訪問看護の自立支援医療とは?制度の概要や自己負担額を解説!
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この記事は2024年度診療報酬改定時の情報をもとに執筆しています
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部
看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。
目次
訪問看護ステーションのレセプト業務では、自立支援医療について制度が複雑なため、迷ってしまうケースも多いのではないでしょうか。この記事では、自立支援医療の概要、訪問看護での自立支援医療機関になるための指定申請方法や自立支援医療の利用者の請求方法について詳しく解説します。
自立支援医療とは?
自立支援医療とは、精神疾患や身体障害を持つ方を対象に医療費の自己負担を軽減する制度のことです。特定の精神疾患や身体障害に該当する方は、各市町村の窓口で申請をすると、自立支援医療受給者証と自己負担額管理票が届き、指定された医療機関において使うことができます。
自立支援医療の種類
自立支援医療には精神通院医療、更生医療、育成医療の3種類があり、それぞれの対象者は以下の通りです。
精神通院医療
統合失調症などの精神疾患のある方で、通院による治療を継続的に必要とし、長期にわたり日常生活・社会生活への制約がある方
更生医療
18歳以上の身体障害者手帳の交付を受けた方で、医療を行うことで身体の機能障害の軽減・改善など、治療効果が期待できる方
育成医療
18歳未満の児童で、身体に障害があるか、治療を行わなければ障害が残ると認められる疾患があり、かつ確実な治療効果が期待できる方
自立支援医療の対象となる医療機関等
自立支援医療の対象となる医療機関等は、指定自立支援医療機関として指定を受けた『病院・診療所』、『薬局』、『訪問看護ステーション』となります。
自立支援医療の対象者に提供する訪問看護の内容とは?
訪問看護において自立支援医療が適用するのは『精神通院医療』が中心になるので、ここでは精神通院医療について説明します。
自立支援医療(精神通院医療)の対象者
自立支援医療(精神通院医療)の対象者は、以下の状態の方です。
統合失調症
うつ病、躁うつ病などの気分障害
不安障害
薬物などの精神作用物質による急性中毒又はその依存症
知的障害
強迫性人格障害など「精神病質」
てんかん など
自立支援医療(精神通院医療)の利用者に提供する訪問看護とは
では、訪問看護ステーションでは、自立支援医療(精神通院医療)の利用者にどのようなサービスを提供するのでしょうか。
自立支援
掃除や洗濯、食事など生活を送るうえでのセルフケアについて、相談やアドバイスを行います。症状の悪化防止・回復のために服薬管理やストレスとの付き合い方など精神的な自立支援も合わせて行います。
社会参加支援
就労継続支援事業所などと連携して就労を目指すサポートや社会生活への適応の支援などを行います。
精神科訪問看護の利用者の場合、指示書の交付は必要?
精神訪問看護の利用者の場合には、精神科訪問看護指示書の交付が必要です。精神科訪問看護指示書は、精神科を担当する医師によって交付されます。
精神科訪問看護の利用者を訪問できる回数
精神科訪問看護では、訪問できる回数は原則週3回までとされており、利用時間は1回30分程度となっています。
(参考:訪問看護業務の手引 令和6年6月版p.68)
訪問看護ステーションが自立支援医療の指定を受けるためには?
