訪問看護の仕事内容とは?1日のスケジュール・待遇・やりがいを解説
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医療WEBライター ささまほ
国立大学を卒業後、大学病院、障がい者福祉施設、離島クリニックの外来と訪問診療、訪問看護師を経て、在宅分野での豊富な経験と知識を活かし、『現場とWebから、誰もが自分らしい最期を送れる社会を』をモットーに、在宅医療専門ライターチームを運営。執筆・編集業でも活躍中。 正しい医療知識を広める会所属。
目次
はじめに
「訪問看護の仕事に興味があるけれど、具体的にどんなことをするのだろう?」 「病院の看護と何が違うのか、自分に向いているのか知りたい」 「将来的に訪問看護ステーションの開業を考えているが、まずは仕事の全体像を知りたい」
このように考えている方もいるでしょう。しかし、病院とは異なる環境で働くことへの不安や、給与・休日などの待遇面、必要な経験やスキルなど、疑問を感じる方も少なくありません。
この記事では、訪問看護師歴10年のライターが、訪問看護の基本的な知識から、職種別の仕事内容、1日のスケジュール、給与・休暇などの待遇、そして現場ならではのやりがいまでを解説します。
訪問看護の仕事内容を明確にイメージし、キャリアを考えるうえでの不安や疑問が解消されるよう、ぜひ参考にしてください。
訪問看護とは?
訪問看護とは、看護師などが利用者のご自宅を訪問し、主治医の指示に基づいて療養上のお世話や診療の補助を行うサービスです。病気や障害を抱えながら、住み慣れた環境で安心して過ごしたいという利用者さんとそのご家族の思いに寄り添い、生活の質(QOL)の向上を支えます。
在宅と施設内での訪問看護の違い
訪問看護の訪問先は、「個人のご自宅」と「高齢者施設など」の2種類があり、働き方や特徴が異なります。
両者の違いは以下の表のとおりです。
| 特徴 | 在宅での訪問看護 | 施設内での訪問看護 |
|---|---|---|
| 訪問場所 | 利用者個人の居宅 | 有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など |
| 働き方の特徴 | ・1日に数件、車や自転車で移動 ・一人の利用者とじっくり関われる ・個々の生活環境に合わせたケアの実践 |
・施設内のため移動の負担が少ない ・複数の利用者を効率的にケア ・施設の介護職員などと密な連携 |
| 求められるスキル | ・個別の状況に対応する応用力 ・一人で判断 ・対応する自律性 ・運転技術 |
・チームで連携する協調性 ・効率的なタイムマネジメント能力 |
利用者はどんな人が多い?
訪問看護を利用するのは、ご高齢の方というイメージがあるかもしれませんが、実際には赤ちゃんからお年寄りまで、幅広い方が対象です。利用の際は、主に「介護保険」か「医療保険」のどちらかが適用されます。
利用対象となる方は以下の例のとおりです。
病状の管理が必要な方
がん、心臓病、糖尿病などの慢性疾患
脳卒中後の後遺症
認知症や精神疾患
医療的なケアが必要な方
在宅酸素、人工呼吸器などの管理
褥瘡の処置
点滴や注射、カテーテルの管理
小児、難病の方
先天性疾患のある小児
筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの難病
看取り(ターミナルケア)を希望される方
住み慣れた自宅で最期を迎えたい方
看護師・准看護師
理学療法士(PT)
作業療法士(OT)
言語聴覚士(ST)
健康状態のチェック(バイタルサイン測定、問診)
身体の清潔ケア(入浴介助、清拭)
医療処置(褥瘡ケア、点滴管理、服薬管理)
ご家族からの相談対応や療養生活のアドバイス
ステーションの運営管理
事業計画の策定と収支管理
関連法規・制度の遵守と行政への届け出、監査対応
サービス品質の維持・向上
スタッフの管理
人材の採用、育成、評価
勤務シフトの作成と調整
スタッフが働きやすい環境の整備と精神的なサポート
外部との連携
地域の医療機関や介護事業所との連携強化
新規利用者の受け入れに関する調整
ケアマネジャーなどへの営業活動
健康状態の観察 バイタルサインの測定、病状や症状のチェック
主治医の指示による医療処置 点滴、注射、褥瘡の処置、カテーテル類の管理
療養生活の支援 身体の清拭や入浴介助、食事や排泄の援助、服薬管理
リハビリテーション 拘縮予防や機能訓練、福祉用具の利用に関する相談
精神的・心理的な看護 利用者や家族の不安に寄り添い、相談に応じる
ターミナルケア(終末期看護) 痛みの緩和、穏やかな最期を迎えるための支援
関係機関との連携 主治医やケアマネジャーへの状況報告と情報共有
レセプト(診療報酬明細書)業務 介護保険・医療保険の請求業務。ステーションの収益に直結する専門性の高い業務です。
