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訪問看護の2018年度介護報酬改定

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この記事は2018年度介護報酬改定時の情報をもとに執筆しています

訪問看護の2018年度介護報酬改定
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

2018年度介護報酬の改定の柱は、「地域包括ケアシステムの推進」「自立支援・重度化防止のための質の良い介護サービスの実現」「多様な人材確保と生産性の向上」「介護サービスの適正化と重点化を通じた制度の安定化・持続可能性の確保」となっています。
この記事では、訪問看護の具体的にな改定内容をご説明します。

在宅における中重度の要介護者の療養生活に伴う医療ニーズへの対応の強化

在宅での医療ニーズの高い要介護者への対応を強化することを目的に、看護体制強化加算と緊急時訪問看護加算について変更がありました。

看護体制強化加算の見直し

訪問看護における看護体制強化加算は、2015年度に高度な医療を望む方へ訪問看護体制を整えるために創設された加算です。2018年度の改定では、従来までの看護体制加算が看護体制加算(Ⅱ)となり、在宅でのターミナルケアの実施数が多い事業所をさらに評価する看護体制加算(Ⅰ)の要件が別に定められました。
具体的な看護体制加算(Ⅰ)、(Ⅱ)の違いとして、看護体制加算(Ⅰ)では、直近12ヶ月間の間にターミナルケア加算の算定者5名以上、看護体制加算(Ⅱ)では、直近12ヶ月間の間に、ターミナルケア加算の算定者1名以上が必要となります。

現行(単位) 改定後(単位)
看護体制強化加算(Ⅰ) (1月につき) なし 600
看護体制強化加算(Ⅱ) (1月につき) 300 300

緊急時訪問看護加算の見直し

今回の改定では訪問看護体制のさらなる整備を進めるため、緊急時の訪問看護に対する評価が上がっています。また、緊急時訪問看護加算を算定した方への2回目の緊急訪問について、早朝・夜間、深夜の加算を算定する場合の要件が緩和されています。

現行(単位) 改定後(単位)
緊急時訪問看護加算 (訪問看護ステーション) (1月につき) 540 574
緊急時訪問看護加算 (病院または診療所) (1月につき) 290 315

ターミナルケアの充実

ターミナルケアとは、住み慣れた自宅で病気などで余命がわずかになった方に対してご本人が望む最期に沿って提供する苦痛を緩和しながら出来る限り生活の質を保つためのケアです。
ターミナルケアを実施するにあたり、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の活用が求められています。

「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」とは、人生の最終段階における医療のあり方について、患者・医療従事者がともに広くコンセンサスが得られる基本的な点について確認するもので、2つの項目から構成されています。「人生の最終段階における医療及びケアの在り方」では、患者が医療従事者から十分な情報と説明を受けた上で話し合いを行い、患者本人による決定を基本として医療を進めることが重要であることなどを規定しています。「人生の最終段階における医療及びケアの方針の決定手続」では、方針決定の際の話し合いのプロセスを示しており、患者の意志が確認できるか否か、できない場合の判断の方法などを定めています。

今回の改定では「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の内容に沿った取り組みを明らかにするように算定要件が変更されています。これによって、ご本人と話し合い、ご本人の意思決定をもとに各部門との連携・対応を行うことが明確になりました。

複数名による訪問看護に係る加算の実施者の見直し

今までは複数名で行う訪問看護について、複数名の看護師等が訪問看護を行う場合に限って評価されていました。
今回の改定から、新たな加算区分(Ⅱ)が設けられ看護師等と看護補助者による訪問が評価されます。看護補助者とは、訪問看護を担当する看護師等の指導の下に、療養生活上の世話や、居室内の環境整備、看護業務の補助を行う者と添う想定されており、資格の有無は問われていません。

現行(単位) 改定後(単位)
複数名訪問加算(Ⅰ)
(1回につき)
254(30分未満の場合)
402(30分以上の場合)
254(30分未満の場合)
402(30分以上の場合)
複数名訪問加算(Ⅱ)
(1回につき)
なし 201(30分未満の場合)
317(30分以上の場合)

訪問看護ステーションにおける理学療法士等による訪問の見直し

ご利用者の状況に応じて、看護業務の一環としてのリハビリテーションを提供するため、訪問看護ステーションから看護職員の代わりに理学療法士等を訪問させることがあります。
今回の改定では、この理学療法士等が訪問看護を行った場合の基本報酬に変更がありました。

現行(単位) 改定後(単位)
理学療法士、作業療法士または言語聴覚士の場合
(1回につき)
302 296

報酬体系の見直し

今までの訪問看護の基本報酬は、ご利用者の要支援・要介護度ではなく、サービスの提供時間を基準に区分されていました。
今回の改定では、サービスの提供時間だけでなく要支援の方へ提供した場合と要介護の方へ提供した場合でも区分されています。

指定訪問看護ステーション 現行(単位) 改定後(単位)
共通 訪問看護 介護予防訪問看護
20分未満 310 311 300
30分未満 463 467 448
30分以上 1時間未満 814 816 787
1時間以上 1時間30分未満 1117 1118 1080
理学療法士等の場合 302 296 286
病院または診療所 現行(単位) 改定後(単位)
共通 訪問看護 介護予防訪問看護
20分未満 262 263 253
30分未満 392 396 379
30分以上 1時間未満 567 569 548
1時間以上 1時間30分未満 835 836 807

同一建物等居住者にサービス提供する場合の報酬

以前まで、事業所と同一敷地内の有料老人ホーム等に居住している方、同一敷地内等ではない同一の有料老人ホーム等に居住する方(20人以上)へサービスを提供した場合が減算の対象でした。今回の改定では建物の要件が見直され、また、ご利用者の人数による減算の率 ついても変更があり、下記の条件に該当すると減算となります。

条件減算率
  • 事業所と同一敷地内・または隣接する敷地内で居住しているご利用者へ提供したサービス
  • (事業所と同一敷地内ではない)同一建物に居住する利用者の人数が1月あたり20人以上の場合、その方々へ提供したサービス
10%減算
  • 事業所と同一敷地内・または隣接する敷地内で居住しているご利用者の人数が一月あたり50人以上の場合、その方々へ提供したサービス
15%減算

この減算の対象のご利用者と、対象者以外のご利用者の公平性を測るため、減算の対象者の区分支給限度基準額は、減算前の単位数を使用して計算します。

訪問看護と精神科訪問看護の同一日等の併算

精神科訪問看護とは、精神疾患を持っている人や心のケアを必要とされている人に、看護師・精神保健福祉士などの精神保健に資する有資格者が、自宅や入所されている在宅等に赴き、相談援助などを行うものです。
精神科訪問看護は、医療保険のサービスです。厚生労働省の事務連絡により、同一の日に、介護保険の訪問看護を受けつつ、医療保険の精神科訪問看護を受けることは出来ない(併用算定は出来ない)とされていました。
この取り決めは事務連絡によるものだけでした。しかし、今回の改定では介護報酬告示でも併用算定出来ない旨を明確化することとなりました。
なお、月の途中でご利用者の状態変化などの理由から、医療保険による精神科訪問看護から介護保険の訪問看護に変更することは可能ですが、状況にかかわらず、数日単位で医療・介護保険を交互に利用することはできません。

まとめ

訪問看護は在宅の医療ニーズに対応する重要な介護事業所です。今回の改定では基本報酬、加算、減算の変更があり、事業所経営に与える影響は大きいかと思われます。この記事を適切な事業所経営に活かしていただければ幸いです。
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