請求知識

訪問看護の2024年度介護報酬改定

 更新日:

この記事は2024年3月時点の情報をもとに執筆しています

訪問看護の2024年度介護報酬改定
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

2024年度(令和6年度)の介護報酬改定では、『地域包括ケアシステムの推進』、『自立支援・重度化防止に向けた対応』、『良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり』、『制度の安定性・持続可能性の確保』といった人口構造や社会経済状況の変化を踏まえた視点から、本体改定率『1.59%』のプラス改定となりました。 2024年度の介護報酬改定のうち、訪問看護の改定内容について解説していきます。

訪問看護の2024年度診療報酬改定の内容について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

訪問看護の基本報酬の改定

訪問看護費・介護予防訪問看護費の基本報酬について以下のように改定が行われました。

【訪問看護】

基本部分 分類 現行 改定後 増減
訪問看護ステーションの場合

(1回につき)

20分未満 313単位 314単位 +1
30分未満 470単位 471単位 +1
30分以上1時間未満 821単位 823単位 +2
1時間以上1時間30分未満 1,125単位 1,128単位 +3
理学療法士等による訪問の場合 293単位 294単位 +1
病院または診療所

(1回につき)

20分未満 265単位 266単位 +1
30分未満 398単位 399単位 +1
30分以上1時間未満 573単位 574単位 +1
1時間以上1時間30分未満 842単位 844単位 +2
定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスと連携する場合

(1月につき)

2,954単位 2,961単位 +7

【介護予防訪問看護】

基本部分 分類 現行 改定後 増減
訪問看護ステーションの場合
(1回につき)
20分未満 302単位 303単位 +1
30分未満 450単位 451単位 +1
30分以上1時間未満 792単位 794単位 +2
1時間以上1時間30分未満 1,087単位 1,090単位 +3
理学療法士等による訪問の場合 283単位 284単位 +1
病院または診療所
(1回につき)
20分未満 255単位 256単位 +1
30分未満 381単位 382単位 +1
30分以上1時間未満 552単位 553単位 +1
1時間以上1時間30分未満 812単位 814単位 +2

訪問看護の加算・減算等の改定

加算・減算等については、以下のように加算や区分の新設、算定要件の変更等の改定が行われています。

(新設)専門管理加算

医療ニーズの高い訪問看護利用者が増える中、適切かつより質の高い訪問看護を提供する観点から、専門性の高い看護師が指定訪問看護等の実施に関する計画的な管理を行うことを評価する加算が新設されました。

専門管理加算(新設) 単位数
訪問看護 250単位/月
介護予防訪問看護 250単位/月

専門管理加算の算定要件

都道府県知事に加算の届出を提出した指定訪問看護事業所の緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門および人工膀胱ケアにかかわる専門の研修を受けた看護師または特定行為研修を修了した看護師が、訪問看護の実施に関する計画的な管理を行った場合には、所定単位数に加算する。

(参考:【参考資料1】令和6年度介護報酬改定における改定事項について,p15|厚生労働省

(新設)遠隔死亡診断補助加算

診療報酬における対応との整合性を図る観点から、離島等に居住する利用者の死亡診断についてターミナルケア加算を算定し、看護師が情報通信機器を用いて医師の死亡診断の補助を行った場合の加算が新設されました。

遠隔死亡診断補助加算(新設) 単位数
訪問看護 150単位/回

遠隔死亡診断補助加算の算定要件

情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修を受けた看護師が、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の死亡診断加算を算定する利用者(※)について、その主治医の指示に基づき、情報通信機器を用いて医師の死亡診断の補助を行った場合に算定が可能です。

※別に厚生労働大臣が定める地域に居住する利用者に限る

(新設)業務継続計画未策定減算

感染症や災害の発生時に継続的にサービス提供できる体制を構築する観点から、全介護サービスを対象に業務継続計画が未策定の場合の減算が新設されました。

ただし訪問看護については経過措置が設定され、2025年(令和7年)3月31日までの間は減算は適用されません。

業務継続計画未策定減算(新設) 単位数
訪問看護 所定単位数のー1/100
介護予防訪問看護 所定単位数のー1/100

業務継続計画未策定減算の適用要件

以下の基準に適合していない場合に減算が適用になります。

  • 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するため、あるいは非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定すること

  • 業務継続計画に従い必要な措置を講ずること

(新設)高齢者虐待防止措置未実施減算

利用者の人権の擁護、虐待の防止等をより推進する観点から、虐待の発生又はその再発を防止するための措置が講じられていない場合の減算が新設されました。

高齢者虐待防止措置未実施減算(新設) 単位数
訪問看護 所定単位数のー1/100
介護予防訪問看護 所定単位数のー1/100

高齢者虐待防止措置未実施減算の適用要件

虐待の発生又はその再発を防止するための措置(虐待の発生又はその再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めること)が講じられていない場合に減算が適用になります。

