経営

【開業・事業拡大】訪問看護事業の融資の種類と選び方、融資までの準備や流れもご紹介

 更新日:

【開業・事業拡大】訪問看護事業の融資の種類と選び方、融資までの準備や流れもご紹介
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

「これから訪問看護事業を開業したい!」とお考えの方は、開業資金の確保をどうするか、悩む事が多いのではないでしょうか。そんな方に向けて、国や金融機関は開業を支援する融資サービスを提供しています。

また、訪問看護を経営していく中で、事業規模の拡大や訪問車両などに設備投資が必要なタイミングも訪れるでしょう。そのような際にも融資を受けることは有効です。

この記事では訪問看護事業向けの融資サービスの種類と選び方や、融資を受けるまでに必要な準備や流れを詳しく説明しています。

融資とは?

融資とは、「事業を行い利益を生むために、金融機関や公的機関からお金を借りること」を指します。訪問看護事業においては、開業や事業拡大を目的として、自己資金以外の資金調達方法として融資が利用されています。

一般的に融資でお金を借りた事業者は、利子を付けて返済します。一方、融資する側の金融機関や公的機関は、元金と利子を事業者から返済してもらう権利を持っています。万が一事業が失敗して倒産してしまうと金融機関は損失が出てしまうことになるので、事業者が安定的に元金と利子の返済が可能なのかを審査し、融資を行っています。

融資以外の資金調達方法

融資以外にも、資金を調達する方法はいくつかあります。ここでは、自己資金、補助金・助成金、ファクタリングについてご紹介します。

自己資金

自己資金とは、その名の通り「自己の所有する資金」のことを指します。これまで開業に向けて貯めてきた資金、退職金、贈与された資金で事業のために使用できる預金などが自己資金にあたります。

融資の審査の際には、事業で利用するための自己資金がどの程度あるのかが重要です。一定の自己資金が無ければ事業用に資金の融資を受けるのが難しいケースもあります。

補助金・助成金

補助金と助成金は、国や自治体などが、「政策の目的に合った取り組みを支援するために提供する資金」のことを指します。補助金や助成金は、返済する必要のない資金です。

2つの違いは審査の厳しさと実施期間にあります。一般的に補助金の方が助成金に比べて提供額が大きいため、審査も厳しいとされています。補助金は倍率が高く、審査に落ちることも珍しくありません。申請期間も助成金は長期で受け付けていることが多いですが、補助金は募集開始から締切までが短期間の傾向にあります。

資金調達としての補助金・助成金は、資金が手元に来るタイミングに注意が必要です。補助金・助成金は後払いが原則なので、補助金・助成金以外の資金で事業を実施し、後から清算払いを受けることになります。融資と異なり返済義務のない資金調達方法なので、有効に活用したいところですが、申請要件や実績報告の義務など制約が多いので注意しましょう。

ファクタリングとは?

ファクタリングとは、「売掛金を売却して現金化する資金調達方法」のことを指します。訪問看護の診療報酬と介護報酬は、請求してから入金されるまでに約2か月かかります。

ファクタリングを利用すれば、本来の入金日よりも早く現金を得ることが可能になります。融資とは異なり、自社の売掛金を前倒しで得る資金調達方法なので、ファクタリングで受け取った資金の返済は不要です。

訪問看護事業向けの融資の種類

訪問看護事業向けの融資商品には、主に下記のような種類があります。

分類 金融機関名 融資用品名 主な利用用途
政策金融機関 日本政策金融公庫 新創業融資制度 新規開業に限る設備資金および運転資金
独立行政法人福祉医療機構 指定訪問看護事業融資 新規開業、新築、増築、機械購入、長期運転資金
信用金庫 京都中央信用金庫 スペシャルファースト 運転資金および設備資金
城南信用金庫 ライフケア・ローン 高齢者向け介護施設等の建設資金
地方銀行 京葉銀行 αBANKビジネスローン 運転資金および設備資金
十六銀行 チャレンジサポート 創業希望者/新事業開拓・展開希望者向け

新しく訪問看護ステーションを立ち上げたいとお考えの方には、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」がおすすめなので、後ほど詳しくご紹介しています。

訪問看護で融資を検討するタイミング・理由とは?

