訪問看護の医療保険・介護保険の違いとは?優先順位をフローチャートでわかりやすく解説
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株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部
看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。
目次
訪問看護ステーションでは、「介護保険が適用になる訪問看護」と「医療保険が適用になる訪問看護」を提供しています。
最近、訪問看護ステーションに入社した方は、利用者や家族から質問を受けた際や請求業務に携わる際に、「どちらの保険が適用になるの?」、「どうやって説明すればいいの?」といった悩みをお持ちではないでしょうか?
今回は、訪問看護サービスで適用される介護保険・医療保険の優先順位や料金、利用者の自己負担額などについてわかりやすく解説していきます。
訪問看護とは?
訪問看護とは、看護師等が利用者の自宅を訪問し、療養上の世話、診療の補助等を提供するサービスです。
訪問看護を利用できる方は、主治医から訪問看護が必要である旨の指示書を交付された方となっています。赤ちゃんから高齢者まで様々な年齢の方が対象となり、利用者の病気や障害の状況に応じて、医療的処置、身体状態の観察・療養支援、精神的支援、家族支援といったサービスを提供します。
訪問看護は、医療保険・介護保険(介護・介護予防)に対応している
通常の訪問看護は、主治医から訪問看護が必要だと判断され、公的保険(医療保険・介護保険)を適用して提供するサービスです。
その場合、医療保険が適用になるのか、介護保険が適用になるのかは、利用者の疾病の状況や要介護認定の有無等によって判断します。
医療保険と介護保険は併用できるの?
提供した訪問看護サービスは、医療保険と介護保険の両方が同時に適用になることはありません。
例えば、介護保険で訪問看護を利用中に症状や状態に変化があり、医療保険が適用になる場合は、主治医に報告し、特別訪問看護指示書等を交付してもらうことで、その次の訪問から医療保険での訪問看護に切り替わることになります。
医療保険・介護保険の優先順位がわかるフローチャート
利用開始時や利用者の状態の変化があった時に、「どちらの保険が適用になるの?」と迷ってしまうことがありますよね。
そのような疑問を解決するためには、以下のような簡易チェックができるフローチャートを使うと良いでしょう。こちらのフローチャートは無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
訪問看護で医療保険と介護保険の優先順位を確認するためのポイント
医療保険・介護保険のどちらが適用になる状態かを判断するためには、以下の5つのポイントを押さえましょう。
年齢
要介護認定
特定疾病
厚生労働大臣が定める疾病、状態等
特別指示
これらの状況が明確になっていると、すぐに医療保険か介護保険か明確になります。
年齢や要介護認定についてはすぐに確認ができる一方で「特定疾病」「厚生労働大臣が定める疾病、状態等」「特別指示」については、それらに該当する条件を理解していないと判断ができません。そこで、これらの用語が示す内容について解説します。
特定疾病とは
特定疾病とは、加齢に伴って起きる身体的・精神的変化に起因して、疾患が原因となり加齢減少が加速し要介護の状態になる原因として国が認定している16疾病のことです。
以下が特定疾病と認定されている疾患の一覧です。
末期腫瘍
関節リウマチ
筋萎縮性側索硬化症
後縦靱帯骨化症
骨折を伴う骨粗鬆症
初老期における認知症
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病※(パーキンソン病関連疾患)
脊髄小脳変性症
脊柱管狭窄症
早老症
多系統萎縮症
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
脳血管疾患
閉塞性動脈硬化症
慢性閉塞性肺疾患
両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
厚生労働大臣の定める疾病(別表7、別表8)・厚生労働大臣の定める状態等とは
「厚生労働大臣が定める疾病等」が別表第7、「厚生労働大臣が定める状態等」が別表8と呼ばれています。
「厚生労働大臣が定める疾病等(別表7)」は、以下の20疾患です。
末期の悪性腫瘍
多発性硬化症
重症筋無力症
スモン
筋萎縮性側索硬化症
脊髄小脳変性症
ハンチントン病
進行性筋ジストロフィー症
パーキンソン病関連疾患
多系統萎縮症
プリオン病
亜急性硬化症全脳炎
ライソゾーム病
副腎白質ジストロフィー
脊髄性筋萎縮症
球脊髄性筋萎縮症
慢性炎症性脱髄性多発神経炎
後天性免疫不全症候群
頸髄損傷
人工呼吸器を使用している状態
「厚生労働大臣が定める状態等(別表第8)」は、以下の状態です。
以下の状態にある者
在宅麻薬等注射指導管理、在宅腫瘍化学療法注射指導管理又は在宅強心剤持続投与指導管理を受けている
在宅気管切開患者指導管理を受けている状態、または気管カニューレや留置カテーテルを使用している
-
以下の指導管理を受けている状態
在宅自己腹膜灌流指導管理
在宅血液透析指導管理
在宅酸素療法指導管理
在宅中心静脈栄養法指導管理
在宅成分栄養経管栄養法指導管理
在宅自己導尿指導管理
在宅人工呼吸指導管理
在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
在宅自己疼痛管理指導管理
在宅肺高血圧症患者指導管理
人工肛門又は人工膀胱を設置している状態にある者
真皮を越える褥瘡の状態にある者
在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者
