでしょう。
(参考:雇用保険事業年報 令和3年度

さらに広い視点で比較してみましょう。中小企業白書によると、2020年における日本国内の中小企業全体の廃業率は3.3%なので、日本全体の事業と比べた場合にも訪問看護ステーションの廃業率は高いことがわかります。
(参考:中小企業白書2022|経済産業省

訪問看護ステーションの廃業・閉鎖の主な原因は?

廃業率が比較的高い訪問看護事業ですが、廃業や閉鎖に至ってしまう原因はどこにあるのでしょうか。開業地域や開業のタイミングなど、各事業所によって様々な理由が考えられますが、多くに共通することとして4つの原因が考えられます。

1.人材確保がうまくいかない

訪問看護ステーションの人員に関する基準において、看護職員は常勤換算で2.5人以上を雇用し、このうち1名は常勤であることが定められています。

このように訪問看護事業においては看護師の採用が必須であることがわかりますが、採用活動は誰にでも簡単にできるものなのでしょうか?
残念ながら、「とりあえず求人広告を出そう」といった考えではすぐに採用することは難しいと考えてください。

なぜなら、国内の看護師の数は常に不足しているからです。
看護師の有効求人倍率を見てみましょう。厚生労働省の職業別労働市場関係指標によると、2023年1月の看護職(助産師、保健師を含む)の求人募集は105,430人に対して、求職者数は約42,623人です。このデータから、看護職の有効求人倍率は2.47となります。この数値が1以上であれば需要が供給を上回る「人手不足」となるので、看護業界は大幅な人手不足と言えます。
(参考:職業別労働市場関係指標|厚生労働省

さらに焦点を絞り、看護業界全体から訪問看護に属する看護師は一体どの程度存在するのでしょうか。
厚労省の調査によると、2020年の就業看護師128万人のうち訪問看護ステーションに就業しているのは 62,157人です。
(参考:令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省

数ある看護師の仕事の選択肢の中で、訪問看護を選ぶ看護師は全体の4.9%しか存在しないということになります。
いかに訪問看護事業で看護師を採用することが大変か、ということが理解いただけたかと思います。
看護師の多くが就業先として選ぶ病院やクリニックなどと比較すると、採用にかけられる資金や知名度が大きく異なるため、どのような訪問看護ステーションでも採用活動は悩みの種かもしれません。

2.稼働率が低い

訪問看護事業の収益は、主に介護保険や医療保険が適用された訪問サービスの利用料です。利用者から自己負担額として一部徴収し、そして残りは国民健康保険団体連合会(通称:国保連)や社会保険診療報酬支払基金に請求を行い、報酬を得ることによって成り立っています。

看護師が訪問を1件行うと、介護報酬や診療報酬によって変動はありますが8000円程度の単価になります。1日当たりの訪問件数が多ければ、それに応じて売上が増えていく構造です。いかに訪問を実施する稼働率を高くすることができるかが売上を伸ばす重要なポイントになります。

そして、すべての訪問看護ステーションに共通することは、”利用者数の変動は頻繁に起きる”ということです。
療養されている方の看護を行うという特性上、自宅での療養が困難になり病院に入院するケースや、病気の進行によりお看取りを行うこともあるでしょう。
特に気温が低下し体調の変化が起きやすい冬は、訪問看護の利用者数の変化も著しい季節と言えます。
利用者数が減ることで訪問の稼働率が下がり、事業所の売上減少につながります。

このように、訪問看護ステーションの稼働率はさまざまな要因で変化します。稼働率が低い状態を改善することができなければ、従業員の給与を確保することができず資金が底をつき、結果として廃業になってしまう場合もあるでしょう。

3.余計なコストの削減に取り組めていない

訪問看護ステーションの開業に合わせて、デスクやパソコン、プリンターなどといったオフィス関連用品や、アルコールやマスクといった衛生用品など、消耗品を用意する必要があります。
このように訪問看護業務に必要な環境を整えることにも費用がかかることでしょう。特に衛生用品は清潔なケアの提供に欠かせないものですが、必要以上に消費してしまうと毎月のコストは上がってしまいます。

