【2024年度改定対応】訪問看護指示書とは?医師に交付してもらう際の注意点を解説
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この記事は2024年度介護報酬改定と2024年度診療報酬改定時の情報をもとに執筆しています
とあるコメディカル トコル
理学療法士として病院、訪問看護ステーションで勤務した経験を活かし、訪問看護計画書や報告書等の帳票記載例を多数掲載する「とあるコメディカル」を運営。訪問看護の帳票記載例をまとめた冊子は累計販売2,500冊を突破している。
目次
指定訪問看護ステーションで医療保険や介護保険の訪問看護を利用者に提供する場合、主治医から「訪問看護指示書」を交付してもらう必要があります。今回は、訪問看護指示書の概要や交付の必要性、各指示書の様式の違いや、記載例をもとに指示書を受け取る際に気を付けるべき注意点について詳しく解説していきます。
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訪問看護指示書とは?
訪問看護指示書とは、在宅で生活をしている何らかの疾患を抱えた方に対して訪問看護を提供する際に、主治医から訪問看護ステーションに交付をする書類を指します。指示書には、利用者の基本情報や病状・ADLなどの現在の状況、訪問看護を提供するにあたり留意すべき点などが記載されており、訪問看護ステーションはこの指示内容に応じたサービスを提供することとなります。
訪問看護指示書はなぜ必要?
基本的に、訪問看護は介護保険・医療保険を利用して提供するサービスとなりますが、どちらの保険に関しても「主治の医師による指示を文書で受けなければならない。」と明記されています。
【介護保険法】
指定訪問看護事業者は、指定訪問看護の提供の開始に際し、主治の医師による指示を文書で受けなければならない。
(引用元:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準.第六十九条・第二項|厚生労働省)
【医療保険法】
指定訪問看護事業者は、指定訪問看護の提供の開始に際し、主治の医師による指示を文書で受けなければならない。
(引用元:指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準.第十六条・第二項|厚生労働省)
よく「受診した時に先生から訪問看護を受けて良いと言われた」という利用者もいますが、口頭での許可だけでは訪問看護サービスを提供することはできません。訪問看護を受けるためには、必ず主治医から訪問看護指示書を交付してもらう必要があります。
ただし、みなし指定の訪問看護に関しては訪問看護指示書は必要ありません。
みなし指定の訪問看護のルールについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
訪問看護指示書には5つの様式がある
訪問看護指示書には、訪問看護のサービスを提供するにあたって必須となる通常の訪問看護指示書を含む、以下5つの様式があります。
通常の訪問看護指示書
在宅患者訪問点滴注射指示書
特別訪問看護指示書
精神科訪問看護指示書
精神科特別訪問看護指示書
それぞれ疾患や利用者の状況に応じて用途が異なるため、違いをしっかりと理解しておきましょう。
①通常の訪問看護指示書【医療・介護保険共通】
通常の訪問看護指示書は、訪問看護を提供する際に必須となる書類で、医療保険・介護保険いずれの場合でも同じ書類を使用します。利用者の基本情報や、病状・ADLの状況、訪問看護を提供する上での留意点などが記載されています。
②在宅患者訪問点滴注射指示書【医療・介護保険共通】
在宅患者訪問点滴注射指示書は、点滴注射を週3日以上行う必要がある利用者に対して交付される指示書です。指示期間は7日までなので、その後も点滴が必要な場合はその都度交付を受ける必要があります(交付の回数制限なし)。
※在宅患者訪問点滴注射指示書は、通常の訪問看護指示書と様式は同じものになります。ただし、在宅患者訪問点滴注射指示書の交付を受ける場合は、通常の訪問看護指示書と別にもう一通、指示書の交付をしてもらう必要があります。
③特別訪問看護指示書【医療保険】
