訪問看護におけるケアマネジャーの役割|連携と営業方法
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この記事は2024年度介護報酬改定時の情報をもとに執筆しています


とあるコメディカル トコル
理学療法士として病院、訪問看護ステーションで勤務した経験を活かし、訪問看護計画書や報告書等の帳票記載例を多数掲載する「とあるコメディカル」を運営。訪問看護の帳票記載例をまとめた冊子は累計販売2,500冊を突破している。
目次
訪問看護の現場において、訪問看護とケアマネジャーの連携は欠かせない要素です。とくに訪問看護ステーションの経営者や管理者にとって、ケアマネジャーの役割を正しく理解し、円滑な関係を築くことは、利用者満足度の向上だけでなく、ステーションの安定的な運営にも直結します。
本記事では、訪問看護におけるケアマネジャーの具体的な役割や、現場で求められる連携のポイント、そして効果的な営業方法について解説します。
訪問看護におけるケアマネの役割とは
まずは、訪問看護におけるケアマネジャーの業務と役割について解説します。
ケアマネジャーの基本的な業務
介護サービス計画(ケアプラン)の作成
利用者が適切な介護サービスを受けられるよう、利用者や家族の意向を把握し、心身の状態や生活環境を考慮して介護サービス計画(ケアプラン)を作成します。個別性の高いケアプランを作成することにより、利用者一人ひとりに合わせた最適なサービスを提供することができます。
サービス事業者(訪問看護含む)との調整・管理
利用者にとって必要なサービスを決めた後は、サービスを提供する事業者の選定を行います。もちろん、訪問看護もその中の一つです。事業者の選定後、介入頻度などスケジュールを調整したり、サービス提供事業者が集まる会議(担当者会議)の日程調整なども行います。
利用者・家族との定期面談
定期的に利用者や家族と面談を行い、心身の状態や生活状況の変化を把握して、ケアプランの見直しや調整を行います。要介護者の場合は月に1回以上、要支援者の場合は3ヵ月に1回以上の頻度で面談するよう定められています。
訪問看護におけるケアマネの役割
ケアプラン上の訪問看護の導入判断
利用者のアセスメントを通じて、医療ニーズや生活上の課題から訪問看護の必要性を判断し、ケアプランに組み込むか否かを決定します。訪問看護サービスは、このケアプランに組み込まれて初めて提供が可能となります。
医師との情報共有の橋渡し役
訪問看護のスタッフは、実施したケア内容や利用者の状態変化などを随時ケアマネジャーに報告します。ケアマネジャーはその情報を医師と共有し、多職種による連携が円滑に行われるよう調整する重要な役割を担っています。
サービス変更や中止の判断にも関与
利用者の状態は常に一定ではありません。定期面談を通じて利用者の状態やニーズの変化を把握し、訪問看護を含む介護サービスの変更や中止の必要性を判断します。もちろん、ケアマネジャー単独で判断することは難しいケースもあるため、訪問看護側からも積極的に情報提供することが重要です。
訪問看護はケアマネなしでも利用できる?