また、毎月の人件費には基本給以外に残業時間に応じた残業代がコストとして発生していきます。訪問看護の事業は看護を提供することだけが業務ではありません。看護記録や計画書、報告書などの書類作成を訪問後にステーションに帰って行うことで残業に繋がったり、請求業務の際に記録と実績の確認を手作業で行っていたりすると、請求時期に残業時間が増えてしまうことに繋がるでしょう。

消耗品のコストが余計にかかっている状況や、残業を減らすための対策がとれないまま経営を続けると費用がかさむ一方で赤字経営に陥り、最終的には事業の継続が困難になってしまうケースもあります。

4.開業資金の計画が不十分

最小限の規模で訪問看護ステーションを開業する場合でも、設備にかかる資金と開業後の運転資金を合わせた開業費用は少なくとも1,000万円ほど必要と言われています。
「これくらい資金があれば十分だ、しばらくは余裕をもって運営できるだろう」とお思いの方もいるかもしれませんが、あれよあれよと資金が底をついてしまう場合もあります。

例えば開業地域に見合っていない開業資金しか調達できなかった場合です。東京や大阪などの都市部に開業する場合、訪問看護ステーションを設置する物件の賃料は地方に比べ格段に上がります。

想定していた訪問件数が十分に確保できなかった場合、賃料の支払いが経営を逼迫する可能性は十分にあります。また、開業前の人件費計算にも注意が必要です。
開業後しばらくは赤字経営が続くことが多いので、開業資金から人件費を捻出します。黒字経営になり、人件費が毎月の利益から賄える状況になるまでは開業資金が頼りの綱です。
何か月分の人件費を開業資金として用意するべきかという計算を楽観的に見積もった場合、想定以上に赤字の期間が続いた結果として開業資金が底をついてしまった、という事態になりかねません。

潰れる訪問看護ステーションによくある傾向

経営をする中で、さまざまな事象に遭遇することもあるでしょう。問題が起きた際には解決方法を模索しなければなりませんが、解決ができず廃業に陥りやすいステーションの傾向の一例をご紹介します。

  • 制度改定による収支の悪化を改善できない
    介護報酬や診療報酬の改定により、算定する報酬の増減で収支に大きな影響を受ける事業所もありますが、このような変化に対応ができない場合、訪問看護ステーションの経営は難しいと言えます。

  • 独自の強みや特徴に欠け、近隣の事業所との市場競争に負けてしまう
    開業地域に競合する事業所が存在しても、独自の強みがあれば地域に評価してもらえることでしょう。一方で「ターミナルケアへの対応」や「精神科看護の対応」など、独自の強みがなく「いつどのような利用者を紹介していいのか」「信頼できるステーションなのか?」と思われてしまうと、利用者数を増加させていくことは難しいでしょう。

  • 人材が定着せず、離職率が高い
    採用した看護師が事業所を辞めるということは、さまざまな理由や背景で起こりうることがす。しかし、個人の都合ではなく事業所の業務負担や職場環境の悪さなど、ストレスに感じることがあると離職は連鎖して起こることもあり、経営に大きな影響を与えかねません。従業員の働く環境や、思いに配慮できない経営者からは人が去っていくことも少なくないでしょう。

以上のような状態に陥らないよう、開業前に経営の知識をつけることや、不足の事態に対応できる方法を学んでいきましょう。

廃業・閉鎖に追い込まれないための対策とは?

1.リスクを考慮した事業計画を立て、資金を十分に用意する

開業後にはさまざまなリスクが起こりうることを念頭に資金調達をしましょう。

例えば職員の採用に想定以上の経費がかかることも考えられます。知人をあたって採用したい人数を確保できれば理想的ですが、想定より採用者が確保できなかった場合は人材紹介サービスを使うことになるでしょう。この場合、採用が確定すると手数料として70万円~100万円程度かかることがあります。採用にかける費用は、このような可能性も見据えて確保することが無難でしょう。

また、最近では物価高や光熱費の値上げによるコスト増もよく聞かれる問題です。計画していた時期と開業後に大幅な単価の違いがある場合、軌道修正が必要になるでしょう。

ランニングコスト以外にも、自然災害で建物や設備などが壊れてしまった、感染症流行による利用者の急激な減少といったさまざまなリスク予測をしながら、資金計画を立てるときは、「もしも・・」の事態を想定し必要な金額を考えておくことが大切です。