(新設)口腔連携強化加算

利用者の口腔の状態の確認を行うことで歯科専門職による適切な口腔管理の実施につなげる観点から、事業所と歯科専門職の連携の下、口腔衛生状態や口腔機能の評価を行い、歯科医療機関及び介護支援専門員への情報提供(※)を評価する加算が新設されました。

※利用者の同意を得た上で情報提供を行う

口腔連携強化加算(新設) 単位数
訪問看護 50単位/回(※)
介護予防訪問看護 50単位/回(※)

※月1回に限る

口腔連携強化加算の算定要件

  • 事業所の従業者が、口腔の健康状態の評価を実施した場合において、利用者の同意を得て、歯科医療機関及び介護支援専門員に対し、当該評価の結果を情報提供していること

  • 利用者の口腔状態の評価を行うに当たって、診療報酬の歯科点数表区分番号C000に掲げる歯科訪問診療料の算定の実績がある歯科医療機関の歯科医師または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、事業所職員からの相談等に対応する体制を確保し、その旨を文書等で取り決めていること

(新設)理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の訪問回数が看護職員の訪問回数を超えている場合又は特定の加算を算定していない場合の減算

訪問看護の役割に基づくサービスが提供されるようにする観点から、理学療法士等のサービス提供状況と加算の算定状況に応じ、理学療法士等の訪問における基本報酬の減算が新設されました。

理学療法士等の訪問回数が超過している場合等の減算 単位数
訪問看護 ー8単位/回
介護予防訪問看護 ー8単位/回

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の訪問回数が看護職員の訪問回数を超えている場合又は特定の加算を算定していない場合の減算の適用要件

以下の基準のいずれかに該当する場合、減算の適用となります。

  • 訪問看護ステーションの前年度の理学療法士、作業療法士または言語聴覚士による訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えていること。

  • 緊急時訪問看護加算、特別管理加算及び看護体制強化加算をいずれも算定していないこと。

利用を開始した日の属する月から起算して12月を超えた期間に介護予防訪問看護を行った場合の減算

訪問看護の役割に基づくサービスが提供されるようにする観点から、理学療法士等のサービス提供状況と加算の算定状況に応じ、12月を超えた場合の減算について見直しが行われました。

12月を超えて行う場合の減算 現行 改定後
介護予防訪問看護 ー5単位/回 「理学療法士等の訪問回数が超過してる場合」の減算が適用される場合:ー15単位/回
上記の減算が適用となっていない場合:ー5単位/回

緊急時訪問看護加算

訪問看護等における24時間対応体制を充実する観点から、夜間の対応を行う看護師等の勤務環境に配慮した場合を評価する区分が新設されました。

緊急時訪問看護加算 現行 改定後
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)(新設) 緊急時訪問看護加算(Ⅱ)
訪問看護
(訪問看護ステーション)
574単位/月 600単位/月 574単位/月
訪問看護
(病院又は診療所)
315単位/月 325単位/月 315単位/月
介護予防訪問看護
(訪問看護ステーション)
574単位/月 600単位/月 574単位/月
介護予防訪問看護
(病院又は診療所)
315単位/月 325単位/月 315単位/月

緊急時訪問看護加算の算定要件

緊急時訪問看護加算(Ⅰ)、緊急時訪問看護加算(Ⅱ)のそれぞれの算定要件は以下の通りです。

【緊急時訪問看護加算(Ⅰ)】

以下の基準の全てに適合すること。

  1. 利用者またはその家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制にある

  2. 緊急時訪問における看護業務の負担の軽減に寄与する十分な業務管理等の体制の整備が行われている

【緊急時訪問看護加算(Ⅱ)】

  • 緊急時訪問看護加算(Ⅰ)の1に該当するものであること。

初回加算

要介護者等のより円滑な在宅移行を訪問看護サービスとして推進する観点から、区分と算定要件、単位数について見直しが行われました。

初回加算 現行 改定後
訪問看護 300単位/月 初回加算(Ⅰ):350単位/月

初回加算(Ⅱ):300単位/月

介護予防訪問看護 300単位/月 初回加算(Ⅰ):350単位/月

初回加算(Ⅱ):300単位/月

初回加算の算定要件の変更点

これまで新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して訪問看護を行うと算定が可能となっていた初回加算に、退院当日か翌日以降に実施するかによって加算の区分が新たに設定されました。

初回加算(Ⅰ)は、新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、病院等から退院した日に初回の訪問看護を行った場合に算定が可能です。初回加算(Ⅱ)を算定している場合は、算定できません。

初回加算(Ⅱ)は、新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、病院等から退院した日の翌日以降に初回の訪問看護を行った場合に算定が可能です。初回加算(Ⅰ)を算定している場合は、算定できません。

