精神科訪問看護の計画書、 看護記録Ⅰ・Ⅱや報告書の書き方と記入例
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この記事は2024年度診療報酬改定時の情報をもとに執筆しています
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部
看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。
目次
精神科訪問看護の指示がある患者さんに対して看護を行う場合には、通常の訪問看護と同じく「看護サマリ」、「訪問看護計画書」、「訪問看護記録」、「訪問看護報告書」の記録・保管が必要になります。
ただし、計画書・看護記録・報告書についてはそれぞれ書式が異なり、厚生労働省が記載事項を定めています。
「通常の看護記録と何が違うの?」「精神科訪問看護の記録を初めて書いたけど、この書き方でいいの・・?」といった疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では精神科訪問看護の計画書・看護記録・報告書が通常の書式と異なる点、そして書き方や記入例を詳しく解説します。
精神科訪問看護の看護記録や計画書、報告書の書き方は通常と異なるの?
精神科訪問看護を実施する際に必要な計画書や看護記録、報告書と通常の訪問看護の記録類の書式は異なっており、厚生労働省が示す各書類の様式も、通常の訪問看護と精神科訪問看護で違う様式が公表されています。
精神科訪問看護用の計画書や報告書、看護記録の書式を見ると、通常の訪問看護の書式にはないGAF尺度を記載する項目や、要介護度の記載の代わりに詳細な日常生活について記載する項目、家族に関する項目、身体面の情報やリハビリテーションの経過の代わりに精神状態と日常生活の様子、家族やキーパーソンとの関係について詳しく記載するような項目が設けられているという点で違いがあります。
2024年度(令和6年度)の改正による変更点
2024年の報酬改定で、精神科訪問看護計画書の項目の一つにある「問題点・解決策」が、「療養上の課題・支援内容」に変更となりました。この変更を踏まえ、「在宅で生活をするにあたって何が課題なのか」、「課題に対してどのような支援内容を提供すべきか」という視点で計画を立て、支援内容を記載するようにしましょう。
(参考: 訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて/訪問看護計画書等の記載要領等について )
GAF尺度とは?
GAF尺度とは、「Global Assessment of Functioning Scale」の略称で、日本名では「機能の全体的評定尺度」といい、精神科医療において広く用いられる尺度です。患者さんの日常生活機能の全体像を把握するために活用されています。
GAF尺度は1点〜100点満点の10段階で評価され、得点が高い場合は精神的な症状が軽度で日常生活の能力が高く、得点が低い場合は精神的な症状が重度で日常生活の能力が低いことを示します。
このスコアを用いて、患者さんの精神健康状態と社会生活における能力という2つの側面から現在の療養状況を総合的に評価することができます。
厚生労働省がGAF尺度の各段階に合わせたスコアの説明をしているので、参考にしてみてください。
(参考:問16 機能の全体的評定(GAF)尺度|厚生労働省)
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精神科訪問看護計画書の書き方
精神科訪問看護計画書(別紙様式3)は、利用者やご家族にとってわかりやすい表現で記載するように心がけましょう。
利用者の基本情報
通常の訪問看護計画書と同様に、利用者の氏名、生年月日、住所など基本的な情報を記載します。
看護の目標
訪問看護を受けることでどのような状態になることを目指すかを記載します。主治医の訪問看護指示の内容を参照し、訪問時に利用者やご家族の願いや意見を聞き取った上で目標設定を行うように心がけましょう。
年月日/療養上の課題・支援内容/評価
看護の目標に沿って療養上の課題と支援内容を挙げていきます。それぞれの項目について説明します。
