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訪問看護の事故事例を紹介!起こりやすい事故と予防策とは?

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訪問看護の事故事例を紹介!起こりやすい事故と予防策とは?
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

訪問看護の現場では、事故が起きてしまう可能性があります。

そして、訪問看護で事故が起きてしまった場合には、スタッフは事故発生時の対応を一人で行う必要があることから、訪問看護ステーションとして「事故発生時の対応」や「事故予防」について、しっかりと教育体制を整えておく必要があります。

今回は、訪問看護で起こりやすい事故事例や、事故発生時に取るべき対応、事故を防ぐための予防策について詳しく解説します。

訪問看護の事故事例

ここでは、訪問看護の事故事例を、4つご紹介します。

①気管カニューレの自己抜去

【事故内容】

声門狭窄により気管切開を行い、気管カニューレの管理で2回/週訪問看護が介入している患者。10:30検温を実施。10:40カニューレバンドの交換を開始。患者は椅子に座り、看護師は患者の右後ろに立ち、後ろから左手を前に回し、カニューレの羽根左側を示指で固定し、右手でカニューレ右側の固定を外し頸部の保清を行った。咳き込む度に両羽根を母指と示指で固定し直した。右手で新しいカニューレバンドを手に取ったが、マジックテープが絡まっていた。左手はカニューレを固定の為、右手だけでほどこうとした。しかし、なかなかほどけず患者が「私がこれ(孫の手)でカニューレを押さえている」と言った為、任せて固定していた左手を離した。患者は既往にリウマチがあり上肢を頸部まで挙げることができず、手の代わりに孫の手を使うことがあった。固定を離している間に咳き込み、カニューレが抜けてしまった。10:45患者と家族に状況説明を行い、家族に救急車を呼ぶように依頼した。患者にはパルスオキシメーターを装着し呼吸状態を確認した。その後救急隊から電話連絡があり状況説明を行い10:55救急搬送となった。

【障害の程度】

障害無し

(引用元:医療事故情報|公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業

②転倒

【事故内容】

アブレーション治療後、訪問看護ステーション利用となり、契約のため訪問する。契約のみで訪問したが利用者本人より本日より入浴希望あり、準備しようと立って歩き初めて転倒する。救急搬送され左大腿骨転子部骨折にて入院となる。

【障害の程度】

障害残存の可能性がある(高い)

(引用元:医療事故情報|公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業

③膀胱留置カテーテル挿入時の皮膚損傷

【事故内容】

在宅において、訪問看護をうけていた。浮腫・胸水貯留認め、利尿剤投与していた。尿回数頻回。医師に指示があり、訪問看護において膀胱留置カテーテル14Fr挿入した。抵抗なく挿入できたが、血性尿流出あり。カテーテル抜去し泌尿器科受診。軽度尿道損傷認め、医師より再挿入となった。

【障害の程度】

障害無し

(引用元:医療事故情報|公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業

④事故から訴訟に至った事例

訪問看護中の事故により利用者へ被害が発生し、医療訴訟が起きたケースもあります。

【事故内容】

平成16年、医師Xが、輸血に際して自宅療養中の患者の血液型を十分確認しないまま、血液型の異なる輸血用血液を発注して患者宅に届けさせ、訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師Yは、患者宅に届けられた血液型が診療録等に記載された患者の血液型と一致しているか確認しないまま輸血したため、不適合輸血によりショック死させた。

【補足情報】

※一般的に在宅療養に輸血の適応はないとされており、仮に患者が希望してもリスクをすべて承知の上で同意がなければ実施できないとされている。

【裁判の結果】

  • 医師X罰金50万円

  • 看護師Y罰金20万円

(引用元:医療行為と刑事責任について|厚生労働省

訪問看護における事故(アクシデント)とは?

訪問看護の業務中に発生しうる事故とその具体例は、以下のようなものが挙げられます。

事故の種類
移動中の事故 車や自転車の衝突事故
物損事故
利用者への被害 薬剤の過剰投与による死亡事故
介助時の転倒、転落による外傷事故
情報漏洩
利用者の関係者や所持品への被害 物損事故
ペットへの被害
看護師への被害 針刺し事故
利用者からの暴力
ハラスメント被害

最も多い事故は「転倒・転落」

訪問看護の利用者に起きた事故で最も多く発生していたのは、「転倒・転落」でした。

以下が事故内容とその割合です。

  • 転倒・転落(39%)

  • ケア中の骨折等(27.2%)

  • 誤薬(7.6%)

  • カテーテル・チューブ事故(7.6%)

