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訪問看護ステーションの人員基準とは?違反時の処分内容や事前の対策について解説

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訪問看護ステーションの人員基準とは?違反時の処分内容や事前の対策について解説
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

訪問看護ステーション等を開設または運営するには、基準に定められた人数以上のスタッフを確保しなくてはいけません。この基準が『人員に関する基準(人員基準)』です。

この記事では、訪問看護ステーションが訪問看護事業所を開設・運営するにあたって求められている人員基準、人員基準に違反した場合の行政処分、違反にならないための対策について詳しく説明していますので、ぜひ最後までお読みください。

訪問看護事業所の人員基準とは?

人員基準には、訪問看護ステーション等が適切な訪問看護サービスを提供するために、最低限配置しなくてはいけないスタッフの職種や人数が定められています。

訪問看護では、単独の事業所として運営する『訪問看護ステーション』と『病院又は診療所が訪問看護を行う場合』があり、それぞれに人員基準が定められています。また、サテライト事業所を設置する場合にも人員に関する基準が都道府県等により定められていますので、順に見ていきましょう。

訪問看護ステーションの場合の人員基準

訪問看護ステーションの人員基準は以下のようになっています。

  • サービスの提供にあたる保健師、看護師又は准看護師を常勤換算方法(※)にて2.5名以上配置していること。

  • 上記の保健師、看護師又は准看護師のうち1名は常勤であること。

  • 保健師又は看護師である管理者を1名配置していること。

  • 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士を実情に応じた適当数配置していること。

※常勤換算方法とは、常勤職員は1名と数え、非常勤職員は勤務延べ時間数を当該事業所の常勤職員の所定労働時間で割ることで計算した人数で数えます。例えば、常勤職員の所定労働時間が週に40時間の場合、週に20時間(1日4時間週5日)の非常勤職員は、「0.5名」として数えます。

この中で、『管理者』は、「管理上、支障がない場合には、当該訪問看護ステーションの他の職務、又は同一敷地内にある他の事業所・施設等の職務に従事することができる。」とされています。 また、『管理者』には、適切なサービス提供を行うために必要な知識・技能を有することが求められます。

病院又は診療所が運営するみなし訪問看護ステーション場合の人員基準

病院又は診療所によって訪問看護が提供される場合の人員基準は以下のようになっています。

  • 訪問看護の提供にあたる保健師、看護師又は准看護師を適当数配置していること。

サテライト事業所を設置する場合の人員基準

サテライトとは、その地域でのサービスを確保するために、待機や道具の保管、着替え等を行う(本体とは別に設置する)出張所を指します。

サテライト事業所は、本体事業所と共に指定を受けるため、本体事業所と合わせた人員配置が求められますが、その内容は都道府県等の所轄官庁により定められています。 以下のような内容が定められていますが、詳細が異なりますので、事業所の所轄官庁の定める基準を確認しましょう。

  • 主たる事業所及びその出張所全体で看護職員(保健師、看護師又は准看護師)の常勤換算の合計が、2.5名以上の人員を配置すること。

常勤換算方法とは?

常勤換算方法とは、常勤職員を1名として数え、非常勤職員を勤務時間に応じて(常勤職員○.○名分として)数える方法です。

常勤換算方法は、
『勤務延べ時間数』÷『当該事業所の常勤職員の所定労働時間』
で算出します。 そのため、例えば、月の常勤職員の所定労働時間が『176時間』だった場合、

  • 月に88時間の労働時間だった非常勤職員は、常勤換算数が『0.5名』

  • 月に132時間の労働時間だった非常勤職員は、常勤換算数が『0.75名』

と数えます。

訪問看護ステーションが人員基準違反で営業するとどうなる?

