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【経営者必見】調査データに学ぶ「看護師に選ばれる訪問看護ステーション」経営戦略

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【経営者必見】調査データに学ぶ「看護師に選ばれる訪問看護ステーション」経営戦略
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

訪問看護ステーションの経営者・管理者の皆様にとって、看護師の採用と定着は、事業運営における最重要課題の一つではないでしょうか。在宅医療の需要は高まる一方ですが、肝心の人手が確保できなければ、質の高いサービス提供も事業拡大も難しくなります。
本記事では、株式会社エス・エム・エス(ナース専科)が実施した『看護師の働き方に関する意識調査2025』結果をもとに、訪問看護を希望する看護師は、具体的に何に魅力を感じ、逆に何を不安に思っているのか、訪問看護ステーションが「選ばれる職場」となるための経営的なヒントをご紹介します。

「看護師の働き方に関する意識調査2025」の調査概要

◆ 調査対象
【看護職】「ナース専科」「ナース専科 転職」「ナース専科 就職」を利用している看護職
【事業者】「ナース専科 転職」「ナース専科 就職」を利用している事業者
◆ 有効回答人数
【看護職】9,304名
【事業者】542名
◆ 調査期間
【看護職】2025年2月3日(月)~2025年2月28日(金)
【事業者】2025年3月3日(月)~2025年3月31日(月)
◆ 調査方法
WEBを使用したアンケート
◆ 調査実施者
株式会社エス・エム・エスナース専科

訪問看護市場の動向

まずは、訪問看護ステーションへの意識調査の結果について触れる前に、訪問看護の市場がどう変化しているのかについて解説します。
日本は急速に高齢化が進行しており、在宅での介護や療養のサポートを必要とする方が増え続けています。これに伴い、訪問看護のニーズも一貫して高まっています。
高齢者人口は2040年頃にピークを迎えると予測されており、在宅医療を支える訪問看護の需要は、今後もさらに拡大していく見込みです。

    訪問看護ステーション数の推移

(参考:令和7年度 訪問看護ステーション数 調査結果|一般社団法人全国訪問看護事業協会

訪問看護の「魅力」と「応募のハードル」

看護師が訪問看護ステーションでの勤務を希望する理由と応募のハードルとなっている点は、採用戦略を考える上で大切な情報になります。

看護師の4人に1人以上が「訪問看護ステーション」を将来の就業先候補としている

看護師に訪問看護への関心についてアンケートをとったところ、4人に1人以上が訪問看護ステーションを将来の就業先候補としてることがわかりました。

就業経験がないと答えた7969人の訪問看護への関心アンケート結果

訪問看護の魅力

アンケート回答の結果を見ると、訪問看護を希望する看護師は、就業経験の有無にかかわらず、「在宅医療への社会的な意義」や「利用者(患者)さんとじっくり向き合える点」、そして夜勤がないなど「ワークライフバランスのとりやすさ」に強い魅力を感じていることがわかります。

訪問看護の就業経験がある(現在・過去)と答えた方の回答

就業経験がある1335人の訪問看護にポジティブな理由のアンケート結果

訪問看護の就業経験がないかつ関心があると答えた方の回答

就業経験がないかつ関心があると回答した2725名の訪問看護に関心がある理由のアンケート結果

応募のハードルとなっている点

一方、訪問看護への勤務をためらう理由としては、「一人で訪問することの怖さやプレッシャー」や「緊急時の対応への不安」、そして「オンコール対応の負担」が上位を占めています。

訪問看護の就業経験がある(現在・過去)と答えた方の回答

訪問看護の就業経験がある1335名の訪問看護にネガティブな理由のアンケート結果

訪問看護の就業経験がないと答えた方の回答

訪問看護の就業経験がないかつ関心があると答えた5244名の訪問看護に関心が低い理由のアンケート結果

採用活動において、「地域貢献」や「利用者と向き合えるやりがい」といったポジティブな魅力を最大限にアピールすることが大切です。
しかし、それ以上に注力すべきは、応募のハードルとなっている点などの求職者の不安を解消する具体的な体制を提示することかもしれません。 特に「一人での訪問・判断への不安」や「オンコール対応」が大きなハードルとなっていることからも、入職後の手厚い教育プログラム、同行訪問などのOJTの充実、判断に迷った際に管理者や先輩へ相談しやすい体制があることを明確に打ち出すことが、応募のハードルを大きく下げる鍵となるでしょう。

訪問看護ステーションの「働きやすさ」の実態

訪問看護は「働きやすい」というイメージが先行していますが、実態はどうでしょうか。同調査の事業者(※)回答から、病院と比較したデータを見ていきます。

(※)ここでいう事業者とは、アンケートに回答してくれた「ナース専科 転職」「ナース専科 就職」を利用している事業者を指します。内訳は病院(41.5%)、介護施設(19.9%)、クリニック・診療所(16.6%)、訪問看護ステーション(14.9%)、その他(7.0%)となっています。

看護師の過不足状況

まず、人手不足の状況です。「大幅に不足している」「やや不足している」と回答した割合の合計が、訪問看護ステーションでは83.9%、病院では82.6%を占めました。

訪問看護ステーションの人手不足感は、病院と同様に深刻な経営課題であることがわかります。

施設形態別の看護師の過不足状況のアンケート結果

看護師の月平均超過勤務時間

働きやすさの指標となる残業時間について見てみましょう。
「月平均の超過勤務時間が1時間以上〜5時間未満」と回答した割合の合計が、訪問看護ステーションでは28.4%、病院では34.7%でした。

