【在宅医療・在宅ケア】多職種連携の必要性とは?訪問看護における事例や課題を解説
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株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部
看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。
目次
在宅医療(在宅ケア)を提供するにあたり、利用者が望む在宅療養を提供するためには医療・介護の専門職間で多職種連携を行うことが重要とされています。
今回は、在宅医療における多職種連携の必要性やそれぞれの職種の役割、訪問看護における多職種連携の事例や課題を解説します。
在宅医療における多職種連携とは?
在宅医療における多職種連携とは、在宅療養を行う方が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、切れ目のない医療・介護を提供するために、医療・介護の各専門職が連携することを指します。
在宅医療(在宅ケア)における多職種連携の必要性が高まっている
日本の65歳以上の人口は年々増加傾向にあり、2042年に3900万人に到達するとみられています。また、団塊世代が75歳を超える2025年以降は医療や介護の需要が増加すると想定されています。
高齢者の尊厳を維持し、自立生活を支援するためには「地域包括ケアシステム」の構築が必要とされ、「地域包括ケアシステム」を構築するためには医療・介護の多職種連携が重要とされています。
地域包括ケアシステムとは?
地域包括ケアシステムとは、その地域に住んでいる人が重度な要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、保険者である市町村や都道府県が「住まい・医療・介護・予防・生活支援」を包括的に提供する体制を指します。
地域医療構想とは?
地域医療構想とは、今後の高齢化や人口減少により医療ニーズの質的・量的変化や労働力人口の減少を見据え、医療機関の機能分化・連携を進める仕組みです。
各地域での医療需要と病床の必要量を「高度急性期」、「急性期」、「回復期」、「慢性期」の4つに分類し、医療機関の状況と今後の方向性を報告する「病床機能報告」をもとに見える化し、各構想区域の「地域医療構想調整会議」で病床の機能分化や連携に向けた協議を行います。
(参考:地域医療構想について|厚生労働省)
在宅医療で連携する職種とそれぞれの役割
在宅医療で連携する職種には、以下の職種が挙げられます。
主治医
薬剤師
病院の看護師
訪問看護の看護師
リハビリの専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)
管理栄養士
訪問歯科医
ケアマネジャー
医療ソーシャルワーカー
介護職員
以下では、各職種それぞれの役割について説明します。
主治医
主治医は、在宅療養者の病状を把握し個々に適した治療を提供すること、療養者本人や家族へ病状・予後の説明を行うことが重要な役割となります。
また、在宅医療の中心的存在となって治療の面で重要な情報を中心に多職種へ情報提供・助言などを行います。
薬剤師
薬剤師は、在宅療養者に処方された薬の作用や服用・使用方法等の説明を行います。複数の科から治療目的が異なる薬の処方がある際は、重複している薬がないか、併用の危険性がないかといった確認を行います。
病院の看護師
病院の看護師は、在宅療養者の退院時に、患者様の入院中の生活状況や服薬管理方法など、在宅生活での注意点を共有します。また、在宅療養でも継続して必要な医療機器等管理や処置などがあれば訪問看護師等に引継ぎを行います。
訪問看護の看護師
訪問看護の看護師は、在宅療養者の体調確認、服薬や医療機器の管理、日常生活の介助といった、医師の指示やケアプランに沿った看護計画に基づいて在宅療養の直接的な支援を担います。
リハビリの専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリの専門職は、医師の指示やケアプランに沿って、在宅での日常生活に必要となる機能のリハビリを行います。また、自宅内で安全な動作を行えるように環境調整や福祉用具・自助具等の助言も行います。
管理栄養士
病院等に所属する管理栄養士は、退院後、栄養管理が必要な在宅療養者やその家族に栄養管理指導を行います。
訪問歯科医
訪問歯科医は、自力での通院が困難な在宅療養者に対し自宅に訪問し歯科診療を行います。虫歯治療や義歯の調整、自宅で実施できる口腔ケアの指導等を行い、在宅療養においても適切な口腔管理ができるよう支援します。
ケアマネジャー
ケアマネジャーは、介護保険の利用者に必要な介護サービスのプランニングを行い、各事業所と本人及び家族の調整役を担います。
医療ソーシャルワーカー
