【2024年度改定対応】訪問看護の緊急時訪問看護加算と緊急訪問看護加算とは?【介護保険】【医療保険】
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この記事は2024年度介護報酬改定と2024年度診療報酬改定時の情報をもとに執筆しています
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部
看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。
目次
ここでは、訪問看護における介護保険請求の「緊急時訪問看護加算」と、医療保険請求の「緊急訪問看護加算」、「精神科緊急訪問看護加算」についてご紹介しています。
これらの名称は似ていますが、介護保険における緊急時訪問看護加算等は『緊急時に対応する体制』を評価する加算である一方、医療保険における緊急訪問看護加算等は『実際の緊急時の訪問』で算定する加算となっています。
2024年度は、これら3つの加算全てにおいて改定が行われました。
訪問看護ステーション等を運営する上で、加算・減算の内容を把握して適切な保険請求を行うことは重要なことです。それぞれの加算の違いや算定要件などをチェックしておきましょう。
※医療保険の「24時間対応体制加算」について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【介護保険】緊急時訪問看護加算とは?
緊急時訪問看護加算とは、中重度の要介護者の在宅生活を支えるために、24時間365日、緊急の連絡や緊急の相談、緊急時の訪問依頼等に対応する体制を構築していることを評価する加算です。
2024年度介護報酬改定では、緊急時訪問看護加算の区分が新たに設けられました。
緊急時訪問看護加算の種類と単位数
緊急時訪問看護加算は、月の第一回目に介護保険の訪問看護を行った日の所定単位数として算定が可能です。
加算の種類と単位数は以下の通りです。
緊急時訪問看護加算 | 単位数 | ||||
緊急時訪問看護加算(Ⅰ) | 指定訪問看護ステーション | 600単位 | |||
病院又は診療所 | 325単位 | ||||
緊急時訪問看護加算(Ⅱ) | 指定訪問看護ステーション | 574単位 | |||
病院又は診療所 | 315単位 |
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)(Ⅱ)共通の算定要件
計画していた訪問以外の緊急時の訪問ができる体制であること
都道府県に届け出ていること
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)の算定要件
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)を算定する場合は、次の項目の全てを満たす必要があります。
利用者またはその家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制にあること
緊急時訪問における看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制の整備が行われていること
緊急時訪問看護加算(Ⅱ)の算定要件
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)の1に該当するものであること
(参考:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示,p737|厚生労働省)
「看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制の整備」とは?
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)の算定要件にある「看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制の整備ができている」と評価を受けるには、次のアまたはイを含む2項目以上を満たす必要があります。
(ア)夜間対応した翌日の勤務間隔の確保
(イ)夜間対応に係る勤務の連続回数が2連続(2回)まで
(ウ)夜間対応後の暦日の休日確保
(エ)夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制の工夫
(オ)ICT、AI、IoT等の活用による業務負担軽減
(カ)電話等による連絡及び相談を担当する者に対する支援体制の確保
常時対応できる体制(24時間連絡できる体制)とは?
算定要件にある「常時対応できる体制」とは、24時間の連絡相談に対応することを指します。また、対応を行うのは原則、訪問看護事業所の保健師または看護師(以下、「看護師等」)であることも要件の一つとされています。
ただし、次に掲げる事項の全てに該当し、利用者や家族等からの連絡相談に支障がない体制を構築している場合には、当該訪問看護事業所の看護師等以外の職員に連絡相談を担当させて問題ないとされています。
看護師等以外の職員が利用者又はその家族等からの電話等による連絡及び相談に対応する際のマニュアル(※1)が整備されていること
緊急の訪問看護の必要性の判断を看護師等が速やかに行える連絡体制及び緊急の訪問看護が可能な体制が整備されている
訪問看護事業所の管理者は、連絡相談を担当する看護師等以外の職員の勤務体制及び勤務状況を明らかにすること(※2)
看護師等以外の職員は、電話等により連絡及び相談を受けた際に看護師等へ報告すること。報告を受けた看護師等は、当該報告内容等を訪問看護記録書に記録すること
※1 マニュアルには、以下のような内容などを定める必要があります。
相談内容に応じた電話対応の方法及び流れ
利用者の体調や看護・ケアの方法など看護に関する意見を求められた場合の看護師等の連絡方法
連絡相談に関する記録方法
看護師等、および看護師等以外の職員の情報共有方法
※2 「勤務体制及び勤務状況を明らかにすること」については、看護師等以外の職員の勤務日及び勤務時間を勤務時間割表として示し、保健師又は看護師に明示する必要があります。
緊急時訪問看護加算の留意点
緊急時訪問看護加算は、その月の1回目に訪問した訪問看護の所定単位数に加算する
(介護予防)訪問看護の緊急時訪問看護加算、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の緊急時訪問看護加算、看護小規模多機能型居宅介護の緊急時訪問看護加算、医療保険における訪問看護の24時間対応体制加算は、1人の利用者に対して1ヵ所の事業所しか算定できないため、他の事業所から緊急時訪問看護加算等に係る訪問看護を受けていないか確認する必要がある
実際に緊急時訪問を行った場合、その所要時間に応じた所定単位数を算定し、居宅サービス計画を変更する手続きが必要になる
その月の1回目の緊急時訪問では、早朝・夜間、深夜の時間帯に訪問した場合でも、早朝・夜間、深夜加算は算定できないが、同月の2回目以降の緊急時訪問については、早朝・夜間、深夜の時間帯に訪問した場合、早朝・夜間、深夜加算を算定できる
【介護予防】緊急時訪問看護加算とは?
