訪問看護計画書の書き方と記入例!5つの注意ポイントも紹介【とあるコメディカル監修】
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この記事は2024年度介護報酬改定と2024年度診療報酬改定時の情報をもとに執筆しています
とあるコメディカル トコル
理学療法士として病院、訪問看護ステーションで勤務した経験を活かし、訪問看護計画書や報告書等の帳票記載例を多数掲載する「とあるコメディカル」を運営。訪問看護の帳票記載例をまとめた冊子は累計販売2,500冊を突破している。
目次
訪問看護では、「訪問看護計画書」「訪問看護記録書Ⅰ・Ⅱ」「訪問看護報告書」の作成が必須となっています。中でも「訪問看護計画書」は、作成を始めて行う方にとっては記載ルールが難しく、『各項目をどのように記載したらいいのか分からない・・・』と感じる方が多いのではないでしょうか?
そこで今回は、訪問看護計画書の基本的な知識と書き方で注意すべき5つのポイント、そして計画書の記入方法や記入例について詳しく解説していきます。
訪問看護計画書とは?
訪問看護計画書とは、訪問看護の利用者に提供する療養支援やケアの内容を記載する書類です。利用者や家族の状況をアセスメントし、当月における訪問看護の目標や療養上の課題、具体的な支援内容を記します。
訪問看護計画書のルールとして、『①主治医が作成する訪問看護指示書とケアマネジャーが作成するケアプランに沿って計画を立てること』、『②作成した計画書の内容を利用者や家族に説明し同意を得ること』の2つを覚えておくと良いでしょう。
訪問看護計画書はいつ作成する?
訪問看護計画書は、訪問看護サービスを提供する前に作成します。
訪問看護の利用について問い合わせや依頼を受けたら、訪問看護指示書やケアプラン等から情報収集することと並行し、利用者やその家族と接し実際の様子や本人の意見等の情報を得たうえで訪問看護計画書を作成する、といった流れになります。
また、作成した訪問看護計画書は、サービスの提供を開始する前に利用者に説明し、同意を得る必要があります。
訪問看護計画書はいつ更新する?
訪問看護計画書の更新については、以下のような場合に更新が必要です。
利用者の状況に変化があった場合
指示書に内容変更があった場合
ケアプランが変更になった場合
など
一般的には、他職種との連携を図るため月1回は内容の見直しを行い、必要に応じて更新するステーションが多いようです。
訪問看護計画書はいつ、どこに提出する?
訪問看護計画書は、主治医に提出することと、利用者もしくは家族に配布することが運営基準で定められています。
また、主治医に提出する頻度については「定期的に提出すること」と定められているものの、明確な頻度は定められていません。そのため、更新する頻度に合わせて月1回は主治医に提出しているステーションが多いようです。
(参考:訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて|厚生労働省/指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準|厚生労働省)
訪問看護計画書の書き方
ここでは、実際の訪問看護計画書の様式をもとに、訪問看護計画書の各項目ごとに書き方をご紹介します。
介護保険の訪問看護計画書と、医療保険の訪問看護計画書は様式に一部異なる箇所があるため、それぞれの様式に沿って解説していきます。
【介護保険】訪問看護計画書
ここでは、実際の訪問看護計画書の様式をもとに、介護保険の訪問看護計画書の項目を①~⑦に分けて書き方をご紹介します。
① 利用者の基本情報
利用者の氏名
利用者の氏名を記入します。
生年月日
利用者の生年月日を記入します。
要介護認定の状況
利用者の要介護(支援)度を記入します。
住所
利用者の住所を記入します。
②看護・リハビリテーションの目標
訪問看護の提供を通じて、「利用者が今後どのようになることを目指すか」を記載します。
主治医の訪問看護指示書やケアプランの内容を参考に、利用者や家族の希望と療養状況を踏まえて実現可能な目標を設定しましょう。
看護・リハビリテーションの目標例
嚥下機能の向上を図り、誤嚥性肺炎を起こすことなく在宅生活が継続できる
褥瘡が発生することなく、安全に家で過ごすことができる
家族付き添いのもと、自宅近くのスーパーまで買い物に行くことができる
車椅子に座って食事摂取ができるようになる
自宅で出来る治療を行いながら、苦痛を伴うことなく穏やかに在宅生活を続けることができる
③療養上の課題・支援内容/評価
年月日
訪問看護計画書を作成した年月日、または計画の見直しを行った年月日を記入します。
療養上の課題・支援内容
