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訪問看護ステーションの独立開業に必要な準備とは?【社労士・行政書士監修】

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この記事は2024年7月時点の情報をもとに執筆しています

訪問看護ステーションの独立開業に必要な準備とは?【社労士・行政書士監修】
アステージ社労士・行政書士事務所 佐藤壱磨

アステージ社労士・行政書士事務所 佐藤壱磨

介護事業開業サポートセンター」を運営。社会保険労務士・行政書士として介護・福祉事業の創業を数多く支援した実績をもとに、法人設立・指定申請などの手続き、助成金や融資、開設後の運営に関する相談に対応している。

目次

国内の65歳以上の高齢者は増加傾向で、2025年には日本人のほぼ3人に1人が65歳以上の高齢者となる見込みです。このような背景から在宅医療の需要増加が見込まれており、訪問看護ステーションは重要性を増しています。実際に訪問看護の開業件数も増加しています。

しかしながら「訪問看護ステーションを独立開業するにあたって何をすればよいか分からない」「実際に何から手を付けてよいか分からない」などの疑問はないでしょうか?

この記事では、訪問看護ステーションの独立開業のために準備すべきことをまとめています。ぜひ最後までお読みください。

訪問看護の開業をお考えの方は、専属の担当者に相談ができる『カイポケ開業支援サービス』にお問合せ下さい。

訪問看護を独立開業するまでの流れ

訪問看護ステーションを独立開業するための手順は大きく以下の4つに分けられます。

  1. 訪問看護市場の把握と事業計画の立案

  2. 独立と開業の準備(法人設立や資金調達など)

  3. 指定申請

  4. 営業活動と業務・管理体制を整える

これらの手順について解説していきます。

①訪問看護市場の把握と事業計画の立案

訪問看護の事業所数の推移

訪問看護市場は、高齢化が進む中で需要が高まっており、事業所数は年々増加している状況です。(下図参照)

訪問看護の事業所数の推移
令和5年度 一般社団法人全国訪問看護事業協会訪問看護ステーション数調査を元に作成

これは、訪問看護が設備投資等の負担が少ないことから、他の介護施設・事業所と比較して「開設しやすいこと」も影響しています。

2040年頃に高齢化のピークを迎えると言われていることから、今後も訪問看護ステーションの開業数は増加していくことでしょう。

独立し開業する目的や想いを明確にして事業戦略を立てる

訪問看護ステーションは今後も新規開業が増えると想定されることから、新規開業を検討されている方は以下のようなことを考えながら事業計画を立てると良いでしょう。

  • どこで開業するのか

  • 開業する目的は何か

  • 事業を運営することで解決したいことは何か

  • 主な対象とする利用者像はどんな方か

  • 独自の強みとするサービスは何か

事業計画書を書いてみる

事業計画書とは、事業の目的や目標、戦略、運営計画、財務予測などを詳細に記した書類で、事業運営の方針を明確に示すことや、融資を受ける銀行へ事業を説明する際や経営にかかわる組織内のメンバーへの説明をする際などに使用される文書です。

訪問看護ステーションの開業後、事業を継続して運営できるかどうか見通しを立てるのが訪問看護の代表(経営者)の役割となります。開業の目的や強みとするサービスで考えた内容をもとに、事業計画書を書いてみましょう。

訪問看護の事業計画書の書き方について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

②独立と開業の準備(法人設立や資金調達など)

訪問看護ステーションを開業する第一歩は、法人設立です。なぜなら医療保険や介護保険から給付(報酬)を受けるために必要となる医療保険や介護保険の「指定」は法人にのみ認められているからです。

かつて訪問看護ステーションの開設は社会福祉法人や医療法人といった非営利法人にのみ認められていました。これらの非営利法人は税制などで優遇されているものの、法人設立のための基準が厳しく訪問看護ステーションへの参入は一般にとても難しいものでした。

その後、2000年の介護保険法の施行に伴い訪問看護ステーションは株式会社・合同会社などの営利法人の参入が認められました。それにより訪問看護ステーションを独立開業するハードルは以前に比べるとずいぶんと低くなりました。

法人設立の手順

新規開業の大半を占める営利法人を立ち上げる際の法人設立(登記)の手順について、以下に簡単にまとめています。

  • 会社設立準備

    1. 発起人の決定

    2. 事業計画の立案

    3. 資金の準備

    4. 基本的事項の決定

    5. 実印の作成

  • 定款作成(認証)

    1. 定款(※1)の作成

    2. 定款の認証 (株式会社のみ)