人員基準には、介護保険サービスを提供するために必要となる最低限度の基準が定められているので、人員基準に違反する場合は「営業できない」ということになります。

また、人員基準違反を指定権者に報告せず、隠蔽し、営業した場合には、報酬の返還、指定取り消し処分等を受けることになります。

厚生労働省からの通知には、基準違反について以下のように定められています。

  1. 基準は、指定居宅サービスの事業がその目的を達成するために必要な最低限度の基準を定めたものであり、指定居宅サービス事業者は、常にその事業の運営の向上に努めなければならないこと。

  2. 指定居宅サービスの事業を行う者又は行おうとする者が満たすべき基準等を満たさない場合には、指定居宅サービスの指定又は更新は受けられず、また、運営開始後、基準に違反することが明らかになった場合には、①相当の期間を定めて基準を遵守するよう勧告を行い、②相当の期間内に勧告に従わなかったときは、事業者名、勧告に至った経緯、当該勧告に対する対応等を公表し、③正当な理由が無く、当該勧告に係る措置を採らなかったときは、相当の期限を定めて当該勧告に係る措置を採るよう命令することができるものであること。また、③の命令をした場合には事業者名、命令に至った経緯等を公示しなければならない。なお、③の命令に従わない場合には、当該指定を取り消すこと、又は取消しを行う前に相当の期間を定めて指定の全部若しくは一部の効力を停止すること(不適正なサービスが行われていることが判明した場合、当該サービスに関する介護報酬の請求を停止させること)ができる。ただし、次に掲げる場合には、基準に従った適正な運営ができなくなったものとして、直ちに指定を取り消すこと又は指定の全部若しくは一部の効力を停止することができるものであること。

(引用:指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について

人員基準を満たせなくなった場合の猶予期間は、訪問看護ステーションの指定権者(都道府県等)によって差がありますので、まずは指定権者に相談するのが良いでしょう。

人員基準違反等で指定取り消しになった事例

実際に人員基準違反をきっかけとして指定が取り消しになったケースをご紹介します。

令和2年、福島県の訪問看護ステーションを運営する事業者が指定取り消し処分を受けました。指定取り消し理由は以下4つです。

1.人員基準違反

常勤看護師を適切に配置していなかったこと

2.運営基準違反

看護サービス提供に際して利用者に同意を得ていない、前回実地指導で指導した内容が改善されていない等

3.不正請求

主治医の指示を得ず訪問看護サービスの提供を行った、同一建物減算の請求の対応を適切に行わなかった等

4.虚偽報告

常勤数を満たしていないにも関わらず監査で常勤が保たれているよう偽造書類を提出した

このように、人員基準違反が発覚しただけでなく、不正請求や虚偽報告等違反が重なって悪質と判断された場合には、発覚後速やかに指定取り消し処分となる可能性が高いでしょう。

訪問看護の人員基準に関する注意点

看護師等の確保が困難

人員配置基準に定められる看護職員の人数を確保することも前提として必要になりますが、利用者へのサービス提供を行うため、24時間対応など事業所の運営方針を実現するためにもスタッフの確保はとても大切なことです。 しかし、看護師等の不足がニュースとなっている現在では、看護師を始め保健師や准看護師といった看護の専門職を確保することが難しい状況となっています。

スタッフを確保するためには、給与などの待遇面、働きやすい労働条件や職場環境、キャリアアップの仕組みなどを構築し、応募が来る事業所、離職が少ない事業所を目指す必要があります。

人件費率が高い

厚生労働省の実施している『令和4年度介護事業経営概況調査』の結果によると、訪問看護の人件費率の全国平均は『73.9%』と、とても高い数値になっています。 そのため、事業所の経営において『看護職員を確保すること』、そして『収入と人件費のバランスを取ること』は、とても重要なポイントになっています。

まとめ

今回は、訪問看護の人員基準について説明してきました。 訪問看護ステーション等を経営・運営するにあたり、人員基準は経営者や管理者が把握しておかなくてはいけないことの一つになっています。

『カイポケ訪問看護』では、訪問看護ステーションの指定基準についてまとめた資料をご用意していますので、訪問看護ステーションの開業をご検討の方はぜひお役立てください。

ここでご紹介した内容が皆様のお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただきありがとうございました。

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