看護・リハビリテーションの目標を踏まえて、訪問看護サービスを提供する上での療養上の課題を具体的に記入します。 また、課題に対する支援内容を具体的に記入します。
2024年の報酬改定で「問題点」から「療養上の課題」に項目名が変更となりました。一見すると同じようなニュアンスに見えますが、今後はより「在宅で生活をするにあたって何が課題なのか」という視点で計画を立てる必要があります。
例えば、身体的な問題点(例:麻痺など)があったとしても、在宅で生活する上での課題になっていなければ(例:介護の妨げになっていないなど)、優先度は低くなるでしょう。
そのため、表面上に見える問題点を列挙するのではなく、在宅で生活をする上での課題を、身体面、認知面、家族関係などを統合して作成することが求められます。そしてそれら課題に対する支援内容を立案するようにしましょう。
(参考: 訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて/訪問看護計画書等の記載要領等について )
療養上の課題と支援内容の記載方法
療養上の課題は複数ある場合、「#1」、「#2」とナンバリングを行って立案しましょう。また、支援内容は、【観察】、【ケア】の2つで分類して記載するパターンもあれば、【O-P】【T-P】【E-P】というように、観察計画、ケア計画、教育計画の3つに分けて記載するパターンもあります。
記載するルールは訪問看護ステーションによって異なりますので、就業先のステーションのルールを確認して記載しましょう。
療養上の課題・支援内容の例
さきほどの「看護・リハビリテーションの目標例」から2つ、それぞれの「療養上の課題」と「支援内容」の例を以下に示します。
療養上の課題 | 支援内容 |
#1嚥下機能の低下により誤嚥性肺炎のリスクが高い状態である | 【観察】バイタルサイン、呼吸音・喀痰の状況、吸引の実施状況、血液検査データ、経口摂取の状況、胃ろう注入量、胃ろう挿入部の確認、排便状況、口腔内の状況、口腔ケア実施状況、嘔吐の有無 【ケア】胃ろう管理、口腔ケア、歯磨きと口腔内の清潔保持、呼吸リハビリテーション、童謡を歌うなど発声練習、外出後のうがい・手洗いの指導、他職種との連携、家族への介護指導(胃ろう管理・吸引)、緊急時の対応を家族に説明 |
#2脳梗塞後遺症による重度右片麻痺あり、同一部位圧迫による褥瘡発生リスクの高い状態である | 【観察】バイタルサイン、全身皮膚(特に褥瘡好発部位)の状態、清潔保持の状況、日常生活動作の状況、栄養状態、食事・水分摂取量、エアーマットの動作環境、体位交換の頻度、脳神経症状の確認 【ケア】オムツ交換・清拭などの保清、保湿剤の塗布、効果的な除圧の検討、栄養管理指導、褥瘡発生予防の指導、適切な褥瘡治療剤や保護剤の選択、福祉用具の提案、他職種との連携 |
評価の記載方法
訪問看護サービスを提供した後の評価について記入します。
評価の例
#1に対する評価
誤嚥症状出現することなく経過している。プラン継続。
#2に対する評価
定期的に体位交換できているものの、右踵部に発赤出現。ワセリン塗布で対応している。プラン継続。
④衛生材料等が必要な処置
衛生材料等が必要な処置の有無
衛生材料等が必要な処置の有無について、どちらかに丸を付けます。
処置の内容・衛生材料(種類・サイズ)等・必要量
衛生材料等が必要な処置が有の場合、その処置の内容や衛生材料の種類やサイズについて具体的に記入します。また、1ヵ月間で必要となる量を必要量の欄に記入します。
処置の内容・衛生材料・必要量の例
処置の内容 | 衛生材料(種類・サイズ) | 必要量 |
胃ろうからの注入 | ①栄養チューブ ②カテーテルチップ |
①4本/月 ②4個/月 |
⑤備考
特別な管理が必要な場合はその内容、その他の留意事項等を記入します。
⑥作成者
作成者の氏名、職種を記載します。また、訪問看護の一環としてのリハビリテーションの提供がある場合は、担当する理学療法士等の氏名、職種も記載します。
⑦事業所の署名押印
利用者へ交付する年月日、事業所名、管理者氏名を記入し、押印します。
【医療保険】訪問看護計画書
ここでは、実際の訪問看護計画書の様式をもとに、医療保険の訪問看護計画書の項目を①~⑦に分けて書き方をご紹介します。
医療保険の訪問看護計画書の項目は、介護保険の訪問看護計画書と一部項目が異なります。
「衛生材料等が必要な処置の有無」等の欄までは同様ですが、それ以降が「訪問予定の職種」、「備考」の記入欄になっています。
①~④の項目
介護保険の訪問看護計画書と同様
⑤訪問予定の職種
計画書の記載月において訪問を行う職員の職種と訪問予定日について記載します。
厚生労働省の「訪問看護計画書等の記載要領等について」によると、看護職員のみによる訪問の場合、この項目の記載は不要とのことです。
⑥備考
