訪問看護の認定看護師になるには?費用、期間、学校、資格取得のメリットなどをご紹介!
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株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部
看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。
目次
訪問看護で働いている方やこれから訪問看護に転職しようと考えている方は、「キャリアアップのために認定看護師を資格を取りたい」、「訪問看護での実務経験で、どの分野の認定看護師を目指せるの?」と思っているのではないでしょうか?
訪問看護で活躍する看護師が取得している認定看護師の分野は「在宅ケア」の分野が多いですが、それ以外の分野でも資格を取得することができます。
今回は、訪問看護での実務経験で目指せる認定看護師の資格・分野について詳しく解説していきます。
認定看護師とは?
認定看護師とは、特定の看護分野において熟練した看護知識や経験を持つ看護師として日本看護協会から認定を受けることで取得できる資格です。
認定看護師制度の看護分野は、「クリティカルケア」や「緩和ケア」など、様々な医療・福祉・介護の現場において必要とされる看護が専門領域ごとに分類されています。2019年以前は21分野が設けられていましたが、2019年の認定看護師制度の改正により分野の統合・名称変更が行われ、現在は19分野が設定されています。
日本看護協会は、認定看護師の役割を以下のように定めています。
1.個人、家族及び集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術及び知識を用いて水準の高い看護を実践する。(実践)
(引用:認定看護師|日本看護協会)
2.看護実践を通して看護職に対し指導を行う。(指導)
3.看護職等に対しコンサルテーションを行う。(相談)
認定看護師は、高いレベルの看護を直接的に提供するだけでなく、周囲の看護職の看護技術向上に寄与する役割を求められています。
認定看護師の資格を取得するためには、以下の要件を満たし、その上で指定を受けた教育機関でカリキュラムや実習等を修了後、認定審査に通る必要があります。
看護師免許を持つ
5年以上の実務経験がある
実務経験のうち専門領域での実務経験が3年以上を占める
認定看護師の資格は更新制です。資格取得後は、5年ごとに資格更新のための審査があり、審査に通るためには以下の要件を満たす必要があります。
更新申請時に認定看護師資格を失効していないこと
過去5年間に2000時間以上の看護業務を行った実績と、自己研鑽として点数換算される研修活動や学会参加等を行い、計50点以上と認められること
がん放射線療法認定看護師
がん薬物療法看護認定看護師
緩和ケア認定看護師
摂食嚥下障害看護認定看護師
糖尿病看護認定看護師
皮膚・排泄ケア認定看護師
認知症看護
通算5年以上、看護師として実務経験を積み、このうち3年以上を訪問看護業務などの在宅ケア領域で看護経験を積む
在宅ケア認定看護師の認定教育を行う教育機関にて、指定のカリキュラム、特定行為研修を修了する
在宅ケア認定看護師の認定審査(筆記試験)を受ける
認定審査に合格後、資格登録手続きを行い認定証交付を受け、認定看護師名簿の登録を行う
資格更新は5年ごとに更新審査を受ける
通算3年以上、在宅ケア領域での看護実績を有すること。
医療依存度の高い患者の在宅における看護(在宅療養移行支援含む)を5例以上担当した実績を有すること。
現在、在宅ケアに携わっていることが望ましい。
気管カニューレ管理、胃ろうカテーテル・腸ろうカテーテル・胃ろうボタン管理、褥瘡又は 慢性創傷管理、輸液管理の知識・技術を有していることが望ましい。
(参考:認定看護師|日本看護協会)
訪問看護で多いのは「在宅ケア認定看護師」
訪問看護に従事する看護師は、「在宅ケア」の分野の認定看護師を目指す人が多いようです。「在宅ケア認定看護師」は、以下のような知識・技術が求められています。
・生活の場におけるQOLの維持・向上とセルフケア支援
(引用:認定看護師|日本訪問看護協会)
・対象を取り巻くケアシステムの課題に対する解決策の提案
・生活に焦点をあてた在宅療養移行支援及び多職種との調整・協働
・意思決定支援とQOLを高めるエンド・オブ・ライフケア
・身体所見から病態を判断し、気管カニューレの交換が安全にできる知識・技術
・身体所見から病態を判断し、胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換が安全にできる知識・技術
