訪問看護ステーションの看護記録書Ⅰ・Ⅱの書き方、記入例と様式
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株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部
看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。
目次
訪問看護では、病棟での看護と同様に、ケアを提供した利用者に対する看護記録を記載します。ただし、様式や内容は病棟の看護とは異なります。
これから訪問看護ステーションで働き始める方は、「訪問看護ステーションではどのような看護記録を作成しなければいけないの?」とお思いの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、訪問看護の看護記録の記入例と様式についてわかりやすく解説します。
訪問看護を行うにあたって必要な看護記録とは?
ご利用者の自宅に訪問看護を行った際には、看護記録として必要な事項を書面または書面に準じるもの(パソコンでの訪問看護記録等)に、記載しなければなりません。
訪問看護ステーションで作成する看護記録の種類
訪問看護サービスの提供にあたり作成しなくてはいけない書類として、「訪問看護記録書Ⅰ」と「訪問看護記録書Ⅱ」がありますので、それぞれの書類について概要を説明します。
訪問看護記録書Ⅰ(フェイスシート)
訪問看護記録書Ⅰは、利用者の氏名、年齢といった基本情報や、主治医や家族の情報、緊急連絡先等について記入する看護記録です。フェイスシートと呼ばれている場合もあります。
訪問看護記録書Ⅰは、訪問看護を提供するために必要となる利用者の基本情報をまとめるために、初回訪問時に作成します。訪問の都度更新する必要はありませんが、利用者の状態や療養・介護の状況などが変わった場合には更新します。
訪問看護記録書Ⅱ
訪問看護記録書Ⅱは、利用者の病状やバイタルサイン、提供した看護内容など、具体的な看護内容や利用者の状況について記入する看護記録です。
訪問看護記録書Ⅱは、訪問看護を実施した日の利用者の状態・状況、どのような看護を行ったのか、看護を行った後の利用者の様子など、訪問時の内容を記入するため、看護職員やリハビリ担当職員が訪問する度に毎回作成する必要があります。
訪問看護ステーションで看護記録を作成する目的
訪問看護ステーションで看護記録を作成する目的は3つあります。
まず、ご利用者およびサービスを提供する側が、サービスの利用状況を把握・記録しておくために作成します。
次に、提供日、提供した具体的サービス内容、身体の状態などを記録して、事業所内での情報共有と連携をスムーズに行うため、また、他事業所との密接な連携を図るために作成します。
最後は、介護保険、医療保険の保険給付を請求するために、記録物として作成、保管が求められているため、作成します。数年に1度所轄官庁の運営指導(実地指導)や監査などがあり、記録がないとサービスを提供したことを証明できないため、指導の対象となってしまいます。
訪問看護記録書Ⅰの書き方と記入例
訪問看護記録書Ⅰの各項目の記入方法について、厚生労働省が公開している訪問看護記録書Ⅰの様式に基づき、各項目の書き方・記入例をご紹介します。
利用者氏名/生年月日
利用者の基本情報として、氏名・生年月日を記入します。
記入例
氏名:介護太郎
生年月日:昭和31年10月2日 67歳
住所/電話番号
利用者宅の住所や連絡がとれる利用者の電話番号を記入します。
記入例
住所:111-1111東京都XX区XX町1-1
電話番号:03-0000-0000
看護師等氏名・訪問職種
訪問者の職員の氏名と、職員の職種をそれぞれ記入します。
記入例
看護師等氏名:訪看花子
訪問職種:看護師
初回訪問年月日
訪問した日と、実際に訪問を行った開始時間と終了時間を正しく記入します。
記入例
2023年4月10日(月)10時00分~11時00分
主たる傷病名
訪問看護指示書に記載されている内容と同じ傷病名を記入します。
記入例
高血圧、心不全、認知症、胃癌
現病歴
現在の病状経過や、服薬情報などの治療内容について記入します。
記入例
胃癌の再発があり、緩和ケア目的・疼痛コントロールのため訪問看護介入。現在はPCAを使用し疼痛管理を行なっている。心不全もあり、SpO2低下が見られ現在は在宅酸素2L使用し呼吸状態安定。在宅での看取りを家族は希望している。
既往歴
これまでに罹患したことがある疾患や現病歴の発症時期について記載します。
記入例
52歳高血圧、63歳心不全、64歳認知症・胃癌(幽門側胃切除術後)
療養状況
主たる傷病に対してどのような療養生活を送っているかについて記入します。
記入例
妻が主に介護しており、内服の管理、食事の準備などは夫が行なっている
介護状況
主な介護者や介護者の病気に関する理解の程度や、主な介護者以外の介護者の情報についても記入します。
記入例
主な介護者は妻であり、理解力良好。娘(長女)が隣町に住んでおり1週間に4〜5回程度訪問して、介護を手伝っている。
生活歴
利用者の仕事の状況や日常生活の過ごし方について記入します。
記入例
55歳の時に事務職を退職し、無職。将棋が趣味。
家族構成
