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「介護予防訪問看護」は要支援の方が対象!介護保険(要介護)の訪問看護との違いを解説

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この記事は2021年度の介護報酬改定時の情報をもとに執筆しています

「介護予防訪問看護」は要支援の方が対象!介護保険(要介護)の訪問看護との違いを解説
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

要介護認定が要支援の方のうち、訪問看護が必要とされた方には「介護予防訪問看護」を提供します。これは要介護と認定された方に提供する訪問看護とは、実施する看護や算定料が異なるため、療養費や加算の算定上、注意が必要です。

そこで今回は、「介護予防訪問看護」の概要、通常の訪問看護との違いや介護予防訪問看護の療養費・加算の単位数についてご紹介します。

介護予防訪問看護とは

介護予防訪問看護とは、要支援1・2の方を対象に看護師等が利用者宅に訪問し、主治医の指示のもと介護予防(日常生活動作の維持・向上)に必要な療養支援や日常生活の援助等を行うサービスです。

介護保険法では、以下のように定義されています。

「介護予防訪問看護」とは、居宅要支援者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)について、その者の居宅において、その介護予防を目的として、看護師その他厚生労働省令で定める者により、厚生労働省令で定める期間にわたり行われる療養上の世話又は必要な診療の補助をいう。

(引用:>介護保険法第八条の二|厚生労働省

介護予防訪問看護では、具体的には下記のようなサービスを提供します。

  • 状態観察(バイタルサインの測定、経過の確認)

  • 食事、栄養指導

  • 褥瘡の発生予防につながるケア

  • 内服管理の支援・援助

  • リハビリテーション

  • 家族への指導や相談対応

  • 清拭、更衣、洗髪、爪切りなどの清潔ケア

  • 医療的処置(点滴、創傷・褥瘡処置、医療機器の管理)

介護予防訪問看護と通常の訪問看護の違い

介護予防訪問看護と要介護向けの訪問看護では、「目的と対象」、「基本報酬・加算の単位数」の2つに違いがあります。これら2つの違いについて解説していきます。

違い①目的と対象が異なる

介護予防訪問看護と要介護向けの訪問看護では、訪問看護を提供する目的とその対象が異なります。

それぞれの目的と対象となる方の違いを示します。

介護保険の介護予防訪問看護 介護保険(要介護)の訪問看護
目的 身体上若しくは精神上の障害があるために入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部若しくは一部について厚生労働省令で定める期間にわたり継続して常時介護を要する状態の軽減若しくは悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、又は身体上若しくは精神上の障害があるために厚生労働省令で定める期間にわたり継続して日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態 身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生労働省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態
対象者 要支援1,2の認定を受けた者 要介護1~5の認定を受けた者

(参考:介護保険法|厚生労働省

違い②基本報酬・加算の単位数が異なる(要支援者対象のリハビリも含む)

介護保険(要介護)の訪問看護と介護予防の訪問看護では、基本報酬が異なります。

介護保険(要介護)と介護予防訪問看護を比較すると、訪問看護費は介護保険(要介護)の方が単位数は多くなります。理学療法士による訪問についても同様です。

【訪問看護費の単位数の違い】

訪問看護費の違いは、介護予防訪問看護の方が介護保険(要介護)の訪問看護の単位数より少ないことです。

単位数の違いは表の通りです。

訪問看護費の項目 介護保険(要介護)
単位数
介護予防(要支援)
単位数
20分未満 313 302
30分未満 470 450
30分以上1時間未満 821 792
1時間以上1時間30分未満 1,125 1,087
理学療法士等による訪問の場合(1回につき) 293 283