  • 出資金払込

    1. 定款の認証日より、後日に資本金の払込を発起人の銀行口座に行います

  • 登記書類申請

    1. 登記申請書に添付書類を合わせたものを製本し、それを法務局に申請します

  • 登記後

    1. 登記事項証明書の取得

    2. 印鑑証明書の取得

    3. 税務署、都道府県、年金事務所等の機関への届出

※1. 定款(ていかん)とは、会社の規則や事業目的が記された書類のことをいいます。

登記書類の申請方法は以下の3つがあります。

  • オンラインで提出

  • 電磁的記録媒体(CD-Rなど)で提出

  • 申請書に直接記載して提出

資金調達の方法

訪問看護の事業を運営するには、十分な資金を確保することが大切です。一般的な資金調達方法を紹介します。

  • 自己資金

  • 身内や知人からの借入

  • 日本政策金融公庫からの融資

  • 銀行・信用金庫等の金融機関からの融資

  • 助成金や補助金

など

自己資金や身内や知人からの借入だけでは資金が不足する場合は、金融機関からの融資で資金調達を行うのが一般的です。

日本政策金融公庫からの融資

日本政策金融公庫とは、一般の金融機関の取り組みを補完し、中小企業や国民一般の資金調達を支援するための金融の機能を担っている公的な金融機関です。 「一般貸付」、「新規開業資金」、「女性、若者/シニア起業家支援資金」など、様々な種類の融資制度が設けられています。

銀行・信用金庫等の金融機関からの融資

お近くの銀行や信用金庫などの民間の金融機関でも、事業者向けの融資が行われています。 その中には、医療や介護向けの融資プランなどが用意されていることもあります。 事業所を経営する上で銀行口座は必ず作りますが、介護報酬や診療報酬の入金される口座と月々の支払いや借入金の返済などを行う口座は、同じ口座の方が事務処理の煩雑さを軽減することができます。

助成金の申請

訪問看護ステーションの開業の際に、職員の待遇改善や業務改善、デジタルツールの導入等に使える助成金・補助金の一例を以下に示します。

  • 業務改善助成金

  • 両立支援等助成金

  • 65歳超雇用推進助成金

  • IT導入補助金

など

助成金や補助金について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

資金調達の重要性

一般的に訪問看護ステーションは財源が明確であり、収益が安定しやすいといわれています。

しかし計画的な資金繰りをしていなかったために開業準備途中や開業後に問題が発生していることも事実です。

「サービス提供日と報酬の入金日の時間差を考慮しておらず資金繰りが苦しくなる」、「立ち上げ期に従業員の給与が払えない」、「黒字化する前に資金が尽きてしまい閉鎖を余儀なくされる」という話も少なくありません。

このような事態の発生を防ぐためにも、開業期に実現可能な資金調達計画を立てることが重要です。

資金調達の一つの手段として、融資を受けることを検討されている方は以下の記事もご覧ください。

③指定申請

訪問看護ステーションを開設するため都道府県、指定都市(※1)、中核市(※2)、市区町村などの指定権者に届け出て 、介護保険法に基づく介護事業所としての指定を受けることをいいます。

この指定を受けることで介護保険を利用してのサービスを提供することができます。また、介護保険法に基づく指定を受けることで、医療保険の指定訪問看護事業者とみなされます。

これにより医療保険を利用してのサービスも実施することができます。

※1. 指定都市とは地方自治法で「政令で指定する人口50万以上の市」と規定されている都市のことを言います。
※2. 中核市とは地方自治法で「政令で指定する人口20万以上の市」と規定されている都市のことを言います。

指定申請の3つの基準(人員基準、設備基準、運営基準)

指定基準は厚生労働省令で定められ、条例によって詳細が規定されています。一般的に以下の3つの基準のことを指します。

  • 人員基準

    1. 保健師、看護師または准看護師を常勤換算方法(※1)にて2.5名以上配置していること

    2. 上記で配置する看護職員のうち1名は常勤であること

    3. 保健師又は看護師である管理者を1名配置していること(※2)。

    4. 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士を実情に応じた適当数配置していること(※3) など

  • 設備基準

    1. 事業の運営に必要な広さ(※4)の事務室を設けること

    2. 訪問看護の提供に必要な設備・備品を備えていること など

  • 運営基準

    1. サービスを提供するにあたって適切な運営規則が敷かれているか

    2. 顧客の個人情報に配慮した運営体制になっているか など

※1. 常勤換算方法とは、常勤職員は1名と数え、非常勤職員は勤務延べ時間数を当該事業所の常勤職員の所定労働時間で割ることで計算した人数で数えます。例えば、常勤職員の所定労働時間が週に40時間の場合、週に20時間(1日4時間週5日)の非常勤職員は、「0.5名」として数えます。
※2. 他の職務との兼務可。
※3. 配置は必須ではないため、配置しない事業所もある。
※4. 利用申込みの受付、相談等に対応できるスペースがある

指定申請のポイント

①申請書類と提出先は事前に確認しよう!
申請書類とその提出先については開業準備を始める段階で確認しておくと、その後の手順をスムーズに進められるのでおすすめです。

②指定申請時に必要な書類は担当行政のホームページを確認しよう!
提出が必要な書類は、あらかじめ管轄の自治体(指定権者)のホームページなどからダウンロードし、その書類を用いて指定基準を満たしているのかを確認しておきましょう。指定申請の締め切りのぎりぎりになって、準備に追われてしまうといった状況に陥ることを防ぐことができます。

指定申請を提出する際には、人員基準、設備基準、運営基準を満たした状態であることが必要です。

従って、事業所の物件探しや、リフォームの検討・準備、人員採用や事業所のホームページ作成、事業所を運営するための書類の準備など開業へ向けた本格的な準備を指定申請の前に行う必要があります。

