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訪問看護で算定可能な時間と単位数とは?2時間ルール・30分未満の訪問についても解説

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この記事は2024年度診療報酬改定時の情報をもとに執筆しています

訪問看護で算定可能な時間と単位数とは?2時間ルール・30分未満の訪問についても解説
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

訪問看護では、サービス提供時間によって報酬がどのように変わるかご存じでしょうか?

この記事では、介護保険・医療保険それぞれの報酬が決まる仕組みの違いをはじめ、2時間ルールや短時間訪問、長時間訪問について解説します。

訪問看護の提供時間は単位数・算定料に関わる?

介護保険の基本報酬と医療保険の精神科訪問看護基本療養費は、サービス提供時間によって報酬単価が変わります。医療保険の訪問看護基本療養費は、サービス提供時間によって報酬単価は変わりません。

【介護保険】訪問看護費は提供時間で単位数が変わる  

介護保険の基本報酬の場合、訪問1回あたりの報酬単価は訪問する職種とサービス提供時間で決まります。サービス提供時間が長いほど訪問1回あたりの報酬単価が増える仕組みです。

介護保険の報酬単価の構造
提供形態と提供時間 単位数
訪問看護ステーションの場合(1回につき) 20分未満 314単位
30分未満 471単位
30分以上1時間未満 823単位
1時間以上1時間30分未満 1,128単位
理学療法士等による訪問の場合 294単位
病院または診療所の場合(1回につき) 20分未満 266単位
30分未満 399単位
30分以上1時間未満 574単位
1時間以上1時間30分未満 844単位
定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスと連携する場合(1月につき) 2,961単位

※1単位の単価は地域区分によって異なります。

【医療保険】訪問看護基本療養費は週の訪問日数で算定料が変わる 

訪問看護基本療養費は、週の訪問日数や訪問する職種、利用者の状況によって、基本療養費(Ⅰ〜Ⅲ)が決まります。介護保険と違い、サービス提供時間の長さでは変わりません。

医療保険の報酬単価の構造

訪問回数は基本的に1日1回、週3回が上限です。
そのため1週間に「3日目までの訪問」と「4日目以降の訪問」では、基本療養費として算定できる金額が変わります。
※ただし、特定の疾病や状態にある利用者については、1日1回以上、週3回以上の訪問回数が認められています。

精神科訪問看護基本療養費は訪問時間による算定料の違いがある

精神科訪問看護の基本療養費も、基本的な考え方は医療保険の訪問看護と同様です。
ただし、サービス提供時間が「30分未満」か「30分以上」かによって算定料が異なる点には注意が必要です。

職種 時間 週3日まで 週4日以上
看護師等又は作業療法士 30分未満

4,250円

5,100円

30分以上

5,550円

6,550円

准看護師 30分未満

3,870円

4,720円

30分以上

5,050円

6,050円

精神科訪問看護基本療養費Ⅲ

職種 同一建物の人数 時間 週3日まで 週4日以上
看護師等又は作業療法士 1人又は2人 30分未満

4,250円

5,100円

30分以上

5,550円

6,550円

3人以上 30分未満

2,130円

2,550円

30分以上

2,780円

3,280円

准看護師 1人又は2人 30分未満

3,870円

4,720円

30分以上

5,050円

6,050円

3人以上 30分未満

1,940円

2,360円

30分以上

2,530円

3,030円

精神科訪問看護基本療養費Ⅳ

項目 算定料
入院時の外泊時の訪問 8,500円

訪問看護の2時間ルールとは?

訪問看護でよく聞く2時間ルールについて解説します。
介護保険の訪問看護サービスを提供する際には、「2時間ルール」に注意が必要です。
※このルールは医療保険には適用されません。

1日に複数回訪問をする際の間隔を2時間以上空けること

2時間ルールとは、1日に複数回、訪問看護を行う場合、原則として前回の訪問から2時間以上空けることが求められるルールです。
もし2時間以上空いていない場合は、訪問時間を合算して1回分のサービスとして報酬を算定する必要があります。

2時間ルールが設けられている背景

訪問看護サービスでは、訪問時間が短いほど時間あたりの報酬単価が高く設定されています。そのため、1回の長時間の訪問よりも複数回に分けて訪問する方が、総報酬が増える仕組みになっています。

