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訪問看護ステーションの経営の失敗例と経営改善のポイントとは?

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訪問看護ステーションの経営の失敗例と経営改善のポイントとは?
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

訪問看護事業は、介護保険法や健康保険法に基づく訪問看護サービスを提供することで、診療報酬や介護報酬を請求し、主な収入とする事業です。

昨今では、サービスに対するニーズの高まりから、訪問看護事業の起業・参入が増え、その中でも特に、株式会社等の営利法人の参入が増加傾向にあります。厚生労働省の調査結果によると、営利法人が運営する訪問看護ステーションが占める割合は59.2%となり、訪問看護ステーションを運営する法人種別の第一位となっています。
(参考:令和3年介護サービス施設・事業所調査の概況

ニーズがあり、事業所数が増えている訪問看護事業ですが、参入した全ての訪問看護ステーションの経営が上手くいっているわけではありません。訪問看護ステーションを運営している経営者の中には、「赤字経営が続いていてつらい・・」「どうすれば経営が上向きになるの?」と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は訪問看護ステーションの経営について、陥りやすい失敗例とその原因、そして経営改善のポイントを詳しく説明しています。

訪問看護ステーションの経営とは

この記事では、訪問看護ステーションの経営とは、"事業を運営することで達成したい目的を決め、事業を運営するために必要となる資金調達、設備・備品等の調達、人材確保・配置を行うこと"として定義しています。

そのため、事業を運営するために必要となる資金の確保、事業の運営やサービスの提供に必要となる建物・設備・備品等の用意、サービスを提供する人材の採用と適切な配置等について決定し、管理を行うことが、訪問看護ステーションの経営者の役割となっています。

全国の訪問看護ステーションの経営実態

厚生労働省では、定期的に訪問看護を含む介護事業についての経営状況を調査しています。
「令和4年度介護事業経営概況調査結果」における訪問看護事業の収支差率(税引後・コロナ補助金を含む)の平均は『7.1%(黒字)』となっています。

平均収支差率が黒字になっていることと収支差率の分布の表から、『訪問看護事業は黒字することができる事業』ということがわかります。
(参考:令和4年度介護事業経営概況調査結果|厚生労働省

訪問看護ステーションを経営するまでの流れ

「訪問看護ステーションを経営したいけど、どのような手順で会社やステーションを設立するの?」「開業までどのくらいかかるの?」という方へ、法人設立やステーションを開設するまでの流れをご紹介します。

  1. 法人設立、創業計画書の作成、資金調達を行う

  2. 設備基準を満たすために事務所の契約、物品手配を行う。

  3. 人員基準を満たすために看護職を採用する。

  4. 指定申請の届出を行い、審査を受ける。

  5. 地域の医療機関や介護事業所等との関係性を構築する

  6. 開業、訪問看護サービスの提供開始

法人設立について

訪問看護ステーションは、個人では開設ができない仕組みとなっています。法律上で組織として認められ、権利能力を持つ「法人格」を有することを必須としているため、まずは法人を設立する必要があります。

訪問看護ステーションの開業において選ばれている法人の種類は、「営利法人」に属する株式会社、合同会社と「非営利法人」に属するNPO法人の3種類です。

株式会社・合同会社とNPO法人の設立面における違いは、設立に要する期間です。営利法人は申請からおよそ3週間で登記が完了しますが、NPO法人は登記完了までおよそ4か月かかるので、営利法人は事業を早期に開始できるメリットがあります。

株式会社と合同会社の違いは、資金調達の自由度、設立費用、社会的信用度の3つです。株式会社の場合は出資者に制約がなく、資金調達がしやすいという特徴がありますが、合同会社は出資者と経営者が同一なので外部からの出資を受けることによる資金調達ができません。設立費用については合同会社の方が安く設定されています。社会的信用度については世の中に広く認知されている株式会社のほうが高く、合同会社は比較的新しい法人形態のため低くなっています。

ご自身の状況や意向に合わせた法人格を選択しましょう。

創業計画書・事業計画書の作成

法人設立の次は、創業計画書の作成です。事業計画書と言われることもありますが、どちらもおおむね意味合いは同じで、会社の目的や目指す将来像と短期・中期での具体的な目標数字や行動内容を計画として作成します。

資金調達

事業を運営するためには資金が必要になります。
地域やステーションの規模によりますが、訪問看護ステーションを開業するために1,000万円ほどの資金を用意することが多いようです。一般的には、自己資金を準備し、不足する資金については金融機関等から借入を行うことになります。

その際、先ほどの創業計画書・事業計画書の内容が重要になっています。計画書を見て、「あなたがどのようなことを実現したいと思っているのか」、「具体的にどのような事業を実施するのか」、「その事業を行うことで利益を出し、返済できるのか」ということが判断されます。

訪問看護ステーション経営の失敗例とその原因

訪問看護ステーションの経営において陥りやすい失敗やその原因を回避できるように対策を練りたいとお考えの方もいるのではないでしょうか。訪問看護事業の経営における3つの失敗例とその原因について解説します。

1.人材育成や環境改善ができず、人員不足で運営ができなくなる

離職が続いたことと採用ができない状況が重なったことから人員基準である常勤換算2.5人を満たせなくなり、その結果、サービスの提供ができずに休業や廃業となってしまったケースがあります。

看護職員の場合、転職活動においては売り手市場なので、「このステーションの仕事に満足できなければ他のステーションやクリニックを探せばいい」と思っている方は非常に多いです。

経営に失敗した原因として、会社の経営理念や人材育成方針などを完成させても、その思いに共感する人材を採用し、実践できる職場環境がなくては職員が育成できず、離職に至ってしまったことが挙げられます。