「年月日」は、初回作成の場合は最初に看護計画を作成した日付を記入してください。一番最初は初回訪問日になります。次回以降に看護計画の見直しを行う場合は月初の日付を記入します。
「療養上の課題・支援内容」の項目には、看護の目標に合わせた療養上の課題と、課題に対する支援内容を記載します。
療養上の課題が複数ある時は、一つ目を「#1〇〇〇のリスクがある」、二つ目を「#2〇〇の恐れがある」というように記載し、#1と#2の支援内容の間に線を引いて区別したり、電子カルテの場合には療養上の課題ごとにそれぞれ支援内容を記入したりするなど、工夫して記載しましょう。
「評価」については、初回の計画書作成の際は記載不要です。次回の計画書作成時以降は立案した看護問題に対する現状の評価を行い、立案したプランを継続するかどうかについて記入するようにしましょう。
衛生材料等が必要な処置の有無/処置の内容/衛生材料等/必要量
ガーゼ、絆創膏、ロールフィルムなど、衛生材料が必要な処置がある場合には「有」に丸をつけ、ない場合には「無」に丸をつけます。
「有」の場合には、「処置の内容」にどのような処置をするかを記載し、「衛生材料等(種類・サイズ)」には材料名とS・M・Lなどのサイズ名、「必要量」には1回の処置に必要な枚数などを記入します。
訪問予定の職種
訪問を行う予定の職種や、その職種が訪問する日程について記載します。訪問する職種が看護職員のみの場合には、この項目は空白でも構いません。
備考
訪問に際して、特別な管理などが必要な場合、他の医療・福祉サービスの利用がある場合、留意すべき事項がある場合には、その内容を記載します。
精神科訪問看護計画書の記入例
実際に書き方を参考にした記入例を示します。
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精神科 訪問看護記録書Ⅰ(フェイスシート)の書き方
精神科訪問看護記録書Ⅰ(参考様式3)については、通常の訪問看護記録と異なっている項目について書き方の詳細を解説します。
主な介護者又はキーパーソン
通常の訪問看護記録書Ⅰでは介護者の記載のみでしたが、精神科訪問看護記録書Ⅰでは介護者が存在する場合には、介護者の情報を、介護者が存在しない場合はキーパーソンを記載します。
日常生活等の状況
この項目では日常生活の各分野における援助について「要・否」のどちらかに〇を付けます。また、特記事項がある場合には「備考」欄に記入しましょう。
精神科 訪問看護記録書Ⅰの記入例
実際に書き方を参考にした記入例を示します。
精神科 訪問看護記録書Ⅱの書き方
精神科訪問看護記録書Ⅱ(参考様式4)は、通常の訪問看護記録書Ⅱと違う点が多くあります。基本的な情報記入項目以外で利用者の状況を記載する際には、SOAP形式で記載するとよいでしょう。
利用者氏名/看護師等氏名/訪問職種/訪問年月日
利用者氏名を記入し、当日訪問を担当した看護師の情報を記載します。訪問年月日は訪問開始時刻と終了時刻を記載するので、訪問の際は忘れずに時刻を確認するようにしましょう。
訪問先
「自宅」「障害福祉サービスを行う施設」「福祉ホーム」のうち、実際に訪問した場所を〇で選びましょう。
食生活、清潔、排泄、睡眠、生活リズム、部屋の整頓等
通常の訪問看護記録Ⅱでは「利用者の状態(病状)」の項目がありますが、精神科訪問看護記録書Ⅱでは、代わりに日常生活のさまざまな動作について記載する欄が設けられています。
この項目では、食生活/清潔/排泄/睡眠/生活リズム/部屋の整頓等の日常生活に関する6項目について利用者の状況や、看護に対する反応などを記載し、それに対する評価や今後のプランを記載します。
精神状態/服薬等の状況/作業、対人関係について
精神疾患に関する状況や、看護に対する反応について各項目に記載し、それに対する評価や今後のプランを記載します。可能な範囲で利用者本人に聞き取るか、ご家族から情報を聞き取って参考にするとよいでしょう。
実施した看護内容
訪問時に行った看護内容について箇条書きで記載します。「服薬セット」や「服薬カレンダー指導」など、実施内容を記載しましょう。
備考
上記項目以外に気になった点があれば記載します。
GAF