これを悪用した不適切な報酬受給を防ぐため、「2時間以上の間隔を空ける」というルールが設けられました。

2時間ルールの例外 

2時間ルールは原則として定められているものですが、特定の状況においては例外が認められています。
以下は、訪問看護で2時間ルールが適用されない主なケースです。

①緊急訪問の場合

利用者の状態変化などにより、緊急に訪問が必要と判断された場合は、緊急時訪問看護加算を算定することで、2時間の間隔を空けずに訪問することが可能です。

※事前に緊急時訪問看護加算の届出が必要です。

②他の職種が続けて訪問した場合

同一の職種の連続訪問は原則合算しますが、職種が異なる場合は、それぞれ独立した訪問として算定可能です。

【例】看護師の訪問後に理学療法士が続けて訪問するケースなど

(参考:訪問看護・介護予防 訪問看護の手引きp.11令和6年6月|兵庫県

③20分未満の訪問の場合

20分未満の訪問は、短時間かつ頻回な医療的処置や観察が必要なケースを想定しています。このため、2時間以内に複数回実施した場合でも、1回分として独立して算定できます。
※20分未満のみで計画を組むことは適切ではないとされています。週1回以上、保健師又は看護師による20分以上の訪問看護が必要です。

(参考:平成24年度介護報酬改定に関するQ&A 問18|厚生労働省

④計画上で2時間以上空いている場合

厚生労働省の通知では、「おおむね2時間」と記載されています。 そのため、訪問看護計画やケアプラン上で2時間以上空いていることが明確であれば、 実際の訪問時間に多少の前後があっても、2回分として算定して差し支えないとされています。

【例】予定では2時間後の訪問だったが、点滴注射等が早めに終了した等の理由で訪問時間が早まった場合など。

(参考:平成24年度介護報酬改定に関するQ&A 問20|厚生労働省

長時間にわたる訪問看護の場合、長時間訪問看護加算を算定する

【介護保険】長時間訪問看護加算 

長時間の訪問を必要とする利用者に対して、1時間以上1時間30分未満の指定訪問看護を行った後に、引き続き訪問看護を行い、所要時間の通算時間が1時間30分を超える場合に算定できる加算です。ただし、特定の疾病や状態の方が対象です。

【医療保険】長時間訪問看護加算

1回の訪問看護で1時間30分を超えた場合に算定できる加算です。
ただし、介護保険と同様、特定の疾病や状態の方が対象です。

【医療保険】長時間精神科訪問看護加算

精神疾患を有する利用者に対して、1時間30分を超える精神科訪問看護を実施した場合に算定できる加算です。
基本的には、通常の医療保険における長時間加算と同じですが、対象者が「精神疾患のある利用者」に限定されている点が異なります。

短時間の訪問を行う場合のルール

短時間の訪問は、介護保険と医療保険で算定ルールが異なります。それぞれ解説します。

【介護保険】「例外的」な対応として算定可能

短時間(20分未満)の訪問は「例外的」な対応として認められています。
これは、短時間で済む処置や、1日に複数回訪問が必要なケースに適用されます。
ただし、以下の条件を満たす必要があります。

・保健師または看護師による20分以上の訪問看護を週1回以上実施していること
・24時間対応体制(緊急時訪問看護加算)の届出があること

(参考:訪問看護・介護予防 訪問看護の手引きp.11 令和6年6月|兵庫県

【医療保険】医師の指示があれば算定可能

医療保険の訪問看護では、30分未満の訪問は算定できません。

ただし、精神科訪問看護に限り、主治医が短時間訪問の必要性を認めており、精神科訪問看護指示書に明記されている場合のみ、短時間訪問が算定可能です。

(参考:訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う 実施上の留意事項についてp.8|厚生労働省

まとめ

訪問看護の報酬が決まる仕組みは介護保険と医療保険で基準が異なります。介護保険では訪問時間や回数が報酬に影響し、2時間ルールなどの制約があります。医療保険では週の訪問回数や職種で報酬が決まり、短時間訪問には例外的な算定条件があります。適切にルールを理解することで、正しく請求でき、安定した経営をすることができるでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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