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【2024年度改定対応】精神科訪問看護指示書とは?訪問看護指示書との違いや受け取る際の注意点を解説

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2024年度診療報酬改定時の情報をもとに執筆しています

【2024年度改定対応】精神科訪問看護指示書とは?訪問看護指示書との違いや受け取る際の注意点を解説
とあるコメディカル トコル

とあるコメディカル トコル

理学療法士として病院、訪問看護ステーションで勤務した経験を活かし、訪問看護計画書や報告書等の帳票記載例を多数掲載する「とあるコメディカル」を運営。訪問看護の帳票記載例をまとめた冊子は累計販売2,500冊を突破している。

目次

精神科訪問看護療養費や精神科訪問看護の加算を算定する場合、「精神科訪問看護指示書」の交付が必要とされています。

本記事では、精神科訪問看護指示書の概要や、通常の訪問看護指示書との違い、そして訪問看護ステーションが指示書を受け取る際に注意すべきポイントを詳しく解説します。

また医師に指示書の交付を依頼する際に使える、2024年度改定に対応した精神科訪問看護指示書のテンプレート(エクセル形式)もご用意していますので、ぜひご活用ください。

精神科訪問看護指示書とは?

精神科訪問看護指示書は、在宅で生活をしている何らかの精神疾患を抱えた方に対して訪問看護を提供する際に、主治医から訪問看護ステーションに交付をする書類を指します。

指示書には、利用者の基本情報や現在の状態および状況、訪問看護を提供するにあたって留意すべき点などが記載されており、訪問看護ステーションはこの指示内容に応じたサービスを提供することとなります。

また、精神科訪問看護指示書が発行された際の訪問看護は、医療保険が適用となります。

通常の訪問看護指示書との違い

精神科訪問看護指示書は、通常の訪問看護指示書とは異なる点があるので注意が必要です。

主な違いは以下の通りです。

  1. 算定する療養費が異なる

  2. 指示書の交付を依頼できる医師が異なる

  3. 指示書の様式が異なる

  4. 精神科訪問看護指示書が交付されると、介護保険より医療保険の適用が優先される

①算定する療養費が異なる

精神科訪問看護指示書と通常の訪問看護指示書では、以下のように算定する療養費が異なります。

訪問看護指示書の種類 算定する訪問看護療養費
通常の訪問看護指示書 訪問看護基本療養費(Ⅰ)
訪問看護基本療養費(Ⅱ)
訪問看護基本療養費(Ⅲ)
精神科訪問看護指示書 精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)
精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)
精神科訪問看護基本療養費(Ⅳ)

ちなみに、精神科訪問看護指示書と通常の訪問看護指示書は併用することができず、どちらか一方の指示書しか交付を受けることができないため注意が必要です。

②指示書の交付を依頼できる医師が異なる

通常の訪問看護指示書は利用者の主治医であれば交付することが可能ですが、精神科訪問看護指示書は、精神科を標榜する医療機関において、精神科を担当する医師に限り交付することが可能です。

「どの診療科の医師でも交付できるわけではない」ということを覚えておきましょう。

③指示書の様式が異なる

通常の訪問看護指示書と精神科訪問看護指示書では、指示書の内容(様式)も異なります。

特に「現在の状況」と「留意事項」の項目は大きく異なり、精神科訪問看護指示書には病名告知や複数名訪問の必要性といった、精神疾患ならではの項目が含まれています。精神科訪問看護の指示書の交付を依頼する際に医師から指示書の雛形を依頼された場合は、「精神科訪問看護指示書」の雛形を提供するようにしましょう。

また、訪問看護を提供するにあたって詳細の指示を記してもらう必要がある場合は、事前に医師に伝えるようにしましょう。

  精神科訪問看護指示書 通常の指示書
現在の状況 病状・治療状況
投与中の薬剤の用量・用法
病名告知
治療の受け入れ
複数名訪問の必要性
短時間訪問の必要性
複数回訪問の必要性
日常生活自立度
病状・治療状態
投与中の薬剤の用量・用法
日常生活自立度
要介護認定の状況
褥瘡の深さ
装着・医療医療機器等
留意事項
及び指示事項
生活リズムの確立
家事能力、社会技能等の獲得
対人関係の改善(家族含む)
社会資源活用の支援
薬物療法継続への援助
身体合併症の発症・悪化の防止
その他
療養生活上の留意事項
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が行う訪問看護褥瘡の処置等
装置・使用医療機器等の操作援助・管理
その他
その他項目 主治医との情報交換の手段 他の訪問看護ステーションへの指示
たんの吸引等実施のための訪問介護事業所への指示

厚生労働省の精神科訪問看護指示書様式

精神科訪問看護指示書は、厚生労働省が以下の様式を示しています。各項目など、記載すべき内容が明示されていれば独自のフォーマットを使用しても問題はないと言われています。

2024年度の報酬改定では、同年6月からレセプトのオンライン請求が開始されることを踏まえて「傷病名コード」が追加されています。独自のフォーマットを使用する際は、報酬改定に対応した様式に更新できているかどうか確認しましょう。

