精神科訪問看護ステーションの立ち上げ・開設・起業までの流れを解説!
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株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部
看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。
目次
訪問看護ステーションの開業を考えている皆様は、どのようなコンセプトをもった事業所にするのか悩み、その候補のひとつとして、『精神科に特化した訪問看護ステーション』に興味を持ったのではないでしょうか?
この記事では、精神科訪問看護ステーションの立ち上げ・起業するまでの流れと、精神科に特化するメリット・デメリットなどをご紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
精神科訪問看護ステーションとは?
精神科訪問看護とは、うつ病や統合失調症などの精神疾患と診断された方や心のケアが必要な方の自宅を訪問し、看護を行うことで日常生活のサポートをするサービスです。
利用者の症状や状況によって提供するサービス内容は異なりますが、バイタルサインの測定やコミュニケーションを通じて病状の観察を行ったり、服薬の管理や日常生活の援助など多岐にわたります。
また、利用者本人だけでなく、ご家族への支援や主治医・セラピストなどへの連絡・調整なども大切な仕事の一つです。
精神科訪問看護ステーションはどれくらい利益がでるの?儲かるの?
精神科に特化した訪問看護ステーションの利益・利益率の平均などは公表されていません。
そのため、どれくらい利益がでるのか、儲かるのか、というのは、そのステーションの利用者数や職員数などによって異なります。
ただし、厚生労働省の「令和4年度介護事業経営概況調査結果」によると、令和3年度の介護保険の訪問看護事業所は平均収支差率(税引後・コロナ補助金含む)が『7.1%』となっていて、精神科訪問看護の基本報酬が同等かそれ以上に設定されていることから、黒字になっているステーションが十分にあることが予測されます。
精神科訪問看護サービスを提供した場合に請求する報酬は「精神科訪問看護基本療養費」であり、職種・訪問回数・提供時間によって以下のように区分されています。
精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)
同一建物居住者以外の利用者に対して、精神科訪問看護サービスを提供した場合に算定する療養費です。
サービス提供者
(職種) |
訪問日数(回数) | 提供時間 | 費用 |
保健師・看護師・
作業療法士 |
週3日まで | 30分以上 | 5,550円 |
---|---|---|---|
30分未満 | 4,250円 | ||
週4日以上 | 30分以上 | 6,550円 | |
30分未満 | 5,100円 | ||
准看護師 | 週3日まで | 30分以上 | 5,050円 |
30分未満 | 3,870円 | ||
週4日以上 | 30分以上 | 6,050円 | |
30分未満 | 4,720円 |
精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)
同一建物居住者の利用者に対して、精神科訪問看護サービスを提供した場合に算定する療養費です。
同一日に2人までか、3人以上かによって費用が変わってきます。
同一日に2人までの場合は精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)の費用と同額です。
サービス提供者
(職種) |
訪問日数(回数) | 提供時間 | 費用 |
保健師・看護師・
作業療法士 |
週3日まで | 30分以上 | 2,780円 |
---|---|---|---|
30分未満 | 2,130円 | ||
週4日以上 | 30分以上 | 3,280円 | |
30分未満 | 2,550円 | ||
准看護師 | 週3日まで | 30分以上 | 2,530円 |
30分未満 | 1,940円 | ||
週4日以上 | 30分以上 | 3,030円 | |
30分未満 | 2,360円 |
精神科訪問看護基本療養費(Ⅳ)
入院患者のうち、厚生労働大臣が定める状態の利用者に対して、精神科訪問看護サービスを提供した場合に算定する療養費です。
原則入院中1回限りですが、特定の場合は入院中に2回まで算定が可能です。
同一日に訪問看護管理療養費の算定ができません。
また、特別地域訪問看護加算以外の加算は算定できません。
サービス提供者(職種) | 費用 |
保健師・看護師・作業療法士・准看護師 | 8,500円 |
精神科に特化した訪問看護ステーションを立ち上げ・開業するメリットとデメリット
精神科に特化した訪問看護ステーションを開業する方の中には、精神科での勤務経験を活かして「精神科に特化した訪問看護を立ち上げたい!」という方も多いのではないでしょうか。
ですが、精神科訪問看護に特化して開業するということは、メリットもデメリットもありますので、開業後に方針を転換しないためにもメリットとデメリットを把握しておきましょう。
精神科に特化した訪問看護ステーションを立ち上げ・開業するメリットは?
競合が少ないため、ニーズがある地域においてはスムーズに利用者を獲得できる。
精神疾患により医療機関を受診する方は増加傾向にあるため、今後もニーズが増える可能性がある。
精神病床での平均在院日数は短縮傾向にあるため、在宅ケアのニーズが増える可能性がある。
事業所のコンセプトが明確なため、営業活動や採用活動に事業所の特色を出しやすい。
精神科に特化した訪問看護ステーションを立ち上げ・開業するデメリットは?