特に物件探しやリフォーム、人員の採用は、時間を要するため開業時期を遅らせる大きな要因となり得ます。独立開業したいと思ったら、できるだけ早めに検討し準備に取りかかりましょう。

訪問看護ステーションの指定申請の手続きや、指定申請に必要な準備について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

指定申請以外に提出する届出

訪問看護ステーションの独立開業には指定申請以外に事前に必要な届出があります。

特に健康保険法の療養費や加算の取得のための厚生局への届出、医療保険の生活保護利用者対応(医療扶助)の届出、自立支援医療のサービス提供の届出は必ず行うべき届出です。

申請書類とその提出先については準備を始める段階で確認しておくと、その後の手順をスムーズに進められます。

またこれらの届出は提出先により期日が異なるため、あらかじめ届出の期日を確認しておく必要があります。

④営業活動と業務・管理体制を作る

指定申請の提出が終わると指定が下りるまでに1カ月から2カ月ほどの審査期間があります。

この間に利用者獲得に向けてどれだけ時間を費やすことができるかが訪問看護ステーションとしてスタートダッシュを切れるかどうかの大きなカギとなります。指定が下りたら営業活動をすぐに始められるよう、体制の準備をしておきましょう。

利用者を獲得するための営業活動

訪問看護ステーションにとって重要な営業先は、「ケアマネジャー」や「医療連携室の担当者」など訪問看護の利用開始に関わる職種です。

利用者の満足度をあげることはもちろんですが、居宅介護支援事業所・地域包括支援センターや医療機関が新規の利用者を受け入れた際に「ケアマネジャー」や「医療連携室の担当者」から継続的に紹介してもらえる状況を作ることが重要です。

「この利用者さんは、〇〇をしてくれるあの事業所に紹介しよう」と、担当者があなたのステーションのことを想起しやすい状態を目指していきましょう。

営業活動のためのツールとは?

基本的な営業活動に必要なツールを整理します。

せっかく営業に行ったとしても、ケアマネが利用者を紹介したいと思ったときにあなたの事業内容を想起できるツールがなければ効果は半減です。

また連絡を取りたいときにどこに連絡すればよいかわからなければ本末転倒です。

以下は営業活動で用意すべきツールです。事業所運営を始める際にはぜひ準備をしておきましょう。

  • 携帯電話

  • 名刺

  • メールアドレス

  • 事業所のホームページ

  • ソーシャルネットワークサービス(SNS)のアカウント

  • チラシやパンフレット

訪問看護の営業活動について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

ステーション運営に必要な業務・管理体制の構築

本格的な業務開始のため必要書類の作成や管理体制の構築を行っていきます。

訪問看護ステーションの運営には実際のサービス提供に加えて、「帳票」と呼ばれる利用者記録、伝票類、申請書類、保険請求書類の作成・管理等の業務が必要となってきます。

これらの業務は現場担当者にとって大きな負担となることが多く、税理士や社労士などの専門家に依頼する事業者もいます。

あらかじめ業務の発生する頻度と担当者に分けて言語化し、業務を「見える化」した状態で開業日を迎えるようにしましょう。そうすることでどの業務を専門家に依頼して、どの業務を事業所内で担っていくかなど戦略的に業務プロセスを構築することが可能になります。

以下は事業スタートに向けての業務構築例です。

  • 管理者業務

    1. 基準省令の理解、事業所の基本理念の理解、事業所の使命の理解など

    2. 人事労務管理:シフト作成・管理、研修企画・実施、給与管理

    3. 設備/備品管理:車両管理、建物管理(防火管理責任)、衛生管理、感染予防

    4. 運営管理:電子カルテ・請求ソフトのデータ管理、給付管理、苦情・事故・インシデントへの対応など

  • 契約前の業務

    1. サービスの概要説明

    2. 事業所の概要説明

    3. アセスメント

    4. 利用契約

    5. 利用者ファイル作成

  • 日時業務

    1. 朝礼(申し送り)

    2. 本人状態変化への対応

    3. 医療機関との連携

    4. サービス事業所との連携

  • 週次業務

    1. 伝達を目的とした会議

    2. 営業活動

    3. ガソリン給油

    4. 消耗品在庫確認・発注

  • 月次業務

    1. 月初業務(請求管理業務)

    2. 下旬業務(実績処理)

  • 年次業務

    1. 年間研修計画の実行

    2. 支援困難事例への対応

    3. 加算体制の管理

    4. 実地指導への対応

    5. 内部監査

まとめ

訪問看護は地域社会でのニーズが高く、固定の費用が少ないことからも収支状況が安定しやすいという特徴もあり、独立開業をしやすいサービス種といえます。

しかし、開業までにやらなければならないことが盛りだくさんです。

訪問看護ステーション向けの請求ソフト・電子カルテ『カイポケ訪問看護』には、訪問看護事業所の独立サポートを行う『開業支援サービス』があります。

専任のスタッフが、皆様の開業の疑問や不安に対応させていただきますので、開業・独立に関して疑問や不安がある方は、ぜひご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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