訪問看護報告書の書き方とは?記載例と効率よく作成する方法を解説!【無料ダウンロード】
更新日:
2024年度診療報酬改定時の情報をもとに執筆しています
とあるコメディカル トコル
理学療法士として病院、訪問看護ステーションで勤務した経験を活かし、訪問看護計画書や報告書等の帳票記載例を多数掲載する「とあるコメディカル」を運営。訪問看護の帳票記載例をまとめた冊子は累計販売2,500冊を突破している。
目次
訪問看護報告書の作成は、看護師が提供した看護内容を主治医に報告するために必要とされています。
そのため、利用者の状態や提供したケアを的確に記載することが求められる一方で、「看護の内容をうまくまとめられない」「看護記録を遡って記入するのが大変・・」とお思いの方も多いのではないでしょうか?
この記事では、訪問看護報告書を作成する際のポイントや記載例を交えながら、報告書を、効率よく作成するためのコツを解説していきます。
訪問看護報告書とは?
訪問看護報告書とは、利用者の状態や実施したケアの内容、家庭での介護状況などを主治医に提出する書類を指します。訪問看護報告書には、通常の訪問看護報告書と精神科訪問看護報告書の2種類があります。
通常の訪問看護指示書が交付されている場合:通常の訪問看護報告書を作成
精神科訪問看護指示書が交付されている場合:精神科訪問看護報告書を作成
このように、交付されている訪問看護指示書の種類によって、訪問看護報告書の種類も異なるため注意が必要です。今回は通常の訪問看護報告書について解説していきます。
訪問看護報告書はなぜ作成する?
訪問看護報告書の作成が必要な理由は、主に2つあります。それぞれについて説明していきます。
①医療機関・ケアマネジャーへの情報共有を行うため
訪問看護報告書は、医療機関(主治医)やケアマネジャーと情報共有をする役割を担います。
訪問看護サービスは主治医が交付する訪問看護指示書に基づいて提供するため、訪問看護ステーション側は主治医に対して訪問看護の内容を報告する義務が生じます。
また、主治医は訪問看護報告書に記載された情報をもとに、次の訪問看護指示書の内容を検討していくため、適切なケアを実現するために重要な書類になります。
ちなみに、訪問看護報告書は主治医への提出は必須ですが、ケアマネジャーへの提出は義務付けられていません。しかし、情報共有を行う目的で、ケアマネジャーにも提出するのが望ましいとされています。
②記録による法的・業務上の証拠として重要になるため
訪問看護報告書には実施したケアの内容や利用者の状態などが詳細に記載されているため、法的・業務上の証拠としての役割を担います。
例えば、利用者や家族との間に何らかの齟齬が生じた場合でも、訪問看護報告書を作成しておくことによって、訪問看護ステーション側の事実を証明することができます。
訪問看護報告書はいつ作成する?
訪問看護報告書を作成するタイミングに関しては、特に決まりはありません。訪問看護ステーションの方針によって異なってくる部分かと思います。
ただし訪問看護報告書は、報告する期間に起きた内容を統合した文章にするのが望ましいため、月末の報告書提出の締め切り日の少し前に作成するのが良いでしょう。
毎月必ず提出が必要なの?
訪問看護報告書の提出頻度に関して、厚生労働省からは「定期的に訪問看護計画書及び訪問看護報告書を書面又は電子的な方法により主治医に提出しなければならない」と通達があるのみで、明確な頻度は定められていません。
(参考:厚生労働省「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について」)
しかし、情報共有を密に行うという観点から、月に1回提出するのが望ましいと考えます。また、月に1回しか訪問看護の提供がなかった場合は、訪問看護記録書Ⅱの複写を報告書として利用することもできます。
訪問看護報告書で使われる様式と書式は?
訪問看護報告書の様式は厚生労働省が示している
訪問看護報告書の様式は、厚生労働省から示されています(下記画像参照)。
訪問看護報告書の書式に決まりはない
厚生労働省から様式は示されていますが、内容に準じていれば書式に決まりはありません。最近は多くの訪問看護ステーションで電子カルテが導入されているため、パソコンやタブレット等で内容を入力すれば、様式に準じた訪問看護報告書が作成されるかと思います。電子カルテが導入されていない訪問看護ステーションでは、エクセルやワード等を用いて作成することもあるでしょう。
作成した訪問看護報告書は、印刷して郵送もしくは直接手渡しで主治医もしくはケアマネジャーに提出します。最近では、PDF化した訪問看護報告書をチャットツール等を用いて提出する方法も増えています。
訪問看護報告書はいつまで保管しなければいけないの?