訪問看護で融資が必要となるタイミングは、具体的にどんな理由があるでしょうか?代表的な例をご紹介します。

訪問看護ステーションを開業するとき

訪問看護ステーションを開業するには、都道府県等から介護保険法に基づいた指定を受けるために、人員や設備、運営基準を満たさなければいけません。そのためには準備期間の人件費や事務所の賃貸契約費用、オフィス什器や衛生用品等の購入費用が必要です。

また、訪問看護ステーションを開業して利用者への訪問が始まっても、サービス提供の対価である医療報酬や介護報酬はすぐに給付されません。請求を行ってから、約2か月後に給付が入金されます。医療報酬と介護報酬が入金されるまでの運転資金等も開業資金として準備する必要があります。

開業初期から十分な利用者人数が確保できるかどうかは確実ではありません。想定よりも利用者が集まらなかった場合、報酬が十分に得られないこともあるので、必要となる運転資金の計算は慎重に行いましょう。

初期費用と運転資金を含めて、訪問看護ステーションの開業には少なくとも「おおよそ500万円〜1,000万円」の資金が必要になるでしょう。

事業を拡大するとき

訪問看護事業を拡大するときも、資金は必要です。職員数を増やしたり、サテライトや別の地域に事業所を増やしたり、訪問看護以外にも提供するサービス事業所を増やしたりして事業を拡大するには、先行投資が必要になります。事業拡大の方法や内容によって必要な金額は異なりますので、目的に合わせて融資を受ける金額を適切に見積もりましょう。

設備・システム・車両等を導入するとき

訪問看護の事業には様々な設備が必要です。ステーション内のオフィス家具やコピー機、書庫、パソコンや携帯電話をはじめ、訪問に利用する体温計や血圧計といった備品も必要です。

また、車で利用者へ訪問する場合は車両と駐車場代、損害保険の保険料も発生します。これらは経年劣化していくものなので、急な故障で買い替えのために資金が必要になることもあるでしょう。

融資を受けるまでの流れと準備すべきこと

融資を受けるまでの準備や流れをご紹介します。

①希望の融資額を決める

自己資金がどのくらいあるのかを確認し、必要な資金に加えてどのくらいの融資が必要なのか検討しましょう。融資の目的によって、希望の金額は異なるはずです。

例えば、日本政策金融公庫の調査によると、開業時の資金調達先は「金融機関からの借入(融資)」が平均803万円、自己資金が平均282万円となっています。

参考:「2021年度新規開業実態調査~アンケート結果の概要~

②融資を受ける金融機関を決める

融資を希望のする金額の目安が決まったら、融資を受ける金融機関を探しましょう。融資は金融機関によって金額の上限や金利、審査の厳しさが異なります。複数の金融機関を比較して、確実に返済ができるかどうかを検討しましょう。訪問看護事業の融資の選び方や比較ポイントは、後ほど詳しくご紹介します。

③申し込む

金融機関が決まったら、申込をします。融資商品によって申込方法も様々です。直接金融機関の窓口で申し込む方法以外にも、日頃からやり取りしている銀行の担当者に相談したり、オンラインで受け付けている場合もあるでしょう。

④審査に必要な書類を準備する

融資を受けるには審査があり、様々な書類の提出が必要です。申し込んだ金融機関に、必要な書類の詳細や提出期日等をしっかりと確認しましょう。一般的に、融資審査に必要とされる書類は次のようなものがあります。

  • 登記簿謄本(又は履歴事項全部証明書、現在事項全部証明書)

  • 事業計画書

  • 資金繰り表

  • 試算表

  • 資金使途資料

  • 決算書(貸借対照表、損益計算書など)

  • 印鑑証明書

  • 定款の写し

  • 銀行取引一覧表(銀行取引明細表)

  • 納税証明書

⑤融資担当者との面談を受ける(ない場合もある)

銀行融資を受ける場合、融資担当者と面談がある場合があります。提出した審査書類だけでは判断できない、事業者の人柄や人物像も見られます。自己資金の調達方法や、事業計画書の内容は自分の言葉で答えられるようにしておきましょう。

⑥審査

提出書類や面談の内容を基に融資すべきか審査がされます。融資の可否だけではなく、融資の額や金利、返済期間もこの審査で決まります。審査には早くて1週間〜長くて1か月ほどと、一定の期間を要します。

⑦融資契約を結ぶ

無事審査を通過すると、融資契約を結ぶことができます。手続き書類を提出しましょう。

⑧融資額の入金

契約後に、口座へ融資額が入金されます。同時に返済がスタートすることになりますので、返済計画に沿って遅延することなく安定して返済ができるように、しっかりと財務状況を管理して事業を経営しましょう。

