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訪問看護の入浴介助のポイントや注意点をわかりやすく解説

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訪問看護の入浴介助のポイントや注意点をわかりやすく解説
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

訪問看護の利用者の中には、入浴介助を必要とする状態の方もいます。そのため、訪問看護を行う看護師は利用者宅で、どのような利用者に入浴介助を行うのか、入浴介助ではどのようなケアを行うのかを把握しておくとよいでしょう。

今回は、訪問看護で入浴介助を必要とする方の状況や、入浴介助の流れと注意点について解説します。

訪問看護の入浴介助とは

訪問看護における入浴介助とは、自宅で一人で入浴できない利用者に対して、バイタルサインの変動や装着している医療機器等に注意しながら、看護師が入浴の支援を行うことです。

入浴には、全身の清潔保持、血行や新陳代謝の促進、リラックス効果などがあり、利用者の清潔・健康のために必要なこととなっています。

訪問看護の入浴介助を計画する際は指示書を確認する

訪問看護サービスを提供するには、主治医からの訪問看護指示書が必要です。訪問看護指示書には、入浴介助についての具体的なケア内容は記載されないことが多いですが、疾患の状況によっては入浴の可否基準や医療機器の取り扱い指示が記載されています。

ですから、入浴介助の計画を立てる際には、皆さんがアセスメントした結果だけでなく、訪問看護指示書の留意点を確認し、ケアの具体的な内容・手順などを計画しましょう。

訪問入浴介護介助との違い

看護師が入浴介助を行うサービスとして、訪問入浴介護というサービスもあります。ここでは、「訪問入浴介護」と「訪問看護における入浴介助」の違いについて説明します。

訪問入浴介助

訪問入浴介護は、看護師1名・介護職員2名の合計3名のスタッフが利用者宅を訪問し、専用の浴槽を持ち込み、入浴の支援を行うサービスです。

専用の浴槽を持ち込むことと対応するスタッフの人数が多いことが特徴であり、寝たきりなどの理由から自宅の浴槽で入浴することが困難な方が利用するサービスとなっています。

訪問看護の入浴介助

比較すると、訪問看護における入浴介助では、看護師1名が利用者宅の浴室・浴槽で入浴の支援を行います。

そのため、寝たきりなどの場合は難しく、支援を受けながら浴室までの移動と入浴ができる方が対象となります。

訪問看護で入浴介助を実施する利用者の状況とは?

訪問看護で入浴介助を行うことが多い利用者の状況について、例を2つご紹介します。

循環器・呼吸器疾患がある利用者

訪問看護で入浴介助の依頼を受ける例として、循環器・呼吸器疾患のために体調管理をしながら入浴する必要がある利用者が挙げられます。

入浴は清潔保持やリラックス効果などのメリットがある一方で、部屋と浴室・脱衣所の温度差や一連の入浴動作が循環動態に少なからず影響を及ぼします。そのため、循環器・呼吸器疾患の利用者の入浴介助は、看護師による観察が必要とされ、訪問看護に依頼されるケースが多いようです。

ストーマや膀胱留置カテーテルを設置している利用者

訪問看護で入浴介助の依頼を受ける例として、ストーマや膀胱留置カテーテルなどを設置している利用者も多いです。

ストーマ・膀胱留置カテーテルなどを設置している場合は、介護スタッフでは対応が難しく、看護師による支援が必要となることから、依頼されるケースが多いようです。

訪問看護の入浴介助の流れ

入浴介助を行う際は、おおまかには以下のような流れで実施します。

  1. 入浴前の準備

  2. 脱衣

  3. 洗身・洗髪

  4. 入浴

  5. ふき取り・着衣

  6. 入浴後のケア

  7. バイタルチェック

それぞれの実施内容について説明します。

1.入浴前の準備

入浴前は、必ずバイタルサインの測定を行い、入浴が可能かどうかを判断します。バイタルサインに変化がある場合は入浴を中止し、シャワー浴や清拭を検討することがあります。

入浴が可能であることを確認したら、お湯はりや脱衣所の温度調整、着替えやタオルの準備を進めます。訪問看護の提供時間は限られているため、ご本人やご家族に浴室内の準備や着替えの準備をお願いしておくとスムーズに次の段階に進むことができます。

また、入浴後に処置を行う場合は、処置に必要な物品も合わせて準備しておきましょう。

2.脱衣

入浴前の準備が完了したら、脱衣の援助を行います。

脱衣所に十分なスペースがある場合は脱衣所で脱衣をしますが、十分なスペースがない場合は、利用者の歩行状況や住宅環境等を考慮して脱衣をする場所を決定します。そのため、ベッドなど脱衣所以外の場所で脱衣することもあります。脱衣では、特にズボンを脱ぐ時にバランスを崩しやすいので転倒しないように注意し、必要に応じて椅子などを準備しましょう。

脱衣後は全身の皮膚の状態をチェックできる貴重な機会なので、必要に応じて皮膚の状態のチェックを行いましょう。

3.洗身・洗髪

洗身・洗髪に使用するシャンプーやリンス、ボディソープなどは利用者宅にあるものを使用します。利用者本人が買いに行くことが困難な場合は、買い物代行サービスの利用などを勧めましょう。

洗身や洗髪は、ご自身で行えるところはご自身で行っていただき、介助が必要な部分について介助を行います。ご本人の意向を確認しながら、訪問日の体調を考慮して介助量を決定することが大切です。