介護保険の訪問看護計画書の「備考」と同様
⑦事業所の署名押印
介護保険の訪問看護計画書の「事業所の署名押印」と同様
訪問看護計画書を作成する際の5つのポイント
ポイント① 医師の指示やケアプランの方針に沿う
訪問看護計画書は、利用者や家族が抱える課題に沿って計画を作成することはもちろんのこと、訪問看護指示書やケアプランの内容に沿って計画を作成する必要があります。
例えば、医師の指示で活動制限があるにもかかわらず、その指示を超えた活動を促すような計画は不適切です。また、ケアプラン上で目指す方針と異なった計画を立てることも適切ではありません。
訪問看護指示書やケアプランの内容を確認し、利用者や家族の状況をアセスメントしたうえで計画を立てましょう。
ポイント② 利用者や家族に伝わる表現を心がける
訪問看護計画書は、利用者に計画書の内容を説明し、同意を得なければならない書類です。そのため、専門職だけがわかる内容・語句で記載するのは不適切です。
利用者や家族が記載内容を理解できるように計画書を記入しましょう。
ポイント③問題解決思考、目標達成思考の両方の視点で考える
医療機関での看護を行う場合、医学モデルがベースとなった看護過程である「NANDA-I」等の看護診断を用いて計画を立案していた方が多いのではないでしょうか。これは問題解決思考でケアの対象者の課題を解決するアプローチです。
一方、訪問看護では、看護診断の概念だけでなく、生活モデルをベースとした看護過程である「国際生活機能分類(ICF)」に基づいた目標達成思考でケアの対象者の希望や願いを叶え、目標達成に向けたアプローチを行います。
ICFとは、生活機能と障害について「心身機能・身体構造」、「活動」、「参加」の3つの次元と「環境因子」、「個人因子」といった背景因子で構成される分類です。
項目 | 生活機能と障害 | 背景因子 | ||
---|---|---|---|---|
構成要素 | 心身機能・
身体構造 |
活動・参加 | 環境因子 | 個人因子 |
領域 | 心身機能
身体構造 |
生活・人生領域
(課題,行為) |
生活機能と障害への
外的影響 |
生活機能と障害への
内的影響 |
構成概念 | 心身機能の変化
(生理的) 身体構造の変化 (解剖学的) |
能力
標準的環境におる課題の遂行 実行状況 現在の環境における課題の遂行 |
物的環境や社会的環境,人々の社会的な態度による環境の特徴がもつ促進的あるいは阻害的な影響力 | 個人的な特徴の影響力 |
肯定的側面 | 機能的・構造的
統合性 |
活動
参加 |
促進因子 | 非該当 |
生活機能 | ||||
否定的側面 | 機能障害
(構造障害を含む) |
活動制限
参加制約 |
阻害因子 | 非該当 |
障害 |
このように、医学に基づいた療養支援における課題解決の視点と、生活行動に基づいた目標達成の視点の両方の視点で考え、看護の目標や療養上の課題を設定しましょう。
ポイント④課題の優先順位を決める
利用者や家族に対してアセスメントを行うと、課題が複数存在する場合があります。そのような場合は、以下のような視点を持って課題の優先度を決めると良いでしょう。
命の危機に関わる事象
在宅療養が続けられなくなる可能性のある事象
利用者の身体状態の回復、予防を阻む事象
利用者や家族が解決したいと望む事象
ポイント⑤利用者や家族の強みを活かす
問題や課題についての情報収集を行う中で、利用者や家族の「できないこと」に目がいってしまうことは多いでしょう。しかし、課題を解決するためには利用者や家族が持つ強みを活かして解決策を考えることが大切です。
様々な視点からアセスメントを行い、利用者や家族の「強み」、「できること」、「得意とすること」などを探して、計画に反映させましょう。
【介護保険】訪問看護計画書の記入例
訪問看護計画書の書き方やポイントを踏まえ、ここからは実際の記入例をご紹介します。
一例として、訪問看護計画書を記入する際の参考にしてみてください。
まとめ
提供する看護の内容の方針を記載する訪問看護計画書は、医師の指示・ケアプランの内容と利用者や家族の意向を踏まえて作成します。
作成した訪問看護計画書は、利用者や家族に渡すだけではなく、主治医やケアマネジャーにも提出することになりますので、関係者・関係機関と情報を共有するための重要な役割を持っています。ここでご紹介した記載方法・視点等を参考に、皆様のステーションでも訪問看護計画書を作成してみましょう。
今回の内容が皆様の訪問看護計画書を作成する際にお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただきありがとうございました。
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