(介護予防)緊急時訪問看護加算の種類と単位数
緊急時訪問看護加算(介護予防) | 単位数 | ||||
緊急時訪問看護加算(Ⅰ) | 指定訪問看護ステーション | 600単位 | |||
病院又は診療所 | 325単位 | ||||
緊急時訪問看護加算(Ⅱ) | 指定訪問看護ステーション | 574単位 | |||
病院又は診療所 | 315単位 |
(介護予防)緊急時看護加算の算定要件
上記、訪問看護の緊急時訪問看護加算の算定要件と同じ
(介護予防)緊急時訪問看護加算の留意点
上記、訪問看護の緊急時訪問看護加算の留意点と同じ
【介護保険】緊急時訪問看護加算のQ&A
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)について
Q.
「夜間対応とは、当該訪問看護事業所の運営規程に定める営業日及び営業時間以外における必要時の緊急時訪問看護や、利用者や家族等からの電話連絡を受けて当該者への指導を行った場合」とされているが、例えば3月1日の営業時間外から翌3月2日の営業開始までの間、営業日及び営業時間外の対応が割り振られている場合であって、夜間対応の終了時刻が3月1日であった場合の、「ア 夜間対応した翌日の勤務間隔の確保」の翌日の考え方はどうなるか。
(引用元:引用元令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1令和6年3月15日)問31,p23|厚生労働省)A.
「ア 夜間対応した翌日の勤務間隔の確保」については、営業日及び営業時間外の対応 が割り振られている場合であって、夜間対応が生じた場合に取り組むことが求められるものである。本問の例であれば2日が翌日に当たる。
Q.
.緊急時訪問看護加算(Ⅰ)の緊急時訪問における看護業務の負担の軽減に資する取組のうち、「カ 電話等による連絡及び相談を担当する者に対する支援体制の確保」とは、具体的にどのような体制を指すのか。
(引用元:令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1令和6年3月15日)問32,p24|厚生労働省)A.
夜間対応する保健師又は看護師が、他の保健師又は看護師に利用者の状態や対応につ いて相談できる体制を構築している場合や、例えば夜間対応する看護師が緊急時の訪問 を行っている間に別の利用者から電話連絡があった場合に、他の看護師が代わりに対応できる体制などが考えられる。その他、夜間対応者が夜間対応を行う前に、状態が変化する可能性のある利用者情報を共有しておくといった対応も含まれる。
Q.
夜間対応について、「原則として当該訪問事業所の運営規程に定める営業日及び営業時間以外における必要時の緊急時訪問看護や、利用者や家族等からの電話連絡及び当該者への指導等を行った場合等」とされているが、例えば、運営規程において24時間365日を営業日及び営業時間として定めている場合はどのように取り扱えばよいか。
(引用元:令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1令和6年3月15日)問33,p24|厚生労働省)A.
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)は、持続可能な 24 時間対応体制の確保を推進するために、 看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制が整備されていることを評価するものであり、例えば、夜間・早朝の訪問や深夜の訪問に係る加算における夜間(午後6時から午後10時まで)、深夜(午後10時から午前6時まで)、早朝(午前6時から午前8時)に計画的な訪問看護等の提供をしている場合を夜間対応とみなした上で、24 時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組を行っている場合には当該加算を算定して差し支えない。
緊急時訪問看護加算について
Q.
算定告示の通知において、保健師又は看護師以外の職員が利用者又はその家族等からの電話等による連絡及び相談に対応する際のマニュアルには、①相談内容に応じた電話対応の方法及び流れ、②利用者の体調や看護・ケアの方法など看護に関する意見を求められた場合の保健師又は看護師への連絡方法、③連絡相談に関する記録方法 、保健師又は看護師及び保健師又は看護師以外の職員の情報共有方法等を記載することとされているが、この3点のみ記載すればよいのか。
(引用元:令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1令和6年3月15日)問34,p25|厚生労働省)A.
通知で示している3点は、マニュアルに最低限記載すべき事項であり、各(介護予防) 訪問看護事業所において必要な事項についても適宜記載すること。
Q.
当該訪問看護ステーションに理学療法士等が勤務している場合、平時の訪問看護において担当している利用者から電話連絡を受ける例が想定される。この場合も速やかに看護師又は保健師に連絡するのか。
(引用元:令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1令和6年3月15日)問35,p25|厚生労働省)A.