訪問看護ステーションにおいて、自立支援医療の利用者を受け入れるためには指定自立支援医療機関としての指定を受ける必要があります。
指定申請は、事業所の所在する都道府県知事に対して手続きを進めます。例えば東京都の場合、下記のような第15様式を東京都福祉局へ提出します。開業時期に合わせて申請をするのを忘れないようにしましょう。
自立支援医療の利用者に対する請求業務
ここでは、自立支援医療の利用者に対する請求業務について説明します。
①公費情報を確認する
利用者の自立支援医療受給者証と自己負担額管理表を確認します。そして、記載されている情報を訪問看護療養費明細書に転記します。
自立支援医療受給者証とは
自立支援医療受給者証とは、公費負担者番号や月額自己負担上限額、有効期限などが記載された書類です。
自己負担額管理票とは
自己負担額管理票とは、1ヶ月の自己負担額が上限額を超えることがないように指定の医療機関で使用した金額を記入する書類です。
②公費の計算方法を確認する
自立支援医療制度の計算方法を確認しましょう。まずは自己負担限度額についてです。
自己負担額は世帯の所得に応じて設定されている
自立支援医療の場合、医療費の自己負担は原則1割負担ですが、世帯の所得と疾病の状態に応じて上限額が設定されています。疾病の状態とは「重度かつ継続」に該当するかどうかで決まります。
一定所得以下の自己負担額表は以下の通りです。
生活保護世帯 | 市町村民税非課税/本人収入80万円以下 | 市町村民税非課税/本人収入80万円超 | |
「高額治療継続者(重度かつ継続)」の分類なし | 自己負担額0円 | 1割負担かつ 上限月額2,500円 |
1割負担かつ 上限月額5,000円 |
中間所得層から一定所得以上の自己負担額表は以下の通りです。
市町村民税(所得割)33,000円未満 | 市町村民税(所得割)33,000円以上235,000円未満 | 市町村民税(所得割)235,000円以上 | |
「重度かつ継続」非該当 | 1割負担 | 1割負担 | 制度対象外 |
「重度かつ継続」該当 | 1割負担かつ 月の上限額5,000円 |
1割負担かつ 月の上限額10,000円 |
1割負担かつ 月の上限額20,000円 |
(参考:訪問看護業務の手引 令和6年6月版p.189 )
「重度かつ継続」とは
「重度かつ継続」とは継続的に治療を必要とし、高額の医療費負担が発生する者を指し、該当する場合、経済的負担の軽減のため、月ごとの自己負担額に上限が設けられます。以下のいずれかに当てはまる場合、「重度かつ継続」が該当になります。
-
健康保険から支給される高額療養費が、「多数該当」(1年間に4回以上高額療養費に該当)している世帯
-
主たる精神障害が、国際疾病分類ICD-10コードにおいて次の分類に該当する方
- ・F0 症状性を含む器質性精神障害(認知症などの脳機能障害)
- ・F1 精神作用物質使用による精神及び行動の障害(依存症など)
- ・F2 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
- ・F3 気分障害(躁うつ病、うつ病など)
- ・G40 てんかん
-
3年以上の精神医療の経験を有する医師により、以下の症状を示す精神障害のため計画的集中的な通院医療 (状態の維持、悪化予防のための医療を含む)を継続的に要すると診断された方として、認定を受けた方
- ・情動及び行動の障害
- ・不安及び不穏状態
負担上限月額の経過的特例
自立支援医療の「重度かつ継続の一定所得以上」及び「育成医療の中間所得」の区分については、令和6年3月31日までの経過的特例とされていましたが、令和9年3月31日まで延長されることになっています。
経過的特例の内容は以下のとおりです。
「重度かつ継続の一定所得以上」:市町村民税23万5千円以上の方で重度かつ継続に該当する方について、自立支援医療制度の対象とした上で、自己負担上限額を2万円とする措置。
「育成医療の中間所得」:中間所得1(市町村民税課税以上3万3千円未満)の方の自己負担上限額を5千円に、中間所得2(市町村民税3万3千円以上23万5千円未満)の方の自己負担上限額を1万円とする措置。
(引用:自立支援医療の経過的特例について|厚生労働省)
訪問看護療養費明細書の公費の記載箇所
訪問看護療養費明細書の記載箇所は以下の赤囲み部分になります。
「保険者番号又は公費負担者番号」に公費負担者番号を記入
「記号・番号又は公費負担者番号」に公費受給者番号を記入
「一部負担金額」欄には、訪問看護ステーションが利用者に請求する金額(保険請求と公費請求を除いた金額)を記入
(参考:「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について|厚生労働省p.312)
※公費の請求・記載方法は各自治体によって異なるため各自治体のサイトをご確認ください。
自立支援医療の利用者をミスなくレセプト請求できるのは「カイポケ訪問看護」
カイポケ訪問看護なら公費情報の登録をしておくことで自動で自己負担額がレセプトに反映されるのでミスなく請求ができます。
まとめ
自立支援医療の概要、訪問看護での自立支援医療機関になるための指定申請方法や自立支援医療の利用者の請求方法について解説しました。
訪問看護と障害福祉サービスの併用や障害者の医療費助成制度とステーションの手続きについて気になるという方は、ぜひ資料をダウンロードしてご確認ください。
この記事でお伝えした内容が精神科訪問看護ステーションの開業を検討する方やレセプト業務を行う方にとって少しでも参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
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