在宅患者訪問看護指導料とは?
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とあるコメディカル トコル
理学療法士として病院、訪問看護ステーションで勤務した経験を活かし、訪問看護計画書や報告書等の帳票記載例を多数掲載する「とあるコメディカル」を運営。訪問看護の帳票記載例をまとめた冊子は累計販売2,500冊を突破している。
目次
訪問看護に携わる皆さまの中には、「在宅患者訪問看護指導料」という言葉を聞いたことはあっても、具体的にどのような場面で算定できるのか、はっきり理解できていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、在宅患者訪問看護指導料の概要や算定要件、訪問看護指示料との違い、算定できないケースやレセプト記載の注意点について解説します。
在宅患者訪問看護指導料とは
在宅患者訪問看護指導料の算定要件
在宅患者訪問看護指導料とは、保険医療機関(病院や診療所)が、在宅で療養を行っている患者の自宅へ看護師などを訪問させ、看護や療養上必要な指導を行った場合に算定できる診療報酬です。なお、指定訪問看護ステーションは「訪問看護療養費」を算定するため、在宅患者訪問看護指導料を算定することはできません。
算定にあたっては、以下の条件を満たす必要があります。
医師の指示に基づき実施されていること
保健師、看護師、准看護師、助産師などが訪問を行い、看護や療養上の指導を実施した場合
患者本人または家族の同意を得ていること
患者が入院中でないこと
在宅患者訪問看護指導料の点数表
職種 | 訪問頻度 | 在宅患者訪問看護指導料 (保険医療機関) |
保健師、助産師又は看護師 | 週3日目まで | 580点 |
週4日目以降 | 680点 | |
准看護師 | 週3日目まで | 530点 |
週4日目以降 | 630点 | |
悪性腫瘍の患者に対する緩和ケア、褥瘡ケア又は人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師による場合 | 1,285点 |
(参考:今日の臨床サポート|ELSEVIER)
在宅患者訪問看護指導料と訪問看護指示料の違い
在宅患者訪問看護指導料と似た名前のものに「訪問看護指示料」というものがあります。両者は名前が似ていますが、役割は大きく異なります。
種類 | 算定料 |
訪問看護指示料 | 300点/回(月1回限り) |
在宅患者訪問看護指導料:看護師等が在宅を訪問し、患者やご家族に対してケア・療養上の指導を行った場合に算定。
訪問看護指示料:医師が訪問看護ステーションなどに対して、訪問看護を指示するための「訪問看護指示書」を作成・交付した場合に算定。
つまり、「在宅患者訪問看護指導料」は実際の訪問によるケアへの報酬、「訪問看護指示料」は指示書作成に対する報酬です。両者は併せて算定することはできません。
(参考:訪問看護業務の手引き令和6年6月版|社会保険研究所 ,p.162)
在宅患者訪問看護指導料を算定できないケース
在宅患者訪問看護指導料を算定した場合、以下の指導料を同じ日に算定することはできません。
C005-1-2 同一建物居住者訪問看護・指導料
I012 精神科訪問看護・指導料
在宅患者訪問看護指導料1・2・3の違い
在宅患者訪問看護指導料には「1」「2」「3」があり、訪問する職種や対象となる患者の状態により区分されています。
在宅患者訪問看護指導料1・2
在宅患者訪問看護指導料1と2は、保険医療機関が行う基本的な訪問看護・指導に対する評価で、訪問する職種によって区分されます。
在宅患者訪問看護指導料1:保健師、助産師、または看護師(指導料3を算定する場合を除く)が訪問した場合に算定します。
在宅患者訪問看護指導料2:准看護師が訪問した場合に算定します。
在宅患者訪問看護指導料1と2は、患者1人について日単位で算定します。
在宅患者訪問看護指導料3
在宅患者訪問看護指導料3は、より専門性の高いケアを評価するため、2012年度の診療報酬改定で新設された区分です。病院や診療所に所属する、緩和ケア、褥瘡ケアまたは人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師が、他の保険医療機関もしくは訪問看護ステーションの看護師などと同行訪問し、専門的なアドバイスを行うことで算定することができます。
在宅患者訪問看護指導料3は、患者1人について月1回に限りの算定となります。
対象となる患者は、通院が困難な方のうち、以下のいずれかに該当する方です。
1)真皮を越える褥瘡の状態にある患者
NPUAP(米国褥瘡諮問委員会)分類Ⅲ度またはⅣ度
DESIGN-R®分類(日本褥瘡学会によるもの)D3、D4またはD5
2)人工肛門または人工膀胱を設置している患者であってその管理に配慮を必要とする患者
人工肛門若しくは人工膀胱周囲の皮膚にびらん等の皮膚障害が継続若しくは反復して生じている状態にある患者
人工肛門若しくは人工膀胱のその他の合併症を有する患者
在宅患者訪問看護指導料3の注意点
人工肛門若しくは人工膀胱周囲の皮膚にびらん等の皮膚障害が継続若しくは反復して生じている状態は、「ABCD-Stoma®(ストーマ周囲皮膚障害の重症度評価スケール)」を用いて評価することが示されています。 具体的には、A(近接部)、B(皮膚保護剤部)、C(皮膚保護剤外部)の3つの部位のうち、1部位でもびらん等の状態が1週間以上継続、もしくは1ヶ月以内に反復している状態と定義されています。そのため、ストーマ周囲の皮膚を観察する際には、このABCD-Stoma®による評価が必須となります。
レセプトの記載方法
在宅患者訪問看護指導料を算定する際は、レセプト(診療報酬明細書)の摘要欄に「在宅患者訪問看護指導料を算定した理由」を明確に記載する必要があります。記載が不十分だと必要性が判断できず、返戻の対象となる可能性があるため注意が必要です。
コメント記載例
「褥瘡の状態観察と処置を実施。家族へ体位交換の方法と除圧の必要性について指導した。」
「インスリン自己注射の手技を確認。血糖値の記録と低血糖症状への対応について本人・家族へ改めて説明した。」
返戻になりやすい例
内容が抽象的:「療養上の指導」「状態観察」といった抽象的な記載だけでは、具体的なケア内容が伝わらず、返戻の対象となり得ます。
毎回同じ内容:訪問日ごとに同じコメントが記載されていると、画一的な対応とみなされ、訪問の必要性が疑問視される場合があります。その日の患者の状態や実施したケアを具体的に記載しましょう。
在宅患者訪問看護指導料の主な加算一覧
難病等複数回訪問加算
緊急訪問看護加算
長時間訪問看護・指導加算
乳幼児加算
複数名訪問看護・指導加算
在宅患者連携指導加算
在宅患者緊急時等カンファレンス加算
在宅ターミナルケア加算
在宅移行管理加算
夜間・早朝訪問看護加算
深夜訪問看護加算
看護・介護職員連携強化加算
特別地域訪問看護加算
訪問看護・指導体制充実加算
専門管理加算
訪問看護医療DX情報活用加算
遠隔死亡診断補助加算
まとめ
在宅患者訪問看護指導料の算定要件や点数表、レセプトの記載方法などについて解説しました。
みなし訪問看護ステーションの場合、指定を受ける場合と比較して、報酬単価が低いことや対象の利用者が少ないため、事業の拡大が難しいです。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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