など

(参考:訪問看護ステーション事故事例作成検討事業平成16年度報告書|全国訪問看護事業協会

アクシデント、インシデント、ヒヤリハットの違い

医療安全の観点では、事故に関連する言葉として「アクシデント」「インシデント」「ヒヤリハット」という言葉を用いられる場合が多くあります。

それぞれの言葉の意味について以下に示します。

【アクシデント】

医療事故。看護中に事故が発生し、すでに利用者に損害が発生しているものを言います。

【インシデント】

誤った看護行為が利用者に実施される前に発見されたもの、もしくは誤った看護行為が実施されたものの、利用者に影響がなかったものを言います。

【ヒヤリハット】

アクシデントやインシデントの一歩手前の出来事のことを示し、「ヒヤリ」とした「はっとした」ことで事故につながる状況に気づき、未然に危機を回避できた事例のことを言います。

訪問看護の事故発生時の対応

ここからは、訪問看護中の事故発生時の対応方法について解説していきます。

福岡県の「介護事故防止対応マニュアル作成の手引き」を参考に、利用者に影響が及ぶ事故に対する対応方法を想定し説明します。

安全の確保

まずはじめに、利用者の安全を確保します。

事故が発生した際は、初期対応が重要です。利用者の生命維持にかかわることを優先的に実施し、必要であれば人工呼吸や止血対応、心臓マッサージといった応急処置等を行います。

事故発生の報告

利用者の安全が確保されたら、事故発生の報告を行います。

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準には、指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供により事故が発生した場合は、市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。と記されています。

(引用:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

訪問看護ステーションの管理者へ、事故の概要と現状を簡潔に報告し、今後の行動について指示を受けます。

また、必要に応じて、主治医やご家族、ケアマネジャーにも連絡をとります。

事故内容の記録

事故発生の状況、実施した内容について、事実に基づいて記録を行います。指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準には、

指定訪問介護事業者は、前項の事故の状況及び事故に際して採った処置について記録しなければならない。と記されています。

(引用:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

どのような状況で事故が起きたのか、どのような処置を行ったのかを、時刻(何時何分)とともに記録しておきましょう。

事故対応後の報告

行政には、事故対応後の報告を行います。

介護保険サービスを提供する事業所は、サービスの提供による事故が発生した場合に、速やかに市町村や利用者の家族等に連絡を行う等、必要な措置を行うこととされています。

報告が必要となる事故の内容は自治体によって異なりますが、東京都町田市では以下の事故内容について報告を必要と示しています。

  • サービスの提供による、利用者のケガ又は死亡事故の発生

  • 食中毒及び感染症の発生

  • 職員(従業者)の法令違反・不祥事等の発生

  • その他、報告が必要と認められる被害や影響が発生した場合

(参考:事故報告(介護保険サービス事業所等)|町田市

訪問看護の事故を防ぐための予防策

事故を未然に防ぐため、訪問看護ステーション全体で取り組める予防策を3つご紹介します。

①事故の原因から業務ルールや体制を見直す

起きた事故の原因や背景から、訪問看護の業務ルールや働き方などの体制を見直しましょう。

例えば、事故の原因のひとつとして、職員の疲労や時間に追われることによる心理的負担がある場合、業務の負担を軽減できるよう改善をしていくことが重要です。シフトや訪問スケジュールを見直したり、残業時間を減らせるように業務効率化を目指したりするなど、職場の体制の改善に取り組みましょう。

②ヒヤリハットやインシデント事例から学ぶ機会を作る

ヒヤリハットやインシデントの事例を職員同士で学ぶ機会を作りましょう。

ヒヤリハットやインシデントは、同じような状況で再度起こる可能性や事故に繋がってしまう注意すべき事象です。職員全体でヒヤリハットやインシデントの事例を共有する機会を定期的に設け、事例を自分事として振り返り、同じヒヤリハットやインシデントを繰り返さないよう気を付ける習慣をつけましょう。

③危機予測トレーニング(KYT)を行い、事故を未然に防ぐ思考を身に着ける

危機予測トレーニング(KYT)を実施しましょう。

KYTとは、事例から、業務に潜む危険因子と、その危険因子が引き起こす現象、背景、対策、行動目標などを考え、チームで共有するためのトレーニングです。

訪問看護の現場では、利用者からのハラスメントや暴力などを受けるリスクを軽減するために実施していることが多いようです。

事故が起きてしまったときに備えて賠償責任保険に加入しましょう!

万が一、事故が起きてしまった場合に備えて、賠償責任保険に加入しておきましょう。賠償責任保険は、業務において対人・対物事故が起きてしまった場合に、その賠償責任を補償する保険です。

詳しくはこちらの記事で説明していますのでご覧ください。

まとめ

訪問看護の事故事例や、事故発生時の対応、事故の予防策について解説しました。

事故はいつ起きてしまうかわからないので、事故発生時の対応についてマニュアルを整備し、定期的に研修を行うなどの環境を整えましょう。

また、もし事故が起きてしまった場合、重要になるのが「何時何分に、どのような状況で、どのような対応を行ったのか」という記録です。事故の対応を行いながらメモを取るのはとても大変なので、タブレットやスマートフォンで写真を撮るなどの方法も活用しながら、「時間」と「状況」を記録として残しましょう。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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