4.入浴

浴槽で入浴していただくために必要な介助を行います。浴槽の形や手すりの有無などは訪問先によって異なります。

福祉用具を使わずに介助することもありますが、下肢筋力の低下に伴い転倒の危険がある利用者については、福祉用具の導入を検討してもらいましょう。

5.ふき取り・着衣

入浴が済んだら、体についた水分をふき取り、速やかに着衣の介助を行います。着衣においても、特に下着やズボンを着る際にバランスを崩しやすいので、転倒しないように注意しましょう。

また、入浴直後は皮膚の乾燥が急激に進むため、速やかに保湿を行います。高齢者は冬に限らず皮膚が乾燥してしまうため、ご本人の希望を聞きながら保湿剤を塗布しましょう。

そのほか、傷の処置を行う場合は、着衣と同時進行で傷の処置も行います。

6.入浴後のケア

入浴後は発汗を伴うため水分補給を促します。血圧変動がある場合や気になる症状がある場合は入浴後のバイタルサインを測定し、状態の変化に応じて適切な対応をとります。

浴室内で使用した物品等の片付けをし、ケアの内容を記録に残します。

入浴介助を実施する際の注意点

利用者が入浴をする際は、さまざまなリスクがあるため、看護師は利用者の安全を確保するために注意すべき点があります。今回は、3つの注意点を紹介します。

装着している治療器具等が汚染されないようにする

利用者が常時装着している気管カニューレ・ギプス・ドレーン等が入浴により汚染されないよう注意しましょう。

気管切開のカニューレをつけている場合は、気管切開孔にお湯が入らないように注意し、骨折等でギプスを装着している場合は、ラップやビニール袋などでギプスが濡れないように注意して介助しましょう。また、ドレーン挿入中の方には、マーキングを行い、逆行性感染を起こさないようドレーンの位置を常に確認し、シャワー浴後は挿入部の消毒・保護を行います。

もし、治療器具等の汚染により感染が疑われる場合は、主治医に報告し指示を仰ぎましょう。

部屋の温度差によるヒートショックを予防する

ヒートショックとは、「温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動することによって、失神したり心筋梗塞や脳卒中といった血管の病気などを引き起こす健康被害」を指します。
(参考:ヒートショック対策について|滋賀県

寒い冬場での浴室と脱衣所の温度差から、血圧が変化し、失神や不整脈、脳卒中や心筋梗塞を起こりやすくなっているため、特に高齢者や心疾患等の持病を持つ方に対する入浴準備では、入浴前後の温度差が小さくなるように注意しましょう。

転倒しないよう見守りと介助を行う

浴室は水や石鹼で滑りやすく、転倒リスクの高い環境です。狭い浴室内での転倒は頭部打撲の危険性も高いので、転倒する可能性を考慮して見守りや入浴介助を行いましょう。

座面の高い介護用のシャワーチェアや手すりなどがあると、転倒のリスクを減らすことができるので、必要に応じて購入・設置することを勧めましょう。また、浴室からの移動時や更衣するときも転倒のリスクがあるので、利用者から目を離さず、介助を行いましょう。

訪問看護の入浴介助に役立つ入浴補助用具

訪問看護で入浴介助を行う際に、より安全に介助するための福祉用具が販売されています。今回は、4つの入浴補助用具をご紹介します。

滑り止めマット

滑り止めマットとは、浴槽の中や洗い場の床に敷くことで、滑ることによる転倒等を防ぐための入浴補助用具です。下肢筋力の低下等により浴槽から立ち上がる際に滑ってしまい立ち上がれない方には、ゴム材質の滑り止めマットを浴槽内に沈めて使用します。

浴室がタイル張りや滑りやすい床の場合には、転倒防止のために床に滑り止めマットを敷いて使用します。滑り止めマットは、様々なサイズ、材質のものが販売されていますので、利用者宅の浴室に合った商品を勧めてあげましょう。

シャワーチェア

シャワーチェアは利用者の洗体時の姿勢保持や、浴槽内への移乗を支援するための入浴補助用具です。

一般的な浴室用の椅子は滑りやすく座面も低いため、高齢者にとって座りづらく立ち上がりにくいことに加え、滑りやすいことから、姿勢が不安定な方や浴槽への移乗が必要な方には、シャワーチェアの利用を勧めましょう。

シャワーチェアは、座面の高さや大きさ、背もたれの有無、肘掛けの有無など様々な種類が販売されていますので、利用者の身体状況や浴室の広さなども考慮し、適切なものを勧めてあげましょう。

バスボード

バスボードとは、浴槽へのまたぎが不安定な方が、浴槽内や浴槽のすぐ近くで座位をとってから入浴できるよう支援するための入浴補助用具です。

浴槽の端に取り付け、シャワーチェアとの高さをそろえると移動の負担が少なくて済みます。関節の拘縮等で足が曲げられず浴槽にまたげない場合にも、バスボードを使って介助することで入浴できることがあります。

浴槽台(浴槽内椅子)

浴槽台(浴槽内椅子)は浴槽へ入る際の踏み台や、浴槽内で座る椅子として使う入浴補助用具です。

昔ながらの浴槽で、浴室内の床と浴槽内の床の高低差が大きい場合や膝や股関節が曲がりにくい方の介助でよく利用されます。

まとめ

訪問看護における入浴介助の内容、一連の流れ、注意点について解説しました。入浴介助の注意点を理解し、安全かつ利用者にとって入浴が快適となるように工夫をすることが大切です。

この記事が、みなさまの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

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