医療機関等に属する医療ソーシャルワーカーは、在宅療養を希望する患者の退院時に、社会的・経済的な面での相談・調整を行う役割を担います。
介護職員
介護職員は、介護保険の利用者に、自宅で日常生活が送れるように介護サービスを提供します。ケアプランに沿って、食事作りや買い物、掃除、トイレ介助や入浴介助等を行い、在宅療養者の生活を支援します。
訪問看護における多職種連携の事例とその学び
厚生労働省が示す「在宅症例を通じての多職種協働・地域連携の具体的学び」から、問題点や介入結果、学びとなったことを見ていきましょう。
症例
(引用元:在宅症例を通じての多職種協働・地域連携の具体的学び,p190|厚生労働省)
80代男性 妻と二人暮らし。
病歴:#1 心源性脳梗塞後左片麻痺、#2 心房細動、#3 膀胱癌術後、#4 認知症(多発脳梗塞による)
ADL:更衣「部分介助」、食事「自立」、移動「見守り」、排泄「自立」、整容「デイケアでの入浴」
要介護度3
医療・介護サービス利用状況:訪問診療2回/月、訪問看護1回/週、デイケア1日/週
問題点
(引用元:在宅症例を通じての多職種協働・地域連携の具体的学び,p191|厚生労働省)
妻の精神的な介護負担(夫とのやり取り、介護についての次女およびケアマネジャーとの意見対立)
専門職のアプローチ
訪問看護では妻の介護を承認し、ねぎらう言葉がけを意識的に行った
ケアマネジャーと訪問看護師が同席し「妻の介護負担の緩和と持続的な介護体制の構築」を目的に家族会議を行い、妻以外の家族が支援する内容や今後の介護サービスについて話し合いを行った。
ケアマネジャーはデイサービスの回数等介護サービス見直しの手続きを行い、家族全体と連絡をとってサポートすることを伝えた
(参考:在宅症例を通じての多職種協働・地域連携の具体的学び|厚生労働省)
考察
今回の事例について、以下のような考察が示されました。
肯定的意味付けを診察中に繰り返す中で、妻の外部リソースの利用に対する姿勢が変化した。そのタイミングで、介護を巡る家族の対立構造に介入すべく、家族会議を開催。それぞれの介護への関わりを調整することによって、持続可能な介護体制を構築することができた。
(引用元:在宅症例を通じての多職種協働・地域連携の具体的学び,p193|厚生労働省)
多職種連携を行うにあたり、利用者とその家族がおかれている環境や問題の背景をそれぞれの職種が把握し、連携しながら介入し、その結果を情報共有することが大切です。
介入の結果、利用者と家族が抱える問題が解決されたのか、あるいはさらなるアプローチが必要かどうかを多職種間で議論し、利用者・家族に最適な支援方法を考えていくことが多職種連携の重要なポイントとなるでしょう。
訪問看護における多職種連携の課題と対策
訪問看護においても多職種連携は欠かせないものですが、在宅で過ごす利用者が様々な医療機関・介護事業所等を利用している場合、以下のような課題が発生するでしょう。
情報交換がタイムリーにできない
情報を共有する相手や内容が不明瞭
それぞれの課題の詳細と対策について説明します。
【課題①】情報交換がタイムリーにできない
終末期など利用者の場合、状況や心境の変化が常にあり、家族の精神的・身体的負担なども変化しますが、訪問看護師側も相手先の関係機関の専門職も他の業務などでスケジュールが合わず、電話などでタイムリーに情報を交換することは難しいです。
対策:施設の垣根を越えて情報交換が可能なツールをで導入する
情報交換がタイムリーにできない時の対策として挙げられるのが、オンライン上でのコミュニケーションツールです。
例えば、医療介護専用SNSの「MCS (Medical care station)」では、MCSに参加している医師やケアマネジャーといった多職種と、オンライン上で利用者の情報共有、意見交換ができるツールです。
このようなツールを導入することで、タイムリーなコミュニケーションをとることができます。
【課題②】情報を共有する相手や内容が不明瞭である
職種間でどのような情報を共有したらいいのか不明瞭なことがあります。また、誰に相談すればよいのか迷ってしまうこともあります。
対策:互いに不足している情報を提示し合う
関係機関の専門職が必要とする情報を事前に確認し、互いに不足している情報を提示することが大切です。
それぞれの専門職が利用者・家族に対して、連絡ノート等を使って情報を記し、関係機関の職員が連絡ノート等を確認することで、利用者の状態や変化に対して共通認識を持ち、情報を把握できるようになるでしょう。
まとめ
在宅ケアにおける多職種連携の概要や各職種の役割、そして多職種連携の課題と対策について解説しました。
訪問看護の利用者に対して適切なケアを提供するためには、訪問看護で提供しているサービスの内容や利用者・家族の状態・心境の変化について、自ステーションと関係機関の多職種に、タイムリーに共有することが大切です。
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