2.「ずっと働きたい」と思える職場に!採用活動・職場の環境改善に手を抜かない

開業当初から一緒に事業を支えるメンバーである看護師は、あなたの思いに共感してくれる方を選ぶとよいでしょう。同じ思いの方が集まると、スタッフ同士の折り合いが悪くなることや、不和が起きにくくなることにつながります。

時間的余裕がないからといって、少々不安要素がある候補者を採用してしまうと業務中のトラブルにつながったり、周りのスタッフの士気も下がってしまい人材流出が止まらない状態になりかねません。採用の基準は明確に持っておくとよいでしょう。

また、いつも職場環境に目を光らせることも大切です。開業時に決めた業務ルールが看護師のスタッフにとっては働きにくいと感じることも出てくるかもしれません。「ストレスだと思うことはある?」など率直にスタッフに聞くことや、その内容をもとに環境やルールを変えてよりよい訪問看護ステーションに育てていくことを忘れずに、健康的な経営を目指しましょう。

3.地域での人脈を広げ、信頼してもらえる訪問看護ステーションにする

ステーションの訪問スケジュールに空きが出てきたら、すぐに居宅介護支援事業所や医療機関に受け入れができる時間帯を伝える体制を整えましょう。そのためには、開業する場所の近くにある居宅介護支援事業所のケアマネジャーとの関係性構築が必要不可欠です。

関係性を構築するためには挨拶に伺い、自身の訪問看護ステーションの強みや、どのような看護師が在籍するのかなどを伝えておくとよいでしょう。ケアマネジャーが訪問看護を依頼したい際に連絡がとれるよう、名刺は必ず用意して挨拶に向かいましょう。

近隣のクリニックの医師や、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)や地域包括支援センターにも同様に挨拶と情報提供をしましょう。特に医師は多忙な場合が多いので、事前に訪問日時の打診をして予定を確保しておくとよいでしょう。

実際に訪問看護を提供しながら試行錯誤をする過程で、周囲の評判が出てくるはずです。焦らず、丁寧な訪問看護の提供に努めていきましょう。次第にあなたのステーションが提供している看護の成果が周囲のケアマネジャーやクリニックから「信頼をおけるステーション」と評価されていくことでしょう。地域や社会貢献の気持ちを忘れずに事業経営をすることが訪問看護事業にとっては最も大切なことかもしれません。

4.業務の効率化を行い残業を減らしてコストカット

残業時間をできる限り削減することが事業経営においても働き方の改善においても非常に大切です。
訪問スケジュールは、移動時間をできるだけ短縮した訪問シフトを組むよう心がけてみましょう。

また、看護記録や請求業務、オンコール対応の際に余計な時間がかかりすぎてはいないでしょうか?紙の看護記録の場合、手書きでの作成自体に時間がかかり、報告書の作成時は紙の記録から転記する必要があるでしょう。

請求の時期になると紙の記録をもとに実績を確認する業務が必要になります。オンコールの際に利用者から電話を受け訪問が必要になった場合にはステーションに一度向かい、紙の記録を確認して利用者の療養状況や看護内容を確認してから利用者宅に向かわねばなりません。これでは残業時間はみるみるうちに増えていくことでしょう。

最近では新規開業する訪問看護ステーションの多くが電子カルテを導入しています。タブレットで看護記録を記入できる電子カルテもあるので、訪問前後の記録が簡単です。また、請求業務の際の実績確認も、電子カルテを使えば紙の記録用紙を確認する作業が不要なため、大幅に時間を短縮できることでしょう。

各利用者へのケア内容や看護サマリーもタブレット上でいつでもどこでも確認でき、オンコール当番の担当者はステーションに行かずとも自宅ですぐに利用者の情報を把握できるので、急遽訪問が必要になった際の移動コストや時間も大幅に削減できます。

業務効率化を進め、経営状況を改善することも重要な対策です。

まとめ

訪問看護ステーションの廃業率や廃業の原因、そして閉鎖に至らないための対策について解説しました。

開業をお考えの方で廃業に対して漠然とした不安をお持ちの方は、この記事を参考にリスクや不安要素を書き出しながら、開業計画や資金計画を立ててみてください。

少しでもこの記事がお役に立てば幸いです。

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