介護保険の場合
介護保険を利用して訪問看護を受ける場合、原則としてケアマネジャーが作成するケアプランが必要です。ただし、例外として利用者自身がケアプランを自己作成することで、ケアマネジャーなしでの利用も可能です。
小児訪問看護(医療保険)や自費サービスの場合
小児向けの訪問看護(医療保険)を利用する場合、介護保険におけるケアマネジャーのように在宅ケア全体を統括する担当者は基本的に配置されていません。そのため、訪問看護ステーションとは保護者が直接契約を結ぶ形になります。契約手続きやサービス調整に不安がある場合は、病院のソーシャルワーカーや相談支援専門員が仲介役を担うこともあります。
また、自費サービスの場合も保険外サービスとなるため、ケアマネジャーの関与は必須ではありません。ただし、介護保険サービスと併用して自費サービスを補完的に利用するケースも多く、結果としてケアマネジャーが関与する場面は少なくないのが現状です。
ケアマネとの連携が重要な理由
信頼関係がステーションの稼働率に直結する
前述の通り、訪問看護はケアマネジャーに選定してもらわなければ介入することができません。日頃から丁寧な連携を心がけて信頼関係を築くことが、安定した利用者紹介へとつながり、結果としてステーションの稼働率向上に直結します。
ケアマネとのよくある連携ミス
ケアマネジャーとの情報連携ミスは、単に信頼関係を損なうだけでなく、利用者さんの状態に直接的な悪影響を及ぼす可能性があります。適切な情報連携があれば防げたはずのトラブルも少なくありません。ここでは、よくある連携ミスとその具体的な影響を見ていきましょう。
利用者の変化を報告しなかった
例えば、訪問看護介入時に利用者の歩行能力が低下し、介助量が増大していたとします。本来であれば、この変化をケアマネジャーに速やかに報告し、他の介護サービス事業者にも共有することで、利用者に合わせた適切な介助を促す必要があります。しかし、この報告ができていないと、他の事業者がこれまで通りに介助を行い、最悪の場合は転倒・転落といった事故に繋がってしまうことも考えられます。
医師とのやりとりを報告しなかった
ケアマネジャーを介して医師に報告するケースもありますが、医療的側面が強い事項では訪問看護師と医師が直接連絡を取り合うことも多々あります。このようなやりとりも、必ずケアマネジャーに報告すべきです。情報を共有することで、ケアマネジャーが訪問介護の導入を検討したり、他サービスの調整を行うなど、利用者がより安心して生活できるような支援につながる可能性があります。
スケジュール変更を報告しなかった
訪問看護側の都合でスケジュール変更をした場合、ケアマネジャーに報告をしないと他の介護サービスとスケジュールが被ってしまう可能性があります。その場合、利用者にとって適切なサービスが受けられなくなってしまうことも考えられます。ケアマネジャーはスケジュールの管理・調整のもとケアプランを作成しているので、変更したい場合はまずはケアマネジャーと相談するようにしましょう。
訪問看護師・管理者がすべき具体的な連携の方法
訪問看護師や管理者がケアマネジャーと連携するタイミングと何を伝えるべきかなど具体的な連携方法を解説します。
報告・連絡・相談のタイミングと内容
初回訪問後の報告
初回訪問後は、必ずケアマネジャーに報告するようにしましょう。ケアマネジャーは、初回訪問時の様子は、サービスが適切だったかどうかなど特に気になっています。そのため、初回訪問後は速やかに、利用者の訪問看護の受け入れの反応、身体・ADLの状態、家族の介護状況、その他介入時にが感じたことなどを簡潔に報告すると喜ばれるでしょう。
ケアマネジャーへの初回訪問後の報告書の記載例は、こちらを参考にするとよいでしょう。
ケアマネジャーからの信頼度爆上がり!訪問看護初回報告書の紹介と記載例 | とあるコメディカル
状態変化時の即時報告
利用者の状態に変化があった場合は、すぐに報告することを最優先しましょう。重大かつ緊急性が高い場合は電話、それ以外の場合は書面(メールやFAXなど)と使い分けるのも良いでしょう。
定期的な連絡(電話 or 書面)
利用者の状態に大きな変化がなくても、ケアマネジャーと定期的に連絡をしたり、顔を合わせる機会を設けることも重要な連携です。特に、長期にわたって介入している利用者や、状態が安定している利用者については、ケアマネジャーへの連絡が疎かになりやすいため、注意が必要です。訪問看護計画書や訪問看護報告書を直接、手渡しすることで顔合わせの機会としている訪問看護ステーションも多いです。
ケアマネが好む情報提供のフォーマットと伝え方の工夫
簡潔に、要点を押さえる
