開業準備

訪問看護の賠償責任保険とは?代表的な3社の内容を解説!

 更新日:

訪問看護の賠償責任保険とは?代表的な3社の内容を解説!
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

訪問看護の現場において、サービスを提供している時にスタッフが利用者に怪我を負わせてしまったり、利用者の所有物を破損してしまったりする可能性はあります。 このような場合に、『賠償責任保険』に入っていると、保険が適用されるのでとても安心できます。

ここでは、訪問看護ステーションが加入している損害責任保険についてご紹介していますので、ぜひこの機会に万が一の事態に備え、賠償責任保険の内容等をしっかりと把握しておきましょう。

訪問看護の賠償責任保険とは?

賠償責任保険とは、業務の遂行にあたり対人・対物事故が起きてしまった場合に、その賠償責任を補償する保険です。 訪問看護においては、従業員のサービス提供にあたって次のようなことが起きた場合、保険が適用されます。

  • 業務中に誤って利用者にケガを負わせてしまった。

  • 消毒が不十分な備品を使用したことを原因として、感染症が起きた。

  • 誤って利用者宅の物を破損してしまった。

このような事故等が起きてしまった場合に、損害賠償請求に対して保険による対応ができることは、事業者と従業員にとって、安心して働く環境を構築するために必要なことだと言えます。

それでは実際の賠償責任保険の例として、『日本訪問看護財団』と『訪問看護事業共済会』の保険について見ていきましょう。

日本訪問看護財団の賠償責任保険について

日本看護財団は「あんしん総合保険制度」という訪問看護事業所向けの保険契約者として、賠償責任保険の『ステーション賠償責任保険(ベーシックプラン)』、『ステーション賠償責任保険(ワイドプラン)』を提供しています。

『ステーション賠償責任保険(ベーシックプラン)』とは、事業者や従業員がサービスを提供する際、万が一利用者・家族にケガをさせてしまったり、財物を損壊させてしまった場合、または利用者に対する不当な身体の拘束による自由の侵害・名誉き損、もしくは口頭、文書、図画等の表示行為による名誉き損・プライバシーの侵害が発生した場合に、法律上の損害賠償責任について補償する保険です。

『ステーション賠償責任保険(ワイドプラン)』とは、上記ベーシックプランの内容に、事業者が、第三者から過度なクレーム⾏為を受けた場合に、そのクレームへ対応するために要した弁護⼠費⽤を補償する弁護士費用補償特約と、法律・税務・人事労務などの経営に関する相談に対応する経営者向けサービス(経営セカンドオピニオン)が追加された保険です。

加入対象者

保険に加入できる対象者は、日本訪問看護財団の団体会員であり、訪問看護ステーションとして都道府県知事の指定を受けた事業者、あるいは指定を受ける予定の事業者です。 また、サテライト事業所は主たる事務所の補償に含まれます。

被保険者

『ステーション賠償責任保険(ベーシックプラン)』は、訪問看護事業者およびその業務に従事する使用人(医師を除く。)が被保険者となります。
『ステーション賠償責任保険(ワイドプラン)』では、訪問看護事業者(法人)が被保険者となります。

補償内容

保険の種類 補償内容 限度額の条件 支払限度額
ベーシックプラン 対人賠償 1名・1事故 1億5,000万円
対物賠償 1事故(管理受託物含む) 1,000万円
人格権侵害 1名・1事故保険期間中 1億5,000万円
初期対応費用 1事故・保険期間中 500万円
(うち見舞金・見舞品) 1事故ごと1名につき 10万円
ワイドプラン 弁護士費用補償特約 1事故 50万円
期間中 150万円

掛金

2023年7月時点での掛金は、以下のようになっています。

ステーション賠償責任保険(ベーシックプラン)は、年間保険料が1ステーションあたり『10,500円』。
ステーション賠償責任保険(ワイドプラン)は、年間保険料が1ステーションあたり『46,500円』(ベーシックプラン10,500円+弁護士費用年間保険料36,000円)。

訪問看護事業共済会の訪問看護事業者総合補償制度について

訪問看護事業共済会では、訪問看護事業者や従業員が業務の遂行において損害賠償責任を負った場合の補償を行う保険として、『訪問看護事業者賠償責任保険』を提供しています。

訪問看護事業者賠償責任保険は、訪問看護業務中、万一利用者やその家族等の第三者にケガをさせてしまったり、他人の財物を損壊させてしまった場合に、事業者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害を補償する保険です。

また、事業者が直面するリスクに幅広く対応するため、クレームのサポートや従業員の業務中のケガや感染症への補償などの多様なオプションを選択することができます。

加入対象者

保険に加入できる対象者は、一般社団法人全国訪問看護事業協会会員であり、訪問看護ステーション等として都道府県知事の指定を受けた、または指定を受ける旨の申出を行った事業者となっています。