月の初回訪問時に評価を行い、GAF尺度を判定し、スコアを記載します。
次回の訪問予定日
予定されている次回の訪問看護の日程、開始予定時刻を記載します。
精神科 訪問看護記録書Ⅱの記入例
実際に書き方を参考にした記入例を示します。
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精神科訪問看護報告書の書き方
精神科訪問看護報告書は、月初の訪問日におけるGAF尺度のスコアを記載します。主治医との連携関係を図るためにも毎月提出することが望ましいとされていますが、月に1回しか指定訪問看護を提供していない場合には、精神科訪問看護記録書Ⅱのコピーを報告書として使用してよいとされています。
利用者氏名/生年月日/要介護認定の状況/住所
利用者の基本情報を記入します。
訪問日
指定訪問看護を実施した日付を記入します。カレンダーの箇所には、保健師・看護師。准看護師の訪問日は「〇」、作業療法士による訪問日を「◇」、精神科特別訪問看護指示書に基づく訪問日は「△」で囲みます。
また、1日に2回以上訪問した日は「◎」で、長時間精神科訪問看護加算を算定した日は「□」で囲みます。30分未満の訪問を実施した場合には、「✓」マークを日付につけるようにします。
病状の経過
利用者の精神疾患の病状経過や、精神状態に伴う日常生活能力の変化について記載します。
看護の内容
実施した訪問看護の内容について具体的に記載します。
家族等との関係
利用者とご家族との関係性や、利用者と利用者の友人との対人関係の状況について記載します。
衛生材料等の使用料および使用状況
看護計画書に記載した衛生材料等の内容に変更の必要がある場合は「有」に〇を、変更の必要がない場合は「無」に〇をつけてください。また、「有」の場合は、具体的な変更事項(サイズ、種類、量など)を変更内容の欄に記載します。
情報提供
訪問看護情報提供療養費の算定に関する情報を提供した場合は、情報提供先と情報提供日を記載します。
「訪問看護情報提供療養費1」については精神障害を有する方やその家族の方から同意を得たうえで自治体や保健所、精神保健福祉センターなどへ情報提供を行った場合に算定が可能となります。
特筆すべき事項
これまでの記載項目以外に、主治医に共有すべき伝達事項があれば記載します。そのほか、頻回に訪問を実施した場合にはその理由や看護内容についても記載しましょう。
GAF
月初の訪問看護実施時のGAF尺度のスコアと、判定日の日付を記載します。
精神科 訪問看護報告書の記入例
実際に書き方を参考にした記入例を示します。
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精神科訪問看護の帳票を効率よく作成する方法とは
計画書・看護記録・報告書と、精神科訪問看護において帳票記録や管理をする書類は多く、記載方法によっては多くの時間を消費してしまう業務の一つです。
特に、すべての帳票を紙に手書きで作成したり、ExcelやWordで作成している場合には、看護内容やバイタル数値など同じ内容を何度も転記する手間がかかります。また、担当看護師によって書き方や看護計画の立て方がバラバラになり、看護の質にばらつきが起こる可能性もあります。
精神科訪問看護の帳票作成業務を効率化をしたいとお考えの方には、電子カルテの帳票作成機能を使って記録を作成する方法がおすすめです。
精神科の帳票に対応したテンプレートを使うことができるだけでなく、看護問題や解決策、評価内容を定型文として登録することができるので、都度入力する時間を削減できます。ステーションのスタッフ全体で使いやすく効率化できる記録方法を選択し、その方法を全員が習得できる環境を整えることが大切です。
まとめ
精神科訪問看護において必要な帳票である精神科訪問看護計画書・報告書・看護記録の書き方と記入例について解説しました。精神科訪問看護の場合は、頻回訪問をした場合の記録対応や、GAF尺度の判定など通常の訪問看護と異なる記録があるので、注意しましょう。
この記事が精神科訪問看護記録の記入方法を知りたい方にとって少しでも参考になれば幸いです。
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