精神科訪問看護指示書
画像引用:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知),令和6年3月5日保医発0305第4号,p39|厚生労働省

④精神科訪問看護指示書が交付されると、介護保険より医療保険の適用が優先される

通常の訪問看護指示書は疾患や利用者の状態などにより適用となる保険が異なりますが、精神科訪問看護指示書は、要介護認定を受けている利用者においても、交付された段階で医療保険が優先されます。

ちなみに、精神疾患と混同しやすい認知症ですが、認知症が主傷病である場合は精神科訪問看護指示書ではなく通常の訪問看護指示書の対象となるため、介護保険が適用となります。

(参考:老老発0327第1号,保医発0327第8号「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に 関連する事項等について」の一部改正について ,p4|厚生労働省

精神科訪問看護指示書を受け取る際にチェックすべき注意点

ここからは、精神科訪問看護指示書を受け取る際にチェックすべき点や注意点について解説していきます。

①指示期間は有効か

訪問看護指示書の指示期間は1ヶ月〜最長6ヶ月と決められています。その期間内の中で、利用者の状況などに応じて主治医が期間を設定します。

しかし、実際には6ヶ月を超えた指示を設定している場合も多々あり、その場合は無効になってしまいます。実はトラブルが多い箇所となっているので注意が必要です。

注意すべき記載例

記載例 備考
令和6年4月1日〜令和6年9月30日 6ヶ月で設定されている
× 令和6年4月1日〜令和6年10月1日 6ヶ月を超えている

②精神科訪問看護が対象となる病名(傷病名)が記載されているか

主たる傷病名の項目には、利用者の主病名が記載されています。精神科訪問看護指示書の場合、この主たる傷病名は精神科訪問看護が対象となる病名(傷病名)でなければなりません。前述の通り、認知症の場合は通常の訪問看護指示書の対象となるため注意が必要です。

また、2024年度の報酬改定で傷病名コードの記載も必要とされることとなりました。傷病名に応じたコードが記載されているのか確認をしましょう。

傷病名コードは、厚生労働省の「傷病名マスター検索」を活用すると良いでしょう。

注意すべき記載例

記載例 備考
躁うつ病 精神科訪問看護の対象
× 認知症 通常の訪問看護の対象

③複数名での訪問について記載されているか

複数名訪問とは、職員が単独(1名)で訪問するのではなく、複数名(2名以上)で訪問することを指します。

複数名訪問が必要かどうかは、以下のような判断基準があります。

  • 暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる者

  • 利用者の身体的理由により一人の看護師等による訪問看護が困難と認められる者

  • 利用者及びその家族それぞれへの支援が必要な者

その他、医師が複数名での訪問が必要と判断をすれば複数名で訪問することができます。その場合は、「複数名訪問の必要性」部分の理由の「4.その他」に、複数名が必要な理由を記載してもらう必要があります。

④短時間訪問の必要性について記載されているか

精神科訪問看護は、1回あたりの訪問時間が30分以上と定められています。しかし、精神疾患を有する利用者にとっては、短時間での訪問の方が適するケースもあります。この際、短時間訪問の必要性が「あり」の指示書を交付してもらうことで、短時間(30分未満)の訪問が可能となります。

⑤リハビリが必要である場合、その旨が記載されているか

精神科訪問看護指示書が交付されている利用者においても、リハビリが介入するケースがあります。精神科訪問看護指示書が交付されている利用者にリハビリを行う場合、作業療法士によるリハビリの提供に限られている(※)ので注意が必要です。
(※)理学療法士・言語聴覚士によるリハビリの提供はできません。

精神科訪問看護指示書には、通常の訪問看護指示書のようにリハビリに関する項目はなく、指示の記載義務はないとされています。しかし、トラブルを避けるためにも、「精神訪問看護に関する留意事項及び指示事項」の項目に、介入の必要性と簡単な指示は記載してもらうのが良いでしょう。

記載例

項目 記載例
「2 家事能力、社会技能等の獲得」 簡単な調理ができるよう作業療法士による支援が必要。
「6 身体合併症の発症・悪化の防止」 引きこもりがちのため、廃用症候群の悪化が懸念される。
作業療法士による身体機能向上を目指した支援が必要。

精神科訪問看護指示書の記載例

精神科訪問看護指示書を受け取る際にチェックすべき点や注意点を踏まえた記載例を以下に示します。

精神科訪問看護指示書の記載例

そのほかの記載例を知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

*精神科訪問看護指示書の書き方を完全解説!【記載例多数】 | とあるコメディカル

精神科訪問看護指示書のテンプレート(エクセル)を無料でダウンロード

2024年度診療報酬改定に対応している「精神科訪問看護指示書」のテンプレートを無料でダウンロードいただけます。以下よりダウンロードしてご活用ください。

まとめ

精神科訪問看護指示書の概要と種類、記載内容に関する注意点と記載例について解説しました。精神科訪問看護を必要としている利用者に適切なケアを提供できるよう、主治医と連携を行い、指示書を交付してもらいましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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