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訪問看護師とは?役割・やりがい、病院の看護師との違いを解説!

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訪問看護師とは?役割・やりがい、病院の看護師との違いを解説!
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

医療の高度化や、高齢化による介護・在宅医療の需要の増加から、利用者宅に訪問し看護を提供する訪問看護は、在宅療養者を支える重要な役割を担っています。

需要の高まりから訪問看護に従事する看護師は増加し続けていますが、病院やクリニックで働く看護師と比較すると、「訪問看護の役割や業務が具体的に把握できない」、「どんなスキルがあれば訪問看護師になれるの?」という方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は訪問看護に興味がある看護師の方向けに、訪問看護師の役割や仕事内容、病棟看護師との違いなどについて解説します。

訪問看護師の役割とは?

訪問看護では、介護保険もしくは医療保険で訪問看護の指示を受けた利用者の自宅に看護師等が訪問し療養の支援を行います。訪問看護を担う看護師には、以下のような役割があります。

  • 主治医の指示に沿った療養支援・治療の継続支援を行う

  • 利用者や家族からの相談を受け対応する

  • 在宅医療や介護サービスに関わる多職種との連携役を担う

訪問看護師は利用者を医療の面や日常生活、社会的環境等さまざまな視点からアセスメントを行います。また、利用者が住み慣れた地域でその人らしく生活できるよう支援することが重要な役割とされています。

厚生労働省が示す訪問看護の役割

厚生労働省は、訪問看護の役割を以下のように示しています。

疾病又は負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある者に対し、その者の居宅において看護師等による療養上の世話又は必要な診療の補助を行う。

(引用:第220回介護給付費分科会資料3(訪問看護),p4|厚生労働省

訪問看護師の仕事内容

利用者が自宅での生活を続けることができるよう、訪問看護では様々な看護を提供しています。以下が訪問看護師の主な仕事内容の一例です。

  • 利用者の健康状態の観察、利用者・家族・環境のアセスメント

  • 在宅療養の支援(清潔介助、排泄介助、移動介助等)

  • 日常生活援助(住環境の整備等)

  • 診療の補助(薬剤管理、検体採取等)

  • 医師の指示に沿った治療や処置(褥瘡ケア、栄養管理、医療機器の管理等)

  • ターミナルケア(疼痛管理、化学療法の管理)

  • お看取り(エンゼルケア等)

  • 家族に対する助言

  • 利用者の状態の変化等について医師・家族・関係機関等への報告・連絡

など

実際の看護内容について詳しく知りたい方は、以下厚生労働省の統計情報をご覧ください。

No20.訪問看護ステーションの利用者数,9月中の看護内容(複数回答)、要介護(支援)度-適用法別|厚生労働省

介護保険の訪問看護の場合は、ケアマネジャーが作成するケアプラン(居宅サービス計画書)上に訪問看護が提供するサービス内容が、医師の指示書に訪問看護が提供する療養支援の内容が示されます。医療保険の訪問看護の場合は、医師の指示書に訪問看護で提供する療養支援の内容が示されているので、これらの内容に基づいて利用者に適した看護を提供します。

1日で複数軒の利用者宅を回り、一例で示すような看護を提供するのが訪問看護師です。ここからは訪問看護師の1日のスケジュールや、介護保険のうち同じ訪問サービスに区分される「訪問介護」との違いについて説明していきます。

訪問看護師の1日のスケジュール

利用者宅に訪問して看護を提供する訪問看護の特性から、訪問看護師の1日のスケジュールの中では「移動」と「訪問」が多くの時間を占めます。

以下に訪問看護師の1日のスケジュールの一例を示します。

時間 業務内容
8:30~9:00 出勤し朝礼参加
9:00~9:45 移動・訪問①
9:45~10:45 移動・訪問②
10:45~12:00 移動・訪問③
12:00~13:00 休憩
13:00~14:15 移動・訪問④
14:15~15:45 移動・訪問⑤
15:45~16:45 移動・訪問⑥
16:45~17:00 ステーションで職員会議参加
17:00~17:30 看護記録等の業務を終わらせ、退勤

利用者ごとに訪問予定時間が決まっているので、余裕をもって移動し、時間通りに利用者宅に訪問することが求められており、訪問スケジュールの管理も訪問看護師の重要な業務の一つといえるでしょう。

訪問看護のスケジュール管理方法について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

訪問看護の仕事と訪問介護の仕事の違い

在宅の利用者を支援するという点では、「訪問看護」と「訪問介護」が似ているサービスのように感じる方も多いのではないでしょうか?実際は適用となる保険や従事するために必要な資格、実施できるケアの3つの観点で違いがあります。これらの違いを表にまとめました。