被保険者

訪問看護事業者およびその業務に従事する使用人(医師を除く)が被保険者となります。

補償内容

補償内容 限度額の条件 支払限度額
身体障害 1事故 1億5,000万円
保険期間中 4億5,000万円
財物損壊 1事故 1,000万円
人格権侵害 1名・1事故 1億5,000万円
管理受託物 1事故・保険期間中 100万円
(うち、現金・有価証券・貴金属等※紛失は補償対象外) 1事故 10万円
初期対応費用 1事故・保険期間中 500万円
被害者治療費等 1事故・保険期間中 500万円
1回の事故につき被害者1名について 10万円

掛金

保険の種類 損害率(%) (1事業所あたり)保険料
賠償責任保険(損害率別保険料) 新規・事故無し 10,000円
事故有り・1~59 10,500円
60 ~ 99 11,000円
100 ~ 119 15,000円
120 ~ 139 18,000円
140 ~ 159 21,000円
160 ~ 179 24,000円
180 ~ 199 27,000円
200 ~ 249 31,000円
250 ~ 299 35,000円
300 ~ 399 39,000円
400 ~ 1999 48,000円
2000 ~ 4999 60,000円
5000 ~ 72,000円
事業拡張補償特約(療養通所介護事業) 1事業所あたり追加保険料 7,800円

※損害率の計算方法・条件は以下のようになっています。
・損害率=損害率集計期間における支払保険金損害率集計期間における保険料
・損害率集計期間:2019年4月1日~2022年3月31日 支払保険金には、医療調査等の事故対応費用等を含みます。

その他訪問看護で活用できる損害賠償保険

1.メディカル保険サービスの「訪問看護事業者賠償責任保険」

訪問看護ステーション開設者向けの「訪問看護事業者賠償責任保険」は、訪問看護業務中に、業務に関連して発生した他者の身体の障害や物品(財物)の損壊に対する賠償責任を補償する保険です。

保険期間は1年間で、契約期間中3億円、1事故につき1億円まで補償されます。
詳細は下記よりご確認ください。

看護職・訪問看護事業者向けの保険|株式会社メディカル保険サービス

2.日本訪問看護財団の業務従事者傷害保険

訪問看護の業務を行う職員が、事故が原因でけがをした場合の補償をしてくれる保険です。通勤途中を含む、さまざまなけがが対象になります。

保険料は、業務中に稼働する人数で一番多い場合の人数で計算します。
詳細は下記よりご確認ください。

業務従事者障害保険|日本訪問看護財団

業務従事者感染症見舞金補償

「感染症補償規程」を事業所として定め、規程に準じて職員に感染症に対する見舞金を支払った場合の補償をしてくれる保険です。

補償対象となる感染症は一類~五類感染症、または新型インフルエンザ等感染症や指定感染症等を含みます。
※業務従事者感染症見舞金補償は、「業務従事者障害保険」に追加できる保険で、単独では契約できないのでご注意ください。

詳細は下記よりご確認ください。

業務従事者感染症見舞金保証|日本訪問看護財団

3.日本訪問看護財団のサイバーセキュリティ保険

事故による情報漏洩に起因した事象に対する損害賠償責任を負担する保険です。

訪問中に車上荒らしに遭い、パソコンを盗難された場合やパソコンの置き忘れによる紛失による情報漏洩などが補償対象の事例の一部です。
詳細は下記よりご確認ください。

サイバーセキュリティ保険|日本訪問看護財団

訪問看護の賠償責任保険を選ぶ際の注意点

補償内容の確認

訪問看護の現場は想定外の事故が起こりうる可能性が多々あります。賠償責任保険の補償の範囲をしっかりと把握して、特約・オプションを含めて検討しましょう。 また、損害賠償の対象とならないケースについても把握しておくことが重要になります。

保険料

支払う保険料は、その訪問看護ステーションの経営状況に影響を与えます。特に複数の事業所を経営している場合やサテライト事業所を設置している場合、他の介護サービス事業所も経営している場合など、保険料の内訳やオプション等の追加料金、割引により保険料の金額に大きな差がでることがありますので、複数の保険を比較することをおススメします。

まとめ

訪問看護の業務では、対人・対物の事故だけでなく情報漏洩による賠償責任が発生する可能性もありますので、さまざまな事故のリスクに備えるための賠償責任保険についてご紹介してきました。

訪問看護事業では、損害賠償を速やかに行うことが運営基準に定められているため、多くの訪問看護ステーションは何かしらの賠償責任保険に加入しているようです。

事故は思わぬ時に起きるものです。起きてしまってから「あの保険に加入しておけば良かった。」ということにならないように気をつけましょう。

ここでご紹介した内容が、皆様の賠償責任保険加入のきっかけや、賠償責任保険の見直しのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただきありがとうございました。

専属担当者に
すぐ相談できる!
カイポケ開業支援サービス

必要な機能がオールインワン

関連記事