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訪問看護のBCPとは?災害対策マニュアルとの違いや作成方法を解説

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訪問看護のBCPとは?災害対策マニュアルとの違いや作成方法を解説
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

訪問看護ステーションの経営に関する情報や開業に関する情報を見ていると、「BCPという単語をよく目にするな・・」という方が多いのではないでしょうか?

BCPとはBusiness Continuity Planの略で、業務継続計画とも呼ばれています。

具体的には、災害や感染症の流行、テロや大事故等の突発的な環境変化などの不測の事態が発生しても「重要な事業を中断させないこと」、「重要な事業を中断しても可能な限り短期間で復旧させること」を目的として策定する計画書です。

このBCPは、業種は関係なく、すべて企業において策定することが求められており、訪問看護ステーションにおいても同様です。

今回は、訪問看護におけるBCPの目的や重要性、策定に必要なポイントやプロセスについてわかりやすく解説していきます!

BCP(事業継続計画)は令和6年度から義務化

BCP(業務継続計画)の策定は、令和3年度介護報酬改定において、『令和6年度(令和6年4月)から義務化』が決まりました。

業務継続に向けた取組の強化【全サービス】
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける。【省令改正】(※3年の経過措置期間を設ける)

(引用:令和3年度介護報酬改定の主な事項について|厚生労働省

訪問看護におけるBCPの目的と重要性

訪問看護において、BCPを策定する目的と重要性を確認していきましょう。

【目的】

  • 災害時および緊急時に職員の安全を確保すること

  • 利用者の生活を維持するために訪問看護サービスの提供を継続させ、地域の医療・介護資源を担う役割として訪問看護ステーションを存続させること

【重要性】

  • 災害発生後は物的資源や人的資源の枯渇により訪問看護の需要が高まる

  • 災害時は医療・介護介入の緊急性が高い利用者も出てくるため早急なサービス提供が必要とされる

(参考:自然災害発生時における業務継続計画(BCP)|一般社団法人全国訪問看護事業協会

災害対策マニュアルとの違い

BCPについて理解を進めると、「これって災害対策マニュアルと同じじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、BCPと災害対策マニュアルはそれぞれ目的が異なります。

BCPと災害対策マニュアルの目的は以下のようになっています。

項目 目的
災害対策マニュアル 災害発生後、直ちに何をすれば良いか定めた緊急対応時の行動を示すマニュアル
災害ごとの行動指針を示すことで適切な対応がとれるようにするための計画
BCP(業務継続計画) 災害発生後、被害を最小限に抑えて復旧までの時間を短くするための事前・事後の継続的かつ長期的な行動を示すもの
事業を可能な限りで継続できるようにするための計画

訪問看護におけるBCP策定のポイント

それでは、訪問看護ステーションのBCPを策定するにあたって大切なポイントを3つご紹介します。

もしものときに実行できる内容にする

BCPは、「オールハザード・アプローチ(全災害対応型)」、つまりあらゆる状況下であっても、実現可能な内容にすることが大切です!

起こりうるリスクに対して、実現可能な行動を示すことを意識して作成しましょう。

例えば、「必ず平常時と同様な訪問活動を維持する」といったような理想的な行動を示すことはBCPの内容として不適切です。「医療依存度が高い利用者を優先して安否確認・支援を行う」といったように、災害等の状況に合わせて、取るべき行動を示すのが良いでしょう。

情報は整理され、確認できるようにする

BCPは、緊急時に職員が「どの手順で何をするのか?」が明確に理解できるように記載する情報を整理し、また、緊急時にすぐにその内容を確認できるように設置しましょう!

ステーション内にBCPのファイルを置くことも必要ですが、緊急時に外出先からでも閲覧できる仕組みを構築しておくことも必要になります。Googleドライブ等のクラウドサービスを利用すると、職員がスマートフォン等からBCPを確認できるようになるので、Googleドライブ等の活用をおすすめします。

完璧を目指さず作ってみる

最初から完璧な内容を目指さずに、まずは、「わかっている情報や実現できる行動からBCPを作ってみよう」という姿勢が大切です!

「あらゆるリスクに対応できるBCPを策定する」という視点は大切ですが、最初からすべてのリスクに対応できる内容を定めようとすると膨大な時間がかかり、また、実現できない内容もでてきてしまいます。

BCPは、自然環境や社会環境によって日々適切な内容に更新していくこと、「Plan」⇒「Do」⇒「Check」⇒「Action」のPDCAサイクルを回し、よりよい内容に更新していくことを目指しましょう。

BCPの策定のプロセス

ここからは、BCPを策定するプロセスを、2021年度厚生労働科学特別研究 在宅医療事業計画策定に係る研究班が作成した「BCP策定の手引き訪問看護編」の内容に沿って5STEPに分けて解説します。

①基本方針を定め組織を作る

まずはじめに、自身の訪問看護ステーションにおける基本方針を定めてBCPに係る組織作りを行います。

基本方針とは、目的のための基本的な考え方のことを示します。災害が起き、訪問看護を行う立場としてどのような考え方や姿勢をとるかを明確することが大切です。

以下のような問いを考え、定義します。

  • 何のためにBCPを作るのか?

  • 自分たちの訪問看護ステーションが目指す像や実現したいことは?