訪問看護事業の融資の選び方・比較のポイント

融資の選び方や融資商品を比較する際のポイントは、以下のような点が挙げられます。

  • 融資限度額

  • 金利(利息・利率)

  • 融資期間

  • 担保/保証人の有無

  • 審査日数

  • 入金までの日数

  • 据置期間

  • 返済期間

訪問看護ステーションの新規開業が目的であれば、低金利で審査が通りやすいとされる政策金融機関を含めて比較するのが良いでしょう。訪問看護事業を継続して行っていて、事業拡大で希望する融資額が多いのであれば、審査が厳しくても融資の上限額が大きい民間金融機関も含めて検討するのが良いかもしれません。

融資を受けたい目的と希望の要件を満たす金融機関・融資商品を選びましょう。

訪問看護ステーションの開業におススメの融資

ここからは、訪問看護ステーションを開業する際におすすめの融資をご紹介します。

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」

「新創業融資制度」は新たに事業を始める人が他の融資制度と併用することで利用できる制度です。創業者を応援するためにできた制度のため、訪問看護ステーションの新規開業をお考えの方におすすめです。

申請要件

大きく3つの要件があります。

  1. 創業の要件
    新規で開業する方、もしくは事業開始後に確定申告を2回終えていない方

  2. 雇用創出の要件
    医療介護業界での実務経験がある場合はさらに審査に有利になります

  3. 自己資金の要件
    「創業資金の10分の1以上の自己資金があること」が要件です。創業資金に1,000万円必要な場合は、100万円の自己資金が必要です

特徴

次のような特徴があります。

  • 融資限度額が3,000万円(うち運転資金1,500万円)

  • 担保・保証人不要(連帯保証人の設定で年率が0.1%低減)

  • 年利率約1~2%台の低金利かつ固定金利

  • 運転資金は7年、設備資金は20年と返済期間が長い

  • 融資開始から2年間以内の据置(利息のみの返済)が可能

独立行政法人福祉医療機構の融資制度

独立行政法人福祉医療機構は、厚生労働省所管で国と連携して福祉医療の基盤整備を行っている独立行政法人です。社会福祉施設及び医療施設の整備のための貸付事業を行っており、指定訪問看護事業に係る設置・整備資金の融資を行っています。

申請要件

次の2つの要件があります。

  1. 物件の担保提供(原則として、抵当権は第一順位)
    融資対象事業の運営に利用する敷地、建物、地上権の担保提供が必要です。

  2. 担保物件に対する損害保険の付保と抵当権と同順位の質権設定

特徴

次のような特徴があります。

  • 融資限度額が500万円(ただし、所有資金の80%万円)

  • 担保・保証人不要(連帯保証人の設定で年率が0.1%低減)

  • 年利率0.9%の低金利かつ固定金利

  • 建築または購入、機械購入、賃借資金は7年と返済期間が長い

  • 融資開始から1年間以内の据置(利息のみの返済)が可能

開業・事業拡大の融資を受けるための事業計画書・収支計画書の作成にお困りでしたら『カイポケ』にご相談ください!

融資を受けるための審査では、主に事業計画書や収支計画書から返済能力を判断されます。それによって融資額や返済期間、金利も左右されるため、重要な書類です。

しかし、訪問看護ステーションを開業するにあたって「事業計画書や収支計画書を初めて作成する」という方も多いのではないでしょうか。カイポケでは、事業計画コンサルティングのサービスで、事業計画書や収支計画書、また創業計画書の作成をサポートしています。

また、「カイポケ開業支援」サービスでは開業支援専属アドバイザーが法人設立や指定申請など、訪問看護ステーション立ち上げ時の困りごとを無料でサポートしています。開業まで伴走してサポートし、資金調達で融資をご希望の方には、融資前の事前相談を「カイポケ開業支援」経由で設定することが可能です。

訪問看護事業で融資をご検討したい方は、カイポケまで是非お気軽にご相談ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は訪問看護事業の資金調達について、融資の種類や流れを中心にご紹介しました。

訪問看護事業は診療報酬や介護報酬の給付に2か月ほど時間がかかることから、運転資金を少なくとも2か月分以上確保することが必要になります。

用意できる自己資金を把握し、「融資によっていくら資金調達しなくてはいけないのか」、「返済を行うことができるのか」を確認し、融資を申し込む金融機関を探しましょう。

この記事でご紹介した内容が皆様の金融機関・融資商品を探すお役に立てば幸いです。

専属担当者に
すぐ相談できる!
カイポケ開業支援サービス

必要な機能がオールインワン

関連記事