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訪問看護ステーションの月間売上平均は約300万円!稼働率・売上アップの方法を解説

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訪問看護ステーションの月間売上平均は約300万円!稼働率・売上アップの方法を解説
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

訪問看護事業の経営において、事業の安定化や継続、そして拡大を目指すことは地域貢献につながるので、売上アップを目指す経営者の方も多いのではないでしょうか。

「売上をアップするためにはどうすればいいの?」「他のステーションはどのくらいの売上があるの?」といった疑問をお持ちの方へ、訪問看護ステーションの売上の平均や、売上をアップするために重要なポイントについて詳しく説明していきます。

訪問看護ステーションの売上の全国平均はいくら?

2020年の介護事業経営実態調査結果によると、訪問看護ステーションの月間平均の売上(介護報酬、介護予防含む)は約296万円で、看護職員常勤換算数は平均4.8人となっています。

月間平均売上の内訳は、月間の延べ訪問回数は平均377.5回、訪問1回あたりの売上は平均8,041円となっています。
(参考:令和4年度介護事業経営概況調査結果|厚生労働省

看護師一人当たりの月間の売上見込み

前述の調査結果によると、常勤の看護職員1人あたりの月間訪問回数は71.3回なので、
8,056円(訪問1回あたりの売上)×71.3回(常勤の看護職員1人あたりの訪問回数)=574,392円(看護師1人あたりの月間売上)となります。

また、月間の訪問回数から1日あたりの平均訪問件数を計算すると、月の労働日数が20日の場合は看護師1人で1日平均3〜4件訪問する計算になります。
全国平均と同じ訪問回数を実施した場合には、看護師1人でひと月当たり60万円弱の売上が立つ想定になります。

介護保険で算定率が高い訪問看護の加算ランキング

売上をアップするには訪問件数や訪問時間が重要な指標となりますが、加算を算定し、売上単価のアップを目指していくことも大切です。

介護保険において、全国の事業所で算定率が高い項目上位5つをご紹介します。

順位 加算名称 加算額 算定率
1位 緊急時訪問看護加算 574単位/月 77.02%
2位 特別管理加算(Ⅰ) 500単位/月 69.17%
3位 特別管理加算(Ⅱ) 250単位/回 68.03%
4位 初回加算 300単位/月 62.13%
5位 サービス提供体制強化加算 6単位/回 37.15%

(参考:訪問看護における主な加算等の算定状況|厚生労働省

訪問看護ステーションの稼働率は何パーセントを目指せばいい?

売上を維持・向上させるために、ステーションの稼働状況をどのように測定していけばいいのでしょうか。ひとつの方法として、稼働率を計算して稼働状況をステーション内で把握してみるのはいかがでしょうか。

ただし稼働率の計算は、明確なルールが決められているわけではありません。この記事では、職員の勤務延時間数とサービス提供時間数の割合から稼働率を計算する方法をご紹介します。

訪問看護事業所の稼働率は、以下のように算出します。
稼働率=1か月のサービス提供時間数の合計÷1か月の勤務時間数の合計

1か月のサービス提供時間数は、請求データから集計することができますので、請求ソフトを利用している場合は、簡単に算出できるでしょう。
また、1か月の勤務時間数の合計についても、勤怠管理ソフトから残業時間等も含めた勤務時間数をすぐに算出できます。

訪問看護ステーションの場合、稼働率はだいたい60%以上を目指すとよいと言われています。これは1日の業務で想定すると、8時間の勤務のうち4.8時間以上を訪問看護の提供時間に費やすイメージです。1回の訪問で必要な提供時間と、次の訪問先への移動にかかる時間を考慮しなければいけないので、無理のない範囲で稼働率の目標設定をしましょう。

訪問看護ステーションの売上をアップする方法

訪問看護ステーションの売上をアップするためには、「訪問回数を増やす」ことを中心に考えるのが良いでしょう。そして、訪問回数を増やすための取り組みを詳しく説明します。

1.事業所を認知してもらうために広告・広報活動を行い、お問い合わせ数を増やす

広告・広報活動を行い、皆様の訪問看護ステーションについて知ってもらう機会を増やすことは、問い合わせを増やすために有効な方法です。

在宅療養が必要な場合に相談できる場所として地域に溶け込めるよう、以下のような活動例をご紹介します。

  • チラシを新聞折込で配布する

  • チラシを地域住民が訪れる場所に掲載する(スーパー、掲示板、回覧板等)