電話・来客対応 利用者や家族、関係機関からの問い合わせ窓口となります。
経理・総務 備品管理や勤怠管理、経費精算など、事業所運営に関わる事務全般
書類作成・管理の補助 看護師が作成する訪問看護計画書や報告書などの書類管理をサポートします。
オンコールとは 勤務時間外に緊急連絡用の電話を携帯し、利用者さんからの緊急の相談や訪問依頼に備える当番制の勤務形態です。当番の日は自宅で待機し、必要に応じて電話対応や緊急訪問を行います。
オンコールの頻度と手当 事業所の人員体制によって異なりますが、月に数回程度が一般的です。待機日ごとや月単位で「オンコール手当」が支給され、緊急訪問した際には別途時間外手当が支払われるケースが多いです。
日本訪問看護財団の調査によると、2023年には介護保険で約78万人、医療保険で約44万人、合計で120万人を超える方々が訪問看護を利用しています。高齢化の進展や在宅医療へのシフトを背景に、訪問看護のニーズはますます高まっています。
必要な資格・経験
訪問看護の現場でケアを提供する専門職として、以下の国家資格が必要です。
法律上、訪問看護師になるための臨床経験年数は定められていません。しかし、訪問先では基本的に一人で判断し、ケアを実践する必要があります。そのため、採用の目安として「3年以上の臨床経験」を求めていることが多いです。
急変時の対応や多様な疾患への知識、利用者さんやご家族とのコミュニケーション能力など、病院などで培った経験は、在宅という予測が難しい場面で活きてきます。経験に不安がある方は、研修や同行訪問の体制が整っている事業所を選ぶとよいでしょう。
訪問看護師の1日のスケジュール
訪問看護師の一般的な日勤のスケジュール例を紹介します。事業所によって異なりますが、仕事の全体像をイメージする参考にしてください。
8:30 | 出勤・情報共有
ステーションに出勤後、夜間対応の報告を行います。利用者さんの状態変化や注意すべき点など、チームで最新の情報を共有します。
9:00 | 訪問準備・出発
当日の訪問スケジュールを確認し、必要な医療機器や書類などを準備して出発します。
9:30~12:00 | 午前中の訪問 (2件程度)
利用者さんのお宅や施設を訪問し、計画に沿った以下のようなケアを提供します。
12:00~13:00 | 昼休憩
ステーションに戻って昼休憩を取ります。記録入力や医師、ケアマネジャーへの連絡を行うこともあります。昼食をとりながらスタッフ間で情報交換をする時間にもなります。
13:00~16:30 | 午後の訪問 (2~3件程度)
午後は再び外回りに出て訪問します。処置内容は、点滴や排便コントロール、リハビリ支援など多岐にわたります。
16:00~17:30 | ステーションへ帰所・記録・報告
事業所に戻り、訪問内容を訪問看護記録書にまとめます。近年は、タブレット端末などを活用し、訪問先で記録を済ませる事業所も増えています。必要時、主治医やケアマネジャーといった関係各所へ、利用者さんの状態を報告します。
17:30 | 業務終了
翌日の準備を整え、業務は終了です。オンコール当番の日は、緊急連絡用のスマホなどを携帯して自宅待機に入ります。
訪問看護師は1日に平均4~5件の訪問をこなします。勤務は日中が中心ですが、多くのステーションでは24時間体制を支えるため、月に数回オンコールを担当するのが一般的です。
職種別にみる訪問看護の仕事内容
訪問看護ステーションは、管理者、看護師、事務スタッフなど、多様な職種がそれぞれの役割を果たすことで成り立っています。
管理者の仕事内容|チームの舵取り役
管理者は、ステーション全体の運営を担う責任者です。質の高いサービスを提供するための体制づくりから、スタッフの労務管理、経営管理まで、その業務は多岐にわたります。
看護師としての臨床経験に加え、組織をまとめるリーダーシップや経営的な視点が求められます。
看護師の仕事内容|利用者に寄り添う現場の中心
看護師は、訪問看護の最前線で利用者へのケアを直接提供します。主治医の指示に基づき、心身の状態や生活環境に合わせた看護を実践します。
利用者や家族と深い信頼関係を築きながら、その人らしい生活を支える、専門性とコミュニケーション能力が活かせる仕事です。
事務スタッフの仕事内容|現場を支える縁の下の力持ち
事務スタッフは、看護師が現場のケアに集中できるよう、バックオフィスからステーションの運営を支えます。
正確な事務処理能力はもちろん、訪問看護の仕組みを理解し、現場スタッフと円滑に連携する姿勢が求められます。
なお、事業所の規模によっては、専門の事務スタッフを配置せず、管理者がこれらの事務業務を兼任していることも少なくありません。
訪問看護の働き方と待遇
訪問看護への転職や就職を考える際、給与や休日といった待遇面は重要な判断材料です。
給料相場は?
