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【2025年版】訪問看護の立ち上げ時に使える助成金・補助金|必要な初期費用と融資について解説

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この記事は2025年5月時点の情報をもとに執筆しています

【2025年版】訪問看護の立ち上げ時に使える助成金・補助金|必要な初期費用と融資について解説
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

訪問看護ステーションの立ち上げを検討している皆さまの中には、「立ち上げ時に助成金や補助金が使えるのかどうか知りたい」「開業資金がいくら必要なのか目安を知りたい」という方は多いのではないでしょうか?

この記事では、訪問看護ステーションの立ち上げ時に使える助成金・補助金について解説しています。

立ち上げに必要な初期費用の目安は500万~1,000万

訪問看護の立ち上げ時に必要な資金は、おおよそ500万~1,000万といわれています。初期費用にかかる資金の内訳は主に以下の費用が挙げられます。

人件費・設備費・物件取得費

  • 雇用するスタッフの人件費

  • 業務で使うパソコンやスマートフォン、事務デスク・チェアなどの設備費用

  • 事務所や駐車場などの物件取得費

運転資金

訪問看護の開業で特に注意すべき点は、運転資金を約3か月~5か月分の収入を目安に準備することです。

介護報酬と診療報酬は、請求をしてから手元に入金されるまで約2か月かかります。また、開業当初は利用者の人数が少ないことが予想されるため、収入の金額も少なくなります。

そのため、運転資金が枯渇しないように収支の見通しを立てて資金準備をすることが重要です。

訪問看護の立ち上げに使える助成金・補助金の一覧

それでは、訪問看護ステーションの立ち上げに使える助成金・補助金について見てみましょう。

  • 業務改善助成金

  • 両立支援等助成金

  • 働き方改革推進支援助成金

  • IT導入補助金

  • ICT補助金

業務改善助成金

業務改善助成金とは、生産性向上のために設備投資を行い、最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、設備投資にかかった費用を一部助成する制度です。

対象となる条件

  • 中小企業、小規模事業者である

  • 事業所内の最低賃金と開業地域の最低賃金の差額が50円以内であるなど

助成される金額

生産性向上のためにかかった設備投資費×一定の助成率×助成上限額を比較し、いずれか安い方の金額

助成の対象経費

対象となる生産性向上にかかわる経費については、特例事業者に当てはまる場合はPC、スマートフォン、タブレットの導入費用や自動車の購入費用が助成対象となります。

※特例事業者の要件は、以下に当てはまる場合です。

  • 事業所の最低賃金1,000円未満である

  • 原材料費の高騰など外的要因により、助成金申請前の3か月間のうち、ある1か月の利益率が前年同期に比べて下がっており、その差が3%ポイント以上ある

詳細は、厚生労働省の業務改善助成金サイトをご確認ください。

(参考:業務改善助成金|厚生労働省)

両立支援等助成金

子育てや介護を行いながら仕事を継続できるよう、働く環境の整備に取り組む事業主に対して助成する制度です。以下の6つのコースが設けられており、休業を取得させた状況や取り組み内容に応じて助成金が加算されるような仕組みです。

  • 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)

  • 育児休業等支援コース

  • 育休中等業務代替支援コース

  • 柔軟な働き方選択制度等支援コース

  • 介護離職防止支援コース

  • 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース

対象となる条件

それぞれの助成金を申請できるのは中小企業の事業主に限ります。

中小企業の事業主の範囲は、訪問看護事業が含まれるサービス業の場合、資本額もしくは出資額が5,000万円以下、または常時雇用する労働者数が100人以下の場合です。

助成される金額

助成金額には要件に応じて変動があり、労働者一人当たりの支給額は各コースごとに設定されています。

各コースごとに助成される金額や要件については、厚生労働省の両立支援等助成金のご案内(リーフレット)をご確認ください。

(参考:両立支援等助成金のご案内|厚生労働省)

IT導入補助金

IT導入補助金とは、経済産業省の中小企業庁が主体で、全国の事業所が対象となる中小企業・小規模事業者向けのITツール導入を支援する制度です。

IT導入補助金は、導入目的に応じて以下の4枠に分かれています。

  • 通常枠

  • インボイス枠(インボイス対応類型/電子取引類型)

  • セキュリティ対策推進枠

  • 複数社連携IT導入枠

電子カルテを導入する場合は、『通常枠』で申請する訪問看護ステーションが多いようです。対象の補助金類型により異なりますが、初年度+2年度目の導入費用の1/2※の費用が補助されます。(※通常枠で3か月以上、地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員数が全従業員の30パーセント以上であることを示した場合は、2/3以内)

※法人の前年度納税証明書の提出が条件です

スケジュールや申請の流れは、IT導入補助金の公式サイトを参考にしてください。

ICT補助金

ICT補助金とは、厚生労働省の『ICT導入支援事業』の制度の一つで、介護現場におけるICT機器やソフトの利用を促進するために作られた補助金制度です。

上記のIT導入補助金と名前は似ていますが、実施主体、対象事業者、補助金の適用範囲が異なります。

実施主体が都道府県となるため、ICT補助金の利用を検討する場合は、開業を検討する都道府県の情報を確認する必要があります。

補助対象

  • 介護ソフト

  • 情報端末(スマートフォン、タブレット、インカム等)

  • インターネット環境機器(Wi-Fiルータ等)

  • その他運用経費(クラウド利用料、勤怠管理やシフト管理機能を持つソフトなど)

地方自治体の助成金・補助金の一例

地域独自の助成制度(例:東京都など)

助成金や補助金は、国や政府だけでなく各都道府県等も提供している場合があります。この記事では東京都と大阪府を例に、訪問看護ステーションが申請できる制度の一覧をご紹介します。