2.利用者が伸びず、運営ができなくなる

入院やお看取りなどで利用者が減少したが、新規利用者の獲得ができず、売上を確保できず赤字経営に陥ってしまったケースはよくあります。
一定の利用者数を確保した後に、営業に行く回数・頻度が少なくなることはよくあります。

経営に失敗した原因として、地域の医療機関やケアマネジャーとの関係が希薄になってしまい、新規利用者を紹介してもらうことができず、売上が回復できなかったことが挙げられます。

3.事業計画・収支計画が甘く、資金繰りができなくなった

「開業から3ヵ月で単月黒字化する事業計画・収支計画を立てたが、利用者の確保が上手くいかずに開業から3ヵ月後はまだ単月赤字だった」「開業後の運転資金として確保していた資金に余裕がない状態だったので、支払いができずに廃業することになってしまった」というケースがあります。

計画した売上・支出を確保できないと、準備していた運転資金はすぐに底をついてしまいます。

経営に失敗した原因として、事業計画・収支計画の見込が甘く、現実的ではない数値・スケジュールで計画を立てていたことが挙げられます。また、運転資金が不足した場合の対応について準備できていなかったことも挙げられます。

訪問看護ステーションの経営を改善するポイントとは

失敗例を見ていると、「訪問看護ステーションの経営を成功させるのは難しいので諦めようか・・」とお考えの方もいるのではないでしょうか。もちろん全てのステーションの経営を成功に導くことはできませんが、失敗例や原因を知り、同じような失敗を起こさないように対策をとることはできます。失敗例をふまえ、経営を改善するためのポイントを見ていきましょう。

1.競合の訪問看護ステーションの情報を定期的にキャッチアップする

訪問看護ステーションのサービス提供地域の人口動態や要介護者数の推移なども気にかける必要はありますが、それと合わせて同一地域や近隣の訪問看護ステーションの情報をキャッチアップすることは経営改善に役立ちます。

「介護サービス情報公表システム」から、サービス提供地域、営業時間、サービス内容、24時間・緊急時の対応、従業者数、利用者数、加算の算定状況などの情報を集めましょう。

また、「介護サービス情報公表システム」以外にも、ケアマネジャーや医療機関の医師・MSWなどから、他のステーションの取り組みで「いい取り組みだ」と感じていることを聴き取ったり、求人情報から待遇や労働条件、福利厚生などを調査したりするのも良いでしょう。

そして、キャッチアップした情報を基に、自事業所と比較して、強み・弱みを把握し、改善や長所の強化に取り組みましょう。

2.看護師が「長く働きたい」と思える職場環境を提供する

訪問看護の事業を運営するにあたり、重要な根幹となっているのは訪問看護を提供する看護職員の存在です。人員基準である常勤換算2.5人を確保し続けることは必須ですが、事業を拡大するには看護職員の追加採用を行い、離職率を下げることが理想的です。

採用を強化し、離職率を下げるためには「このステーションで働きたい」と思ってもらうこと、働き始めた後も「ずっとここで働きたい」と思ってもらうことが大切です。

このように「ここで働きたい」、「長く働きたい」と思ってもらうためには、給与、労働時間・休日、業務の負担・ストレス、仕事のやりがい、成長・キャリアアップなどの制度構築や改善に取り組みましょう。

3.地域の医療機関や介護に関わる事業所との関係性を構築する

医療保険が適用となる利用者は診療所や病院から紹介され、介護保険が適用となる利用者は地域包括支援センターもしくは居宅介護支援事業所のケアマネジャーから紹介されることが多いです。
このような関係機関とは、良好な関係性を構築し、利用者の獲得に結びつけることが売上の安定、売上アップに繋がっています。

まずは、それぞれの関係機関に挨拶に伺い、ステーションの存在を認識してもらうと同時に、ステーションの強みや特徴と連絡手段を伝えましょう。

次に、紹介を受けた利用者に対するサービスの実施状況や気づいたことなどを適時共有することで、コミュニケーションを取る機会を作り、更なる利用者紹介に繋げましょう。

訪問看護ステーションの経営を学ぶ方法

「経営についてやっぱり不安だから誰かに基礎から実践まで教えてもらいたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?訪問看護ステーションの経営について学べる方法をいくつかご紹介します。

1.訪問看護の経営方法を教えるスクール・講座で学ぶ

訪問看護ステーションの経営について学べるセミナーは、たくさんの企業・団体等が実施しています。
学習する量に応じて、単発のセミナーや複数回実施して体系的に学べる講座、中期にわかって経営学全般を学べる講座など様々なセミナー・講座があります。

その中でも特に、実際に訪問看護ステーションを経営している経営者が講師となり、経営についての基礎知識や実践で活かせる知識を学ぶことができる講座は、これから開業する方にとってとても役に立つ知識を得られると思います。

2.訪問看護の開業を支援するコンサルタントから学ぶ

訪問看護経営の最初の難関が、法人登記やステーションの開設手続きです。このほか、開業までにどんなことを準備したらいいのか、状況に応じて支援をしてくれるサービスとして開業支援サービスがあります。

開業支援サービスでは、専門のコンサルタントやアドバイザーがついて、今やることについてのサポート・アドバイスと今後のスケジュール管理などを受けることができるため、心強い存在となるでしょう。
これらの経験からノウハウを学ぶことで、次のステップである事業拡大や別の地域への進出の際に役立つでしょう。

まとめ

訪問看護ステーションの経営について、経営するまでの流れ、失敗例と原因、改善のポイントなどを解説しました。
ここでご紹介した失敗例のようにならないためにも、利用者、医療機関や居宅介護支援事業所などの関係機関、応募者・職員から選ばれるようなステーションを考え、作っていきましょう。
この記事が訪問看護の経営に興味をお持ちの皆様にとって参考になれば幸いです。

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