訪問看護ステーションのサテライトとは?設置基準やメリットを解説
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株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部
看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。
目次
近年、地域でより多くの利用者へサービス提供したい、訪問看護ステーションの大規模化を進めたいという理由からサテライト(出張所)を設置する訪問看護ステーションが増えています。
訪問看護ステーションを経営する皆さまの中には「効率的なサービス提供を行うためにサテライトを検討しているがどんなメリットがあるの?」、「サテライトを設置するときにはどんな注意点があるの?」といった、お悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、訪問看護ステーションのサテライトの設置基準や届け出の方法について解説します。また、サテライトを設置することのメリット、設置する前に確認すべきことについても解説します。
訪問看護ステーションのサテライトとは
訪問看護ステーションのサテライトとは、本体事業所を補完するために設置する出張所を指します。訪問エリアの拡大と移動負担の軽減によってより多くの利用者を訪問することを目的としています。
訪問看護のサテライト事業所の特徴
訪問看護のサテライト事業所は、指定申請を行う必要はなく、本体事業所の変更届出書(訪問看護の出張所設置の変更届)を提出することで開設できることが特徴です。
訪問看護ステーションのサテライトの請求
サテライト事業所分の請求は、本体事業所からまとめて行います。
ただし、サテライト事業所の報酬は、サテライト事業所が所在する地域区分で請求します。本体事業所の地域区分ではないことに注意しましょう。
(参考:訪問看護ステーションにおける出張所(サテライト)について 訪問看護ステーション 出張所設置Q&A,Q12|東京都福祉局)
サテライト事業所の介護保険の事業所番号は本体の訪問看護ステーションと異なるのか
サテライト事業所の事業所番号は、本体事業所の事業所番号と同じです。
訪問看護のサテライトの設置基準
訪問看護ステーションのサテライト設置の基準には、厚生労働省の基準に基づいて各都道府県が定める基準に則る必要があります。
厚生労働省の通知による項目
利用申込みの調整、サービス提供状況の把握、職員に対する技術教育等が一体的に行われること。
職員の勤務体制、勤務内容等が一元的に管理されること。必要な場合に随時、本体事業所や他の出張所等との間で相互支援が行える体制であること。
苦情処理や損害賠償等に際して、一体的な対応ができる体制にあること。
事業の目的や運営方針、営業日、営業時間、利用料等が同一の運営規程に定められていること。
人事、給与・福利厚生等の勤務条件等による職員管理が一元的に行われること。
(参考:訪問看護業務の手引令和6年6月版 p.339|社会保険研究所)
ここでは、東京都の基準を例示します。
人員基準
主たる事業所及びその出張所全体で看護職員(保健師、看護師又は准看護師)の常勤換算の合計が、2.5以上の人員配置とする。
出張所等があるときは、常勤換算を行う際の事業所の看護職員の勤務延時間数とは、出張所等における勤務延時間数も含めるものとする。
設備基準
事務室
事業の運営に必要な広さを有する専用のもの
訪問看護事業の提供に必要な設備及び備品
感染症予防に必要な設備(手指洗浄の場所、手指消毒備品等)
個人情報に関する文書等を管理するための鍵付書庫等
東京都内(八王子市内を除く。)
管理者は、定期的に出張所を訪問し、上記の要件を満たすよう管理を徹底すること。
管理者は、出張所従業者と「訪問看護計画」の内容について情報を共有し、必要があれば見直しをするなど適切な対応をすること。
管理者は、出張所従業者からサービス実施状況を報告させ把握するとともに、適切な指導をすること。
主たる事業所とサテライト事業所の位置関係は、下記の2点のいずれかであること。
自動車等による移動に要する時間が概ね20分以内の近距離であること。
サテライト事業所が中山間地域等に該当する地域に所在すること。ただし、中山間地域等に設置する場合にあっては、本体事業所との相互支援が可能と一般的に考えられる範囲内(通常の事業の実施地域や本体事業所が所在する市町村に隣接する市町村を原則とする)とし、設置の可否は個別に判断する。
サテライト事業所は主たる事業所と同一建物以外とする。
設置場所
留意事項
(参考:訪問看護ステーションにおける出張所(サテライト)について | 東京都福祉局)
サテライト設置場所と主たる訪問看護ステーションからの距離
サテライト事業所と主たる訪問看護ステーション(本体事業所)の距離関係については、各自治体によって決められています。中山間地域の場合、自治体との協議によって設置の可否が決められるケースもあるようです。
ここでは、千葉市と宮城県を例として挙げています。
千葉市
サテライト設置場所は原則千葉市内とし、かつ、主たる訪問看護ステーションから自転車・自動車・公共の交通機関いずれかの利用により、片道20分~30分以内の距離であるもの。
(訪問看護ステーションのサテライト設置に係る取扱いについて(サテライト設置が平成31年4月1日以降のものより適用)| 千葉市)
宮城県
(参考:訪問サービスにおけるサテライト事業所の設置指針 | 宮城県)
訪問看護のサテライトの届出方法
訪問看護ステーションのサテライトは、本体事業所を管轄する都道府県等の窓口への届け出によって認められます。
東京都の場合、サテライト設置後10日以内に様式第一号(五)の様式の届出を行う必要があります。

訪問看護のサテライトを設置するメリット・デメリット
訪問看護のサテライトを設置するメリットとデメリットについて解説します。