特別訪問看護指示書は、別表7、別表8に定められる疾病による急性増悪等により一時的に頻回な訪問看護を行う必要があると認めた場合に交付される指示書です。
原則、訪問看護は訪問時間・回数に制限がありますが、特別訪問看護指示書が交付されれば、1日に複数回の訪問、週4日以上の訪問などといった頻回な訪問が可能になります。
指示期間は最大14日間、特例(※)を除き1ヶ月に1回限りの交付という制限があります。また、特別訪問看護指示書が交付されている期間は医療保険を利用することになります。特別訪問看護指示書を交付する場合も、通常の訪問看護指示書は必要になります。
※特例の月2回交付可能な状態とは、気管カニューレを使用している状態にある患者、真皮を越える褥瘡(D3)の状態にある場合です。
④精神科訪問看護指示書【医療保険】
精神科訪問看護指示書は、精神疾患を有する利用者に対して交付される指示書になります。精神科訪問看護指示書は精神科を標榜する医療機関において、精神科を担当する医師しか書くことができません。
精神科訪問看護指示書が交付された際、訪問看護は医療保険を利用してサービスを提供することとなります。ちなみに、精神科訪問看護指示書と通常の訪問看護指示書は併用することができず、どちらか一方の指示書しか交付できないため注意が必要です。
⑤精神科特別訪問看護指示書【医療保険】
精神科特別訪問看護指示書は、精神疾患を有する利用者が急性増悪等により一時的に頻回な訪問看護を行う必要があると認めた場合に交付される指示書です。
指示期間は最大14日間、1ヶ月に1回限りの交付という制限があります。精神科特別訪問看護指示書を交付する場合、精神科訪問看護指示書もあわせて必要になります。
医療機関は、訪問看護指示書を交付することで『訪問看護指示料』を算定する
保険医療機関の医師は、診療内容に基づき、利用者の同意を得たうえで本人が選定した訪問看護ステーション等に対して訪問看護指示書を交付します。交付によって、医療機関は指示書の種類に応じた『訪問看護指示料』を算定します。
※訪問看護ステーションに算定される加算ではないのでご注意ください。
指示書の種類 | 指示書を交付する医療機関の指示料 |
通常の訪問看護指示書 | 300点/月 |
在宅患者訪問点滴注射指示書 | 100点/回 |
特別訪問看護指示書 | 100点/月 |
精神科訪問看護指示書 | 300点/月 |
精神科特別訪問看護指示書 | 100点/月 |
通常の訪問看護指示書の様式
訪問看護指示書は厚生労働省から様式が提供されています(下記参照)。多くの医療機関がこの様式で作成をしているかと思いますが、内容に相違がなければ独自のフォーマットを使用しても問題ありません。
2024年度の報酬改定では、同年6月からレセプトのオンライン請求が開始されることを踏まえて「傷病名コード」が追加となりました。独自のフォーマットを使用する際は、報酬改定に対応した様式にアップデートをするよう注意をしましょう。
訪問看護指示書を受け取る際にチェック!記載内容の注意点
訪問看護指示書の記載内容が誤っている場合やあいまいな場合、訪問看護ステーションが正しく加算を算定できない場合や、適切なケアを提供できないことにつながるリスクがあります。
記載内容に誤りがある訪問看護指示書が届いた際は、発行元の医療機関に電話をして修正依頼をかける必要があります。新しい訪問看護指示書が届くまでは訪問看護を提供することはできません。
そのため訪問看護指示書の交付を受けた際は、しっかり内容を確認し必要に応じて主治医に修正をしてもらうことも重要です。
ここからは、通常の訪問看護指示書を受け取る際にチェックするポイントと、注意すべき記載例をご紹介していきます。
①訪問看護指示期間は6か月以内かどうか?
訪問看護指示書の指示期間は1ヶ月〜最長6ヶ月と決められています。その期間内の中で、利用者の状況などに応じて主治医が期間を設定します。
しかし、実際には6ヶ月を超えた指示を設定している場合も多々あり、その場合は無効になってしまいます。実はトラブルが多い箇所となっているので注意が必要です。
注意すべき記載例
【医療・介護共通】
記載例 | 備考 | |
〇 | 令和6年4月1日〜令和6年9月30日 | 6ヶ月で設定されている |
× | 令和6年4月1日〜令和6年10月1日 | 6ヶ月を超えている |
②主たる傷病名、傷病名コードは正しく記載されているか?
