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【2024年度報酬改定】医介連携推進へ退院時共同指導加算の見直しなど要望

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この記事は2023年10月時点の情報をもとに執筆しています

【2024年度報酬改定】医介連携推進へ退院時共同指導加算の見直しなど要望
株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

株式会社エス・エム・エス カイポケ訪問看護マガジン編集部

看護師や介護事業所の運営経験者、訪問看護の請求ソフトや電子カルテの導入支援経験者など、医療や介護、訪問看護の現場理解が深いメンバーが在籍。訪問看護ステーションの開業、経営、日々の看護業務に役立つ情報を発信します。

目次

現在、2024年度(令和6年)の診療報酬と介護報酬の同時改定に向けた各種検討が進んでいます。

介護報酬改定について話し合う会議では、地域で暮らす要介護者に対して切れ目のないケアを提供するための医療・介護の連携推進が大きなテーマの一つとなっています。

様々な立場の委員から意見が交わされる中、業界団体からはより具体的に、「退院時共同支援加算」や「特別訪問看護指示書」に関する要望が表明されました。

介護報酬改定に向けて話し合われてきた横断的テーマ

社会保障審議会・介護給付費分科会では、 令和6年度介護報酬改定で対応するべき課題の整理や改定の方向性について話し合いを進めています。8月末から9月にかけては、全てのサービスに関わるテーマについて意見が交わされてきました。以下がその内容です。

  • 地域包括ケアシステムの深化・推進

    • 認知症への対応力強化

    • 医療・介護連携、人生の最終段階の医療・介護

    • 新しい複合型サービス

    • 地域の特性に応じたサービスの確保

    • 感染症への対応力強化

    • 業務継続に向けた取組の強化等

  • 自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進

    • LIFE

    • 口腔・栄養

  • 介護人材の確保と介護現場の生産性の向上

    • 介護人材の処遇改善等

    • 人員配置基準等

    • 介護現場の生産性向上の推進/経営の協働化・大規模化

    • 外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いについて

  • 制度の安定性・持続可能性の確保

  • 高齢者虐待の防止/ 介護現場における安全性の確保、リスクマネジメント

  • 地域区分

  • 今後の新型コロナウイルス感染症の退院患者受入に係る特例的な評価について

なお、これらのテーマに沿って話し合われた内容は、「令和6年度介護報酬改定に向けた基本的な視点」として整理されています。

「医療・介護の連携推進」「人生の最終段階における医療・介護」に対応するための論点

ここからは訪問看護に深くかかわるテーマとして、「医療・介護連携」、「人生の最終段階の医療・介護」を巡る検討内容について振り返ります。

このテーマを巡って、厚生労働省は以下の通り論点を挙げていました。

【医療・介護連携】

  • 要介護高齢者が、在宅・高齢者施設・医療機関のいずれの場においても、必要なケアを受けることができるよう、関係機関の連携を充実させる観点からどのような方策が考えられるか。

  • 特に、医療においてはより「生活」に配慮した質の高い医療を、介護においてはより「医療」の視点を含めた介護を行うために必要な情報提供の内容や連携の在り方について、どう考えるか。

【人生の最終段階における医療・介護】

  • 本人が望む場所でより質の高い看取りを実施できるようにするためには、どのような対応が考えられるか。

  • 本人の尊厳を尊重し、意思決定に基づいた医療・介護を提供するための医療・介護従事者の連携や支援の在り方、情報共有の在り方についてどのように考えるか。

(引用:医療・介護連携、人生の最終段階の医療・介護|222回社会保障審議会介護給付費分科会資料

医療介護の連携を進めるための訪問看護の役割とは?

厚労省が示した論点を踏まえ、介護給付費分科会の委員からもさまざまな意見が述べられていました。特に、前段の「医療・介護の連携推進」に関する意見が集中しています。

まず、奥塚正典委員(大分県国民健康保険団体連合会副理事長/中津市長)は、「医療と介護の連携に対応するためには、医師看護師等の医療従事者に加え、訪問看護師、介護支援専門員等を含めた多職種が医療情報・介護情報を共有することが重要」と指摘。「医療情報・介護情報を共有することによって、より適切な在宅医療、訪問看護、そして介護の提供が可能になるほか、より効果的・効率的な医療・介護が提供できる」と、国に対して情報連携のためのネットワーク構築を推進していくよう求めました。

また、田母神裕美委員(日本看護協会常任理事)は、「医療と生活双方の視点をもつ看護職は医療と生活の双方の視点を持つ看護職は、利用者の状態に即して連携先等を繋ぐ上でも重要な役割を担っている」と主張し、「必要な情報やケアが途切れることのないよう、連携の仕組みや協働した支援、そして事業所間での助言といった形でケアの継続性・連続性を担保する仕組みをさらに充実させていくということも重要」と提言していました。

さらに米本正明委員(全国町村会/和木町長)は、看取りを含む必要なサービスの提供について、「中山間地域、離島では高齢化の進行と現役世代の人口減少が先行的に進んでいて社会資源が不足しているため、在宅医療、介護を行うための多職種連携が難しいのが現状。そのため、タブレットと情報通信機器を活用することで地域にある社会資源を活用しながらサービスを提供することが可能」などと述べ、ICT機器などの導入経費の財政支援や人材確保のための体制整備を求めました。

業界団体からは特別訪問看護指示書の交付対象の拡大などの要望

ところで、介護給付費分科会では分科会のメンバーによる検討とは別に、関係団体からの意見陳述も行われています。

この機会に全国訪問看護事業協会は、令和6年度介護報酬改定に向けて大きく3つ要望しました。

  1. 訪問看護の機能強化へ向けた各種加算の評価の引き上げ

  2. 高齢者の医療・介護ニーズ、看取り等の対応の更なる強化

  3. 高齢化の進展により多様化する地域ニーズへの対応強化

令和6年度介護報酬改定に関する意見
画像引用:【資料6】全国訪問看護事業協会|厚生労働省

このうち1の「訪問看護の機能強化へ向けた各種加算の評価の引き上げ」としては、厚労省が示した「医療・介護の連携推進」というテーマに沿うものとして、退院時共同指導加算の単位数と要件の見直しなどを求めています。

要件の見直しとは、電話やオンラインによる情報提供を算定要件として認めるよう求めるものです。医療DXの推進を図るという観点からも、共同指導の内容を”電子的な方法”によって利用者に提供した場合にも同加算を算定できるようにするとともに、算定単位の引き上げを要望しています。

また、2の「高齢者の医療・介護ニーズ、看取り等の対応の更なる強化」では、看取り等の更なる対応強化を求める策として特別訪問看護指示書の対象者を、がん以外のターミナル期や、難治性潰瘍を追加することなどを求めています。

医療・介護連携の推進や看取りの対応強化をどのように報酬改定上で対応していくかについて、詳細な検討は今後行われることになるでしょう。その中で、全国訪問看護事業協会の要望のような具体的な意見がどこまで反映されるかは注目すべきポイントといえそうです。

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