ここでは、「1事業所における規模・機能拡大を目指してサテライトを設置する場合と設置しない場合」、「事業所の複数展開を目指してサテライト事業所を設置する場合と単独事業所を増設する場合」の2つのケースに分けてお伝えします。どちらも売上拡大という目的は同じですが、自ステーションの状況やエリア・競合に合わせた経営戦略の方針を立てると良いでしょう。
1事業所における規模・機能拡大を目指してサテライトを設置する場合と設置しない場合
1事業所の大規模化を目指す場合のサテライトを設置する・しない場合で比較したときのメリットとデメリットです。
メリット①訪問エリアの拡大
サテライトを設置することで訪問できるエリアを拡大することができ、売上の増加が期待できるでしょう。ただし、サテライト事業所と本体事業所の距離は、車の移動で20分以内など自治体によって決められています。
メリット②スタッフの移動距離の短縮
サテライトを設置することでスタッフはサテライト事業所へ出勤・待機できるようになるため、効率的な訪問ができ、訪問件数の増加が期待できるでしょう。
メリット③加算取得のハードルが下がる
本体事業所とサテライト事業所を1事業所としてみなすため、双方の職員数や利用者数などを合算することができます。そのため、例えば、職員数が増えることにより24時間対応を行う体制を構築でき、加算の算定要件を満たすことができるようになったりします。
(参考:訪問看護ステーションにおける出張所(サテライト)について 訪問看護ステーション 出張所設置Q&A,Q10|東京都福祉局)
デメリット①家賃や光熱費の負担が増える
サテライト事業所の設置により、家賃や光熱費などの経費が増えることになります。事前に、サテライトの設置による売上見込みと経費のシミュレーションを行い、収支の見通しを立てることが重要です。
デメリット②管理者のマネジメントが大変
管理者は、本体事業所に加えてサテライト事業所のスタッフも含めたマネジメントが求められます。そのため、人材育成や勤務状況の把握、サービス品質の担保といった管理業務の負担が大きくなります。特に、物理的な距離があることで、ステーション全体を一体として統率することが難しくなる点には留意が必要です。
サテライト事業所を設置する場合と単独事業所を増設する場合
事業所を複数に分ける場合のサテライトを設置する場合と単独事業所の複数展開を比較したときのメリットとデメリットです。
メリット①人員確保の手間を省くことができる
サテライトを設置する場合には、本体事業所とサテライト事業所の全体で人員確保を満たせばよいため、より迅速にエリア拡大ができます。
単独事業所を増設する場合には、スタッフの人員を確保し、新たに指定申請を行う必要があります。
メリット②人件費を抑えることができる
メリット①で挙げた通り、サテライトを設置する場合は新たに人員確保をする必要がないため、人件費を抑えることができます。
単独事業所を増設する場合は、人員基準である2.5人を満たす必要があるため人件費が増えます。
訪問看護の人員基準について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
訪問看護ステーションの人員基準とは?違反時の処分内容や事前の対策について解説
メリット③収支の見通しが立てやすい
訪問エリアの拡大が指定権者の管轄内におさまっており、人件費も大きく増えにくいため、比較的、収支の見通しを立てやすいと言えるでしょう。
デメリット①管理職のポジションが増えない
サテライト事業所は、本体事業所と合わせた人員基準のため、管理者というポジションを増やさないケースもあります。
単独事業所を増設する場合は、新たに管理者を増やすことになるので、スタッフにキャリアアップの選択肢を与えることができます。
デメリット②指定権者をまたぐサービス提供地域を設定できない
サテライト事業所は、本体事業所から自治体によって決められた距離の範囲内で設置することが決められています。原則、指定権者をまたぐ位置に事業所を設置することができないので、サービス提供地域の拡大範囲が限られてしまいます。
単独事業所を増設する場合は、新たに指定申請をとるため指定権者をまたぐ位置に事業所を設置でき、より広い範囲でサービス提供地域の拡大を図ることができます。
訪問看護のサテライト設置を検討する前に確認すべきこと
ここでは、サテライト設置を考える前に確認すべき4つのポイントを解説します。
検討している地域でサテライト設置は可能か?
一部の自治体ではサテライト事業所の設置を認めていない場合があります。また、市区町村をまたいだ設置ができない場合もあります。検討している地域でのサテライト設置が可能かどうか各自治体のサイトを確認しましょう。
サテライト事務所の固定費の支払いは可能か?
サテライト設置後、事務所の家賃や光熱費などの経費の支払いが増えます。サテライトを設置することによる収入の増加とサテライトを設置することによる経費の増加を比較して、プラスになるかどうか収支計画を確認しましょう。
リアルタイムでの情報共有は可能か?
本体事業所とサテライト事業所では、双方のリアルタイムでの情報共有は必須です。自分たちの訪問看護ステーションに合ったITツールを導入するとよいでしょう。
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サテライト事務所をマネジメントできる体制があるか?
本体事業所とサテライト事業所で物理的距離があるので、代表や管理者に、事業所全体をまとめあげるためのリーダーシップが求められます。
まとめ
この記事では、訪問看護ステーションのサテライトの概要やサテライトを設置することのメリット・デメリット、設置前に確認すべき注意点について解説しました。
訪問看護ステーションの大規模化や複数展開は、地域によって高齢者人口やステーション数などの需要や競合状況が異なるため一概には言えません。ただし、まずはサテライトの設置から検討してみるのも一つの選択肢です。
この記事でお伝えした内容が、訪問看護ステーションのサテライトの設置を考えている方にとって少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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