主たる傷病名の項目には、利用者の主病名が記載されています。注意すべきなのは、この項目に書かれた病名によって、適用となる保険(医療・介護)が変わるという点です。適用となる保険が変われば、利用者の負担額も変わってしまうため、しっかりと確認をしましょう。
また、前述の通り2024年度の報酬改定で傷病名コードの記載も必要とされることとなりました。傷病名に応じたコードが記載されているのか確認をしましょう。
傷病名コードは、厚生労働省の「傷病名マスター検索」を活用すると良いでしょう。
注意すべき記載例
以下に、トラブルになりやすい傷病名をご紹介します。
傷病名 | 適用となる保険 | |
例① | パーキンソン病
・ホーンヤールの重症度分類Ⅲ度以上 ・生活機能障害度がⅡ度以上の記載あり |
医療保険 |
パーキンソン病
・上記以外の分類 ・ホーンヤールの重症度分類・生活機能障害度の記載なし |
介護保険 | |
例② | 末期の皮膚癌 | 医療保険 |
皮膚癌 | 介護保険 | |
例③ | 頚髄損傷 | 医療保険 |
頚椎損傷 | 介護保険 |
利用者の状態が医療と介護どちらの適用になるか確認したい方は、以下の記事もご覧ください。
*訪問看護の保険制度をマスター!この利用者は介護保険?医療保険?【Q&A】③「現在の状況」の判定スコア等は正しいか?
「現在の状況」には、病状や薬剤の用量・用法、ADLの状況、褥瘡の深さなどが記載されています。
この項目で注意が必要なのは「褥瘡の深さ」です。特別管理加算を算定する場合や、特別訪問看護指示書を月に2回交付する場合は、訪問看護指示書に「真皮を超える褥瘡の状態」であることが示されていることが必須となります。
「真皮を超える褥瘡の状態」は、NPUAP分類がⅢ度またはⅣ度、改定DESIGN-R 2020分類がD3、D4またはD5と記載されている必要があります。
NPURP分類 | 改定DESIGN-R 2020分類 |
---|---|
Ⅲ度:全層組織損傷(脂肪層の露出) | D3:皮下組織までの損傷 |
Ⅳ度:全層組織欠損 | D4:皮下組織を超える損傷 D5:関節腔・体腔に至る損傷 |
④リハビリが必要な場合「留意事項及び指示事項」に記載されているか?
理学療法士などリハビリの介入が必要な場合は、「留意事項及び指示事項」の「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が行う訪問看護」の項目に頻度と指示内容が記載されていることが必要です。
介護保険におけるリハビリは20分・40分・60分の20分単位で区切られており、また「週に120分を超えてはならない」というルールがあります。
医療保険におけるリハビリは30分〜90分間という時間設定で、介護保険のように途中の区切りはありません。頻度は「1日1回、週3回まで」というルールがありますが、「特別訪問看護指示書が交付されている場合」「厚生労働省が定める疾病等の場合(※)」「特別管理加算を算定している場合」は、同日複数回・週4回以上の訪問が可能になります。
※厚生労働省が定める疾病等は以下になります。
末期の悪性腫瘍
多発性硬化症
重症筋無力症・スモン・筋萎縮性側索硬化症
脊髄小脳変性症
ハンチントン病
進行性筋ジストロフィー症
パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーン・ヤール重症度分類がステージⅢ以上であって生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度のものに限る))
多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群)
プリオン病
亜急性硬化性全脳炎
ライソゾーム病
副腎白質ジストロフィー
脊髄性筋萎縮症
球脊髄性筋萎縮症
慢性炎症性脱髄性多発神経炎
後天性免疫不全症候群
頸髄損傷
人工呼吸器を使用している状態
注意すべき記載例
【介護保険の場合】
記載例 | 備考 | |
〇 | 40分のリハビリを週3回 | 週の合計120分なのでOK |
× | 60分のリハビリを週3回 | 週の合計120分を超えるためNG |
⑤「医療機関名・依頼先」の医師の捺印はされているか?
「医療機関名・依頼先」には、指示書を記載した日付、医療機関名(住所・TEL・FAX)、医師名の記載と、医師の捺印があるはずです。
この際、医師の捺印が抜けてしまうことが多いので注意をしましょう。捺印がないと、訪問看護指示書は使用できません。また訪問看護指示書が手元に届いたとしても、捺印がなかった場合は記載元の医療機関に電話をして再交付の手続きを取る必要があります。
訪問看護指示書の記載例
訪問看護指示書の記載例として、以下の状態の利用者の方への介護保険の訪問看護指示書の記載例をお示しします。
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まとめ
訪問看護指示書の概要と種類、記載内容に関する注意点と記載例について解説しました。利用者の病状や要介護度に合わせたケアが提供できるよう、主治医と情報交換や連携を行い適切な指示書を交付してもらいましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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