利用者が精神疾患の方に限定されてしまうため、地域における利用者数の増減の影響を受けやすい。
ニーズが少ない地域や他に精神科訪問看護がある場合、利用者の獲得に苦労する可能性がある。
精神科の経験がある看護師等を採用することが難しい。
精神科の経験がない看護師等を採用した場合、精神科訪問看護に関する研修の受講費用がかかる。
起業して精神科訪問看護ステーションを立ち上げ・開設するまでの流れ
1.法人設立
訪問看護ステーションは、個人事業主では開業ができないため、法人を設立する必要があります。法人格には色々な種類がありますが、訪問看護ステーションの開業では、多くの方が合同会社や株式会社を選択しています。また、既に法人を経営していて、新規事業として訪問看護ステーションを開業する場合は、定款の変更を行うことになります。
法人設立の手続きは、経営者ご自身で行うことも可能ですが、定款の作成やその他必要書類の作成など煩雑なため、司法書士など専門家に依頼するという方法もあります。
2.事務所の契約
精神科訪問看護ステーションの事務所として使用する物件を契約することになります。訪問看護ステーションは、介護保険法・健康保険法等に事業者として満たさなくてはいけない基準が定められています。物件を契約する際は、指定基準を満たせる物件なのかを確認してから契約しましょう。
3.従業員の採用
人員に関しても、介護保険法・健康保険法等に基準が定められています。
訪問看護ステーションでは、「管理者1名」、「看護職員2.5名以上」を満たすように従業員を採用します。
看護職員の採用は、採用活動を始めて採用できるまでに2〜3か月ほどを要すると言われていますので、知り合い等で採用が確定している人以外は、期間に余裕をもって採用活動を行うようにしましょう。
また、精神科に特化した訪問看護ステーションで、精神科の未経験者を採用する場合には、精神科訪問看護に関する研修を受講してもらうことになるので、早めの採用活動を心掛けましょう。
4.備品等の調達
訪問看護ステーションとして、運営していくためには、机・椅子、コピー機、パソコン、書庫、衛生用品、エアコンなどの備品やインターネット回線、電話回線などの通信環境を手配しなくてはいけません。特にインターネット回線や電話回線は、工事が混雑する時期だと開通するまでに時間がかかってしまうケースもあるので注意しましょう。
訪問看護ステーションでは、看護職員が直行直帰できる体制を整えたいと思っている事業者も多く、電子カルテのシステムとタブレット・スマホの導入が進んでいます。
5.指定申請
指定申請とは、訪問看護事業を行うにあたって指定権者(都道府県・厚生局)から「事業者としての指定(許可)」を受けるための申請のことです。
指定申請では、申請書と添付書類等を準備し、指定日(開業日)に対して定められている提出期日までに提出します。
また、精神科訪問看護を行う場合は、厚生局への精神科訪問看護基本療養費に係る届出書が必要になりますので、忘れないように注意しましょう。
6.事業開始
指定申請の結果、無事に指定通知書が届くと、その指定日から訪問看護ステーションの事業開始となります。
精神科訪問看護ステーションを開業するためにフランチャイズに加盟するメリットとデメリット
精神科に特化した訪問看護ステーションを開業するにあたって、開業やその後の運営に不安がある場合、フランチャイズに加盟して開業するという方法もあります。
フランチャイズの加盟には、メリットとデメリットがありますので、詳しく見ていきましょう。
フランチャイズに加盟するメリット
開業準備におけるサポート体制が充実している
法人設立や指定申請など開業までに作成・用意しなければいけない書類はたくさんあります。フランチャイズに加盟することで、作成方法や記載内容に迷った時にアドバイスを受けることができ、場合によっては書類作成・提出を代行してもらえるケースもあります。
経営のアドバイスが受けられる
フランチャイズの本部は、その事業に関する経営のノウハウが蓄積されているため、経営についての計画策定、KPIの設定、予実管理、経営改善のアドバイスなどを受けることができます。また、人材の育成や研修までサポートしているケースもあります。
フランチャイズに加盟するデメリット
加盟金やロイヤリティが発生する
通常、フランチャイズでは、加盟する際の加盟金と月々のロイヤリティの支払義務が発生します。開業の準備段階では、物件・設備・備品の調達費用、人材の求人広告費や紹介手数料などもかかるので、なるべく支出を抑えたいところです。
また、開業直後は利用者が確保できていないため、売上が少ない状態が数か月は続くでしょう。フランチャイズに加盟した場合は、このように支出を抑えたいタイミングでも加盟料やロイヤリティを支払わなくてはいけないため、負担がかかることがデメリットとなります。また、ロイヤリティは、事業を運営する限り支払い続けなくてはいけない契約もあるので、注意しましょう。
自由な経営を行うことが難しい
フランチャイズに加盟すると、フランチャイズの意思や意向を尊重し、事業を運営することになるので、経営者がやりたいことを実現できない可能性があります。
例えば、「私が理想とするサービスを提供したい」という考えから開業する方も多いと思いますが、フランチャイズでサービスの提供方針やマニュアルが定められている場合、考えていたようなサービスの提供・経営ができない可能性があります。
カイポケの開業支援サービスを使って開業するのがおススメ!
開業に不安を感じている方には、フランチャイズに加盟する以外にも、『カイポケ開業支援サービス』をおススメしています。
カイポケ開業支援サービスでは、新しく開業を希望している方に対して「法人設立」や「設備導入」「指定申請」など包括的にサポートをしています。各士業とも提携してサービス提供をしているので、安心して手続きなどを進めていただけるようになっています!
訪問看護向けの電子カルテ・請求ソフトである『カイポケ訪問看護』を導入いただくと、カイポケ会員価格で各種サービスを利用できるので、ぜひこの機会にお問い合わせください。
まとめ
精神科訪問看護ステーションを立ち上げ・起業・開業するまでの流れと、精神科に特化するメリット・デメリットなどをお伝えしてきました。
精神科に特化することで、事業所のコンセプトが明確になり、従業員や利用者獲得に役立つ一方で、対象となる利用者を限定することで地域の中のサービスの充足状況やニーズの不足などによるデメリットもあります。ここでご紹介した内容も踏まえ、事業計画書を作成し、『ビジネスとして成り立つのか?』を確認しましょう。
訪問看護ステーションの開業では、商圏調査、法人設立手続き、採用活動、指定申請など経営者の方の負担はとても大きいです。カイポケ訪問看護では、『開業支援』を行っておりますので、開業について不安や疑問がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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