これらの考えの中には、①自施設の理念、②地域の地理的特性、③地域の災害経験という3つの要素を入れるようにします。

また、BCPはステーション全体で日ごろから準備し、実践するものです。経営者や管理者が考えているだけでは、有事の際に実行に移すことはできません。ステーション内でBCPを運用するための組織を作るようにしましょう。

以下がBCPにおける組織作りで決めておくとよい責任者です。

  • 統括を行う責任者

  • BCPの運用に関するリーダー

  • 災害時のBCP発動をする責任者

②リスクを洗い出し整理する

次に、あらゆるリスクを洗い出して整理をします。ここでは、起こりうる災害と組織体制という2つの視点でリスクの整理を行います。

起こりうる可能性のあるあらゆる災害を洗い出す

自然災害、人災、事故など、訪問看護ステーションが所在する地域において起こるリスクがある災害を可能な限りすべて挙げます。そして、挙げた災害が起こる頻度や、ステーションの運営に与える影響を災害ごとに評価し、BCP策定における優先度を決めましょう。

想定される災害や事故として以下のようなものが挙げられます。

災害の種類 具体例
自然災害 地震

台風

竜巻

洪水等の水害

火山噴火

土砂崩れ

積雪

感染症

火災

事故 停電

上水道停止

下水道機能不全

火災・ガス爆発

ガス供給停止

パソコンやインターネットの停止

人災 傷病者多数の事故

サイバーテロ

無差別テロ

ヒューマンエラー

交通事故

強盗、傷害等の事件

「ステーションの運営に与える影響」で優先度を考えるうえで、以下の2つを意識します。

  • 災害が生命の危機にかかわる程度

  • 事業継続への影響軸と頻度軸

組織体制におけるリスクや強みを洗い出す

各職員が災害時にどのようなリスクを持っているか、あるいは災害発生時や準備段階で強みとなるスキルを持っているかどうか把握しましょう。

以下が各職員において確認すべき項目の一例です。

  • 勤務形態

  • 自宅からステーションまでの距離・移動時間

  • 災害看護のスキル

  • 出勤に影響する家族の有無(子供、介護・療養が必要な家族等)

上記①②から災害ごとのシナリオを作り、ステーション運営にかかわる影響と脆弱性を掛け算してリスク値を算出してみましょう。

リスク値の計算方法

リスク値は、以下のように計算します。

影響度×脆弱性=リスク値

影響度と脆弱性の数値は、以下の基準に沿って当てはめましょう。

リスク値の項目 数値化する基準
影響度

(災害が起こったときの影響度)

1:あまり影響がない

2:影響はあるものの事業中断に至らない

3:きわめて深刻な影響がある

脆弱性

(災害への対策が取られているかどうかの程度)

1:十分な対策が取られており定期的な点検もできている

2:対策はできているが点検が十分にできていない

3:対策はできているがまったく点検していない

4:対策がまったく、あるいはほとんどとられていない/判断できない

③初期対応・緊急対応のマニュアルを整備する

起こりうる災害や事故におけるリスク値が把握できたら、次は初期対応時や緊急対応時のマニュアルを整備しましょう。すでに災害対策マニュアルを用意している場合は、その内容を参考に初期対応方法を考えます。

ここで気を付けたいポイントは、災害発生時にまずは災害対策マニュアルに記載している内容に沿って被害を最小限に抑える行動をとり、その中で訪問看護の業務継続に支障が出ると判断した場合にBCPを発動すべきか否かを考えるフローを作っておくことです。

例えば、災害マニュアルをもとに、災害発生時に取るべき行動をA4一枚程度に簡潔に示した「アクションカード」を作成すると職員が行動をとりやすくなります。

地震や火災など、発生リスクの高い災害に対してそれぞれカードを作り、確認事項や行動指針のフローを示すことでBCPの発動有無やBCPに速やかにつながる行動をとることができるようになります。

④業務への影響を分析する

災害が起きた際に優先的に復旧すべき業務を決めましょう。

災害等の緊急事態が起きた結果、業務へもたらされる影響を分析することを「BIA=Business Impact Analysis(業務影響分析)」といいます。これは、日常業務の中からステーション運営において重要な業務を選定し、その業務を継続するにあたってどのような障壁があるか等を分析することです。

業務影響分析は、以下のように進めましょう。

  1. 通常業務を棚卸しする

  2. 優先的に実施すべき業務を選ぶ

  3. 優先すべき業務を継続する際に障壁となる事象を精査し、業務の代替手段を検討する

業務影響分析の結果、優先すべきものは「優先業務」、中等度のものは「縮小業務」、優先度が低いものは「一時休止業務」と3つに分けて災害発生時の業務優先度を決め、優先度が高いものの通常と同じ業務が難しい場合には代替手段をとった業務の方法を示しましょう。

⑤業務継続のための戦略・計画を立てる

最後に、BCPを行うための戦略と計画を立てます。

BCPの運用における戦略とは、災害等が発生した際に組織体制を復旧し、業務の継続を確実にするための組織的な取り組みを指します。

戦略の例として以下が挙げられます。

  • 災害による被害のレベルを分け、組織の共通言語として動ける指標とする

  • これまで分析した内容をもとにBCPを文書化する

また、BCPの運用における計画とは、BCPを実践できるような機会を定期的に作ること、そして見直す機会を作ることなどを指します。

計画の例として、以下のようなものが挙げられます。

  • BCPに沿った訓練を実施し評価する

  • 訓練の結果からBCPの内容を改良する

  • BCPの運用を維持・管理する方法を決めておく

BCP作成は雛形を活用しよう

「BCPの策定方法は理解したものの、実際に作るとなると何を参考にしたらよいかわからない・・」という方は、雛形を活用しましょう。

厚生労働省や全国看護事業協会から以下のような雛形が公開されていますので、参考にしましょう。

厚生労働省の雛形

  • 感染症の雛形

  • 自然災害の雛形

(参考:介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修

全国訪問看護事業協会の雛形

  • 自然災害発生時における業務継続計画(BCP)―訪問看護ステーション向け―

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まとめ

訪問看護におけるBCP(業務継続計画)の目的や策定プロセス、雛形について解説しました。これからBCPを作る方や、BCPの内容を見直したい方は、今回の情報が少しでもお役に立てば幸いです。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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