ケアマネジャーは複数の利用者を担当しており、日々多忙です。そのため、報告をする際は簡潔に、伝えたい要点を明確にして伝えましょう。できるだけ長文は避け、箇条書きを活用するのも一つです。
医療的視点+生活面への影響をセットで伝える
ケアマネジャーの報告をする際は、医療的な情報だけでなく、それが利用者の日常生活にどのような影響を与えているかまで伝えると良いでしょう。実際の訪問看護介入時の様子や、具体的なエピソードを添えて伝えることで、利用者の状況がより正確に伝わりやすくなります。
訪問看護ステーションとしての連携体制の作り方
ケアマネジャーとの連携体制を解説します。
管理者とケアマネとの顔合わせの機会をつくる
訪問スタッフは日々の業務を通じてケアマネジャーと顔を合わせる機会がありますが、管理者自身は現場から離れていることが多く、ケアマネジャーとの接点が少なくなりやすいです。だからこそ、管理者が主体的にケアマネジャーを訪問し、近況のヒアリングを行ったり、ステーションの理念やサービスの特色、強みを直接伝える場を定期的に設けることは信頼関係の強化につながるでしょう。
担当者・訪問看護師の情報共有のルール化
ケアマネジャーへの情報共有において、ルールが曖昧な場合、連絡が重複したり、スタッフごとに伝える内容が食い違ったりする可能性があります。そのため、誰が報告をするかを明確にするなど、情報伝達時のルールを決めることも重要です。また、それらのやり取りを遠隔でもできるよう、チャットツールなど情報共有ツールの導入を検討するのも有効です。
チャットツールに関しては、MCSなどケアマネジャーを含む社外とのやり取りでも用いられるケースが増えてきています。サービス事業者全員が同じ情報を共有できる点は大きなメリットですが、相手側の導入が前提となるため、状況に応じて提案してみるのも一つの手段です。
ケアマネとの信頼関係を築く営業的アプローチ
ここでは、ケアマネジャーに選ばれる訪問看護ステーションの特徴や営業時の注意点、マナーについて解説します。
ケアマネに選ばれる訪問看護ステーションの特徴
レスポンスの早さ
ケアマネジャーからの問い合わせや依頼に対して、迅速に対応することで、信頼感が高まります。特に急な対応や書類のやり取りにおいてスピード感がある訪問看護ステーションは、「頼れる存在」として継続的に選ばれやすくなります。
看護師の対応力
訪問看護のスタッフは、知識や技術はもちろん、利用者や家族への丁寧な対応、状況に応じた臨機応変な対応力も必要になってきます。訪問先での気配りといったマナー面も重要視され、これらを備えているスタッフはケアマネジャーからも高く評価されます。このようなスタッフを育成するためには、社内での教育・指導体制の強化も必須になることは言うまでもありません。
フォロー体制と柔軟性
利用者ニーズの変化に対する柔軟な対応、サービス内容の提案など、きめ細やかなフォロー体制は高く評価されます。また、夜間など緊急時でも対応できるか、土日祝日でも対応できるかといった部分も重要視される傾向にあります。
営業訪問・連絡時のマナーと注意点
営業=「情報提供と提案」であり売り込みではない
営業と聞くと「私たちに利用者様をお願いします」という売り込みのようなイメージがあるかもしれませんが、情報提供と提案の場と捉えると良いでしょう。「何か困っていることはありませんか?」「私たちはこういうことができます」のように、相手の悩みに寄り添い、解決に導くような情報提供と提案ができればベストだと考えます。
ケアマネの業務時間や負担を理解したアプローチが重要
ケアマネジャーは多忙であるため、訪問時間や連絡の頻度、内容に配慮し、相手の負担にならないようなアプローチを心がけます。特に月末・月初は実績確認や請求業務などが重なる時期であるため、営業連絡や訪問は極力避け、余裕のあるタイミングを見計らう配慮が信頼関係の構築に繋がります。事前にアポを取る、資料は簡潔にまとめるなど、効率的かつ気遣いのある対応も必要になるでしょう。
まとめ
今回は、訪問看護におけるケアマネジャーの具体的な役割や、現場で求められる連携のポイント、そして営業時の注意点について解説しました。
ケアマネジャーの業務や役割を理解し、日頃から適切に連携をすることで、信頼関係の構築につながり、新たな利用者さまのご紹介など訪問看護ステーションにとって良い循環が生まれてきます。日々のやり取りを大切にしながら、よりよい連携体制を築いていきましょう。
訪問看護ステーションの経営者や管理者の方にとって参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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