施設形態別の看護師の月平均超過勤務時間のアンケート結果

訪問看護ステーションは、月平均の超過勤務時間が1時間未満の残業があるものの、「1時間以上〜5時間未満」+「5時間以上〜10時間未満」と回答した割合の合計が病院と比較して10ポイント以上低く、ワークライフバランスを重視する看護師にとって働きやすさのアピールポイントとなりそうです。

有給休暇取得率

有給休暇の取りやすさを見てみましょう。 「有給休暇の取得率が80%以上」と回答した割合の合計が、訪問看護ステーションでは43.2%、病院では27.6%でした。

施設形態別の年次有給休暇の取得率のアンケート結果

有給休暇取得率も訪問看護ステーションが病院を15ポイントほど上回っています。
残業が少なく、休みも取りやすいという事実は、看護師が職場を選ぶ上で非常に大きな魅力となります。

2024年度の賃上げ

給料に直接影響のある処遇改善の状況はどうでしょうか。
基本給、手当、両方の引き上げを実施したと回答した割合の合計は、訪問看護ステーションでは50.7%、病院では81.8%でした。

施設形態別の2024年度の賃上げのアンケート結果

賃上げ実施率の合計は病院(81.8%)が高いものの、最も手厚い「基本給・手当ともに引き上げ」た割合は、病院(10.7%)と訪問看護ステーション(9.9%)で大きな差はありませんでした。
訪問看護ステーションは、「引き上げを実施しなかった」割合(35.8%)が病院(11.6%)より高く、処遇改善に取り組む事業所とそうでない事業所との二極化が進んでいる可能性が考えられるでしょう。

求職者から「選ばれるステーション」になるために、経営者・管理者の皆様は、自ステーションの残業時間や有給取得率を客観的な数値で示し、「働きやすさ」を具体的にアピールしていくことが重要といえるでしょう。

看護記録の作成管理(ICT率)

スタッフが働きやすい環境づくりのために、業務効率化のためのICT化は欠かせません。
事業者回答による、看護記録のICT化(「ICT機器のみ」または「手書きと併用」)の状況を見ていきます。ICT機器のみ、手書きとICT機器の併用と回答した割合の合計が、訪問看護ステーションでは100%、病院では80.9%でした。

施設形態別の看護記録の作成・管理に関するアンケート結果

訪問看護ステーションでは、調査対象のすべての事業所が何らかの形でICT機器を導入している結果となりました 。特に「ICT機器のみ」での運用が77.8% となっており、ICT機器の活用が業務効率化と残業削減に直結していると考えられるでしょう。

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訪問看護ステーションの課題

訪問看護ステーションについて求職者視点での働きやすさについて解説してきましたが、訪問看護ステーションの経営者が抱えている課題について事業者回答をもとに解説します。

採用状況

「看護師(常勤)」の採用が「十分に充足した、ある程度充足した」と回答した事業所の割合の合計が、訪問看護ステーションでは50.6%、病院では61.8%でした。

施設形態別の看護師の採用状況のアンケート結果

訪問看護ステーションは病院と比べても採用充足率が低く、採用に苦戦している事業所が多い実態がうかがえます。
前述の「看護師の過不足状況」とも関連しますが、訪問看護ステーションは病院と比べても採用充足率が低く、採用に苦戦している訪問看護ステーションが多い実態がうかがえます。

施設形態別の看護師の過不足状況のアンケート結果

教育・研修の課題

最後に、採用後の課題です。
「教育・研修」について課題を「とても感じている、まあ感じている」と回答した事業所の割合の合計は、訪問看護ステーションでは92.6% 、病院では88.5%でした。

施設形態別の教育・研修の課題感のアンケート結果

病院、訪問看護ステーションの両方が高い割合で「教育・研修」について課題を感じてることが分かります。

全体としての具体的な課題の上位は、「現場の仕事が忙しくて教育・研修に参加させにくい」、「教育・研修担当者が十分な時間を割けていない」 となっており、時間や人員リソース不足が要因といえるでしょう。また、指導方法のばらつきや、研修計画や目標が明確ではないなど研修自体のノウハウがないことも考えられます。

教育・研修の課題・お困りごとのアンケート結果

まとめ|選ばれるステーションになるために

本記事では、看護師へのアンケート結果から、他施設と比較した訪問看護業界全体の魅力と課題について解説してきました。

訪問看護の魅力である働きやすさを数字でアピール

「残業5時間未満の事業所が6割超」、「有給取得率80%以上の事業所が4割超」、「ICT化率100%」 といった事実は、訪問看護ステーションの明確な「強み」です。
ワークライフバランスを求める看護師層へ、これらの具体的な数値をアピールしていくことが採用成功の鍵となります。

教育体制の整備や同行訪問などで求職者の不安を解消

在宅医療の需要が高まる中、訪問看護ステーションへの関心も4人に1人が訪問看護に興味を持っている今、「教育体制が不安で踏み出せない」層を取り込むことができれば、深刻な採用状況の改善にも繋がるはずです。
特に、9割以上のステーションが課題を感じている「人材育成」に対し、eラーニングの導入、地域のステーション同士での合同研修、行政の補助金活用など、人材育成へ力を入れてもいいかもしれません。
訪問看護ならではの「やりがい」や「魅力」をしっかりと伝え、同時に求職者の「不安」に寄り添い、それを解消できる体制を整えることが重要です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

(出典:約1万人に聞いた看護師の働き方に関する意識調査2025|株式会社エス・エム・エス ナース専科
(出典:医療機関・介護施設に聞いた看護師の働き方に関する調査2025|株式会社エス・エム・エス ナース専科

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