  • 事業所を子ども110番の家として登録する

  • タウン情報誌等へ広告を掲載する

  • 自治体や地域での活動に積極的に参加する

  • InstagramやFacebookなどのSNSで情報を発信する

2.医療機関やケアマネジャーに効果的な営業活動を行い、利用者を増やす

訪問看護ステーションは、医療機関や居宅介護支援事業所のケアマネジャーとの関係構築が利用者の獲得につながります。以下のような機関・担当者には、定期的に営業活動を行いましょう。

  • 居宅介護支援事業所のケアマネジャー

  • 地域包括支援センターのケアマネジャー等

  • クリニック、診療所の医師

  • 病院の地域医療相談室の医療ソーシャルワーカー(MSW)

営業は、日程調整の連絡を事前に行った上で訪問することをおすすめしています。訪問して対面で話をすることで、わかりやすく伝えることができ、相手の様子・状況などを把握することができ、信頼関係の構築にも役立つでしょう。ですから、訪問時には、自身のステーションの状況や特徴、強みなどをわかりやすく伝えられるように準備しましょう。

また、営業は一度行ったら終わりというわけではなく、定期的に営業で訪問したり、先方が希望する連絡方法で情報を共有したりしながら、良好な信頼関係を築けるように継続してコミュニケーションを取りましょう。

3.看護師の訪問スケジュールを見直し、移動時間を短縮して訪問件数を無理なく増やす

訪問件数を増やすには、1日の訪問スケジュールを調整することも重要です。現在の訪問スケジュールで、次の利用者宅との距離が遠すぎないか、移動手段は適切かなどを確認し、非効率な移動があった場合には今後のスケジュールの立て方を改善するようにしましょう。

4.非効率的な業務を効率化し、1日の中で訪問できる時間数を増やす

事務作業などのノンコア業務が多いことで、訪問できる時間が少なくなっている場合もあります。現在の仕事のやり方の中に、無駄なルールや非効率な方法が含まれていたりしませんか?

例えば定例の会議の時間や内容、参加方法を見直してみる等、一度変更してみて業務に支障がないかどうかを試しながらスタッフ全員の時間を有効に活用できるように心がけてみましょう。

また、紙で記録や帳票管理を行っている場合は、手書きの記録から転記する時間、それをチェックする時間の削減を検討しましょう。電子カルテ・請求ソフトを導入すると、看護記録の入力が簡単になり、記録に入力した内容から転記することなく、他の帳票や請求データを作成でき、業務の効率化が図れます。

5.サテライト拠点を開設する

売上アップの方法のひとつとして、サテライト拠点を開くことも方法の一つです。
指定訪問看護ステーションは原則、事業所ごとの指定を受けることとされていますが、出張所のような目的で追加拠点(サテライト)を作ることができます。

厚生労働省は、医療ニーズのあっても地域住民が住み慣れた地域で在宅療養ができるよう、山間部や過疎地域でのサテライト拠点制度の活用を推進しています。

サテライトを設置するには以下の基準をクリアする必要があります。

  1. 利用申し込みの調整や、訪問看護の提供状況の把握、職員に対する指導が一体的に行われる

  2. 職員の勤務体制・内容等が一元的に管理されている。必要な場合に随時、事業所や他のサテライト間で相互支援ができる体制である

  3. 苦情処理や損害賠償等に一体的な対応ができる体制にある

  4. 事業の目的や運営方針、営業日・営業時間、利用料等サービスに関する同一の運営規定が定められている

サテライトを設置することは在宅医療を必要としている地域住民にとってもメリットがあるだけでなく、訪問看護ステーションにも売上アップというメリットがあるので、サテライト事業所を設置できる市町村に所在する場合は、指定権者へ問い合わせをしてみるのも良いでしょう。

まとめ

訪問看護ステーションの売上を上げるには、訪問回数を増やすことを中心に考え、そのためには事業所の認知を拡げ、営業活動を行い、スケジュールの見直しや業務効率化を進めることが有効なことをお伝えしてきました。

訪問看護ステーションを運営していく中で、「目標としている売上に届かない」という状況は起こり得ます。そのような時には、この記事でご紹介した内容を参考に、売上アップのための取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。

この記事が訪問看護ステーションを経営されている方や、今後開業を検討されている方にとって少しでも参考になれば幸いです。

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