訪問看護ステーション経営は儲かる?黒字化に必要な指標や運営体制を解説します
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株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部
看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。
目次
医療福祉・介護事業の中でも昨今注目されている訪問看護ステーション。全国では続々と新規開業する事業所が増えていますが、黒字経営を維持できるビジネスなのでしょうか?
「そもそも収益を上げる仕組みはどうなっているの?」「黒字経営のハードルは高いの?」といった疑問をお持ちの方々のために、訪問看護事業の経営実態や黒字化を目指す方法について詳しく説明しています。
訪問看護ステーションが儲かる理由
1.収益性が高い
訪問看護ステーションの事業は、訪問看護指示書の内容に基づいて看護職員等が訪問看護を実施し、診療報酬もしくは介護報酬を得ることで売上が立ちます。
一方で、ステーション運営上避けられない支出が人件費です。訪問看護を提供するにあたり、指定訪問看護ステーションの人員基準として看護職員は常勤換算で2.5人分を確保する必要があり、人件費が主な支出のひとつとなります。
収益を想定するには、訪問看護の利用料による売上総額と人件費とその他の経費等の支出総額を計算し、収支計画を立てることでおおまかな計算ができます。
介護報酬や診療報酬によって変動はありますが、訪問1件あたりの売上単価はおよそ8,000円になっています。このように、比較的高い単価が設定されている事業なので、訪問する回数を増やし、人件費を抑え、効率的にサービスを提供することで高い収益性を確保することができる事業となっています。
2.設備投資が少なく開設資金を最小限に抑えられる
介護保険事業を開業するためには、事業所を構える必要がありますが、訪問看護ではサービスを提供する場所が利用者の自宅なので、事務所を用意することで事業を開始することができます。
デイサービスや老人ホームなどと比較すると、面積が狭い事務所であり、設備基準で定められる設備・備品等も少ないことから、開業資金を最小限に抑えることができます。その結果、設備投資の減価償却や借入の利息が少なくなり、利益を出しやすい事業だと言えるでしょう。
3.今後も成長する事業である
日本は世界でも有数の超高齢社会であり、長寿化に伴う医療費の増大が問題となっています。厚生労働省は、将来人口推計をベースに2025年に必要とされるベッド数を推計した上で、効率的で質の高い医療体制と地域包括ケアシステムの構築を進めています。このような背景から在宅療養ができる体制は重要とされており、中でも訪問看護は地域の医療と介護の両軸を支える事業となっています。
訪問看護の利用者数は年々増加しており、2009年の利用者数が約23.6万人に対して2022年は約58.8万人で、2倍以上となっています。
(参考:介護給付費等実態調査|厚生労働省)
高齢化率はこの先も高まることが想定されており、訪問看護利用者数も増加傾向であることから、訪問看護ステーションは今後も成長する事業と考えられています。
全国の訪問看護ステーション経営状況について
介護事業については、厚生労働省が実施している経営に関する調査で平均の収支差率が公表されています。収支差率は、売上に対してどの程度利益があるかを示す経営指標です。
厚生労働省の調査によると、令和3年度決算における訪問看護の収支差率は7.6%(※)で、前年度比較で+1.9ポイント増加しています。介護事業全体の収支差平均が3.0%、前年度比較で-0.9ポイントとなっていることと比較すると、訪問看護事業は収支差率が高く利益が出やすい事業と言えるでしょう。
※収支差率は「新型コロナウイルス感染症関連の補助金収入を含めた差引③'」から記載
(参考:令和4年度介護事業経営概況調査結果|厚生労働省)
一方で、年々多くの訪問看護ステーションが新規開業をしている背景もあり、利用者獲得が上手くいかずに廃業するステーションも少なくありません。廃業率について知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
黒字化を目指す経営戦略とは?
今後も成長が見込まれる訪問看護事業ですが、すべての訪問看護ステーションが黒字化できているわけではありません。ここでは、開業前の準備期間や開業後のステーション運営において、黒字化を達成するために大切なことを3つお伝えします。
1.最小限の体制で運営をはじめましょう
訪問看護ステーションは訪問型サービスのため、事業所の設備については設備基準をクリアしていれば最小限の設備・環境から開業することが可能です。
開業時の設備・備品・ソフト・システムは、事業を適切に運営する上で必要かどうかを基準に判断し、選びましょう。
また、訪問看護ステーションの人員基準は、「看護職員を常勤換算で2.5人以上配置すること」と、「看護師資格を持つ管理者を1名配置すること」となっています。人員についても最小限からスタートし、事業の拡大に合わせて人員の増員を行うようにしましょう。
2.損益分岐点を計算し収支の調整を図りましょう
訪問看護ステーションの事業計画を立てる際には、開業後の損益分岐点がいつ頃になるかを明確にした収支計画書を立てるようにしましょう。
損益分岐点とは、売上と支出のグラフを示した場合に、この2つの額が全く同じ額となり、利益が±0(プラスマイナスゼロ)になっている点のことを指します。
損益分岐点を超えると利益が生まれ、一方で売上額がこれ以下になると赤字になるという状態です。
収支計画書については、開業後の収入項目と支出項目をできる限り網羅した上で、現実的に達成できる収支額を月単位で記入し、開業月〜24か月(2年間)分を作成しましょう。
収入の計算方法
訪問看護事業の主な収入源は訪問看護を提供した結果として得られる診療報酬や介護報酬であり、看護職員1人あたりの訪問件数が多ければ多いほど売上総額は上がる構造です。
月間の売上を計算する際には、訪問看護1件の単価をおよそ8000円と想定し、1日あたり1人の看護職員が何件訪問できそうか、そして1か月の実労働日数から売上総額を計算しましょう。
支出の計算方法
支出の項目は経営方針によって異なりますが、事業を継続するために売上高に関係なく発生する固定費と、毎月の売上高や利用量・時間等に比例して変動する変動費の2つについて想定される内訳を説明します。
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固定費
人件費(基本給など)、事業所の家賃や駐車場代、訪問用の車やコピー機などのリース料、ネットの通信料、光熱費、電子カルテや請求ソフトの利用料(定額制)、事業所の損害賠償保険料・火災保険料、利息など -
変動費
人件費(残業代、賞与や手当)、衛生物品(マスク、アルコール綿など)、車のガソリン代、口座引落手数料など
3.開業予定の地域の特性を徹底的に調査しましょう
開業予定の地域の特徴、特性について熟知することは非常に大切です。特に人口動態(世代別人口や人口の推移など)や、地域に存在する医療機関・介護福祉のサービス事業者を把握しておくことは必須です。開業予定の地域ではどのような医療・福祉サービスが必要とされ、訪問看護ステーションが必要とされているのか、今後も需要があるのかという観点で、市場を把握しましょう。
まとめ
訪問看護ステーションは介護事業の中では収支差率が高く、開業時の初期投資も最小限で始められることから、参入を検討する方も多くいらっしゃるかと思います。今後も成長する事業とみられていますが、すべてのステーション経営者が黒字化できるわけではありません。
開業前の資金計画や開業後の収支計画書を適切に作成し、計画に沿った運営を目指すことが大切です。
訪問看護事業の立ち上げ・その後の経営に不安を感じている方は、開業支援サービスや経営をサポートしてくれるサービスの利用を検討してみましょう。
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