開業準備

訪問看護ステーションの独立に必要な準備とは?

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訪問看護ステーションの独立に必要な準備とは?
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

国内の65歳以上の高齢者は増加傾向で、2025年には日本人のほぼ3人に1人が65歳以上の高齢者となる見込みです。

このような背景から在宅医療の需要増加が見込まれており、訪問看護ステーションは重要性を増しています。実際に訪問看護の開業・立ち上げの件数も増加しています。

しかしながら「訪問看護ステーションを独立開業するにあたって何をすればよいか分からない」「実際に何から手を付けてよいか分からない」などの疑問はないでしょうか?

訪問看護ステーションの独立開業のために準備すべきことをまとめています。ぜひ最後までお読みください。

訪問看護を独立開業するまでの流れ

訪問看護ステーションを独立開業するための手順は大きく法人設立、資金調達、指定申請の3つに分けられます。

さらに指定申請には運営、設備、人員の3つの基準を満たすことが必要です。

指定申請後は独立開業に向けて業務プロセスの構築や利用者獲得(営業)など、事業所運営のための準備が必要です。

①法人設立

訪問看護ステーションを開業する第一歩は、法人設立です。なぜなら医療保険や介護保険から給付(報酬)を受けるために必要となる医療保険や介護保険の「指定」は法人にのみ認められているからです。

かつて訪問看護ステーションの開設は社会福祉法人や医療法人といった非営利法人にのみ認められていました。これらの非営利法人は税制などで優遇されているものの、法人設立のための基準が厳しく訪問看護ステーションへの参入は一般にとても難しいものでした。

その後、2000年の介護保険法の施行に伴い訪問看護ステーションは株式会社・合同会社などの営利法人の参入が認められました。それにより訪問看護ステーションを独立開業するハードルは以前に比べるとずいぶんと低くなりました。

法人設立の手順

新規開業の大半を占める営利法人を立ち上げる際の法人設立(登記)の手順について、以下に簡単にまとめています。

  • 会社設立準備

    1. 発起人の決定

    2. 事業計画の立案

    3. 資金の準備

    4. 基本的事項の決定

    5. 実印の作成

  • 定款作成(認証)

    1. 定款(※1)の作成

    2. 定款の認証 (株式会社のみ)

  • 出資金払込

    1. 定款の認証日より、後日に資本金の払込を発起人の銀行口座に行います

  • 登記書類申請

    1. 登記申請書に添付書類を合わせたものを製本し、それを法務局に申請します

  • 登記後

    1. 登記事項証明書の取得

    2. 印鑑証明書の取得

    3. 税務署、都道府県、年金事務所等の機関への届出

※1. 定款とは会社の憲法(ルール)と呼ばれている会社の事業目的が記された書類のことをいいます。

登記書類の申請方法は以下の3つがあります。

  • オンラインで提出

  • 電磁的記録媒体(CD-Rなど)で提出

  • 申請書に直接記載して提出

②資金調達

訪問看護の事業を運営するには、十分な資金を確保することが大切です。一般的な資金調達方法を紹介します。

資金調達方法

  • 自己資金

  • 身内や知人からの融資

  • 金融機関からの融資

  • 助成金/補助金 など 

自己資金や身内や知人からの融資では資金が不足する場合は金融機関からの融資で資金調達を行うのが一般的です。

また調達できる額は金融機関からの融資には及ばないものの、助成金や補助金は一定の条件をみたし審査に通過することができれば、国や自治体から支給される、原則返済義務のない資金なので申請準備に時間が使える場合は積極的に活用しましょう。

資金調達の重要性

一般的に訪問看護ステーションは財源が明確であり、収益が安定しやすいといわれています。

しかし計画的な資金繰りをしていなかったために開業準備途中や開業後に問題が発生していることも事実です。

「サービス提供日と報酬の入金日の時間差を考慮しておらず資金繰りが苦しくなる」、「立ち上げ期に従業員の給与が払えない」、「黒字化する前に資金が尽きてしまい閉鎖を余儀なくされる」という話も少なくありません。