・身体所見から病態を判断し、褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去が安全にできる知識・技術
病院から早期に在宅療養へ移行する動きが強まっていること、そして、治療が必要な状況でも『住み慣れた自宅で過ごしたい』という患者さんの希望から、在宅療養においてもあらゆる事象に対応できる「在宅ケア認定看護師」のニーズは高まっています。
また、訪問看護ステーションの事業所数の増加に伴い、病院やクリニックに勤めていた看護師の訪問看護ステーションへの転職が増えているため、看護師の育成という点でも在宅ケア認定看護師の需要は高まっているといえるでしょう。
在宅領域で活躍する「在宅ケア」領域以外の認定看護師
訪問看護では、「在宅ケア」の分野以外にも、以下のような分野の認定看護師を目指すことができます。
※皆さんの実際の訪問看護における実務経験が、これらの分野の実務研修機関等に該当するかどうかは、日本看護協会にお問い合わせください。
旧)訪問看護認定看護師は2019年に終了
訪問看護領域の認定看護師といえば、「訪問看護認定看護師」を想起する方も多いのではないでしょうか?「訪問看護認定看護師」は、2019年に分野名が変更され、現在は「在宅ケア認定看護師」となっています。
名称が変更された理由は、病院に所属して退院支援を行う看護師がこの訪問看護領域の認定研修を受講するケースが増えたことで、「訪問看護」という分野名では認定看護師の役割が表現できなくなったためとされています。
在宅ケア認定看護師の取得方法、取得までの流れ
それでは、在宅ケア認定看護師に焦点を当てて資格取得までの流れやそれぞれの手続き等について説明します。
まず、資格取得・資格更新をするまでの流れは以下のようになります。
それでは、資格を取得するために必要な実務経験、教育機関、費用、期間などを詳しく見ていきましょう。
在宅ケア認定看護師を取得するために必要な実務経験は?
3年以上の訪問看護業務などの在宅ケア領域での実務経験について、具体的にどのようなことが要件とされているか説明します。必須要件と、資格上望ましい経験等については以下のように定められています。
【必須要件】
【望ましい技術・知識】
(参考:認定看護師|日本看護協会)
認定看護師教育機関はどこにあるの?
次に、在宅ケア認定看護師の研修を受けられる教育機関について説明します。
2023年3月時点においては、徳島大学大学院医歯薬学研究部看護リカレント教育センターで特定行為研修を組み込んだ認定看護研修が受けられます。
次年度以降の募集要項についてはまだ発表されていないので、都度、公益社団法人日本看護協会の認定看護師の教育機関に関するページを確認しましょう。
認定看護師の資格取得にかかる費用は?
在宅ケア認定看護師の取得にかかる費用は、およそ150万円です。
内訳としては、受験費用や入学料、特定行為研修や実習費用を含む学費に約140万円、その後の資格認定審査料と認定料に約10万円となっています。
認定看護師の補助金制度
認定看護師の資格取得にかかる費用が高額のため、資格取得支援として、所属する訪問看護ステーションに対して補助金を設けている自治体もあります。
例えば東京都の場合、入学金、授業料、認定審査料、認定教育受講中の給与等の合計額の半分を補助する「訪問看護ステーションにおける認定看護師資格取得支援事業」を提供しています。
令和5年度の場合は、補助対象とする事業所の予算規模が7事業所までなので、申請できるかどうかは確認が必要です。
※この補助金制度は在宅ケア、緩和ケア、認知症看護、緩和ケアの4領域の認定看護師資格取得に対して適用されます。
(参考:【補助金】令和5年度訪問看護ステーションにおける認定看護師資格取得支援事業|東京都保険福祉局)
認定看護師の奨学金制度
認定看護師の資格取得には奨学金制度も設けられています。
日本看護協会では、特定行為研修を含むすべての領域の認定看護師資格取得を目指す方に対して、年間120万円の奨学金制度があります。
こちらの奨学金は無利息で貸与されるので、認定看護師を目指す方々にとって心強い制度です。ただし、奨学金の貸与年度最終月の4か月後から一括ないし月割での返還が必要となることと、返還開始から2年以内に完済する必要があるので注意が必要です。
(参考:認定看護師教育課程奨学金|日本看護協会)
認定看護師の資格取得にかかる期間は?
在宅ケア認定看護師の専門領域の研修のカリキュラム上、受講や実習期間を含め約一年かかります。徳島大学の在宅ケア認定看護師のカリキュラムによると、選択科目を除く受講の合計時間は807時間とされています。
年間のスケジュールとしては、入学試験が前年度の1月に行われ、入学年度の4月から開講し、特定行為研修や実習を経て翌年3月までにすべての演習・試験が終了し修了式を迎えます。
A課程とB課程の違いは?
