【経営者必見】2025年度予算案から読み解く訪問看護の動向4つのポイント
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この記事は2025年度予算案をもとに執筆しています


感護師つぼ 坪田康佑
看護師、国会議員政策担当秘書等の国家資格をもつ看護ジャーナリスト。慶應義塾大学卒業後、Canisius大学MBAを取得。国際医療福祉大学博士課程在籍。ETIC社会起業塾を経て無医地区への医療提供体制作りに尽力し、診療所や訪問看護、医療AI会社の事業を設立した後、体調を崩し事業承継。看護経営等の記事執筆や講演、看護DX支援に取り組む。看護師のキャリア紹介ブログ「アクティブナース図鑑」を運営。
目次
訪問看護は、医療と介護を結ぶ立ち位置にあり、訪問看護の可能性は非常に広がりを持っています。
診療報酬が2年ごと、介護報酬が3年ごとの改定により、2029年までほぼ毎年のように制度変更の波が押し寄せてきます。訪問看護に関わる皆様にとって、診療報酬や介護報酬の改定は業務に大きな影響があるので、改定年度には厚生労働省のサイトを熱心にチェックされることと思います。
しかし、皆さまの中には、「報酬改定の情報をチェックするのが大変」「報酬改定の年が多くバタバタして将来に向けた準備が進まない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2025年度(令和7年度)は診療報酬も介護報酬も改定が行われない、数少ない「静かな時期」となっています。このような改定のない年こそ、日々の業務を見直し、将来に向けた準備を進める絶好の機会です。また、事前に厚生労働省の予算案に目を通しておくことで、報酬改定の動向を抑えることができ、改定時にスムーズに対応することができるでしょう。
筆者は日本男性看護師会として2024年に開催された自由民主党高労働部会看護問題小委員会の看護問題小委員会に参加しており、日々厚生労働省の予算案等に目を通している立場として、みなさんに厚生労働省の予算案の中から注目すべき内容をわかりやすく発信できたらと考えています。
この記事では、厚生労働省の2025年度(令和7年度)の看護関係予算案、特に訪問看護に関わる重要な予算配分について4つのポイントに絞って詳しく見ていきます。
厚生労働省の予算案とは?
厚生労働省の予算案とは、厚生労働省が管轄する各分野におけるその年度の予算について国会で承認を得るための案です。
厚生労働省が管轄する分野の中には看護関係の予算が含まれており、訪問看護に関わる私たちの業務に直接影響を与える重要な事項が含まれている可能性があります。次の報酬改定の予習にもなるため、日頃からチェックしておくとよいでしょう。2025年度(令和7年度)看護関係予算案については日本男性看護師会のこちらのサイトから確認ができます。
予算案から読み解く訪問看護の動向4つのポイント
2025年度(令和7年度)看護関係予算案の概要から、注目すべき4つの点について解説します。
1.特定行為に係る看護師の研修制度の推進
看護職員の資質向上に関する項目のひとつとして、特定行為に係る看護師の研修制度の推進が挙げられており、昨年度に引き続き予算計上されています。
以下の4つの事業に対してそれぞれ予算が立てられています。
特定行為に係る看護師の研修制度の推進 | 2025年度予算の内訳 |
看護師の特定行為に係る研修機関支援事業 | 5億1,200万円 |
看護師の特定行為に係る指導者育成等事業 | 6,600万円 |
看護師の特定行為に係る指定研修機関等施設整備事業 | - |
特定行為研修の組織定着化支援事業 | 1憶7,700万円 |
(参考:令和7年度 看護関係予算案の概要 令和6年12月,p1|厚生労働省)
地域における特定行為実施体制推進事業の新設で、職員に研修を受けに行かせやすい体制になることが期待される
地域における特定行為実施体制推進事業には3,900万円の予算が付けられました。
具体的には、地域支援型の指定研修機関が地域版特定行為研修推進委員会を設置し、訪問看護ステーション向けの長期型研修プランの作成や実習場所の調整を行います。また、訪問看護師が特定行為研修を受講中に代替要員の調整を行うために必要な経費に対する支援も行われます。さらに、介護保険施設などの関係団体が介護保険施設に対する特定行為研修制度の周知や、特定行為研修の協力施設としての支援を行うための特定行為研修実施体制推進委員会の設置に必要な経費に対しても支援が提供されます。
このような取り組みにより、訪問看護師が安心して研修を受けることができ、結果として地域の看護の質が向上することが期待されます。