このような事態の発生を防ぐためにも、開業期に実現可能な資金調達計画を立てることが重要です。

③指定申請

訪問看護ステーションを開設するため都道府県、指定都市(※1)、中核市(※2)、市区町村などの指定権者に届け出て 、介護保険法に基づく介護事業所としての指定を受けることをいいます。

この指定を受けることで介護保険を利用してのサービスを提供することができます。また、介護保険法に基づく指定を受けることで、医療保険の指定訪問看護事業者とみなされます。

これにより医療保険を利用してのサービスも実施することができます。

※1. 指定都市とは地方自治法で「政令で指定する人口50万以上の市」と規定されている都市のことを言います。
※2. 中核市とは地方自治法で「政令で指定する人口20万以上の市」と規定されている都市のことを言います。

指定申請の行政窓口

申請書類とその提出先については開業準備を始める段階で確認しておくと、その後の手順をスムーズに進められるのでおすすめです。

また、指定申請時に必要な書類は担当行政のホームページを確認しましょう。

提出する書類をあらかじめホームページなどからダウンロードし、その書類を用いて指定基準を満たしているのかを確認しておけば、指定申請の締め切りのぎりぎりになって、準備に追われてしまうといった状況に陥ることを防ぐことができます。

指定申請の3つの基準

指定基準は厚生労働省令で定められ、条例によって詳細が規定されています。一般的に以下の3つの基準のことを指します。

  • 人員基準

    1. 保健師、看護師または准看護師を常勤換算方法(※1)にて2.5名以上配置していること

    2. 上記で配置する看護職員のうち1名は常勤であること

    3. 保健師又は看護師である管理者を1名配置していること(※2)。

    4. 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士を実情に応じた適当数配置していること(※3) など

  • 設備基準

    1. 事業の運営に必要な広さ(※4)の事務室を設けること

    2. 訪問看護の提供に必要な設備・備品を備えていること など

  • 運営基準

    1. サービスを提供するにあたって適切な運営規則が敷かれているか

    2. 顧客の個人情報に配慮した運営体制になっているか など

※1. 常勤換算方法とは、常勤職員は1名と数え、非常勤職員は勤務延べ時間数を当該事業所の常勤職員の所定労働時間で割ることで計算した人数で数えます。例えば、常勤職員の所定労働時間が週に40時間の場合、週に20時間(1日4時間週5日)の非常勤職員は、「0.5名」として数えます。
※2. 他の職務との兼務可。
※3. 配置は必須ではないため、配置しない事業所もある。
※4. 利用申込みの受付、相談等に対応できるスペースがある

指定申請を提出する際には、人員基準、設備基準、運営基準を満たした状態であることが必要です。

従って、事業所の物件探しや、リフォームの検討・準備、人員採用や事業所のホームページ作成、事業所を運営するための書類の準備など開業へ向けた本格的な準備を指定申請の前に行う必要があります。

特に物件探しやリフォーム、人員の採用は、時間を要するため開業時期を遅らせる大きな要因となり得ます。独立開業したいと思ったら、できるだけ早めに検討し準備に取りかかりましょう。

指定申請以外の届出

訪問看護ステーションの独立開業には指定申請以外に事前に必要な届出があります。

特に健康保険法の療養費や加算の取得のための厚生局への届出、医療保険の生活保護利用者対応(医療扶助)の届出、自立支援医療のサービス提供の届出は必ず行うべき届出です。

申請書類とその提出先については準備を始める段階で確認しておくと、その後の手順をスムーズに進められます。

またこれらの届出は提出先により期日が異なるため、あらかじめ届出の期日を確認しておく必要があります。

営業や業務構築

指定申請の提出が終わると指定が下りるまでに1カ月から2カ月ほどの審査期間があります。

この間に利用者獲得に向けてどれだけ時間を費やすことができるかが訪問看護ステーションとしてスタートダッシュを切れるかどうかの大きなカギとなります。

利用者を獲得するための営業活動

訪問看護ステーションにとって重要な営業先はどこでしょうか?