厚生労働省の調査によると、訪問看護師(常勤)の平均給与額は以下のとおりです。
| 職種 | 平均給与額(月給) |
|---|---|
| 看護師 | 452,951円 |
| 准看護師 | 385,713円 |
| 理学療法士 | 406,419円 |
| 作業療法士 | 415,056円 |
(引用:令和4年度介護事業経営概況調査結果 p.9|厚生労働省)
給与額は、事業所の規模や地域、経験年数、オンコール回数などによって変動します。訪問件数に応じたインセンティブ制度を導入している事業所もあります。
病棟や介護施設勤務と比較して同等か、やや高い傾向にあります。夜勤はありませんが、夜間のオンコール手当や訪問件数に応じたインセンティブが含まれることが一因です。
基本給や手当、賞与の有無や額は事業所によって大きく異なるため、就職前の確認が大切です。夜勤がない分、体への負担が少なく、日中の勤務が中心となるため、ライフスタイルに合わせた働き方ができるのも訪問看護の魅力といえます。
休みは取りやすい?夜勤はある?
訪問看護の勤務形態は日勤が中心で、土日祝日を定休日としている事業所が多いのが特徴です。規則的な生活リズムを保ちやすく、家庭との両立がしやすい働き方といえます。
ただし、利用者さんの生活を24時間体制で支えるため、「オンコール体制」を敷いている事業所がほとんどです。
夜勤専門の訪問看護サービスを提供している事業所以外では、病院のような夜勤はありません。休日の取りやすさは事業所の規模や方針によりますが、カレンダーどおりの休みが確保しやすく、プライベートの予定は立てやすい傾向にあります。
看護師の4人に1人以上が訪問看護の就業を検討している
在宅医療の重要性が高まるなかで、訪問看護という働き方への関心も高まっています。
株式会社エス・エム・エスが運営する看護師向けコミュニティサイト「ナース専科」の調査によると、看護師のうち29.3%が訪問看護ステーションでの就業に「関心がある」と回答しました。これは、看護師の4人に1人以上が、将来のキャリアの選択肢として訪問看護を視野に入れていることを示しています。
さらに、訪問看護の勤務経験がなく、就業に関心があると答えた看護師にその理由を尋ねたところ、以下のような結果になりました。
(引用:【約1万人に聞いた看護師の働き方に関する意識調査2025】|株式会社エス・エム・エス)
これらの結果から、社会貢献性の高さや、一人ひとりの利用者と深く関わる看護の実践、そしてワークライフバランスの実現といった点に、多くの看護師が魅力を感じていることがうかがえます。
訪問看護で働くやりがいと知っておいた方がいいこと
訪問看護は、病院とは異なる環境だからこその魅力と、働くうえで知っておくべき側面の両方があります。ここでは、10年の経験から感じたやりがいと、心構えをお伝えします。
メリット|1対1で丁寧に向き合える
訪問看護の最大のやりがいは、利用者さんの暮らしに看護を通じて深く寄り添える点です。
病院では多くの患者さんを同時に受け持ちますが、在宅では一人の利用者さんとじっくり向き合う時間を確保できます。その方の人生に敬意を払い、病気や障害を抱えながらも「その人らしく生きるとは何か」を、ご本人やご家族、地域の多職種チームの中心で追求していくプロセスは、何にも代えがたい経験です。
決まったケアをこなすだけでなく、生活環境に合わせてケアを創造していく場面も多く、看護師としてのクリエイティブな側面を発揮できるのも、訪問看護ならではの醍醐味です。
デメリット|責任の重さと孤独感
訪問先では、基本的に一人で状況に対応しなくてはなりません。医師や同僚が常にそばにいるわけではないため、病院勤務とは異なる責任の重さや、時に孤独を感じることがあるかもしれません。
ただし、常に一人で抱え込むわけではありません。スマートフォンなどを活用して事業所とリアルタイムで相談できる体制も整っています。また、経験を積むと日中の関わりの中で夜間の緊急コールを予測し、未然に防げることも多くなります。
24時間体制を支えるオンコールは、利用者と事業所にとって不可欠ですが、少ない人数で当番を分担しているのが実情です。もしご家庭の事情などでオンコール対応が難しい場合でも、その負担をほかの誰かが担っていることへの配慮と感謝の気持ちを持つことが、チームで働くうえで大切です。
まとめ
訪問看護は、利用者の生活に深く寄り添いながら、その人らしい暮らしを支えるやりがいのある仕事です。一人で判断する責任の重さやオンコールの負担はありますが、これまで培ってきた看護の経験は必ず活かせます。また、日中中心の勤務で規則的な生活リズムを保ちやすく、ワークライフバランスも実現しやすい働き方です。訪問看護への転職や開業を検討している方は、まずは事業所見学や体験から始めてみてはいかがでしょうか。
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