利用者の家族に関する情報(氏名、年齢、職業、連絡先)を記入します。
記入例
氏名:介護キヨコ
年齢:65歳
続柄:妻
職業:無職
連絡先:080-0000-0000
主な介護者
主たる介護者の続柄を記入します。
記入例
妻
住環境
利用者の現在の住まいの環境について記入します。
記入例
2階建ての一軒家に住む。1階にキッチン、リビング、風呂、トイレがある。元々2階に寝室があったが、現在はリビングにベッドを配置している。
訪問看護の依頼目的
訪問看護を導入する目的として支援をする内容について記入します。
記入例
リハビリテーション、服薬支援、健康状況の観察、介護者の支援
要介護認定の状況
要介護認定を受けている場合は、認定内容を記入します。
記入例
要介護2
ADLの状況
移動、食事、排泄、入浴、着替え、整容、意思疎通の各項目においてADLのレベルを記入します。
記入例
移動:一部介助
食事:一部介助
排泄:一部介助
入浴:全面介助
着替:一部介助
整容:一部介助
意思疎通:一部介助
日常生活自立度
訪問看護指示書に記載されている寝たきり度、認知症の状況を記入します。
記入例
寝たきり度:B-2
認知症の状況:Ⅱb
主治医等
主治医に関する情報(医療機関名、主治医名、医療機関の所在地、連絡先)
記入例
医療機関名:カイポケクリニック
主治医:医療太郎
所在地:東京都XX区XX町55-5
TEL/FAX:03-5555-5555/03-6666-6666
緊急時の主治医・家族等の連絡先
利用者に急変が起きた場合など、緊急時に連絡がとれる主治医や家族の連絡先を記載します。
記入例
主治医(医療太郎先生):03-5555-5555
妻(田中キヨコ):080-0000-0000
指定居宅介護支援事業所、相談支援事業所等の連絡先
担当ケアマネジャー等の連絡先を記入します。
記入例
事業所名:カイポケ居宅介護事業所
ケアマネジャー氏名:ケア花子
所在地:東京都XX区XX町77-7
TEL/FAX:03-7777-7777/03-8888-8888
関係機関
主治医やケアマネジャー以外に関係する機関がある場合は、関係機関名や担当者氏名、連絡先を記入します。ない場合は記入不要です。
保健・福祉サービス等の利用状況
訪問看護以外の保健・福祉サービスの利用がある場合には記入します。
記入例
短期入所、福祉用具貸与
訪問看護記録書Ⅱの書き方と記入例
訪問看護記録書Ⅱの各項目の記入方法について、厚生労働省が示す訪問看護計画書等の記載要領等についての参考様式2をもとに説明します。なお、訪問看護記録Ⅰと重複する記入例は割愛します。
利用者氏名
利用者の氏名をフルネームで記入します。必要に応じてフリガナ等を記入しましょう。
看護師等氏名・訪問職種
訪問を担当する職員の氏名と、職員の職種をそれぞれ記入します。
訪問年月日
訪問した日と、実際に訪問を行った開始時間と終了時間を正しく記入します。
利用者の状態(病状)
訪問日の利用者の状態について、バイタルサイン等の測定結果を記入します。
また、利用者の具体的な療養状況や今後の支援方法に関するアセスメントについては、主観的情報(S)・客観的情報(O)・アセスメント(A)・今後の計画(P)に分けて記入します。
記入例
体温:36.6度
血圧:148/82mmHg
脈拍:84回/分 不整無し
呼吸数:12回/分
S:昨日は調子良かったんだけど今朝はなんか痛みが強くて。
O:左下腹部に疼痛あり。ペインスケール8/10であり、左下腹部を抑えている様子あり。10時23分にボーラス投与1回実施後はペインスケール3/10まで改善。
A:胃癌の進行による疼痛がある。疼痛がある際、もしくは活動を行う前にボーラス投与を行い疼痛のコントロールを行う必要がある。
P:プラン継続。旦那様へボーラスのタイミングを伝える。
実施した看護・リハビリテーションの内容
訪問時に行ったケアの内容を簡潔に記入します。
記入例
看護:バイタルサイン測定を含む状態観察、服薬支援、疼痛コントロール支援、家族への服薬管理・疼痛時の指導
その他
看護やリハビリテーション以外に実施した内容があれば記入します。なければ記入不要です。
備考
看護やリハビリテーション時に、特別な配慮をすべき内容等があれば記入します。なければ記入不要です。
次回の訪問予定日
次回の訪問日時を記入します。
記入例
2023年4月17日(月)10時00分~
まとめ
訪問看護記録書Ⅰ、訪問看護記録書Ⅱの書き方を記入例と合わせて具体的に解説しました。訪問看護記録書Ⅰについては、初回訪問時に必要な情報を収集する必要があるので事前にどのような流れで利用者や家族に質問をすべきか、看護指示書を参考に焦点を絞って準備するとよいでしょう。
また、訪問看護記録書Ⅱについては、訪問の際に都度記入を行うため、フィジカルアセスメントの観察内容や利用者、家族の発言内容や様子を踏まえて在宅療養が継続できるかどうか総合的に評価し、必要に応じて看護内容やリハビリテーションの内容について変更すべきかどうかを記載するようにしましょう。その内容を踏まえて、医師やケアマネジャーと今後の支援内容について相談することになります。
この記事が訪問看護記録書の作成でお困りの方にとって少しでも参考になれば幸いです。
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