訪問看護領域においては、A課程を修了した場合は「訪問看護認定看護師」になり、B課程を修了した場合は「在宅ケア認定看護師」になります。
認定看護師制度改正のため、A課程の「訪問看護認定看護師」の教育は2026年に終了する予定です。
B課程の「在宅ケア認定看護師」の教育は2020年度から開始しており、特定行為研修を含む認定資格を得ることができます。
特定行為とは、高度な知識・判断力・理解力を持ち、特定行為研修を修了した看護師が、医師の手順書をもとに行うことができる38の診療補助行為です。
特定行為研修を受けた認定看護師は、この38の行為のうち、各領域の特定行為研修に含まれる行為については医師の指示のもと実施が可能となります。
現行のカリキュラムは特定行為研修が含まれる「B課程」ですから、これから認定看護師の取得を考えている方には「B課程」をおすすめします。
在宅ケア領域における特定行為研修とは
在宅ケア認定看護師のカリキュラムとして定められている特定行為研修は「在宅・慢性領域パッケージ」と呼ばれており、以下の特定行為の研修を行います。
・「呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連」:気管カニューレの交換
(引用:認定看護師教育基準カリキュラムの概要(特定行為研修を組み込んでいる教育課程:B課程教育機関)|日本看護協会)
・「ろう孔管理関連」:胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
・「創傷管理関連」:褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
現在、訪問看護認定看護師の資格を持っている場合は?
それでは、現時点でA課程の「訪問看護認定看護師」を取得している看護師の方は今後どのように資格を維持すればいいのでしょうか。
訪問看護認定看護師の資格は、「訪問看護認定看護師」として更新を継続するか、「在宅ケア認定看護師」に移行するかを選ぶことができます。
訪問看護認定看護師の資格を更新する場合には、A課程の認定更新審査を受け、合格することで現行の資格を継続(※)することができます。
※日本看護協会は、すでに従来の認定看護師資格の取得者に対する更新審査を永続的に実施すると表明しています。
訪問看護認定看護師から在宅ケア認定看護師への移行を希望する場合は、在宅ケア認定看護師の特定行為研修を修了し、手続きを行うことで、資格を移行することができます。
訪問看護で認定看護師の資格を取得するメリット・デメリットとは?
訪問看護ステーションに属する看護師が認定看護師の資格を取得することは、メリットとデメリットがありますので詳しく見ていきましょう。
メリット ①看護師としてキャリア形成ができる
認定看護師は、実務経験と知識・技術を兼ね備えたその領域の看護のスペシャリストとしてキャリア形成に役立ちます。
看護業務において更なる活躍をするために活かすことができ、また、研究やセミナー講師といった活動にも役立つ資格となっています。
メリット ②訪問看護ステーションの質の高さをアピールできる
認定看護師を取得することは、所属する訪問看護ステーションからの評価・待遇アップなどのメリットにもつながっています。
認定看護師がいることで、訪問看護ステーションは、対外的に「質の高いサービスを提供できること」をアピールできるので、他のステーションとの差別化、利用者獲得に役立ちます。また、ステーションの人材育成にも良い影響があるので、人材採用におけるアピールポイントにもなるでしょう。
デメリット①資格取得費用が高く負担が大きい
資格取得のデメリットとして、費用負担が大きいことが挙げられます。
資格取得には、およそ150万円の費用がかかり、補助金を受けられたとしても自己負担が発生します。資格取得後のライフプランやキャリア形成をしっかり考えた上で認定看護師の資格を取るべきか検討しましょう。
デメリット②研修や実習期間が長いため負担が大きい
資格を取得するには、学生として研修・実習等を受ける必要があるため、看護師として勤務する時間が減ってしまい、収入が減ることがデメリットとして挙げられます。
資格の取得を目指す場合は、在籍する訪問看護ステーションに訪問スケジュールやシフトの調整などの負担をかけてしまうので、ステーションの管理者に事前に相談すると良いでしょう。
まとめ
在宅ケア認定看護師を中心に、訪問看護領域における認定看護師の資格取得方法や費用・期間、資格取得におけるメリット、デメリットについて解説しました。
ご自身のキャリアを今後どのように育てていくのか、看護師としてどのように活動していきたいかを考えながら認定看護師の資格取得を検討しましょう。
この記事が訪問看護領域で活躍する看護師のみなさまにとって少しでも参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
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