2.ICTを活用した在宅看取りに関する研修推進事業
看護職員の資質向上推進のICTを活用した在宅看取りに関する研修推進事業についても注目するといいでしょう。こちらは2024年度と同等の1,500万円の予算が引き続き計上されています。この事業では在宅での穏やかな看取りの実現に向け、医師による死亡診断に関わる手続きの整備を目指しています。
具体的には、医師による遠隔死亡診断を実施する際にサポートする看護師に向けた研修にかかる経費を厚生労働省が支援します。研修は法医学に関する内容やICTを活用した死亡診断に関わる法令の講義などが想定されています。
また、サテライトでの研修受講環境を整備し、本研修の医師向け研修などを実施するために必要な経費に対する支援も行われる予定です。これにより、在宅での看取りに関する知識と技術の普及をさらに推進していきます。継続して推し進めようとしているところから、各訪問看護ステーションでは研修をどのタイミングに受けるのかを検討するのが重要になりそうです。

3.看護現場におけるデジタルトランスフォーメーション効果検証事業
看護業務の効率化に向けた取り組みの推進に向けて、「看護現場におけるデジタルトランスフォーメーション効果検証事業」に2億7,900万円の予算が新たに計上されました。
2024年度(令和6年度)では「看護現場におけるデジタルトランスフォーメーション促進事業」として計上されていたことを踏まえると、この事業の目的が「促進」から「効果検証」へとシフトしたことがわかります。このことから、訪問看護領域においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)を一層進めていく必要性が明確になっています。
具体的には、医療機関や訪問看護ステーションでのICT機器の円滑な導入を支援し、その導入効果の検証を実施します。これを通じて、看護現場におけるデジタルトランスフォーメーションを促進することが目指されています。

4.地域医療介護総合確保基金(医療分)
地域医療構想の達成に向けた取り組みの推進として、地域医療介護総合確保基金(医療分)には2024年度の732億9,900万円から612億円9900万円に減額計上されています。
この取り組みでは、病床の機能分化や連携の推進と、居宅等での医療提供や医療従事者の確保を目的とした支援を行います。
このうち、看護関係事業の一部として、訪問看護の人材育成や人材確保を図るための研修実施に対する支援、訪問看護推進協議会などの設置や会議開催に対する支援も行われています。
この予算からは、カスタマーハラスメント対策に必要な資金も捻出される予定です。カスタマーハラスメント対策の環境整備がまだ整っていない訪問看護ステーションは、これらの支援を活用することが特に求められています。訪問看護業界全体の安全な業務環境を整えるためにも、これらの施策の活用が重要です。
(参考:令和7年度 看護関係予算案の概要令和6年12月p.36|厚生労働省)
まとめ
本記事で解説した予算案からわかる訪問看護の動向4つのポイントをおさらいしましょう。
訪問看護師が特定行為研修を受ける際の代替要員に関する経費支援が行われる
在宅での看取りにおける医師による死亡診断に関わる手続きを整備するための経費支援が行われる
訪問看護ステーションにおけるICT機器の円滑な導入支援を継続し、「促進」から「導入効果の検証」へと実運用に向けたステップを進めている
訪問看護の人材育成や人材確保を図るための研修の実施や訪問看護推進協議会などの設置や会議開催に対する支援(カスタマーハラスメント対策含む)
本記事で取り上げた内容からも分かる通り、看護を取り巻く政策や予算の動向は、多岐にわたる課題に対応するため、日々進化を続けています。特に、訪問看護ステーションや現場の看護師が抱える課題への支援策の充実や、デジタル技術の導入促進は、今後の看護の現場を支える重要な柱となるでしょう。
訪問看護の現場では、多忙な日々の中でこうした情報を整理し、具体的な取り組みを始めることは決して容易ではありません。
2025年は、診療報酬や介護報酬の改定がない「静かな一年」と言えます。この期間を活かして、訪問看護のデジタルトランスフォーメーション推進、訪問看護師の教育体制整備やスキルアップに注力することで、次の報酬改定に備えることができるでしょう。
今後も本コラムでは、訪問看護ステーションの経営者向けの情報を発信していきます。ぜひ、本コラムで情報収集を行い、職場の同僚やご友人と共有していただき、情報を広めていただければ幸いです。一人でも多くの訪問看護師の方々に届けば、より良い在宅医療の実現につながるはずです。
訪問看護の未来を支える皆様とともに、より良い在宅看護の実現を目指していきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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