指定訪問看護ステーションの運営基準より、訪問看護報告書を含む訪問看護の提供に関する各種記録は、2年間保管しておくよう定められています(訪問看護計画書も同様)。
(参考:指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準|厚生労働省)
そのため、2年間は事務所内やシステム内で保管しておくようにしましょう。
訪問看護報告書の記載項目と書き方、記載例
ここからは、訪問看護報告書の記載項目と書き方、そして各項目の記載例についてご紹介します。
今回は、80歳男性、膀胱留置カテーテル挿入中の方で週2回訪問看護を提供している方の訪問看護報告書を作成する、というケースを例として説明していきます。
①利用者氏名、生年月日、住所、要介護認定の状況
利用者情報として、利用者氏名(ふりがな)、生年月日、年齢、住所、要介護認定の状況を記載します。
②訪問日
訪問日には、訪問看護サービスを提供した日付を記載します。
カレンダー式になっており、訪問した日に印をつけるのですが、下記のようなルールがあるので注意が必要です。
看護師が訪問した日:◯
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問した日:◇
特別訪問看護指示書に基づく訪問看護を実施した日:△
1日に2回以上訪問した日:◎
長時間訪問看護加算を算定した日:□
③病状の経過
病状の経過には、利用者の病状の経過や日常生活動作の状況などを記載します。
記載例
体温:36.5℃、 脈拍:82回/分、血圧:136/86mmHg、SpO2:98%
(測定日:X月X日) 膀胱・直腸機能障害により膀胱留置カテーテル挿入中。尿量は1000~1500ml/日で経過。先月認めた血尿は抗凝固薬中止以降認めていない。しかし、浮遊物は多く、閉塞の危険性があるため、訪問時にミルキングと膀胱洗浄(週2回)継続している。内服は夫介助のもと飲み忘れなく飲めており、痛みやトラブルなく体調安定して経過している。今後も膀胱留置カテーテルによるトラブルがなく在宅生活が送れるよう支援継続していく。
④看護・リハビリテーションの内容
看護・リハビリテーションの内容には、実施したケア・リハビリの内容を記載します。箇条書きで簡潔に書くことをオススメします。
記載例
バイタルサイン
全身状態の観察
尿量の確認
膀胱洗浄
内服状況の確認(量/回数/残量)・管理・指導
ADL状況の確認
⑤家庭での介護の状況
家庭での介護の状況を記載します。誰が・どのように介護をしているのか、また介護者の状態は安定しているかなどを記載するようにしましょう。
記載例
キーパーソンの妻が付きっきりで介護をしている。現在は安定して介護できているが、疲労感が強い時は近くに住む娘が手伝っている。
⑥衛生材料等の使用量および使用状況
衛生材料等の使用料および使用状況には、処置などで使用した衛生材料の名称や使用量を記載します。
記載例
衛生材料等の名称:フォーリーカテーテル(14Fr)・蓄尿バッグ
使用及び交換頻度:月1回
使用量:1セット
⑦衛生材料等の種類・量の変更
現在使用している衛生材料等の種類や量を変更したい場合、または新たに衛生材料を使用したい場合は、変更の必要性の「有」に印をつけ、変更内容を記載します。
記載例
変更内容:フォーリーカテーテルを16Frに変更
⑧情報提供
訪問看護情報提供療養費に係る情報提供を行なっている場合は、情報提供先と情報提供日を記載します。
記載例
訪問看護情報提供療養費に係る情報提供先:〇〇保健所
情報提供日:20XX年X月X日
⑨特記すべき事項
特記すべき事項には、様式にある項目では記載できなかった、かつ報告する必要がある情報を記載します。例えば予定にない訪問をした場合や、急遽対応した処置などです。特記すべき事項がない場合は空欄で構いません。
記載例
X月X日:カテーテル閉塞あり緊急訪問、ミルキング実施。
⑩記載日、署名捺印
最下部には報告書を記載した日、事業所名、管理者名を記載・捺印して完成です。
実際の記入例
訪問看護報告書のテンプレートを無料でダウンロード
訪問看護報告書のテンプレートが欲しい方は、以下より無料でダウンロードが可能です。
訪問看護報告書の記入で気を付けたいポイント3つ
訪問看護報告書は、主治医に利用者の現状や変化を把握してもらうために重要な文書です。そこで、作成にあたって気を付けるべきポイントを3つご紹介します。
①長い文章を書かない!利用者の状況を簡潔に記載する
訪問看護報告書は、利用者の状況を簡潔に記載しましょう。
長い文章の方が丁寧に見えるかもしれませんが、相手のことを考えたら望ましくありません。特に訪問看護報告書を読む相手は、日々診療業務を行なっている医師です。限られた時間の中で読むことが想定できるため、伝えたい情報を簡潔に記載するようにしましょう。
②変化があったこと、なかったことを明確に記載する
訪問看護報告書を読む医師が特に知りたいのは、利用者の変化です。
変化があったことと、変化が無かったことは明確に記載するようにしましょう。
特に訪問看護は定期的に介入しているため、変化を見つけられやすい立場になります。また、変化があった場合は、いつから・どの部分に変化があったのか、訪問看護としてどのような対応をしたのかなどを簡潔に書くようにしましょう。
③看護師だからこそ得られた情報や問題点を共有する
訪問看護報告書には、看護師だからこそ得られた情報や問題点を中心に記載するようにしましょう。
例えば、日常的なバイタルサインの変化や利用者の言葉の端々に含まれる心理的なサイン、食欲や排泄状況の微妙な変化など、これは看護師が定期的に訪問し、じっくりと観察するからこそ気づくことができる情報です。このような情報を取り入れることによって、医師も状況をより把握しやすくなります。
訪問看護報告書を効率よく作成する方法とは?