(参考:特掲診療料の施設基準等|厚生労働省)
特別指示とは
特別指示とは、特別訪問看護指示書を指しています。
特別訪問看護指示書は、主治医が疾病の急性増悪等によって頻回な訪問が必要だと判断した場合に交付する指示書です。特別訪問看護指示書の交付を受けた利用者に対する訪問看護は、14日間医療保険が適用となり、特別指示の有効期間中は、週に4日以上の訪問が可能となります。
また、特別訪問看護指示書は、
急性感染症等の急性増悪期
末期の悪性腫瘍等以外の終末期
退院直後で週4日以上の頻回の訪問看護の必要がある場合
の場合には、1月に1回交付されますが、
気管カニューレを使用している状態
真皮を超える褥瘡がある状態
の場合には、1月に2回まで交付されることがあります。
訪問看護の医療保険・介護保険の自己負担額・料金
医療保険や介護保険が適用になる訪問看護サービスは、報酬の1割~3割を利用者に負担していただくことになっています。
利用者の自己負担の割合は年齢や収入等に応じて決まっていますので、健康保険被保険者証・介護保険被保険者証などを確認しましょう。
訪問看護の医療保険の料金表
訪問看護を医療保険で利用する場合の自己負担額の料金表は以下のようになっています。
【医療保険の基本療養費】
利用料 | 10割 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
---|---|---|---|---|
週3日まで (看護師・理学療法士) :1日につき | 5,550円 | 555円 | 1,110円 | 1,665円 |
週4日目以降(看護師) :1日につき | 6,550円 | 655円 | 1,310円 | 1,965円 |
週4日目以降(理学療法士) :1日につき | 5,550円 | 555円 | 1,110円 | 1,665円 |
週3日まで (准看護師):1日につき | 5,050円 | 505円 | 1,010円 | 1,515円 |
週4日目以降(准看護師) :1日につき | 6,050円 | 605円 | 1,210円 | 1,815円 |
加算を含む全ての料金表については、以下よりダウンロードいただけます。
訪問看護の介護保険の料金表
介護保険の報酬は、サービスの内容によって定められる「単位数」に、訪問看護ステーションの所在地によって定められる「地域区分別単価」を掛けて算出します。
【地域区分別単価】
1級地 | 2級地 | 3級地 | 4級地 | 5級地 | 6級地 | 7級地 | その他 | |
上乗せ割合 | 20% | 16% | 15% | 12% | 10% | 6% | 3% | 0% |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1単位の単価 | 11.40円 | 11.12円 | 11.05円 | 10.84円 | 10.70円 | 10.42円 | 10.21円 | 10円 |
そのため、所在地によって利用者の自己負担の金額にも違いがあります。
今回は「その他」の地域に所在する訪問看護ステーションの自己負担額の料金表をご紹介します。
【介護保険-訪問看護費】
サービス利用時間 | 単位数 | 10割 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
---|---|---|---|---|---|
20分未満 | 313単位 | 3,130円 | 313円 | 626円 | 939円 |
30分未満 | 470単位 | 4,700円 | 470円 | 940円 | 1,410円 |
30分以上1時間未満 | 821単位 | 8,210円 | 821円 | 1,642円 | 2,463円 |
1時間以上1時間30分未満 | 1,125単位 | 11,250円 | 1,125円 | 2,250円 | 3,375円 |
理学療法士等による訪問の場合(1回につき) | 293単位 | 2,930円 | 293円 | 586円 | 879円 |
※指定訪問看護ステーションの場合
加算を含む全ての料金表については、以下よりダウンロードいただけます。
訪問看護サービスの説明資料に使える!お役立ちコンテンツの無料ダウンロードはこちら
訪問看護では、サービスの説明をする時や契約時に、「どちらの保険が適用になるのか」、「自己負担がいくらになるのか」をサービス提供者側が利用者や家族へ説明しなくてはいけません。
その説明を行う時に使える「フローチャート」や、「特定疾病・厚生労働大臣が定める疾病・状態等(別表7、8)」、「料金表」のひな形を用意しました。無料でダウンロードすることができますので、ぜひご活用下さい。
まとめ
いかがでしたか?訪問看護で介護保険・医療保険のどちらが適用になるのか、自己負担をどのように計算するのかなどをご紹介してきました。
訪問看護では利用者の状態の変化等が、報告内容や提供するサービスだけでなく、自ステーションの請求業務にも影響することを理解しておきましょう。そして、請求業務を行う方は、各利用者が介護保険と医療保険のどちらが適用になるのかを把握し、適切に報酬の請求を行いましょう。
もし、「間違えないか不安だ」、「請求業務が大変だ」と感じているのでしたら、訪問看護向けの請求ソフトの導入をご検討ください。
訪問看護向けの請求ソフトである『カイポケ訪問看護』は、利用者の情報と請求内容に相違がある場合にエラー表示がでるため、請求業務のミスを減らすことができます。請求業務に不安がある方や、請求業務を効率化したい方は、ぜひ『カイポケ訪問看護』までお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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