その通り。緊急時訪問看護加算は、利用者又はその家族等により看護に関する意見を求 められた場合に常時対応できる体制にあり、計画的に訪問することになっていない緊急時訪問を行う体制にある場合に算定できる加算であり、理学療法士等が利用者又は家族等からの看護に関する意見の求めに対して判断することは想定されない。
【医療保険】緊急訪問看護加算とは?
医療保険における緊急訪問看護加算とは、訪問看護ステーションが主治医からの指示等を受けて計画外の訪問を行った時に算定できる加算です。
対象となる利用者の疾患、基本療養費の種類によって、緊急訪問看護加算と精神科緊急訪問看護加算があります。
2024年度の報酬改定で、新しい区分が追加されました。
緊急訪問看護加算の種類と算定料
同一月の緊急訪問看護加算の算定回数に応じて、1日につき1回に限り、以下のいずれかの加算を算定します。
緊急訪問看護加算 | 算定料 |
月14日目まで | 2,650円/日 |
月15日目以降 | 2,000円/日 |
緊急訪問看護加算の算定要件
訪問看護計画に基づき定期的に行う指定訪問看護以外であり、利用者や家族の緊急の求めに応じて、主治医(診療所・在宅療養支援病院の保険医に限る)の指示により、訪問看護ステーションの看護師等が訪問看護を行った場合
主治医の属する診療所が他の医療機関等と連携して24 時間の往診体制及び連絡体制を構築し、利用者に「在宅療養移行加算1」を算定しており、主治医が対応していない夜間等において連携先の保険医療機関等の医師の指示により緊急に指定訪問看護を行った場合
診療所または在宅療養支援病院が、24時間往診及び指定訪問看護により対応できる体制を確保し、24時間連絡を受ける医師、保健師・助産師・看護師または准看護師などの連絡担当者の以下情報を文書で提供している利用者であること
連絡担当者の氏名
連絡先電話番号等
担当日
緊急時の注意事項
往診担当医
訪問看護担当者の氏名等
利用者や家族等からの電話等による緊急の求めに応じ、主治医の指示で緊急の訪問看護を実施した場合は、「日時」、「内容」、「対応状況」を訪問看護記録書に記録すること
緊急訪問看護加算を算定する場合には、算定理由を「訪問看護療養費明細書」に記載する
(参考:訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う 実施上の留意事項について,p5 |厚生労働省)
緊急訪問看護加算の留意点
同一日に複数の訪問看護ステーションから訪問看護を受けている利用者に、緊急の訪問看護を行った場合は、緊急訪問看護加算のみを算定します。この場合は、24時間対応体制加算の届出をしていること、過去1月以内に訪問看護を実施していることが要件になります。
また、緊急の訪問を行った場合には速やかに主治医に報告します。必要に応じて、特別訪問看護指示書の交付を受け、訪問看護計画の見直しを行います。
(参考:訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う 実施上の留意事項について,p5 |厚生労働省)
【医療保険】精神科緊急訪問看護加算とは?
精神科緊急訪問看護加算の種類と算定料
同一月の精神科緊急訪問看護加算の算定回数に応じて、1日につき以下のいずれかの加算を算定します。
精神科緊急訪問看護加算 | 算定料 |
月14日目まで | 2,650円/日 |
月15日目以降 | 2,000円/日 |
精神科緊急訪問看護加算の算定要件
主治医から指示を受けて行う計画外の訪問、または継続診療加算を算定している利用者の主治医が対応していない夜間等における連携先の保険医療機関の医師から指示を受けて行う緊急の訪問であること
主治医が診療所または在宅療養支援病院の保険医であること
診療所または在宅療養支援病院が、24時間往診及び指定訪問看護により対応できる体制を確保していること
24時間連絡を受ける連絡担当者の氏名、連絡先電話番号等、担当日、緊急時の注意事項、往診担当医、訪問看護担当者の氏名等を利用者に文書で提供していること
精神科緊急訪問看護加算の留意点
同一日に複数の訪問看護ステーションから訪問看護を受けている利用者に、緊急の訪問看護を行った場合は、精神科緊急訪問看護加算のみを算定します。この場合は、24時間対応体制加算の届出をしていること、過去1月以内に訪問看護を実施していることが要件になります。
緊急の訪問を行った場合には、速やかに主治医に報告します。また、必要に応じて精神科特別訪問看護指示書の交付を受け、訪問看護計画の見直しを行います。
最後に
介護保険の緊急時訪問看護加算と医療保険の緊急時訪問看護、精神科緊急時訪問看護加算について解説しました。
この記事は、作成時点の最新資料・情報を基に作成しています。具体的な解釈や申請等については、その都度、最新情報をご確認いただき、自治体等へ申請・お問い合わせいただきますようお願い致します。
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