東京都

  • 東京都新任訪問看護師育成支援事業

  • 訪問看護ステーションにおける認定看護師資格取得支援事業

  • 訪問看護ステーション等事務職員雇用支援事業

  • 訪問看護ステーション代替職員(産休等)確保支援事業

大阪府

  • 訪問看護相互連携事業

  • 訪問看護連携システム導入支援事業

  • 事務職員等の雇用支援事業

  • 特定行為研修等の代替職員確保支援事業

  • 機能強化支援事業

最新の内容については各都道府県のホームページを都度確認するようにしてください。

(参考:訪問看護推進総合事業|東京都福祉保健局訪問看護ネットワーク事業|大阪府

助成金・補助金を使うメリット

初期コストの軽減

訪問看護ステーションの立ち上げには、物件取得費や人件費など多くの初期費用がかかります。補助金や助成金を活用することで、自己資金の負担を大幅に軽減できます。また、制度を利用して初期費用を抑えた分をスタッフの採用など注力したい部分にお金を使うことができます。

ITツール導入による業務効率化

助成金・補助金によっては、ITツールが補助対象の制度があります。立ち上げの段階からITツールを導入することで、効率的に訪問看護ステーションを運営することができるでしょう。また、スタッフの採用時には、ITツールを導入していることで若手職員が興味を持ってくれるケースもあります。

助成金・補助金を申請する際の注意点

審査に落ちる可能性があることを含めて検討する

補助金や助成金は審査があり、必ず受給できるわけではありません。申請内容や条件によっては審査に通らない可能性があります。

そのため、受給前提ではなく、落ちた場合の資金計画も含めて検討することが重要です。

対象となる条件や提出物、スケジュールを必ず確認する

助成金・補助金には、各制度ごとに申請対象の条件があるので申請前に必ず確認が必要です。提出物やスケジュールも各制度ごとに異なるため、気が付いたらスケジュールの締め切りが過ぎていたということにならないように、余裕をもった準備をするとよいでしょう。

実施後払いのため資金繰りに注意

助成金・補助金が実際に手元に入金されるのは、審査に通り手続きを進め、実績報告をした後などの後払いのケースが多いです。そのため、申請前でも必要な費用を一時的に自己負担する必要があります。資金繰りを圧迫しないよう、十分な事前準備と計画をするようにしましょう。

助成金・補助金以外の資金調達方法

日本政策金融公庫などの融資制度を使う

助成金・補助金では資金が足りない場合や審査に落ちてしまった場合には、融資制度を活用するとよいでしょう。融資とは、金融機関や公的機関から資金を借り入れる方法で、多額の資金を低金利で調達できるメリットがあります。

ただし、審査には事業計画書や資金繰り表などの書類が必要で、審査期間も1〜2カ月程度かかることがあります。

主に、以下の金融機関で融資を受けることができます。

  • 銀行や信用金庫

  • 日本政策金融公庫

訪問看護ステーションの開設基準

訪問看護ステーションを開設するためには、介護保険法に基づいて定められた3つの基準「人員基準」「設備基準」「運営基準」を満たす必要があります。

人員基準

基準に定められた職種と配置人数以上のスタッフを揃える必要があります。特に、保健師・看護師・准看護師は常勤換算方法で2.5人以上必要です。

種別 職種 配置人数
訪問看護ステーション 管理者(保健師・看護師) 常勤1人以上(他の職務と兼務可)
保健師・看護師・准看護師 常勤換算方法で2.5人以上(うち常勤1人以上)
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 実情に合わせた適当数(配置がなくても可)
病院・診療所 保健師・看護師・准看護師 適当数

※常勤換算方法とは、常勤職員は1名と数え、非常勤職員は勤務延べ時間数を当該事業所の常勤職員の所定労働時間で割ることで計算した人数で数えます。例えば、常勤職員の所定労働時間が週に40時間の場合、週に20時間(1日4時間週5日)の非常勤職員は、「0.5名」として数えます。

設備基準

設備基準には、利用者へ適切な訪問看護を提供するために必要とされる設備や備品等に関する基準が定められています。

訪問看護ステーションの場合

  • 事業の運営に必要な広さ(利用申込みの受付、相談等に対応できるスペースがある)の事務室を設けること。

  • 訪問看護の提供に必要な設備・備品を備えていること。

ただし、同一の敷地内に他の事業所や施設等がある場合は、必要な広さの専用の区画を設けることで満たします。また、設備・備品についても、他の事業所や施設等に備え付けられたものを使用することができます。

病院又は診療所の場合

事業の運営に必要な広さ(利用申込みの受付、相談等に対応できるスペースがある)を有する専用の区画を確保していること。

  • 訪問看護の提供に必要な設備・備品を備えていること。

  • 設備・備品は、医療機関に備え付けられたものを使用することができます。

訪問看護ステーション立ち上げの流れ

訪問看護ステーションを立ち上げるには、資金調達と同時に以下のことを進める必要があります。

  1. 法人設立

  2. スタッフ採用

  3. 事務所の契約と設備備品の準備

  4. 指定申請

スケジュールの設定や融資の進め方などは訪問看護ステーションの立ち上げの専門家にサポートしてもらうと安心して進めることができるのでおすすめです。

まとめ

訪問看護ステーションの立ち上げには、助成金・補助金を活用することで初期費用の負担を軽減できます。無理のない資金計画を立てるためにも、制度をあてにしすぎず複数の資金手段を検討することがおすすめです。また、助成金・補助金の申請には期限や条件があるため、早めの情報収集が成功のカギです。

カイポケ訪問看護では、訪問看護ステーションの開設に関わるサポートを行う『開業支援サービス』を無料で提供しています。専任のスタッフが対応するので、開業に関する疑問を解消したい方は、ぜひご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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