【2026年度(臨時)介護報酬改定】訪問看護の処遇改善についての議論まとめ
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株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部
看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。
目次
この記事は、厚生労働省の介護給付費分科会の資料等に基づき、訪問看護の2026年度介護報酬改定に関して議論されている情報をまとめています。
議論・審議が進み、最新の情報が公表される可能性がありますので、ご了承の上、お読みください。
作成日:2025年12月12日
2026年度(令和8年度)介護報酬改定の施行日
2026年度(令和8年度)介護報酬改定は、「2026年6月1日施行」が予定されています。
【2026年度から訪問看護も対象に】処遇改善加算の対象範囲の変更点
訪問看護・介護予防訪問看護が、新たに介護職員等処遇改善加算の対象事業所となることが検討されています。
また、それ以外にもこれまで介護職員等処遇改善加算の対象外とされていた「訪問リハ」や「居宅介護支援」なども対象事業所となることが検討されています。
2026年度 訪問看護の処遇改善加算の算定要件
新たに対象となる訪問看護、訪問リハ、居宅介護支援等では、「介護職員等処遇改善加算(Ⅳ)に準ずる要件」または「令和8年度特例要件(生産性向上や協働化の取組)」を満たすことが、介護職員等処遇改善加算の算定要件として検討されています。
令和8年度特例要件(生産性向上や協働化の取組)とは?
訪問、通所サービス等:ケアプランデータ連携システムに加入(又は見込み)等
施設、居住サービス、多機能サービス、短期入所サービス等:生産性向上推進体制加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)を取得(又は見込み)等
介護職員等処遇改善加算(Ⅳ)の算定要件
| (Ⅰ) | (Ⅱ) | (Ⅲ) | (Ⅳ) | |
|---|---|---|---|---|
| 賃金改善 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| キャリアパスⅠ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| キャリアパスⅡ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| キャリアパスⅢ | ○ | ○ | ○ | - |
| キャリアパスⅣ | ○ | ○ | - | - |
| キャリアパスⅤ | ○ | - | - | - |
| 職場環境 区分ごと1以上 | - | - | ○ | ○ |
| 職場環境 区分ごと2以上 | ○ | ○ | - | - |
| 職場環境見える化 | ○ | ○ | - | - |
賃金改善要件とは?
賃金改善要件とは、介護職員等処遇改善加算として算定した金額のうち従業員の賃金改善に充てなければならない金額・割合について定められている要件です。
具体的には、「介護職員等処遇改善加算(Ⅳ)の加算額の2分の1以上を基本給または決まって毎月支払われる手当で賃金改善に充てること」が定められています。
キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系)とは?
現行のキャリアパス要件Ⅰは、以下の1.2.3.を満たすこととなっています。
介護職員の任用の際における職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。
1.に掲げる職位、職責、職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く。)について定めていること。
1.及び2.の内容について就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。
キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
現行のキャリアパス要件Ⅱは、以下の1.2.を満たすこととなっています。
介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及びa又はbに掲げる事項に関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること。
a.資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等(OJT、OFF-JT 等)を実施するとともに、介護職員の能力評価を行うこと。
b.資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。1.について、全ての介護職員に周知していること。
職場環境等要件
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 入職促進に向けた取組 | ①法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化 ②事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築 ③他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等、経験者・有資格者等にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築(採用の実績でも可) ④職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力度向上の取組の実施 |
| 資質向上やキャリアアップに向けた支援 | ⑤働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対するユニットリーダー研修、ファーストステップ研修、喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等 ⑥研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動 ⑦エルダー・メンター制度等導入 ⑧上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ・働き方等に関する定期的な相談の機会の確保 |
| 両立支援・多様な働き方の推進 | ⑨子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備 ⑩職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備 ⑪有給休暇を取得しやすい雰囲気・意識作りのため、具体的な取得目標を定めた上で、取得状況を定期的に確認し、身近な上司等からの積極的な声かけを行っている ⑫有給休暇の取得促進のため、情報共有や複数担当制等により、業務の属人化の解消、業務配分の偏りの解消を行っている |
| 腰痛を含む心身の健康管理 | ⑬業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実 ⑭短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施 ⑮介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、職員に対する腰痛対策の研修、管理者に対する雇用管理改善の研修等の実施 ⑯事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備 |
| 生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組 | ⑰厚生労働省が示している「生産性向上ガイドライン」に基づき、業務改善活動の体制構築を行っている ⑱現場の課題の見える化を実施している ⑲5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備を行っている ⑳業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減を行っている ㉑介護ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの。)、情報端末(タブレット端末、スマートフォン端末等)の導入 ㉒介護ロボット(見守り支援、移乗支援、移動支援、排泄支援、入浴支援、介護業務支援等)又はインカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器(ビジネスチャットツール含む)の導入 ㉓業務内容の明確化と役割分担を行い、介護職員がケアに集中できる環境を整備。特に、間接業務(食事等の準備や片付け、清掃、ベッドメイク、ゴミ捨て等)がある場合は、いわゆる介護助手等の活用や外注等で担うなど、役割の見直しやシフトの組み換え等を行う。 ㉔各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等の事務処理部門の集約、共同で行うICTインフラの整備、人事管理システムや福利厚生システム等の共通化等、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組の実施 |
| やりがい・働きがいの醸成 | ㉕ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善 ㉖地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施 ㉗利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供 ㉘ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供 |
2025年(令和7年)12月以降実施の賃上げ補助金
「介護分野における物価上昇・賃上げ等に対する支援」として、令和8年度の介護報酬改定の時期を待たず、人材流出を防ぐためにの緊急的対応として、賃上げ・職場環境改善の支援を行うことが、介護保険最新情報Vol.1444にて通知されています。
施策の対象期間
令和7年12月~令和8年5月の期間(の賃上げ相当額)
施策の概要
| 施策の種類 | 金額 | 要件 |
|---|---|---|
| 介護従事者に対する幅広い賃上げ支援 | 10,000円 | 処遇改善加算の対象サービスについては加算取得事業者、対象外サービス(訪問看護、訪問リハ、ケアマネ等)については処遇改善加算に準ずる要件を満たす(又は見込み)事業者が対象 |
| 協働化等に取り組む事業者の介護職員に対する上乗せ | 5,000円 | 処遇改善加算の取得に加え、以下の要件を満たす事業者。 ●訪問、通所サービス等:ケアプランデータ連携システムに加入(又は見込み)等。 ●施設、居住サービス、多機能サービス、短期入所サービス等:生産性向上加算Ⅰ又はⅡを取得(又は見込み)等。 |
| 介護職員の職場環境改善の支援 | 4,000円(の賃上げに相当) | 処遇改善加算を取得の上、職場環境等要件の更なる充足等に向けて、職場
環境改善を計画し実施する事業者(要件は、令和6年度補正予算の「介護人材確保・職場環境改善等事業」と同様) |
最後に
この記事は、2025年12月12日時点の資料の情報を基に作成していますので、改定について確定した情報ではありませんのでご留意ください。
議論されている介護分野の従事者に対する処遇改善の改定内容は、事業所の経営及び人材採用・育成の方針等にも影響がある事項です。
介護職員等処遇改善加算等の施策を活用するために、継続的に最新情報をキャッチアップし、自事業所の対応を検討しましょう。
参考資料:
第247回社会保障審議会介護給付費分科会 資料2
第249回社会保障審議会介護給付費分科会 資料2
第250回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1
令和7年度 地域別最低賃金 全国一覧
介護保険最新情報Vol.1444
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