訪問看護報告書の記載を行う際に、利用者の過去の看護記録を調べたり、他の看護師の記録を見に行って書き方を参考にしたりする時間を費やし、「想像以上に時間がかかってしまった・・・」という経験がある方も多いのではないでしょうか?
訪問看護報告書の作成に想定以上の時間を費やし、業務が終わらないといった事象を避けるために、効率よく作成できる方法を3点ご紹介します。
訪問看護報告書を含む帳票の作成・管理ができるソフトやツールを導入する
最近は電子カルテのソフトやツールを導入して訪問看護報告書を作成するステーションが増えています。
訪問看護報告書の作成の効率化を実現するツールの活用例を以下に示します。
訪問看護報告書作成の効率化に役立つソフト・ツールの活用例
訪問看護の記録ソフトを用いて、過去に作成した訪問看護報告書を複製し記録を作成する
生成系AI(chat gpt等)を用いて、報告書の文章を簡潔な内容に直す
タブレット等の音声入力を活用し、記録の入力時間を減らす
とあるコメディカル【premium】では、訪問看護報告書・訪問看護計画書・看護サマリーの文章を自動作成するAIチャットbotを月額1,680円で提供しています。作成して欲しい文章をAIに伝えると、希望に沿った記載例をすぐに表示してくれるサービスです。「文章作成が苦手」「もっと効率よく作成したい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
病状や看護内容の項目は雛形となる文章を事前に作成しておく
訪問看護ではある程度病状が安定している人が多いという特徴上、病状や看護内容においては、よく使われる文章(言い回し)が出てきます。そのような文章は事前に雛形として作成しておき、必要な部分のみを加筆・修正していけば効率よく作成することができます。
また、訪問看護報告書の記載例を参考にするのも効果的です。
とあるコメディカルでは、総数500例以上の訪問看護報告書の記載例を公開しているので、ぜひ参考にしてみてください。
訪問看護報告書の作成マニュアルを作る
訪問看護報告書は、訪問看護に特化した書類の一つです。そのため、訪問看護の経験がない看護師、入職したばかりの看護師は書き方に迷ってしまいます。その点、書き方についてまとめたマニュアルを作成しておくことも効果的です。
マニュアルを作成しておくことによって作成基準を示すことができるため、ステーション内で書き方を統一することもできます。
マニュアルには以下のような内容を取り入れると良いでしょう。
訪問看護報告書とは(制度や様式の決まりなど)
訪問看護報告書の作成頻度と作成期限
訪問看護報告書の作成方法(電子カルテの使い方など)
訪問看護報告書の記載例(できれば疾患別に複数)
訪問看護報告書の提出方法と提出期限など
訪問看護報告書の作成を効率化するなら『カイポケ訪問看護』
訪問看護の電子カルテ・請求ソフトの『カイポケ訪問看護』は、カルテ上で作成した訪問看護記録書Ⅱ、訪問看護計画書の記載内容を引用して訪問看護報告書を作成できるので、報告書の作成時間の短縮につながります。また、パソコンだけでなくタブレット上でも作成ができるので、訪問中や前後に記録を行うことも可能です。
訪問看護の帳票作成にお悩みの方は、ぜひ一度『カイポケ訪問看護』にご相談ください。
まとめ
訪問看護報告書の役割や作成におけるポイント、記載例などについて解説しました。
訪問看護報告書は利用者の状態やケア内容を報告する書類であり、主治医やケアマネジャーと情報共有を行う重要な役割を持っています。ここでご紹介した記載方法・視点等を参考に、皆様のステーションでも訪問看護報告書を作成してみましょう。今回の内容が皆様の訪問看護報告書を作成する際にお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。