訪問看護 訪問介護
提供するサービスに適用となる保険 医療保険
介護保険
介護保険
従事するために必要な資格 看護師
准看護師
保健師
理学療法士等のリハビリ職員
介護職員初任者研修以上の資格(※1)
介護職員初任者研修修了
実務者研修修了
介護福祉士
実施できるケア 医師の指示に基づいた在宅療養の支援や医療処置、診療の補助等の医療サービス
身体介護等の介護サービス
生活援助や身体介護等の介護サービス(※2)

※1 看護師資格がある方は、介護職員初任者研修修了者とみなされるので、訪問介護の業務に就くことができます。ただし訪問介護員として雇用された場合、診療の補助や療養上の世話といった、保健師助産師看護師法に規定されている業務は実施できません。
※2 医療サービスについては原則不可。経管栄養と痰吸引に限り、研修を修了した訪問介護員が実施することは可能です。

病院やクリニックの看護師から在宅療養を支援する仕事に従事したいという看護師の方の中には、自宅で一人で看護ケアを提供する不安から訪問介護への転職も視野に入れる方もいらっしゃいます。ただし、その場合は看護師資格で認められた業務ができなくなることに留意しましょう。

訪問看護と病棟看護の違いとは?

病院での看護を経験している方の中には、「訪問看護は看護実習以外で目にしたことがないので、業務の違いがよく分からない」という意見も聞かれます。

そこで、ここからは訪問看護と病棟での看護における違いを4つご紹介します。

①特定の診療科に限らない看護技術・看護知識が必要

訪問看護では特定の診療科に限らず、幅広い看護技術や看護知識が必要とされています。

病棟での看護は「脳神経外科」や「循環器内科」等、診療科ごとに病棟が分かれていることから各科に特化した看護技術や知識が求められる一方で、訪問看護ではあらゆる疾病を持つ利用者に対して看護を提供するため、特定の診療科に限らず、利用者の疾病や状況に応じた看護技術や知識が求められます。

②基本的に単独で看護を行う

訪問看護では病棟と異なり、基本的には単独で利用者宅に訪問し、看護を提供します。

病棟の場合、病棟責任者や医師が近くにいる環境のため、相談事項や報告はすぐに実施できることが多いでしょう。また、看護をするにあたって複数人の力が必要な際にも、声かけ一つで応援を呼ぶことができる環境にあります。

一方、訪問看護では単独で訪問することが多いため、利用者の病状から対応すべきことを自身で判断する必要があります。

③使用できる物品に限りがある

訪問看護では利用者宅で看護を提供する環境の特性上、使用できる物品に限りがあります。

病棟では衛生物品やケア物品が多く揃えられており、提供するケアに応じて使う物品を選ぶことができますが、訪問看護では利用者の金銭的な負担やスペースに限りがあることなどを考慮し、利用者宅にある物品を代替してケアに使う場合があります。

介護保険の利用者に必要な福祉用具については、介護保険を利用してレンタルや購入が可能ですが、できる限り利用者の負担が軽減できるよう、自宅にあるものを工夫して利用するような意識をもつことも大切です。

④夜勤がない、オンコールがあるなど働き方が異なる

訪問看護は基本的に日勤業務が主です。病棟のように2交代・3交代制の夜勤業務があるシフト勤務ではないので、夜勤を避けたい人にとっては働きやすい環境といえるでしょう。

ただし、夜間に利用者や家族からの電話対応や緊急時の訪問を行うオンコール当番の制度があるステーションも存在します。

訪問看護師のやりがい

訪問看護の役割や業務内容について紹介しましたが、訪問看護に興味がある方にとって気になるのは「仕事のやりがい」なのではないでしょうか?

ここからは、訪問看護で得られるやりがいの例を3つ紹介します。

一人ひとりの看護にじっくり時間を費やすことができる

訪問看護では、利用者一人ひとりにじっくり時間を費やすことができます。

病院では、1名の看護師が多くの患者さんを看護することが多く、時間を確保できないこともあるでしょう。

訪問看護は1回の訪問時間が30分以上となる場合が多く、サービス提供時間中はその方につきっきりで看護を提供できることから「一人ひとりにしっかり向き合って看護がしたい」と思う方にとって、やりがいを感じやすい環境です。

利用者の人生に寄り添い、長期間にわたって関わることができる

訪問看護の利用者は、長い期間にわたって訪問看護を利用される方が多いため、利用者や家族に人生に寄り添った看護を提供し続けることができます。

長期間にわたってケアの提供やコミュニケーションを取ることで、医療職の一人という枠を超え、家族と共に利用者を支える仲間として長期的に伴走できることも訪問看護師のやりがいの一つでしょう。

利用者の意思を最大限尊重できる

訪問看護は利用者の意思を尊重しやすい環境にあり、その意思にできる限り寄り添うことができます。

病院で療養する場合、持ち込める物品等に制限があることは、病院の環境上避けられないことです。しかし訪問看護の場合、利用者宅で過ごしているので、周囲を気にせず好きなことに挑戦できる環境にあります。そのような環境で、利用者の思いを尊重した看護を提供できることにやりがいを感じることでしょう。

訪問看護師になるにはどうしたらいい?