利用者と考えられる事業所も多いようですが、キーマンは「ケアマネ」や「医療連携室の担当者」です。

利用者の満足度をあげることはもちろんですが、居宅介護支援事業所・地域包括支援センターや医療機関が新規の利用者を受け入れた際に「ケアマネ」や「医療連携室の担当者」から継続的に紹介してもらえる状況を作ることが重要です。

「この傾向の利用者さんはあなたの事業所に紹介しよう」という状態を目指しましょう。

営業活動のためのツール

基本的な営業活動に必要なツールを整理します。

せっかく営業に行ったとしても、ケアマネが利用者を紹介したいと思ったときにあなたの事業内容を想起できるツールがなければ効果は半減です。

また連絡を取りたいときにどこに連絡すればよいかわからなければ本末転倒です。

以下は営業活動で用意すべきツールです。事業所運営を始める際にはぜひ準備をしておきましょう。

  • 携帯電話

  • 名刺

  • メールアドレス

  • 事業所のホームページ

  • ソーシャルネットワークサービス(SNS)のアカウント

  • チラシやパンフレット

業務構築とは

本格的な業務開始のため必要書類の作成や管理体制の構築を行っていきます。

訪問看護ステーションの運営には実際のサービス提供に加えて、「帳票」と呼ばれる利用者記録、伝票類、申請書類、保険請求書類の作成・管理等の業務が必要となってきます。

これらの業務は現場担当者にとって大きな負担となることが多く、税理士や社労士などの専門家に依頼する事業者もいます。

あらかじめ業務の発生する頻度と担当者に分けて言語化し、業務を「見える化」した状態で開業日を迎えるようにしましょう。そうすることでどの業務を専門家に依頼して、どの業務を事業所内で担っていくかなど戦略的に業務プロセスを構築することが可能になります。

以下は事業スタートに向けての業務構築例です。

  • 管理者業務

    1. 基準省令の理解、事業所の基本理念の理解、事業所の使命の理解など

    2. 人事労務管理:シフト作成・管理、研修企画・実施、給与管理

    3. 設備/備品管理:車両管理、建物管理(防火管理責任)、衛生管理、感染予防

    4. 運営管理:電子カルテ・請求ソフトのデータ管理、給付管理、苦情・事故・インシデントへの対応など

  • 契約前の業務

    1. サービスの概要説明

    2. 事業所の概要説明

    3. アセスメント

    4. 利用契約

    5. 利用者ファイル作成

  • 日時業務

    1. 朝礼(申し送り)

    2. 本人状態変化への対応

    3. 医療機関との連携

    4. サービス事業所との連携

  • 週次業務

    1. 伝達を目的とした会議

    2. 営業活動

    3. ガソリン給油

    4. 消耗品在庫確認・発注

  • 月次業務

    1. 月初業務(請求管理業務)

    2. 下旬業務(実績処理)

  • 年次業務

    1. 年間研修計画の実行

    2. 支援困難事例への対応

    3. 加算体制の管理

    4. 実地指導への対応

    5. 内部監査

まとめ

訪問看護は地域社会でのニーズが高く、固定の費用が少ないことからも収支状況が安定しやすいという特徴もあり、独立開業をしやすいサービス種といえます。

しかし、開業までにやらなければならないことが盛りだくさんです。

訪問看護ステーション向けの請求ソフト・電子カルテ『カイポケ訪問看護』には、訪問看護事業所の独立サポートを行う『開業支援サービス』があります。

専任のスタッフが、皆様の開業の疑問や不安に対応させていただきますので、開業・独立に関して疑問や不安がある方は、ぜひご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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