ターミナルケア加算

介護保険の訪問看護等におけるターミナルケアの内容が医療保険におけるターミナルケアと同様であることから、単位数の見直しが行われました。

ターミナルケア加算 現行 改定後
訪問看護 2,000単位/月 2,500単位/月

ターミナルケア加算の算定要件の変更点

算定要件に変更はなく、これまでと同様に死亡日及び死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを行った場合に算定が可能です。

訪問看護の介護報酬に係るその他の改定

特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化

過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法において、「過疎地域」とみなして規定を適用している地域等が、特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算や、中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の算定対象地域に含まれることが明確化されました。

これにより、中山間地域等の地域の規定は以下のように改正されます。

【現行】

  • 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(令和三年法律第十九号)第二条第一項に規定する過疎地域

【改定後】

  • 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(令和三年法律第十九号)第二条第二項により公示された過疎地域

特別地域加算の対象地域の見直し

過疎地域等でサービスの確保が著しく困難であると認められる地域であり、特別地域加算の対象として告示で定めるものについて、前回改正以降、対象地域として追加する、あるいは除く必要がある地域については自治体から必要性等を聴取した上で見直しが行われることになりました。

退院時共同指導の指導内容の提供方法の柔軟化

退院時共同指導加算について、指導内容を文書以外の方法で提供可能となりました。

訪問看護の人員、設備、運営の基準、その他の改定

テレワークの取扱い

人員配置基準等で具体的な必要数を定めて配置を求めている職種のテレワークに関して、個人情報を適切に管理していること、利用者の処遇に支障が生じないこと等を前提に、取扱いの明確化を行い、厚生労働省から職種や業務ごとに具体的な考え方が示されることになりました。

  • 個人情報を適切に管理していること

  • 利用者の処遇に支障が生じないこと

訪問看護における24時間対応のニーズに対する即応体制の確保

訪問看護における24時間対応について、看護師等に速やかに連絡できる体制など、提供体制が確保されている場合は看護師等以外の職員も利用者又は家族等からの電話連絡を受けられるよう、体制に関する要件の見直しが行われました。

体制の要件等

以下の全てに該当し、24時間対応体制に係る連絡相談に支障がない体制であれば、24時間対応体制に係る連絡相談の担当者が当該訪問看護ステーションの看護師等以外の職員でも認められることになりました。

  • (ア)看護師等以外の職員が、利用者や家族等からの電話等による連絡・相談に対応する際のマニュアルが整備されている

  • (イ)緊急の訪問看護の必要性の判断を保健師または看護師が速やかに行える連絡体制と緊急の訪問看護が可能な体制が整備されている

  • (ウ)訪問看護ステーションの管理者は、連絡相談を担当する看護師等以外の職員の勤務体制及び勤務状況を明らかにする

  • (エ)看護師等以外の職員は、電話等により連絡・相談を受けた際に、保健師または看護師へ報告し、報告を受けた保健師または看護師は、当該報告内容等を訪問看護記録書に記録する

  • (オ)アからエについて、利用者及び家族等に説明し、同意を得る

  • (カ)指定訪問看護事業者は、連絡相談を担当する看護師等以外の職員に関して都道府県知事に届け出る

身体的拘束等の適正化の推進

身体的拘束等の更なる適正化を図る観点から、訪問看護においても利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならないこととされました。

またやむを得ず身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録することが義務付けられました。

人員配置基準における両立支援への配慮

介護現場において、治療と仕事の両立が可能となる環境整備を進め、職員の離職防止・定着促進を図る観点から、各サービスの人員配置基準や報酬算定の見直しが行われました。

  • 「常勤」の計算にあたって、職員が育児・介護休業法等による育児・介護等の短時間勤務制度を利用する場合に加え、「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱う

  • 「常勤換算方法」の計算に当たり、職員が「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合、週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も「常勤換算数:1」と扱う

※従前は、「母性健康管理措置による短時間勤務」と「育児・介護休業法による短時間勤務制度」に該当する職員が、常勤1・常勤換算数1として計算することが認められていました。

「書面掲示」規制の見直し

運営基準省令上、事業所の運営規程の概要等の重要事項等について、「書面掲示」に加え、インターネット上で情報の閲覧が完結するよう、介護サービス事業者は、重要事項等の情報をウェブサイトに掲載・公表することが原則必須となりました。

この制度は2025年度(令和7年度)から義務付けとなる予定です。

最後に

本記事は、作成時点の最新資料である以下資料を基に作成しています。

*参考資料:【参考資料1】令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省

今後、厚生労働省より解釈通知、各自治体より詳細な通知・資料などが公開されますので、具体的な解釈や申請等については、その都度、最新情報を基にご判断をいただきますようお願い致します。

関連記事