求人情報を確認しよう

まずは訪問看護ステーションの看護師の求人を見てみましょう!

検索エンジンに、「地域名 訪問看護 求人」、「地域名 訪問看護 募集」といったキーワードを入れて調べると多くの求人情報が出てきます。

求人情報には業務内容や年収などさまざまな情報が掲載されているので、訪問看護ステーションの理念や方針なども参考にしつつ、いくつかのステーションの求人情報を閲覧して比較してみると良いでしょう。

求人情報を確認するときにはどんなことに注意すればいい?

それでは、訪問看護の求人情報を確認する際にはどのような点に注意すべきなのでしょうか?

今回は、「必要な資格」と「必要な実務経験」、2つのポイントをご紹介します。

①必要な資格を確認しよう

訪問看護ステーションの募集内容に、業務上必要とされる資格があるか確認しましょう。

「応募要件」、「必須要件」といった項目に、看護師の資格の種類や「自動車普通免許」の資格について条件を記載している場合があります。正看護師のみを募集している場合や、移動手段として車を用いるステーションもありますので、応募要件に保有資格の条件があるか必ずチェックしましょう。

②必要な実務経験を確認しよう

訪問看護ステーションの募集内容に、必要とされる実務経験があるか確認しましょう。

「応募要件」、「歓迎要件」といった項目に、臨床経験の年数や訪問看護経験を有するかについて記載がある場合があります。

ただし最近では、訪問看護の経験を不問とするステーションや、新卒採用を行うステーションも増えつつあるので、自身の経験に合う求人情報を探しましょう。

応募する前にやっておいた方がいいことは?

入職したいと思った訪問看護ステーションの求人情報に応募する前に、長く働き続けられるためにやっておいたほうがいいことをご紹介します。

見学や面談に行ってみよう

見学やカジュアルな形式での面談ができるか確認してみましょう。

応募情報に書かれている情報は参考になりますが、実際の職場環境をどう受け取るかは個人によって様々です。自分に合う訪問看護ステーションを探すにあたって、見学や面談を通じて情報を確認できることは、入職後の「イメージしていた職場と違う」という認識のズレを予防することに繋がります。見学や面談が可能な場合は、その際に質問・確認すべきポイントを事前に考えておくと良いでしょう。

見学では、自分らしく働くために4つのポイントを確認しよう
  1. 職員同士のコミュニケーションがスムーズにとれているかどうか

  2. 管理者と気軽に話しやすい、相談しやすいと思えるか

  3. ステーションの経営方針に納得できるか、違和感がないか

  4. ICT化が進んでいるかどうか(電子カルテの導入やスマートフォンの貸与など)

人間関係だけでなく、経営方針や働き方などの観点も職場選びの大切な要素です。「働きやすい環境かどうか?」という観点で、気になることは進んで質問をすることをおすすめします。

訪問看護の転職なら『ナース人材バンク』

「なんとなく訪問看護に興味があるけど、わからないことも多いから話を聞いてみたい」、「自分に合う訪問看護ステーションを探したい」と思っている方は、『ナース人材バンク』に相談してみませんか?

ナース人材バンクの「キャリアパートナー」が最も大切にしていること。それは「一人ひとりの希望を確かめ、必要な知識や情報をきちんとお伝えすること」です。

働き方が多様な看護師の皆さんだからこそ、一人ひとりの経験やスキルに合わせて、よりあなたが「自分らしく」輝けるように。どんな場所で、どんなふうに働き、どう年を重ねていきたいのか、一緒に考え情報を提供します。

ナース人材バンクは全国の訪問看護の転職情報を豊富に持っているので、お住まいの近くで転職先をお探しの方はぜひ一度ご相談ください!

まとめ

訪問看護師の役割や仕事内容、病棟看護師との違いについて解説しました。

訪問看護は病棟やクリニックの業務と異なる環境で不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、最近では電子カルテの導入が進んでいることや、若手の看護職員の転職が増えてきていることなどから、働きやすい職場が増えています。

私たち『カイポケ訪問看護マガジン』は、訪問看護で必要とされる看護知識やステーション運営などに関する、さまざまなお役立ち情報を発信しています!

訪問看護に興味がある方は、ぜひこのほかの記事もご覧になってみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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