【加算の単位数の違い】

介護予防訪問看護は介護保険(要介護)の訪問看護と以下の点で違いがあります。

  • 看護体制強化加算は1種類のみで単位数が少ない

  • 看護・介護職員連携強化加算がない

  • ターミナルケア加算がない

それぞれの加算における単位数は表の通りです。

加算の項目 条件等 介護保険
(要介護)
単位数
介護予防
(要支援)
単位数
初回加算 1月につき 300 300
退院時共同指導加算 1回につき 600 600
看護・介護職員連携強化加算 1回につき 250 -
看護体制強化加算(Ⅰ) 1月につき 550 -
看護体制強化加算(Ⅱ) 1月につき 200 -
(介護予防)看護体制強化加算 1月につき - 100
サービス提供体制強化加算(Ⅰ) 1回につき 6 6
指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所と連携して指定訪問看護を行う場合 
1月につき
50 -
サービス提供体制強化加算(Ⅱ) 1回につき 3 3
指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所と連携して指定訪問看護を行う場合
1月につき
25 -
複数名訪問加算(Ⅰ) 30分未満 1回につき 254 254
30分以上 1回につき 402 402
複数名訪問加算(Ⅱ) 30分未満 1回につき 201 201
30分以上 1回につき 317 317
長時間訪問看護加算 1回につき 300 300
緊急時訪問看護加算 1月につき 574 574
特別管理加算(Ⅰ) 1月につき 500 500
特別管理加算(Ⅱ) 1月につき 250 250
ターミナルケア加算 死亡月につき 2,000 -

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介護予防(要支援)の訪問看護の回数等の制限はある?

介護予防の訪問看護を実施するにあたり、提供できる訪問看護の回数等の制限はあるのでしょうか?ここからは、介護予防の訪問看護に関する注意点をご紹介します。

介護予防訪問看護は訪問回数の制限は設定されていない

介護保険(要介護)の訪問看護と同様に、看護師等が行う介護予防訪問看護に訪問回数の制限はありません。ただし介護保険では利用者に対する毎月の支給限度額が定められているため、支給限度額を超えた分の費用は利用者の自己負担となることに留意しましょう。

リハビリ職員による訪問看護には回数制限(減算)がある

介護予防訪問看護のうち、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリ職員が行う訪問看護(サービスコード:Ⅰ5)は、1週間あたりないし1日あたりの回数制限があります。定められた回数を超過すると、それぞれの回数制限に沿った減算が適用されます。これは介護保険(要介護)の訪問看護においても同様です。

1日の訪問回数・訪問時間の制限

リハビリ職員による介護予防訪問看護には1日の訪問回数と訪問時間に減算という形で制限が設けられています。

リハビリ職員による介護予防訪問看護が、1日に2回を超える(3回以上)もしくは訪問時間の合計が40分を超えた場合、50/100の減算となります。

1週間の訪問回数の制限

リハビリ職員による介護予防訪問看護には、1週間の訪問回数の制限も設けられています。

リハビリ職員による介護予防訪問看護については、以下のように定められています。

1回当たり20分以上介護予防訪問看護を実施することとし、1人 の利用者につき週に6回を限度として算定する。

(引用:介護保険最新情報vol.934 令和3年3月16日,p29|厚生労働省

訪問看護の2時間ルールは介護保険(要介護)の訪問看護と同様にある

訪問看護には、訪問と訪問の間は「2時間以上空けなければならない」というルールが存在します。このルールは通称「2時間ルール」と呼ばれています。

平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1) (平成24年3月16日)
Q.
1日に複数回の訪問看護を実施する場合、訪問看護終了後2時間以上経過していなければ必ず所要時間を合算するのか。
A.
20分未満の訪問看護と計画外で緊急に訪問看護を実施した場合は合算しない。 また、おおむね2時間としており、例えば計画上は、2時間後に訪問をする予定であったが、点滴注射等が早めに終了した等の理由で、若干時間に変動があった場合等は計画どおりの報酬を算定する。

(引用:平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1) (平成24年3月16日),p11|厚生労働省

この2時間ルールは、予防介護訪問看護においても適用されます。

そのため、前回の訪問から2時間未満で訪問看護を行う場合は、それぞれの所要時間を合算します。ただし、利用者の状態の変化などにより緊急の訪問看護を行う場合は除きます。

まとめ

要支援認定を受けた方が対象となる介護予防訪問看護と介護保険(要介護)の訪問看護との違いについて解説しました。

介護予防訪問看護は提供する利用者の対象が異なるだけでなく、訪問看護費や加算・減算の項目・内容が異なるため、介護保険請求の際には注意が必要です。

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